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犯罪! 拉致監禁○辱摩訶不思議ADV! - (2008/09/30 (火) 19:19:12) の1つ前との変更点
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*犯罪! 拉致監禁○辱摩訶不思議ADV! ◆2XEqsKa.CM
「ったく~……あちこちでドンパチやってるねぇ……」
未明の森を、男が歩いていた。
男の名は雨蜘蛛、変態である。
その変態ぶりは肩に下げたディパックから覗き見える黒レースのメイド服からも如実に読み取れる。
木々の合間から時折聞こえる強烈な爆音・檄音・破砕音。
ゼクトール達との遭遇後、雨蜘蛛はそれらの音源になるべく遭遇しないように注意して歩を進めていたが、ふと立ち止まった。
進行先に一際激しい轟音と炎を目にしたのだ。
どこぞの阿呆がロケット・ランチャーでも使用したのだろうか?
「こっちもか」
進行方向を変えると同時に、そちらからも爆音。
雨蜘蛛は立ち止まり、ポリポリと頭を掻く。
南東に見える燃え盛って夜空に昇る炎と、南西から聞こえる崖が崩れるような大音量。
「引き返してまたカブト虫とでくわすのも、あっちに進んで政府のメス犬と再開ってのも面倒だねぃ」
自分の歩いてきた方向……北を振り返り、川口夏子達と遭遇した西を見遣って雨蜘蛛は呟く。
コンパスと地図を取り出し、数秒の逡巡の末、東に向き直った。
道も何もない森の中、木々を掻き分けて進む。
一時間ほど歩いただろうか。
深々とした夜の森を進む雨蜘蛛の前に、やがて道が開ける。
整備された舗道。そしてその先には――――。
神社が、あった。
「……人がいるな」
『フェラーーーーッ!!! 』
騒がしい声が、建物の外まで聞こえてくる。
なにやら揉めているようだ。
雨蜘蛛は一瞬躊躇したが、素早く気配を殺して神社に接近し。
スライディングして、神社の軒下に潜り込んだ。
◇
リヒャルト・ギュオーは、息も絶え絶えでフラフラと森の中を彷徨っていた。
目線はおぼつかず、半分這いずるようにゆっくりと移動しているその姿は、自身が持つ壮大な野望とはかけ離れている。
とうとう倒れ、仰向けになって星空を見上げながら、ギュオーは更に息を荒げていく。
(まずい……意識が……)
ギュオーの獣神将としての絶大なパワーは、同時に凄まじく体力を消耗する諸刃の刃でもある。
その上今の彼には不思議な力による制限が掛けられ、全体的に能力が――無論燃費も――弱体化していた。
1、2回の戦闘しかこなしていないとはいえ、彼の体力は既に底を付きかけているのだ。
ギュオーは奮起し、木に持たれかかりながらよたよたと先に進み始める。
このような道のど真ん中で倒れていれば、自分がどうなるかは火を見るより明らかである。
地図に首ったけになりながら慎重に方角を見極めて進むギュオー。
(この……神社に……たどり着かなくては……! )
地図上に書かれた『神社』の二文字。
それだけが、今のギュオーの進行先を決めていた。
牛歩のような速度で歩いているせいか、一向に神社は見えないが。
神社にさえたどり着けば、ある程度は安心して休めるし、外で寝るよりは回復も早まるだろう。
うまく騙せて自分を守らせるのに使える甘い参加者がいれば何よりだ。
地図に偽りがあるかもしれないという疑念を必死に押し殺しながら、ギュオーは進む。
体力はとうに限界を突破し、精神力と野望と勢いだけで。
だが、それにも限界は来る。
(おのれ……この……俺が……こんなところで……)
ギュオーは再び倒れ、もう二度と立ち上がらなかった。
消えかける聴力が、自分に近づく足音を感じる。
目線だけを上げて、最後に、彼が見たものは――――。
「コーホー」
自分を憐れむような眼差しで見つめ、自分を励ますようにカパッ☆とスマイルを浮かべる……黒づくめの、マスク男だった。
【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー 気絶確認】
◇
「わーい、まっくろくろすけが帰ってきたぞー! 」
「ホントだっちゃか!? 」
私は神社の入り口に身を乗り出し……ちょっと引っ込んで、顔だけ出して外を見た。
成る程、メイちゃんの言うとおり突如響いた轟音の原因を調べに行ったまっくろすけ……ウォーズマンが戻ってきている。
神社に上がりこんだウォーズマンに、メイちゃんが抱きつく。
ウォーズマンは苦笑(表情は読めないが、そんな感じの声を出している)しながら、メイちゃんの頭を撫でた。
「まっくろくろすけ! おかえりー! 」
「草壁メイ……子供というのはいいな、朝倉。愛らしく、守ってやりたくなる……そんな存在だ」
「そうだっちゃね」
「嫌われ者のロボット超人だった俺にこんな感情が芽生えるとは……俺がこの位の歳の頃は考えもしなかったな」
「で、どうだったっちゃ? 収穫は……それだけだっちゃか? 」
身の上話を始めそうなウォーズマンを制し、私は偵察の成果を問う。
ウォーズマンは小脇に抱えていた男を下ろし、頷いた。
男はどうやら気を失っているようだ。何かに怯えるような声を上げている。悪夢でも見ているのだろうか?
「アルカ……る……く……」
「先程の轟音と光……向こうの滝の辺りで起きたらしい。彼はその周辺で倒れていた。
私の顔を見る途端、安心したのだろうか気絶した。この血塗れの姿を見る限り、あの轟音に巻き込まれた可能性が高い」
「その赤は……服の色じゃないっちゃか? 」
「おーい、起きろー」
メイちゃんが男の頬をはたき、気付けさせようとするが、男はぐったりとしたままだ。
全身にかなりのダメージを負っているようで、ウォーズマンが手当てに勤しんでいる。
私は首をかしげ、ウォーズマンの手を掴んでそれを止める。
「何をしているっちゃか? 」
「治療だ。 俺は残虐ファイトを信条としているが、同時に正義超人でもある。傷ついた者を放っておくわけには行かない」
「あなたは気付いていると思ったのだけどっちゃ」
この男―――人間ではない。
私の対有機生命体コンタクト用インターフェースとしての勘が、そう告げていた。
初見でこの私を人間でないと見抜いたこのウォーズマンなら、気付いていると思ったが……。
「お前の懸念はわかる。この男はただの人間ではない……あるいは、あの爆音を出した張本人かもしれない」
「だったら、殺しましょうっちゃ? 生かしておいても、危険が増えるだけだと思うっちゃよ? 」
「そういうわけにもいかん。戦う意思がない者に手を出すのは、正義超人としての誇りに悖る」
「そいつが起きたとたんにメイちゃんに襲いかかったらどうするっちゃ? 」
「グ、グムー……そんなことは俺がさせない! 正義超人の名にかけて! 」
「まっくろくろすけがいれば大丈夫だよ! だっちゃねえちゃん! 」
「だっちゃの事は言うなっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」
「で、電撃はやめ……フェラッーーーー!!!」
……何故こんなことになってしまったのだろうか。
あの銃をこの身に受けた結果、制服はどういう原理か消滅し、トラ柄の下着一枚の姿。
それが今の私、朝倉涼子だ。
まさかとは思うが、この状況を長門さんは見ているのかもしれない。
一体私にどうしろというのだ、長門さん。
私が叫びと共に放った電撃を受けて倒れたウォーズマンを見下ろしながら、私は溜息を付いた。
程なくしてウォーズマンが立ち上がる。二度目ともなると、電撃にも耐性が出来るのだろうか。
「と、ともかく、彼が起きれば一体あそこで何が起きたのか聞き出せるかも知れん。悪い予想ばかりしていてはいかん」
「はぁ……まあ、いいっちゃ。ところで、頼んでいた物、見つかったっちゃか? 」
「あいにく、こんな森の中だ。服なんてそう落ちちゃいない」
そう。
今の私にとって最優先するべきものは涼宮ハルヒの保護……だが、その次に来るものがこの恥ずかしい姿を隠す服である。
鬼娘専用変身銃の説明書の裏には「三時間くらいで元に戻るかもなぁ~く~~くっくっく」とか書かれていた。
しかし、制服が消え去った状態から『元に戻る』という表現は見逃せない。
最悪の場合、角が消え、ビキニが消え、全裸の状態になる可能性だってないでもない。
「そう……残念だっちゃ」
「そうだ、この男の着ているタイツみたいな服を拝借するのはどうだ? 女物のようだし……
彼はこの下に何も着ていないみたいだが、脱がせた後あの変身銃で撃てば問題ないだろう」
「何言ってるっちゃ? 何考えてるっちゃ? この中年が素肌に来ていたものを私に着せる?
ウォーズマンさん、乙女心って知ってるっちゃか? 」
「……だって俺はロボット超人だから……」
しょげ込むウォーズマン。
何かかわいそうな気もするが、私に怪しい男の汗が染み付いた服を着る趣味はない。
というかこの中年男の虎柄ビキニ姿を見るのもかなり苦痛だ。
後、この私が「乙女心」を語るのも笑止としか言いようがないような気もする。あるいは悪い冗談か。
しばらくしてウォーズマンは立ち直ったのか、黙々と男の治療を再開した。
数分後。
「……大体の処置は終わったぞ。後は彼が目覚めるのを待つだけだ」
「目覚めないのが望ましいっちゃけどね」
「おーい、起きろー」
「や、やめるんだ草壁メイ! 」
メイちゃんが男の顔を蹴り飛ばす。
ウォーズマンが止めるまでに、4発は入っただろうか。
私はそんなほのぼのした光景を見ながら、この男について考える。危険人物である、という意見は揺るがない。
あの爆音に関わりがあり、ダメージを受けている時点で、ゲームに乗って戦闘を行っていた可能性が高い。
ウォーズマンの考えるように、巻き込まれただけの者である可能性もある。
だが、一つ目の可能性――――ゲームに乗っているかもしれない可能性がある、というだけでも、
殺せるときに殺しておいたほうが、抱え込むリスクは減るのだ。
今の状況なら、ウォーズマンやメイちゃんのスキを覗って私がこの男を殺すことは比較的容易だ。
だが、死者が読み上げられるという放送でこの男の名前が呼ばれることを考えれば、そう迂闊な行動にも出られない。
単に名前だけ上げられるだけならいいが、ゲームを円滑化させるため―――などと言って殺した相手まで発表されれば、
ウォーズマンやメイちゃんだけでなく全参加者に敵視されることは間違いない。
自ら手を汚さずウォーズマンにこの男を殺してもらえていれば、そんな事態に陥っても彼を切り捨てるだけで済むのだが。
「憂鬱だっちゃ……」
「だっちゃねえちゃんのゆーうつ! 」
「黙りなさいっちゃ」
メイちゃんを嗜め、私はウォーズマンに今後の展望を尋ねる。
「で……これから、どうするんだっちゃ? 」
「そうだな……あの滝の事を例に挙げるまでもなく、あちこちで戦闘が行われている事を俺のセンサーが感知している。
このまま放っておけば俺達の知り合いが危機に陥る可能性もあるし、
彼が目覚めて話を聞いたら、ここを出て仲間の捜索を始めるぞ。いいな、朝倉? 」
「ま……それが妥当なとこだっちゃね。とりあえず、服の確保も兼ねて、町のほうから探すっちゃか? 」
「ああ、そうだな。……草壁メイもいる、危険人物に会ってもいいように、今は万全のコンディションを整えるぞ」
ウォーズマンは瞑想するように目を閉じ、精神統一を始めた。
確かに、涼宮ハルヒの保護は急務だ。ウォーズマンのような超人がゴロゴロいるのだ、彼女とて安全とは言いがたい。
それどころか彼女の場合、下手に危機に陥られるといきなり世界は終わりましたおめでとうとか起こりかねないのだ。
本人に危害を加えるのは私だって控えてきたのに、そんなことになっては困る。
長門さんはこの辺、どう考えているのだろうか? ……分からない。まったく、本当に憂鬱だ。
「危険人物、だっちゃか……」
ウォーズマンの言葉を咀嚼し、私はビキニのラインを整えながら考える。
メイちゃんを任せて偵察に行った事からも、ウォーズマンは既にある程度私を信用しているようだが、それは間違いだ。
今は他人に危害を加える気はないが、私は条件が整えばメイちゃんを簡単に殺すだろう。
繰り返すが別に悪意があるわけではない、私がそういう存在だというだけの事なのだ。
涼宮ハルヒの監視が最優先の存在、生物とすら呼べない。長門さんもそうだったはずだ。今は違うのかもしれないが。
私のように、表面は無害を装えるが、腹に一物抱えている者も大勢いるだろう。
いやむしろ人間こそが、そういう生き物のはずなのだ。ウォーズマンみたいなのが特殊……ああ、彼は超人だったか。
そういった者の方が、この状況――バトルロワイヤルでは、怖いといえる。
「分かりやすい、危険人物だよーとか言って出てきてくれるような奴は、いないんだっちゃろうなぁ」
ばごきっ。
「呼ばれて飛び出てJYAJYAJYAJYA~N!!!」
「……」
「どうもぉ~、危険人物だよぅ」
神社の床をぶち抜き、ウォーズマンの物とはまた違った意匠のマスクを付けたマント男が出てきた。
「……」
神社の床をぶち抜き、ウォーズマンの物とはまた違った意匠のマスクを付けたマント男が出てきた。
前略
情報統合思念体様
私、大事な事なので二回言いました―――。
もう一回言っていいですか?
◇
雨蜘蛛が神社の床を破って出てきたそこは、朝倉たちが座り込んでいたところからかなり離れた場所だった。
もし朝倉たちの目と鼻の先に出てきていれば、かなりの衝撃を与える効果があっただろう。
だが、自分で開けた床の穴からなかなか抜け出せず、マントの一部を破きながらのそのそと床に上がってきていては、
朝倉涼子にとっては微妙な脱力感を覚えさせる程度の効果しかなかった。
「な、何者だキサマ! 危険人物だと!? 」
「うわああああああん!!!! 怖いよぉぉおおぉおおぉおおぉお!!!!」
だが、その奇行にはウォーズマンに己のコンピュータを混乱させる効果を、メイには恐怖を覚えさせる効果はあった。
雨蜘蛛はようやく床を抜け出し、ウォーズマンたちに向き直る。
その両手はマントの中に隠され、表情はマスクで読み取れなかった。
朝倉はナイフを取り出して構え、ウォーズマンはベアー・クローを露出させる。
何かと騒いでいたとはいえ、自分達に気づかれずにこの至近まで接近していたのだ、この警戒は当然だろう。
突如現れた手馴れに、朝倉とウォーズマンの緊張が高まる。
だが雨蜘蛛は、落ち着いてマントの片方をたなびかせ、左手に持つ物を露わにする。それは――――。
「お嬢さぁん。若さをアピールするのもいいが、レディは恥じらいをもたんとねぃ。受けとりな! 」
メイド服だった。やおら投げつけ、朝倉の視界を塞ぐ。
朝倉がメイド服を撥ね付ける一瞬の隙、雨蜘蛛は二人の目の前まで移動していた。
咄嗟に攻撃を仕掛けようとしたウォーズマンの機先を制し、雨蜘蛛は落ち着いた口調で言う。
「おっと落ち着いてくださいよウォーズマンさん、私は怪しいものではありません。名前が危険人物なのです」
「な……」
意味不明な言動に戸惑うウォーズマン。
朝倉も、想定外の雨蜘蛛の行動に、攻撃のタイミングを外されていた。
........
その判断ミスが、雨蜘蛛に付け入る隙を与える。
「嘘に決まってんだろ」
雨蜘蛛はゆっくりと右手を出し、何かを放り投げた。
拳大の、円柱状の――――。
(手榴弾!? )
朝倉が自分の迂闊さを脳内で責める前に。
それは、炸裂した。
無比なる光量が、神社を焼く。
反射で目を瞑った朝倉が次に目を開けたとき、そこには既に雨蜘蛛はいなかった。
ロボット超人ならば反射で動きが止まることもあるまい――と、ウォーズマンを見遣る朝倉。
しかしウォーズマンはモニターの焼付けでもおこしたか、蹲って動きを止めていた。
(あれは閃光弾――――!? )
状況を判断しようとした朝倉の視界が揺れ、膝が崩れ落ちる。
数秒遅れてガンガンと耳の中で無秩序な音が暴れ始めた。
どうやら閃光と同時に轟音も発生していたらしく、鼓膜がダメージを受けたらしい。
平衡感覚を奪われ、朝倉は数瞬思考を停止した。
朝倉が回復を待つ間、轟音の影響を受けなかったウォーズマンが立ち上がり、周囲を見渡す。
だが時既に遅し。
雨蜘蛛は逃走を開始し、神社の出口にまで到達していた。
「キサマ……! 」
「お前の母ちゃん流~線~型~」
「ぎゃああああああああああん!!! 」
...........
草壁メイを抱えて。
脱兎のごとく逃げる人さらいに怒りの眼差しを飛ばし、ウォーズマンは朝倉に言伝を残して走り出す。
「朝倉! オレは必ずあの男から草壁メイを取り戻してここに戻る! お前はここで待機していて……グワー!? 」
神社の出口に近づいたウォーズマンが転倒する。
見れば、床が人一人の体重も支えられないほど弱っていた。
踏み外した床の下の地面には更に小規模の穴が空き、ウォーズマンは前方に倒れ込む。
(あの男が床に何か細工を――!? )
落とし穴に嵌まり、床を舐めるような格好になったウォーズマンの目前に、間髪入れずに先程の円柱が投げつけられる。
それも、二個。ウォーズマンが穴から抜け出す前にそれらは炸裂し、瞑ることのできない――瞼のない、彼の目を焼いた。
「グオオオオオオオオオ!!! 」
叫びをあげながら、正義超人としての使命の為、メイを救う為、ウォーズマンは立ち上がった。
ほとんどゼロになった視界に構うこともなく、文字通り闇雲に走り出す。
回復した朝倉が止めようとするのも聞かず、ウォーズマンは森の中に消えていった。
【F-05/神社/一日目・明け方】
【名前】ウォーズマン @キン肉マンシリーズ
【状態】視覚障害
【持ち物】デイパック(支給品一式、不明支給品1~3)
【思考】
1:男を追いかけ、草壁メイを救う。
2:正義超人ウォーズマンとして、一人でも多くの人間守り、悪行超人とそれに類する輩を打倒する。
3:最終的には殺し合いの首謀者たちも打倒、日本に帰りケビンマスク対キン肉万太郎の試合を見届ける。
【備考】
※どちらの方向に進んだかは、後の書き手さんにお任せします。
【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身打撲、大ダメージ、疲労大、気絶、回復中
【持ち物】参加者詳細名簿&基本セット(水損失)
E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン
空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン
【思考】
1 優勝し、別の世界に行く。そのさい、主催者も殺す。
2 安全に休めそうな場所を探して休む。
3 油断なしで全力で全て殺す。
4 ケロン人に会ったら降臨者との関係を問いただす。
5 アルカンフェルが……アルカンフェルがくるよぉ……。
◇
「……がむしゃらに走っていってどうするんだっちゃ」
私は呆れてウォーズマンを見送り、急転直下としか言いようのない事態を整理していた。
メイちゃんがさらわれ、ウォーズマンがそれを追っていった。
自分には後遺症が残るほどのダメージはない。
むしろ、服を入手できたという思わぬ利益があった。メイド服というのがちょっと不満ではあるが。
私はメイド服を拾い上げ、ビキニの上から、角にひっかっかって破けないように慎重に羽織る。
黒レースのスカートまで穿き、身なりを整えてから、ディパックを拾い上げる。
「ま……潮時っちゃね。ウォーズマン……ロボット超人っていうから、もっと冷静だと思ったんだけど……だっちゃ」
私は、ウォーズマン達との同行に見切りを付けた。
危険を冒してまで仲間――メイちゃんを助ける必要が出てきた以上、それに付き合う義理はない。
一人で、涼宮ハルヒを探すことにしよう。
そこまで思い立って、ふと思い出す。そういえば、あの男を忘れていたな。
振り返って見ると、あれほどの騒ぎにも関わらず、ウォーズマンが拾ってきた赤スーツ男はまだ床に突っ伏していた。
よっぽど疲れているのだろうか?
「殺すのは……やめとこっかなっちゃ」
放送の懸念もあるし、もしウォーズマンたちがここに戻ってきたら厄介な事になりかねない。
私はせめて男のディパックを奪おうと、手を伸ばした。
....
がしり、と。
私の手が掴まれる。
「……! 」
無意識のはずだ――男は気を失っている――だが――。
私の手に、更に力が込められる。同時に、這い上がるように私を侵食する殺気。
私は必死で振りほどき、数歩下がって様子を見た。
……男は動かない。やはり、気を失っている。
よほど用心深いか、欲が深いのか。
意識がなくても、自分の不利益になることは、許さない……ということか。
先程の殺気は、人間ではない自分も恐怖を覚えるほどの執念に満ちた物だった。
(この男の顔は……覚えておいた方がいいわね)
最大級の危険人物として男の顔を記憶し、私は神社を出た。
明けはじめた星空を仰ぎ、鬼娘専用変身銃によって付加された二番目の能力――"飛行"を発揮する。
高度は、比較的高い木の頂点には届かない程度だろうか。
速度の方は、なかなか悪くない。走るより少し早いくらいかな?
神社を見下ろしながら、私は地図を見て町のほうに進路を向けた。
……"空飛ぶ鬼メイド"。
今の私を見れば、涼宮さんも凄い勢いで寄ってくるのではなかろうか。
苦笑してから、私はふと考える。
(何故――あのマント男は、メイちゃんをさらったのかしら? )
いわゆるロリコンという奴だろうか。
そうだとしたらメイちゃん、お気の毒である。
............
そうでないとしたら?
何か、メイちゃんにさらわれる理由でもあるだろうか。
彼女に、なにか特別な存在意義があるのか――?
瞬間、私の脳裏に彼女の苗字が思い出される。
草壁。
くさかべタツオ。
草壁サツキ。
草壁メイ。
「成る程……ありえなくも、ないっちゃね」
私は空中で一人頷く。
何故、気付かなかったのだろうか。
彼女とその姉は、このゲームに参加しているものにとっては、大きな意味を持つ存在ではないか。
『主催者と同じ苗字』。
それだけで狙われることも、ありえないことではない。
私も、長門さんの凶行の理由を知る為に、くさかべタツオの情報は知りたいところだ。
知りたいところだ、が。
「ま、今は涼宮さんを探すのが先決だっちゃ」
私はそう結論付け、「機会があったらまた会おうね、メイちゃん」などと嘯いて、空を飛ぶ感覚を楽しんだ。
【F-5 森/一日目・明け方】
【名前】朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】鬼娘、健康
【持ち物】ボウイナイフ、デイパック(支給品一式、鬼娘専用変身銃、不明支給品1~2(ただし武器では無い))
メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱
【思考】
1:涼宮ハルヒの保護(町に向かって捜索)。
2:今のところ誰かに危害を加えるつもりはない。
◇
「フフフフフフフフ……フフフフフフフフフフ……」
「ぎゃあああああ!!!! たすけてぇ!!! だっちゃのねえちゃん! まっくろくろすけーー!! 」
夜の森を。
幼女を小脇に抱えた、マント姿の変態が走っている。
変態、雨蜘蛛は笑いを堪え切れなかった。
危険を冒した甲斐あり、自分達を陥れた草壁タツオの娘――(だろう、多分←願望)を生け捕ることができたのだ。
人質には使えないだろうが、あの男の情報を聞き出すことはできるだろう。
雨蜘蛛とて馬鹿ではない、砂ぼうずとの決戦で勝利した後の事は考えている。
優勝して首輪を外してもらうとして、その後交渉して自分の仕事のお得意さんになってもらうか、始末するか……?
その判断をする為にも、草壁の人となりは知っておきたい。
それを知っていれば、危険エリアに指定される場所なども、あるいは推測できるかもしれない。
ゲームマスターを知ることは、ゲームの攻略にも繋がるのだ。
そして、草壁タツオの情報を聞きだした後は……。
ちらり、とメイの体を見る雨蜘蛛。
未発達の胸。熟れていない肢体。Naturalな花園! 花のない花園!
「FUFUFUFUFUFU! フハ! フハハハハハハハハハハ~~~!!! 」
「うわぎゃーーー!!!!!! 」
「五月病かい!? 」
「うぐぅ! 」
喚くメイに当て身を食らわせ、気絶させる雨蜘蛛。
しきりにウォーズマンが追いついてこないか気にしながら、走り続ける。
人気のないところに向かって、走り続けていた。
【G-5 森/一日目・明け方】
【名前】雨蜘蛛@砂ぼうず
【状態】胸に軽い切り傷 マントやや損傷
【持ち物】S&W M10 ミリタリーポリス@現実
スタングレネード(残弾2)@現実、支給品一式×2
【思考】
1:生き残る為には手段を選ばない。邪魔な参加者は必要に応じて殺す。
2:水野灌太と決着をつけたい。
3:人気のないところで草壁メイから草壁タツオの情報を聞き出す。その後は……。
【備考】
※第二十話「裏と、便」終了後に参戦。(まだ水野灌太が爆発に巻き込まれていない時期)
※雨蜘蛛が着ている砂漠スーツはあくまでも衣装としてです。
索敵機能などは制限されています。詳しい事は次の書き手さんにお任せします。
【名前】草壁メイ@となりのトトロ
【状態】気絶
【持ち物】デイパック(支給品一式) 不明支給品0~2
【思考】
1:たすけてー!
2:おねえちゃんやおばあちゃんやトトロに会いたい。
*時系列順で読む
Back: Next:
*投下順で読む
Back:[[Here we go! go!]] Next:[[上と、下(前編)]]
|[[対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか?]]|ウォーズマン|[[]]|
|[[接触! 怒涛の異文化コミュニケーション!]]|リヒャルト・ギュオー|[[]]|
|[[対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか?]]|朝倉涼子|[[]]|
|[[月夜の森での出会いと別れ]]|雨蜘蛛|[[]]|
|[[対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか?]]|草壁メイ|[[]]|
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*犯罪! 拉致監禁○辱摩訶不思議ADV! ◆2XEqsKa.CM
「ったく~……あちこちでドンパチやってるねぇ……」
未明の森を、男が歩いていた。
男の名は雨蜘蛛、変態である。
その変態ぶりは肩に下げたディパックから覗き見える黒レースのメイド服からも如実に読み取れる。
木々の合間から時折聞こえる強烈な爆音・檄音・破砕音。
ゼクトール達との遭遇後、雨蜘蛛はそれらの音源になるべく遭遇しないように注意して歩を進めていたが、ふと立ち止まった。
進行先に一際激しい轟音と炎を目にしたのだ。
どこぞの阿呆がロケット・ランチャーでも使用したのだろうか?
「こっちもか」
進行方向を変えると同時に、そちらからも爆音。
雨蜘蛛は立ち止まり、ポリポリと頭を掻く。
南東に見える燃え盛って夜空に昇る炎と、南西から聞こえる崖が崩れるような大音量。
「引き返してまたカブト虫とでくわすのも、あっちに進んで政府のメス犬と再開ってのも面倒だねぃ」
自分の歩いてきた方向……北を振り返り、川口夏子達と遭遇した西を見遣って雨蜘蛛は呟く。
コンパスと地図を取り出し、数秒の逡巡の末、東に向き直った。
道も何もない森の中、木々を掻き分けて進む。
一時間ほど歩いただろうか。
深々とした夜の森を進む雨蜘蛛の前に、やがて道が開ける。
整備された舗道。そしてその先には――――。
神社が、あった。
「……人がいるな」
『フェラーーーーッ!!! 』
騒がしい声が、建物の外まで聞こえてくる。
なにやら揉めているようだ。
雨蜘蛛は一瞬躊躇したが、素早く気配を殺して神社に接近し。
スライディングして、神社の軒下に潜り込んだ。
◇
リヒャルト・ギュオーは、息も絶え絶えでフラフラと森の中を彷徨っていた。
目線はおぼつかず、半分這いずるようにゆっくりと移動しているその姿は、自身が持つ壮大な野望とはかけ離れている。
とうとう倒れ、仰向けになって星空を見上げながら、ギュオーは更に息を荒げていく。
(まずい……意識が……)
ギュオーの獣神将としての絶大なパワーは、同時に凄まじく体力を消耗する諸刃の刃でもある。
その上今の彼には不思議な力による制限が掛けられ、全体的に能力が――無論燃費も――弱体化していた。
1、2回の戦闘しかこなしていないとはいえ、彼の体力は既に底を付きかけているのだ。
ギュオーは奮起し、木に持たれかかりながらよたよたと先に進み始める。
このような道のど真ん中で倒れていれば、自分がどうなるかは火を見るより明らかである。
地図に首ったけになりながら慎重に方角を見極めて進むギュオー。
(この……神社に……たどり着かなくては……! )
地図上に書かれた『神社』の二文字。
それだけが、今のギュオーの進行先を決めていた。
牛歩のような速度で歩いているせいか、一向に神社は見えないが。
神社にさえたどり着けば、ある程度は安心して休めるし、外で寝るよりは回復も早まるだろう。
うまく騙せて自分を守らせるのに使える甘い参加者がいれば何よりだ。
地図に偽りがあるかもしれないという疑念を必死に押し殺しながら、ギュオーは進む。
体力はとうに限界を突破し、精神力と野望と勢いだけで。
だが、それにも限界は来る。
(おのれ……この……俺が……こんなところで……)
ギュオーは再び倒れ、もう二度と立ち上がらなかった。
消えかける聴力が、自分に近づく足音を感じる。
目線だけを上げて、最後に、彼が見たものは――――。
「コーホー」
自分を憐れむような眼差しで見つめ、自分を励ますようにカパッ☆とスマイルを浮かべる……黒づくめの、マスク男だった。
【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー 気絶確認】
◇
「わーい、まっくろくろすけが帰ってきたぞー! 」
「ホントだっちゃか!? 」
私は神社の入り口に身を乗り出し……ちょっと引っ込んで、顔だけ出して外を見た。
成る程、メイちゃんの言うとおり突如響いた轟音の原因を調べに行ったまっくろすけ……ウォーズマンが戻ってきている。
神社に上がりこんだウォーズマンに、メイちゃんが抱きつく。
ウォーズマンは苦笑(表情は読めないが、そんな感じの声を出している)しながら、メイちゃんの頭を撫でた。
「まっくろくろすけ! おかえりー! 」
「草壁メイ……子供というのはいいな、朝倉。愛らしく、守ってやりたくなる……そんな存在だ」
「そうだっちゃね」
「嫌われ者のロボット超人だった俺にこんな感情が芽生えるとは……俺がこの位の歳の頃は考えもしなかったな」
「で、どうだったっちゃ? 収穫は……それだけだっちゃか? 」
身の上話を始めそうなウォーズマンを制し、私は偵察の成果を問う。
ウォーズマンは小脇に抱えていた男を下ろし、頷いた。
男はどうやら気を失っているようだ。何かに怯えるような声を上げている。悪夢でも見ているのだろうか?
「アルカ……る……く……」
「先程の轟音と光……向こうの滝の辺りで起きたらしい。彼はその周辺で倒れていた。
私の顔を見る途端、安心したのだろうか気絶した。この血塗れの姿を見る限り、あの轟音に巻き込まれた可能性が高い」
「その赤は……服の色じゃないっちゃか? 」
「おーい、起きろー」
メイちゃんが男の頬をはたき、気付けさせようとするが、男はぐったりとしたままだ。
全身にかなりのダメージを負っているようで、ウォーズマンが手当てに勤しんでいる。
私は首をかしげ、ウォーズマンの手を掴んでそれを止める。
「何をしているっちゃか? 」
「治療だ。 俺は残虐ファイトを信条としているが、同時に正義超人でもある。傷ついた者を放っておくわけには行かない」
「あなたは気付いていると思ったのだけどっちゃ」
この男―――人間ではない。
私の対有機生命体コンタクト用インターフェースとしての勘が、そう告げていた。
初見でこの私を人間でないと見抜いたこのウォーズマンなら、気付いていると思ったが……。
「お前の懸念はわかる。この男はただの人間ではない……あるいは、あの爆音を出した張本人かもしれない」
「だったら、殺しましょうっちゃ? 生かしておいても、危険が増えるだけだと思うっちゃよ? 」
「そういうわけにもいかん。戦う意思がない者に手を出すのは、正義超人としての誇りに悖る」
「そいつが起きたとたんにメイちゃんに襲いかかったらどうするっちゃ? 」
「グ、グムー……そんなことは俺がさせない! 正義超人の名にかけて! 」
「まっくろくろすけがいれば大丈夫だよ! だっちゃねえちゃん! 」
「だっちゃの事は言うなっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」
「で、電撃はやめ……フェラッーーーー!!!」
……何故こんなことになってしまったのだろうか。
あの銃をこの身に受けた結果、制服はどういう原理か消滅し、トラ柄の下着一枚の姿。
それが今の私、朝倉涼子だ。
まさかとは思うが、この状況を長門さんは見ているのかもしれない。
一体私にどうしろというのだ、長門さん。
私が叫びと共に放った電撃を受けて倒れたウォーズマンを見下ろしながら、私は溜息を付いた。
程なくしてウォーズマンが立ち上がる。二度目ともなると、電撃にも耐性が出来るのだろうか。
「と、ともかく、彼が起きれば一体あそこで何が起きたのか聞き出せるかも知れん。悪い予想ばかりしていてはいかん」
「はぁ……まあ、いいっちゃ。ところで、頼んでいた物、見つかったっちゃか? 」
「あいにく、こんな森の中だ。服なんてそう落ちちゃいない」
そう。
今の私にとって最優先するべきものは涼宮ハルヒの保護……だが、その次に来るものがこの恥ずかしい姿を隠す服である。
鬼娘専用変身銃の説明書の裏には「三時間くらいで元に戻るかもなぁ~く~~くっくっく」とか書かれていた。
しかし、制服が消え去った状態から『元に戻る』という表現は見逃せない。
最悪の場合、角が消え、ビキニが消え、全裸の状態になる可能性だってないでもない。
「そう……残念だっちゃ」
「そうだ、この男の着ているタイツみたいな服を拝借するのはどうだ? 女物のようだし……
彼はこの下に何も着ていないみたいだが、脱がせた後あの変身銃で撃てば問題ないだろう」
「何言ってるっちゃ? 何考えてるっちゃ? この中年が素肌に来ていたものを私に着せる?
ウォーズマンさん、乙女心って知ってるっちゃか? 」
「……だって俺はロボット超人だから……」
しょげ込むウォーズマン。
何かかわいそうな気もするが、私に怪しい男の汗が染み付いた服を着る趣味はない。
というかこの中年男の虎柄ビキニ姿を見るのもかなり苦痛だ。
後、この私が「乙女心」を語るのも笑止としか言いようがないような気もする。あるいは悪い冗談か。
しばらくしてウォーズマンは立ち直ったのか、黙々と男の治療を再開した。
数分後。
「……大体の処置は終わったぞ。後は彼が目覚めるのを待つだけだ」
「目覚めないのが望ましいっちゃけどね」
「おーい、起きろー」
「や、やめるんだ草壁メイ! 」
メイちゃんが男の顔を蹴り飛ばす。
ウォーズマンが止めるまでに、4発は入っただろうか。
私はそんなほのぼのした光景を見ながら、この男について考える。危険人物である、という意見は揺るがない。
あの爆音に関わりがあり、ダメージを受けている時点で、ゲームに乗って戦闘を行っていた可能性が高い。
ウォーズマンの考えるように、巻き込まれただけの者である可能性もある。
だが、一つ目の可能性――――ゲームに乗っているかもしれない可能性がある、というだけでも、
殺せるときに殺しておいたほうが、抱え込むリスクは減るのだ。
今の状況なら、ウォーズマンやメイちゃんのスキを覗って私がこの男を殺すことは比較的容易だ。
だが、死者が読み上げられるという放送でこの男の名前が呼ばれることを考えれば、そう迂闊な行動にも出られない。
単に名前だけ上げられるだけならいいが、ゲームを円滑化させるため―――などと言って殺した相手まで発表されれば、
ウォーズマンやメイちゃんだけでなく全参加者に敵視されることは間違いない。
自ら手を汚さずウォーズマンにこの男を殺してもらえていれば、そんな事態に陥っても彼を切り捨てるだけで済むのだが。
「憂鬱だっちゃ……」
「だっちゃねえちゃんのゆーうつ! 」
「黙りなさいっちゃ」
メイちゃんを嗜め、私はウォーズマンに今後の展望を尋ねる。
「で……これから、どうするんだっちゃ? 」
「そうだな……あの滝の事を例に挙げるまでもなく、あちこちで戦闘が行われている事を俺のセンサーが感知している。
このまま放っておけば俺達の知り合いが危機に陥る可能性もあるし、
彼が目覚めて話を聞いたら、ここを出て仲間の捜索を始めるぞ。いいな、朝倉? 」
「ま……それが妥当なとこだっちゃね。とりあえず、服の確保も兼ねて、町のほうから探すっちゃか? 」
「ああ、そうだな。……草壁メイもいる、危険人物に会ってもいいように、今は万全のコンディションを整えるぞ」
ウォーズマンは瞑想するように目を閉じ、精神統一を始めた。
確かに、涼宮ハルヒの保護は急務だ。ウォーズマンのような超人がゴロゴロいるのだ、彼女とて安全とは言いがたい。
それどころか彼女の場合、下手に危機に陥られるといきなり世界は終わりましたおめでとうとか起こりかねないのだ。
本人に危害を加えるのは私だって控えてきたのに、そんなことになっては困る。
長門さんはこの辺、どう考えているのだろうか? ……分からない。まったく、本当に憂鬱だ。
「危険人物、だっちゃか……」
ウォーズマンの言葉を咀嚼し、私はビキニのラインを整えながら考える。
メイちゃんを任せて偵察に行った事からも、ウォーズマンは既にある程度私を信用しているようだが、それは間違いだ。
今は他人に危害を加える気はないが、私は条件が整えばメイちゃんを簡単に殺すだろう。
繰り返すが別に悪意があるわけではない、私がそういう存在だというだけの事なのだ。
涼宮ハルヒの監視が最優先の存在、生物とすら呼べない。長門さんもそうだったはずだ。今は違うのかもしれないが。
私のように、表面は無害を装えるが、腹に一物抱えている者も大勢いるだろう。
いやむしろ人間こそが、そういう生き物のはずなのだ。ウォーズマンみたいなのが特殊……ああ、彼は超人だったか。
そういった者の方が、この状況――バトルロワイヤルでは、怖いといえる。
「分かりやすい、危険人物だよーとか言って出てきてくれるような奴は、いないんだっちゃろうなぁ」
ばごきっ。
「呼ばれて飛び出てJYAJYAJYAJYA~N!!!」
「……」
「どうもぉ~、危険人物だよぅ」
神社の床をぶち抜き、ウォーズマンの物とはまた違った意匠のマスクを付けたマント男が出てきた。
「……」
神社の床をぶち抜き、ウォーズマンの物とはまた違った意匠のマスクを付けたマント男が出てきた。
前略
情報統合思念体様
私、大事な事なので二回言いました―――。
もう一回言っていいですか?
◇
雨蜘蛛が神社の床を破って出てきたそこは、朝倉たちが座り込んでいたところからかなり離れた場所だった。
もし朝倉たちの目と鼻の先に出てきていれば、かなりの衝撃を与える効果があっただろう。
だが、自分で開けた床の穴からなかなか抜け出せず、マントの一部を破きながらのそのそと床に上がってきていては、
朝倉涼子にとっては微妙な脱力感を覚えさせる程度の効果しかなかった。
「な、何者だキサマ! 危険人物だと!? 」
「うわああああああん!!!! 怖いよぉぉおおぉおおぉおおぉお!!!!」
だが、その奇行にはウォーズマンに己のコンピュータを混乱させる効果を、メイには恐怖を覚えさせる効果はあった。
雨蜘蛛はようやく床を抜け出し、ウォーズマンたちに向き直る。
その両手はマントの中に隠され、表情はマスクで読み取れなかった。
朝倉はナイフを取り出して構え、ウォーズマンはベアー・クローを露出させる。
何かと騒いでいたとはいえ、自分達に気づかれずにこの至近まで接近していたのだ、この警戒は当然だろう。
突如現れた手馴れに、朝倉とウォーズマンの緊張が高まる。
だが雨蜘蛛は、落ち着いてマントの片方をたなびかせ、左手に持つ物を露わにする。それは――――。
「お嬢さぁん。若さをアピールするのもいいが、レディは恥じらいをもたんとねぃ。受けとりな! 」
メイド服だった。やおら投げつけ、朝倉の視界を塞ぐ。
朝倉がメイド服を撥ね付ける一瞬の隙、雨蜘蛛は二人の目の前まで移動していた。
咄嗟に攻撃を仕掛けようとしたウォーズマンの機先を制し、雨蜘蛛は落ち着いた口調で言う。
「おっと落ち着いてくださいよウォーズマンさん、私は怪しいものではありません。名前が危険人物なのです」
「な……」
意味不明な言動に戸惑うウォーズマン。
朝倉も、想定外の雨蜘蛛の行動に、攻撃のタイミングを外されていた。
........
その判断ミスが、雨蜘蛛に付け入る隙を与える。
「嘘に決まってんだろ」
雨蜘蛛はゆっくりと右手を出し、何かを放り投げた。
拳大の、円柱状の――――。
(手榴弾!? )
朝倉が自分の迂闊さを脳内で責める前に。
それは、炸裂した。
無比なる光量が、神社を焼く。
反射で目を瞑った朝倉が次に目を開けたとき、そこには既に雨蜘蛛はいなかった。
ロボット超人ならば反射で動きが止まることもあるまい――と、ウォーズマンを見遣る朝倉。
しかしウォーズマンはモニターの焼付けでもおこしたか、蹲って動きを止めていた。
(あれは閃光弾――――!? )
状況を判断しようとした朝倉の視界が揺れ、膝が崩れ落ちる。
数秒遅れてガンガンと耳の中で無秩序な音が暴れ始めた。
どうやら閃光と同時に轟音も発生していたらしく、鼓膜がダメージを受けたらしい。
平衡感覚を奪われ、朝倉は数瞬思考を停止した。
朝倉が回復を待つ間、轟音の影響を受けなかったウォーズマンが立ち上がり、周囲を見渡す。
だが時既に遅し。
雨蜘蛛は逃走を開始し、神社の出口にまで到達していた。
「キサマ……! 」
「お前の母ちゃん流~線~型~」
「ぎゃああああああああああん!!! 」
...........
草壁メイを抱えて。
脱兎のごとく逃げる人さらいに怒りの眼差しを飛ばし、ウォーズマンは朝倉に言伝を残して走り出す。
「朝倉! オレは必ずあの男から草壁メイを取り戻してここに戻る! お前はここで待機していて……グワー!? 」
神社の出口に近づいたウォーズマンが転倒する。
見れば、床が人一人の体重も支えられないほど弱っていた。
踏み外した床の下の地面には更に小規模の穴が空き、ウォーズマンは前方に倒れ込む。
(あの男が床に何か細工を――!? )
落とし穴に嵌まり、床を舐めるような格好になったウォーズマンの目前に、間髪入れずに先程の円柱が投げつけられる。
それも、二個。ウォーズマンが穴から抜け出す前にそれらは炸裂し、瞑ることのできない――瞼のない、彼の目を焼いた。
「グオオオオオオオオオ!!! 」
叫びをあげながら、正義超人としての使命の為、メイを救う為、ウォーズマンは立ち上がった。
ほとんどゼロになった視界に構うこともなく、文字通り闇雲に走り出す。
回復した朝倉が止めようとするのも聞かず、ウォーズマンは森の中に消えていった。
【F-05/神社/一日目・明け方】
【名前】ウォーズマン @キン肉マンシリーズ
【状態】視覚障害
【持ち物】デイパック(支給品一式、不明支給品1~3)
【思考】
1:男を追いかけ、草壁メイを救う。
2:正義超人ウォーズマンとして、一人でも多くの人間守り、悪行超人とそれに類する輩を打倒する。
3:最終的には殺し合いの首謀者たちも打倒、日本に帰りケビンマスク対キン肉万太郎の試合を見届ける。
【備考】
※どちらの方向に進んだかは、後の書き手さんにお任せします。
【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身打撲、大ダメージ、疲労大、気絶、回復中
【持ち物】参加者詳細名簿&基本セット(水損失)
E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン
空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン
【思考】
1 優勝し、別の世界に行く。そのさい、主催者も殺す。
2 安全に休めそうな場所を探して休む。
3 油断なしで全力で全て殺す。
4 ケロン人に会ったら降臨者との関係を問いただす。
5 アルカンフェルが……アルカンフェルがくるよぉ……。
◇
「……がむしゃらに走っていってどうするんだっちゃ」
私は呆れてウォーズマンを見送り、急転直下としか言いようのない事態を整理していた。
メイちゃんがさらわれ、ウォーズマンがそれを追っていった。
自分には後遺症が残るほどのダメージはない。
むしろ、服を入手できたという思わぬ利益があった。メイド服というのがちょっと不満ではあるが。
私はメイド服を拾い上げ、ビキニの上から、角にひっかっかって破けないように慎重に羽織る。
黒レースのスカートまで穿き、身なりを整えてから、ディパックを拾い上げる。
「ま……潮時っちゃね。ウォーズマン……ロボット超人っていうから、もっと冷静だと思ったんだけど……だっちゃ」
私は、ウォーズマン達との同行に見切りを付けた。
危険を冒してまで仲間――メイちゃんを助ける必要が出てきた以上、それに付き合う義理はない。
一人で、涼宮ハルヒを探すことにしよう。
そこまで思い立って、ふと思い出す。そういえば、あの男を忘れていたな。
振り返って見ると、あれほどの騒ぎにも関わらず、ウォーズマンが拾ってきた赤スーツ男はまだ床に突っ伏していた。
よっぽど疲れているのだろうか?
「殺すのは……やめとこっかなっちゃ」
放送の懸念もあるし、もしウォーズマンたちがここに戻ってきたら厄介な事になりかねない。
私はせめて男のディパックを奪おうと、手を伸ばした。
....
がしり、と。
私の手が掴まれる。
「……! 」
無意識のはずだ――男は気を失っている――だが――。
私の手に、更に力が込められる。同時に、這い上がるように私を侵食する殺気。
私は必死で振りほどき、数歩下がって様子を見た。
……男は動かない。やはり、気を失っている。
よほど用心深いか、欲が深いのか。
意識がなくても、自分の不利益になることは、許さない……ということか。
先程の殺気は、人間ではない自分も恐怖を覚えるほどの執念に満ちた物だった。
(この男の顔は……覚えておいた方がいいわね)
最大級の危険人物として男の顔を記憶し、私は神社を出た。
明けはじめた星空を仰ぎ、鬼娘専用変身銃によって付加された二番目の能力――"飛行"を発揮する。
高度は、比較的高い木の頂点には届かない程度だろうか。
速度の方は、なかなか悪くない。走るより少し早いくらいかな?
神社を見下ろしながら、私は地図を見て町のほうに進路を向けた。
……"空飛ぶ鬼メイド"。
今の私を見れば、涼宮さんも凄い勢いで寄ってくるのではなかろうか。
苦笑してから、私はふと考える。
(何故――あのマント男は、メイちゃんをさらったのかしら? )
いわゆるロリコンという奴だろうか。
そうだとしたらメイちゃん、お気の毒である。
............
そうでないとしたら?
何か、メイちゃんにさらわれる理由でもあるだろうか。
彼女に、なにか特別な存在意義があるのか――?
瞬間、私の脳裏に彼女の苗字が思い出される。
草壁。
くさかべタツオ。
草壁サツキ。
草壁メイ。
「成る程……ありえなくも、ないっちゃね」
私は空中で一人頷く。
何故、気付かなかったのだろうか。
彼女とその姉は、このゲームに参加しているものにとっては、大きな意味を持つ存在ではないか。
『主催者と同じ苗字』。
それだけで狙われることも、ありえないことではない。
私も、長門さんの凶行の理由を知る為に、くさかべタツオの情報は知りたいところだ。
知りたいところだ、が。
「ま、今は涼宮さんを探すのが先決だっちゃ」
私はそう結論付け、「機会があったらまた会おうね、メイちゃん」などと嘯いて、空を飛ぶ感覚を楽しんだ。
【F-5 森/一日目・明け方】
【名前】朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】鬼娘、健康
【持ち物】ボウイナイフ、デイパック(支給品一式、鬼娘専用変身銃、不明支給品1~2(ただし武器では無い))
メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱
【思考】
1:涼宮ハルヒの保護(町に向かって捜索)。
2:今のところ誰かに危害を加えるつもりはない。
◇
「フフフフフフフフ……フフフフフフフフフフ……」
「ぎゃあああああ!!!! たすけてぇ!!! だっちゃのねえちゃん! まっくろくろすけーー!! 」
夜の森を。
幼女を小脇に抱えた、マント姿の変態が走っている。
変態、雨蜘蛛は笑いを堪え切れなかった。
危険を冒した甲斐あり、自分達を陥れた草壁タツオの娘――(だろう、多分←願望)を生け捕ることができたのだ。
人質には使えないだろうが、あの男の情報を聞き出すことはできるだろう。
雨蜘蛛とて馬鹿ではない、砂ぼうずとの決戦で勝利した後の事は考えている。
優勝して首輪を外してもらうとして、その後交渉して自分の仕事のお得意さんになってもらうか、始末するか……?
その判断をする為にも、草壁の人となりは知っておきたい。
それを知っていれば、危険エリアに指定される場所なども、あるいは推測できるかもしれない。
ゲームマスターを知ることは、ゲームの攻略にも繋がるのだ。
そして、草壁タツオの情報を聞きだした後は……。
ちらり、とメイの体を見る雨蜘蛛。
未発達の胸。熟れていない肢体。Naturalな花園! 花のない花園!
「FUFUFUFUFUFU! フハ! フハハハハハハハハハハ~~~!!! 」
「うわぎゃーーー!!!!!! 」
「五月病かい!? 」
「うぐぅ! 」
喚くメイに当て身を食らわせ、気絶させる雨蜘蛛。
しきりにウォーズマンが追いついてこないか気にしながら、走り続ける。
人気のないところに向かって、走り続けていた。
【G-5 森/一日目・明け方】
【名前】雨蜘蛛@砂ぼうず
【状態】胸に軽い切り傷 マントやや損傷
【持ち物】S&W M10 ミリタリーポリス@現実
スタングレネード(残弾2)@現実、支給品一式×2
【思考】
1:生き残る為には手段を選ばない。邪魔な参加者は必要に応じて殺す。
2:水野灌太と決着をつけたい。
3:人気のないところで草壁メイから草壁タツオの情報を聞き出す。その後は……。
【備考】
※第二十話「裏と、便」終了後に参戦。(まだ水野灌太が爆発に巻き込まれていない時期)
※雨蜘蛛が着ている砂漠スーツはあくまでも衣装としてです。
索敵機能などは制限されています。詳しい事は次の書き手さんにお任せします。
【名前】草壁メイ@となりのトトロ
【状態】気絶
【持ち物】デイパック(支給品一式) 不明支給品0~2
【思考】
1:たすけてー!
2:おねえちゃんやおばあちゃんやトトロに会いたい。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|[[対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか?]]|ウォーズマン|[[]]|
|[[接触! 怒涛の異文化コミュニケーション!]]|リヒャルト・ギュオー|[[]]|
|[[対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか?]]|朝倉涼子|[[]]|
|[[月夜の森での出会いと別れ]]|雨蜘蛛|[[]]|
|[[対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか?]]|草壁メイ|[[]]|
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