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(2010 05/20 11:26)

 宮崎県で家畜の感染症口蹄(こうてい)疫が確認され、20日で1カ月を迎える。この間、鹿児島県内でも家畜市場は競りが中止され、発生地域えびの市に近い2市2町は移動・搬出制限区域に置かれたまま。畜産農家は、経済的にも心理的にもダメージが増すばかりだ。一方、車両消毒ポイントでは組織の枠を超えた協力が生まれ、住民らの支援の輪も。畜産王国を守るため“挙県態勢”で臨む。
 「競り中止がまだ長引けばと思うと、ぞっとする」。指宿市の30代の子牛生産農家は、5月の競り代金を2カ月分の飼料代に充てる計画だった。競りが再開しても、子牛は「適性月齢」とされる9~10カ月を過ぎる。競り値の低下が心配だ。
 鹿児島県は肉専用種の牛の飼養頭数が約33万頭、豚が約130万頭で、ともに宮崎県を抑え全国1位の畜産県だ。
 口蹄疫確認の4月20日から5月末まで、県内17家畜市場の競りは全面ストップ。JA県経済連によると、肉用子牛はこの間に約1万頭が出荷予定だった。県内の4月子牛競り平均価格は35万円。単純計算すると、農家の収入35億円が棚上げされたことになる。
 子牛生産は母牛数頭規模で可能なため、高齢農家の割合が多い。曽於地域肉用牛生産連絡協議会の福留辰男会長(69)は「『もう牛は怖い』『牛飼いはやめようか』と話す農家も多い」と離農が相次ぐことを危惧(きぐ)する。
 移動・搬出制限区域に入った伊佐市では、畜産農家への人の出入りが最小限に控えられている。牛の人工授精師も自粛する。母牛が妊娠、子牛の肥育期間を経て出荷されるまで20カ月。伊佐家畜市場は「20カ月後の競りに出る牛がいなくなる。伊佐の畜産が残るかどうかの問題」と深刻だ。
 姶良中央家畜市場では4月21日の原種豚(繁殖用もと豚)競り市も中止。次回は約半年先の11月19日だ。伊佐農林高校(伊佐市)は競りに出荷できる指定種豚場だが、「そのころには成長しすぎて種豚として出せない」と、担当教諭は肩を落とす。次善の策として、豚みそなどの材料にする検討も始めた。「まるで悪い夢を見ているようです」
5月 対応 防疫関係

最終更新:2010年07月19日 01:46