(2010年5月9日付)
■本県に国対策本部を 県民へ危機意識共有訴え
県内で口蹄疫の感染、感染疑いが相次いでいる。生産者の置かれている現状、現場で求められている対策などを、JA宮崎中央会の羽田正治会長に聞いた。(聞き手 報道部次長・戸高大輔)
―被害は拡大の一途をたどっている。
羽田 口蹄疫は本県より先に中国や韓国などで発生した。グローバル化が進む中、どういう経緯かは分からないが宮崎でも起きたということ。前回の2000年は92年ぶりの発生で非常に危機感を持って初期防疫に当たったが、今回はあれほどの緊張感はなかったのではないか。
―生産者の受ける打撃は相当なものだ。
羽田 手塩にかけた元気な牛(豚)を殺さなければならない生産者は、処分する日に「今日一日だけはいい餌を食べてもらおう」と考えているそうだ。生産者の愛情が感じられて涙が出そうになった。一段落したら、大量に殺処分された牛や豚のためにも合同慰霊祭を開きたい。
―殺処分や消毒などの作業は順調か。
羽田 「疑似患畜が出る」「殺処分する」「埋める」という一連のプロセスが十分に進んでいない。特に埋める場所が確保できておらず、対象の牛や豚を放置せざるをえない状況にある。私たち農協4連(中央会、経済連、信連、共済連)も休日返上で毎日100人ずつ職員を出しているが、家畜伝染病予防法により、私たちは牛1頭、堆肥(たいひ)一つ動かすことはできない。そのためには、法で権限を与えられた行政、特に国にしっかりしてほしい。民主党の小沢一郎幹事長に手渡した要望書にもある通り、国が宮崎に対策本部を置いて迅速な対応を取るべきだ。
―予算措置をはじめ国への要望も大切になる。
羽田 本県関係の国会議員は6人いるが、動きには満足していない。選挙では争っても、宮崎が一番困っている時には、一致団結して政府に陳情するなり要望を出すなりしてほしい。県民から選ばれた国会議員なら、誰よりも宮崎のことを考えるべきだ。
―本県は豚が全国2位(頭数)、肉用牛が全国3位(同)を誇る畜産王国。他産業に与える影響も大きい。
羽田 口蹄疫は商業、工業、建設業、運送業など多くの産業に多大な影響を及ぼすことになり、災害だと考えている。そのためにも、皆さんと一緒に「災害対策本部」を設けてもいいのではないか。県民の英知を結集すれば必ず乗り越えられると思う。皆さんに私たちの危機感を共有してほしいと願っている。
―これから必要なことは。
羽田 牛や豚の正確な評価額を算定するなどして経済的損失を正確に把握し、農家がきちんと補償を受けられるようにしたい。風評被害に関しては、県民の皆さんには冷静に対応していただいており感謝している。
最終更新:2010年07月15日 04:41