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2010.5.19 21:13

 宮崎県で口蹄(こうてい)疫が拡大している問題で、殺処分作業が滞っている。19日午前までで殺処分対象の牛や豚など計約11万8千頭のうち作業が終了したのは約半分の6万5千頭。政府の対策の実施で新たに20万頭以上の殺処分も始まる。人手も足りず、自衛隊などの応援部隊を総合的に動かす“司令塔”が不足していたことも事態の悪化に拍車をかけたようだ。

 ■埋める場所足りず

 「現場では感染の疑いがある家畜も飼育しながら殺処分を待っている。特に豚は非常に大量のウイルスを出す。現状が続けば感染を食い止めるどころか、小動物などの媒介で感染が拡大するだろう」

 宮崎大農学部の後藤義孝教授(家畜微生物学)は、殺処分の停滞による蔓延(まんえん)の危険を指摘する。

 家畜伝染病予防法で、口蹄疫の感染が確認された家畜や疑いのある家畜は殺して焼却するか土中に埋める「殺処分」が義務付けられている。今回は獣医が薬殺し、消毒された土中に埋却している。

 宮崎県の対策本部によると、埋却地は発生農場の敷地内か農場が隣接地を購入するなど、処分対象を移動させない場所が基本。だが、放牧地を持たず畜舎だけで飼育している農家も多く、場所探しは難航している。発生が集中する同県川南町では浅い地盤に地下水があり、決まった場所も試掘段階で水が出て、断念したケースもあるという。

 ■人手が足りず

 また、作業を進める獣医や家畜の扱いに慣れた人材が不足している。県は「作業に加わると感染拡大を防ぐため1週間程度家畜と離れる必要がある。本業が滞るためお願いもしにくい」と事情を明かす。

 農林水産省は19日までに、延べ約1900人の獣医を派遣。しかし手が回らず、感染疑いが判明したのに、獣医や埋却作業の人員の順番待ちをしながら、そのまま家畜を育てている農家もあるのが現状だ。


 埋却や運搬などのために派遣されている陸上自衛隊。赤松広隆農水相は18日の閣議後会見で、「自衛隊が行っても『今日は埋却はない』と帰されたときもあった。あるときは『あれもやれ、これもやれ』といわれている」と明かした。

 自衛隊がスムーズに動かないのは、殺処分が薬殺と運搬、埋却などの手順をほぼ同時進行で行わなければならない上、進行を管理する“司令塔”が不足していたことによる。

 宮崎県によると、現場責任者として、家畜に詳しい県の専門職員をそれぞれの現場に派遣しているが、その数は約30人しかいない。

 県外からの応援も得たが、派遣が短期間だったため「責任者の仕事を教えてもすぐ帰ってしまい、かえって足手まといだった。責任者により作業が滞ったり一気に進んだりする」と明かす。

 現在は、応援の派遣期間を延長し、専門職員が早朝から夜中までフル回転しながら、責任者として育成しているという。
5月 自衛隊活動 被害状況 防疫関係

最終更新:2010年07月18日 04:57