夢で会いましょう - (2008/10/16 (木) 20:33:33) の1つ前との変更点
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**夢で会いましょう ◆mk2mfhdVi2
気がつけば、拙者はよくよく見慣れた場所にいた。
隊長殿の手によって改装された、住み慣れた和室。
目の前には作り立ての朝食が置かれ、焼き魚の香りが鼻をくすぐっている。
そして膳を挟んで向かい側には――
「どしたのドロロ?御飯が冷めちゃうよ?」
地球へ来て間もない頃、罠に引っ掛かっていた拙者を助けてくれ、
その後共に忍の修行に励んだ少女――東谷小雪が、いつもと変わらぬ顔で微笑んでいた。
「――何でもないでござる、小雪殿。少々奇怪な夢を見ていただけでござるよ」
「あはは、それは災難だったねー」
「笑い事では無いでござる!……あのような夢はもう二度と見たくないでござる」
「ご、ごめんごめん」
夢の中の出来事を話した途端、茶碗片手に大笑いする小雪殿。
まあ、この様な荒唐無稽な夢を話せば、それが普通の反応であろう。
夢。
本当に、夢でよかった。
こうして小雪殿と再び笑い合えるのも、あれが夢だったからこそ。
夢ならば、いずれ忘れることができる。
「ねえねえドロロ、夢にはどんな人が出てきたの?強い人とかいた?」
一足早く食事を終えた小雪殿が訊いてくる。
ふむ……強い人、でござるか。
「リヒャルト・ギュオーなる男に襲われたのでござるが……恐ろしい相手でござった」
まるで悪魔のような姿をしたあの男は、リナ殿の魔法、拙者の術をもってしても倒せなかった。
あのまま戦っていたら、恐らくリナ殿共々殺されていたであろう。それほどまでに、あの男は強大であった。
「…………?」
と、そこまで話したところで、小雪殿の様子がおかしいことに気がつく。
まるで、母親が赤ちゃんに向かって『いないいないばあ』をする時のように、両手で顔を隠している小雪殿。
「ど、どうしたでござるか……?」
「ねえドロロ、そのギュオーって人は――」
いないいない、
「――こんな顔かい?」
ばあ。
顔から手を退けた、本来小雪殿の笑顔が広がっているはずのそこには、
リヒャルト・ギュオーの首が、首だけをそっくり入れ換えたかのように、小雪殿の体の上に乗っていた。
「さて……今度こそ、地獄へ送ってやろう、暗殺兵」
「うわあああああああああっ!!」
G-02エリア・温泉にて。
盛大に悲鳴を上げて、包帯で全身を包んだドロロがロビーのソファーから起き上がった。
すぐ隣に座って、悪夢にうなされるドロロを見守っていたリナが目を丸くする。
(うわー、よっぽど怖い夢でも見たんだねこりゃ。起こしてあげればよかった)
リナが見つめる中しばらく膝を抱えて震えていたドロロだったが、視界の隅にリナを捉えると、
ようやくショックが引いてきたのか深く息を吐いた。
「もう大丈夫?ほれ、深呼吸深呼吸」
「か、かたじけない……それより、ここは何処でござる?」
ドロロの質問に、リナはあらかじめ広げておいた地図の、ある一点を指し示す。
そこに書かれた文字は、G-02エリア、温泉。
「温……泉?」
「そ。あれから結構大変だったんだから」
リナは、数時間気絶していたドロロに、その間の出来事を説明し始める。
ギュオーとの戦闘の後、川を流され続けた二人は、運よく河原に流れついた。
その後、意識を取り戻したリナが近くにあったこの温泉へドロロを運び、なんとか治療した。
「以上わずか二行!で、ドロロくん、何か質問は?」
「拙者の治療に使った包帯はどうしたのでござるか?リナ殿も拙者も医療品の持ち合わせは無かったハズでござるが」
その質問に、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、勢いよくリナが答える。
「じゃん!何でしょう、コレ!」
「……浴衣でござるな」
「正解、そいでこの支給品のハサミでチョキチョキっとね」
リナの持つ鋏が浴衣を切り裂いていき、数分後には、立派な包帯が出来上がる。
「どう?そうそう、浴衣もタオルも脱衣所に山程あったから、この魔法のディパックにありったけ入れてみたから」
そう言って、リナはディパックをぽんぽんと叩く。
ドロロは、ksk温泉とロゴの入った浴衣の成れの果てを見つめつつ、主催者の妙なサービス精神に一人感謝した。
「それでドロロくん、病み上がりのとこ悪いけどちょっとばかし見張り頼んでいい?」
「別に構わないでござるが、どうしたのでござるか?」
ドロロの言葉に、リナは黙ってロビーの壁に貼ってあるチラシを指差し、ドロロに読むよう告げる。
「……『この湯につかれば すべすべお肌 完全24時間営業』?」
「そんなわけだから入ってくるね!」
「どんなわけでござるか!?」
「いや、お肌すべすべと言われちゃ入らざるをえないでしょ。それに、体を休めればこの疲労感も消える気がするし」
「ム……まあ承知したでござる。ただ、放送の時刻までには出てきてほしいでござるよ」
壁にかかった時計の短針は、既に五を回り、六に近づいている。
第一回の放送まで、あと三十分も無いだろう。
「了解!じゃ、また後でね。忠告しとくけど、覗いたりしたら死なない程度に重破斬の刑だから!」
言うが早いか、暖簾をくぐって脱衣所へと飛込んでいく。
その後ろ姿を見ながら、ドロロは一人満足そうに微笑んだ。
『貴様、他人を救うより……殺す方が、向いてるんじゃあないか?』
ふと、数時間前のギュオーの言葉を思い出す。
「何とでも言えばいいでござるよ。実際に、拙者の刃は人を傷つける物。否定はしないでござる。
しかし、拙者の刃でも守れる命はある。
大切なのは、拙者が何に向いているかでは無く、拙者が何をするか、でござる」
そう吐き捨て、ドロロはソファーで座禅を組む。
(――放送開始まであと二十分程。今はただ、誰の名も呼ばれぬ事を祈るのみでござる)
殺し合いの最中としては、あまりに甘い考えだとは理解しつつも、暗殺兵はどうしてもそれを祈らずにはいられなかった。
【G-2 温泉/一日目・放送直前】
【名前】 ドロロ兵長@ケロロ軍曹
【状態】 軽い火傷、疲労大、左眼球損傷、腹部鈍痛(全身包帯)
【装備】
【持ち物】匕首@現実世界、魚(大量)、デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:殺し合いを止める。
2:冬樹含む一般人の保護。
3:ケロロ小隊と合流。
【リナ=インバース@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】 精神疲労極大、疲労大
【装備】
【持ち物】ハサミ@涼宮ハルヒの憂鬱、パイプ椅子@キン肉マン、浴衣五十着、タオル百枚、デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:極楽極楽。
2:殺し合いには乗らない。
【備考】
温泉で、精神疲労がどの程度回復するかは、次回以降の書き手さんにおまかせします。
無くなったタオルと浴衣の補充に、主催者が何かするかもしれません
【ハサミ@涼宮ハルヒの憂鬱】
ハサミです。それ以上でもそれ以下でもありません。
キョンの妹がキョンから借りた物です。
**時系列順で読む
Back:[[白く還りし刻]] Next:[[悪魔将軍は動かない~エピソード3 廃屋~]]
**投下順で読む
Back:[[死闘の果てに…]] Next:[[白く還りし刻]]
|[[接触! 怒涛の異文化コミュニケーション!]]|ドロロ兵長||
|[[接触! 怒涛の異文化コミュニケーション!]]|リナ=インバース||
**夢で会いましょう ◆mk2mfhdVi2
気がつけば、拙者はよくよく見慣れた場所にいた。
隊長殿の手によって改装された、住み慣れた和室。
目の前には作り立ての朝食が置かれ、焼き魚の香りが鼻をくすぐっている。
そして膳を挟んで向かい側には――
「どしたのドロロ?御飯が冷めちゃうよ?」
地球へ来て間もない頃、罠に引っ掛かっていた拙者を助けてくれ、
その後共に忍の修行に励んだ少女――東谷小雪が、いつもと変わらぬ顔で微笑んでいた。
「――何でもないでござる、小雪殿。少々奇怪な夢を見ていただけでござるよ」
「あはは、それは災難だったねー」
「笑い事では無いでござる!……あのような夢はもう二度と見たくないでござる」
「ご、ごめんごめん」
夢の中の出来事を話した途端、茶碗片手に大笑いする小雪殿。
まあ、この様な荒唐無稽な夢を話せば、それが普通の反応であろう。
夢。
本当に、夢でよかった。
こうして小雪殿と再び笑い合えるのも、あれが夢だったからこそ。
夢ならば、いずれ忘れることができる。
「ねえねえドロロ、夢にはどんな人が出てきたの?強い人とかいた?」
一足早く食事を終えた小雪殿が訊いてくる。
ふむ……強い人、でござるか。
「リヒャルト・ギュオーなる男に襲われたのでござるが……恐ろしい相手でござった」
まるで悪魔のような姿をしたあの男は、リナ殿の魔法、拙者の術をもってしても倒せなかった。
あのまま戦っていたら、恐らくリナ殿共々殺されていたであろう。それほどまでに、あの男は強大であった。
「…………?」
と、そこまで話したところで、小雪殿の様子がおかしいことに気がつく。
まるで、母親が赤ちゃんに向かって『いないいないばあ』をする時のように、両手で顔を隠している小雪殿。
「ど、どうしたでござるか……?」
「ねえドロロ、そのギュオーって人は――」
いないいない、
「――こんな顔かい?」
ばあ。
顔から手を退けた、本来小雪殿の笑顔が広がっているはずのそこには、
リヒャルト・ギュオーの首が、首だけをそっくり入れ換えたかのように、小雪殿の体の上に乗っていた。
「さて……今度こそ、地獄へ送ってやろう、暗殺兵」
「うわあああああああああっ!!」
G-02エリア・温泉にて。
盛大に悲鳴を上げて、包帯で全身を包んだドロロがロビーのソファーから起き上がった。
すぐ隣に座って、悪夢にうなされるドロロを見守っていたリナが目を丸くする。
(うわー、よっぽど怖い夢でも見たんだねこりゃ。起こしてあげればよかった)
リナが見つめる中しばらく膝を抱えて震えていたドロロだったが、視界の隅にリナを捉えると、
ようやくショックが引いてきたのか深く息を吐いた。
「もう大丈夫?ほれ、深呼吸深呼吸」
「か、かたじけない……それより、ここは何処でござる?」
ドロロの質問に、リナはあらかじめ広げておいた地図の、ある一点を指し示す。
そこに書かれた文字は、G-02エリア、温泉。
「温……泉?」
「そ。あれから結構大変だったんだから」
リナは、数時間気絶していたドロロに、その間の出来事を説明し始める。
ギュオーとの戦闘の後、川を流され続けた二人は、運よく河原に流れついた。
その後、意識を取り戻したリナが近くにあったこの温泉へドロロを運び、なんとか治療した。
「以上わずか二行!で、ドロロくん、何か質問は?」
「拙者の治療に使った包帯はどうしたのでござるか?リナ殿も拙者も医療品の持ち合わせは無かったハズでござるが」
その質問に、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、勢いよくリナが答える。
「じゃん!何でしょう、コレ!」
「……浴衣でござるな」
「正解、そいでこの支給品のハサミでチョキチョキっとね」
リナの持つ鋏が浴衣を切り裂いていき、数分後には、立派な包帯が出来上がる。
「どう?そうそう、浴衣もタオルも脱衣所に山程あったから、この魔法のディパックにありったけ入れてみたから」
そう言って、リナはディパックをぽんぽんと叩く。
ドロロは、ksk温泉とロゴの入った浴衣の成れの果てを見つめつつ、主催者の妙なサービス精神に一人感謝した。
「それでドロロくん、病み上がりのとこ悪いけどちょっとばかし見張り頼んでいい?」
「別に構わないでござるが、どうしたのでござるか?」
ドロロの言葉に、リナは黙ってロビーの壁に貼ってあるチラシを指差し、ドロロに読むよう告げる。
「……『この湯につかれば すべすべお肌 完全24時間営業』?」
「そんなわけだから入ってくるね!」
「どんなわけでござるか!?」
「いや、お肌すべすべと言われちゃ入らざるをえないでしょ。それに、体を休めればこの疲労感も消える気がするし」
「ム……まあ承知したでござる。ただ、放送の時刻までには出てきてほしいでござるよ」
壁にかかった時計の短針は、既に五を回り、六に近づいている。
第一回の放送まで、あと三十分も無いだろう。
「了解!じゃ、また後でね。忠告しとくけど、覗いたりしたら死なない程度に重破斬の刑だから!」
言うが早いか、暖簾をくぐって脱衣所へと飛込んでいく。
その後ろ姿を見ながら、ドロロは一人満足そうに微笑んだ。
『貴様、他人を救うより……殺す方が、向いてるんじゃあないか?』
ふと、数時間前のギュオーの言葉を思い出す。
「何とでも言えばいいでござるよ。実際に、拙者の刃は人を傷つける物。否定はしないでござる。
しかし、拙者の刃でも守れる命はある。
大切なのは、拙者が何に向いているかでは無く、拙者が何をするか、でござる」
そう吐き捨て、ドロロはソファーで座禅を組む。
(――放送開始まであと二十分程。今はただ、誰の名も呼ばれぬ事を祈るのみでござる)
殺し合いの最中としては、あまりに甘い考えだとは理解しつつも、暗殺兵はどうしてもそれを祈らずにはいられなかった。
【G-2 温泉/一日目・放送直前】
【名前】 ドロロ兵長@ケロロ軍曹
【状態】 軽い火傷、疲労大、左眼球損傷、腹部鈍痛(全身包帯)
【装備】
【持ち物】匕首@現実世界、魚(大量)、デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:殺し合いを止める。
2:冬樹含む一般人の保護。
3:ケロロ小隊と合流。
【リナ=インバース@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】 精神疲労極大、疲労大
【装備】
【持ち物】ハサミ@涼宮ハルヒの憂鬱、パイプ椅子@キン肉マン、浴衣五十着、タオル百枚、デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:極楽極楽。
2:殺し合いには乗らない。
【備考】
温泉で、精神疲労がどの程度回復するかは、次回以降の書き手さんにおまかせします。
無くなったタオルと浴衣の補充に、主催者が何かするかもしれません
【ハサミ@涼宮ハルヒの憂鬱】
ハサミです。それ以上でもそれ以下でもありません。
キョンの妹がキョンから借りた物です。
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