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 家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の防疫作業が続く宮崎県で、野生動物への対応に関係者が苦慮している。牛や豚と同様にイノシシやシカもウイルス感染の恐れがある「偶蹄類」。県内で感染報告はないが、県は畜産など農業関係者に対して防疫対策への協力を呼びかける。しかし、文字通り野放しのため「抜本的対策がない」との声も上がる。【松田栄二郎】

 県自然環境課によると、08年度に狩猟や田畑を荒らす有害鳥獣として捕獲されたイノシシやシカは計1万8580頭で前年度より約2000頭増えた。野生動物による田畑や植林の被害額は年々増加し、08年度は約2億円に上った。中山間地域の住民が減り、耕作放棄地が増えたことで野生動物の行動範囲が人里まで広がったことが原因とみられる。

 口蹄疫の発生を受けて県は4月末、山林などで動かなくなったり死んだ野生動物がいないか、警戒を強化するよう鳥獣保護員に指示。また、山林に近い畜舎が多いため、今月1日に市町村を通じて農家に防疫対策への協力を求めた。

 県営農支援課は、具体的な方策として、山際に重点的に防護柵を設置したり、ある程度まとまった農地に柵を立てるなど、野生動物を集落に近づけない取り組みを指摘。「防疫を地域全体の問題と考えるようお願いした。対策に必要な資材購入費などへの補助事業もあるので活用も勧めている」(担当者)としている。

 しかし、JA宮崎中央会は「これまでも防護柵などの対策に取り組んできたが、追い払っても別の集落に移動するなどイタチごっこ。いい結果は出ていない」と現状を訴える。

 また、ある自治体職員は「今はどの農家も自分たちの畜舎の消毒作業で手いっぱいで、他に力を注ぐ余裕がない」と話した。


最終更新:2010年07月16日 06:08