2010年5月26日7時0分
口蹄疫(こうていえき)の拡大を防ぐために宮崎県以外の九州各地でも家畜市場が止まり、出荷できずにいる和牛の子牛が、鹿児島など九州5県で約2万頭に上ることがわかった。農畜産業振興機構(東京)によると、昨年度の子牛の市場価格は平均36万円。適齢期での出荷を逸すれば価格が落ち、飼料代がかさむため、子牛を育てる繁殖農家は一日も早い市場再開を望む。各県は飼育指導や資金援助などを始めた。
和牛農家には、子牛を産ませて一定期間育てる繁殖農家と、その子牛を買って肉用牛に育てる肥育農家がある。
九州は和牛の子牛の主要生産地。農畜産業振興機構によると、2009年度に全国で取引された和牛の子牛は約39万頭。このうち、福岡県を除く九州6県の市場から約20万頭が出荷されている。
ところが、口蹄疫発生により宮崎など各県の子牛の競り市が中止・延期された。
最も影響が大きいのは和牛の子牛飼育数が全国一の鹿児島県。4月25日以降、開催を予定していたすべての家畜市場が止まり、繁殖農家では1万頭を超す子牛が滞留。同県ではさらに6月以降の競り中止も決まった。長崎、熊本両県でもそれぞれ3千頭以上の子牛が出荷できずにいる。
鹿児島県での延期は、県外からの買い付けが4割を占める県内最大規模の曽於中央家畜市場が最初。JAそお鹿児島畜産部によると、4月25~28日と5月25~28日の開催日に計約3500頭の出荷が予定されていた。担当者は「県外客が集まらなければ、競りに出しても値が上がらない。かさむコストやイメージ低下など目に見えない被害を生産者は心配している」と話す。
曽於市は、出荷が見送られた子牛1頭当たり月1万円、総額2550万円ほどの見舞金を決め、5月末をめどに農家に振り込むという。
700戸以上の繁殖農家がある佐賀県は、出荷できなかった子牛の餌を肥育農家が使う飼料に切り替える指導を始めた。ブランド牛「佐賀牛」などを育てる肥育農家は通常、生後9~10カ月の子牛を買い付け、特別な飼料を与えて育てる。子牛が育ちすぎてから肥育に切り替えると、より良い肉質に仕上げるのが難しくなる。同県畜産課は「出荷できない間に肥育用の餌を与えることで、子牛の生育を止めないようにしたい」。
肥育農家も苦労している。佐賀県は鹿児島、宮崎、大分など県外からは年間約2万頭の子牛を買い付けているが、家畜市場の中止・延期で供給が途絶えた。県畜産課の担当者は「月約2千頭の子牛が必要で、早く再開しないと牛舎がガラガラになってしまう」と不安感を隠さない。県は、肥育農家に対しても、育ちすぎた子牛への餌やりの技術指導をする予定だ。
最終更新:2010年07月18日 03:00