2010年5月19日12時7分
宮崎県を襲う口蹄疫は、「畜産王国」九州を震え上がらせている。
大分県は、宮崎県に接する竹田市にある県農林水産研究指導センターが保管する「豊後牛」などの精液1万2千本を、大分市の大分家畜保健衛生所に移動した。凍結保存する精液の約10%にあたる。被害が広がってセンター一帯が移動禁止区域になれば、種付けができなくなるからだ。
豊後牛は「和牛のオリンピック」とも言われる5年に1度の全国和牛能力共進会で、2002年にグランプリを受賞したブランド牛だ。種付けができるかどうかは畜産業にとって影響が大きい。種牛や種牛候補牛の移動も想定しており、候補地を探しているという。
鹿児島県でも、宮崎県境の曽於(そお)市周辺で口蹄疫が発生した場合に「鹿児島黒牛」の種牛を避難させようと検討している。こちらも、日本一の和牛生産地として知られる鹿児島県が誇るブランド牛だ。
影響は三重県の「松阪牛」にも及ぶ。松阪牛の4割超は宮崎県から子牛を仕入れて肥育しており、関係者からは「子牛の調達が出来なくなるかも」と心配する声があがる。
ウイルスがばらまかれるのを防ぐための消毒作業も、地域や対象を広げている。
鹿児島県は18日、宮崎県境を中心とする13カ所で、口蹄疫ウイルスの拡散防止のために一般車両も消毒すると発表した。道路上に消毒薬を含ませたマットを敷き、その上を通過させる。これまでは畜産関係車両だけだったが、「畜産関係以外の人や車の動きがウイルスを広めている可能性もある」と踏み切った。早ければ19日から始める予定だ。
大分県では、品薄で不足していた消毒薬約700キロを入手した。食品や医療用の消毒薬を転用することも決め、600ミリリットルの薬剤5千本も新たに購入した。従来使っていた消石灰と併せて使用する予定だ。同県九重町の観光名所である大吊橋(つりはし)の入り口にも靴底を殺菌するための消毒マットが設置された。町には200戸の畜産農家がある。町の担当者は「口蹄疫が終息するまで続けたい」という。
熊本県は、感染牛が見つかった宮崎県えびの市と隣接する人吉市などに牛や豚の搬出・移動制限区域を設けた。県内道路の消毒地点も11カ所まで増やし、一部では一般車両も含めて消毒に当たっている。
各県の首長たちは必死だ。熊本県の蒲島郁夫知事は17日、「口蹄疫は九州全体の問題と認識している。封じ込めと防疫を徹底したい」と話した。18日に会見した鹿児島県の伊藤祐一郎知事は「県としては蔓延(まんえん)を防ぐのが最大の務め。これ以上拡大しないような万全の措置を国にも講じてほしい」と求めた。
5月 対応 防疫関係
最終更新:2010年07月18日 04:39