徳島家畜保健衛生所阿南支所の大久保喜美主任(獣医師)が、口蹄(こうてい)疫や鳥インフルエンザのウイルス感染防止のために農場周辺に散布している消石灰について、天候の影響や適正な散布量などを調べた。研究成果は全国の獣医師や養鶏関係者らでつくる鶏病研究会の2009年度優秀論文賞に選ばれた。
天候による影響では、雨が降った場合の効果を検証。阿南支所内の敷地の土壌とコンクリートの上に、それぞれ消石灰1平方メートル当たり0・5キロと1キロを散布し、消毒効果がある強アルカリ性(pH12以上)が維持されているかを観測した。
晴天状態では強アルカリ性が保たれていたが、降雨時には土壌、コンクリート上ともpHが低下。降雨後の消石灰で菌の培養実験を行った結果、菌が増え、消毒効果が薄らいでいることが確認された。
適正な散布量では、1平方メートル当たりの散布量を100グラム、300グラム、500グラムと変え、菌の培養実験を行ったところ、100グラムだけが菌が増え、300グラム以上で消毒効果が維持されていることが分かった。
畜舎に入る際に長靴を消毒する「踏み込み消毒」への応用に関しては、1%の消石灰液で効果があることや、逆性せっけんを1%追加することで効果が強まることも判明。市販の消毒液は高価で、流し捨てる際に環境への影響も懸念されるが、安価で環境への影響が少ない消石灰での応用が可能になるという。
一連の実験は、宮崎県での口蹄疫被害が拡大する前に行ったものだが、口蹄疫ウイルスが強アルカリ性で死滅することから、5月に入って他県からデータの送付依頼がきているという。
大久保さんは「具体的なデータを示すことで、より効果的に消石灰を使用できるのではないか」と期待している。
2010/5/29 10:55
最終更新:2010年07月19日 05:11