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  • 彼等彼女等の行動(05~07)

彼等彼女等の行動(05~07)

最終更新:2009年08月31日 18:09

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彼等彼女等の行動 (05~07) ◆qYuVhwC7l.



【05.反逆者の疑問】

(今度は上手くいったわね…)

大泣きもひと段落し、少しずつしゃっくりの声も小さくなってきたヴィヴィオを優しく宥めてやりながら、朝倉涼子は嘆息した。
思い出すのは、つい数時間前に学校で起きたひと騒動だ。
ゲンキの死から立ち直れないキョンの妹を相手に、どうにか彼女を叱咤激励しようとしたが結果は惨敗。むしろ、復讐への道を後押ししてしまった感も無くもない。
そんな過去のトラウマも、自分の腕の中で段々と落ち着きを取り戻していくヴィヴィオの姿を見ていれば癒されそうだった。
ふと、ここでこの少女が精神の安定を取り戻した事に安心している自分がいる事に気づき、驚く。
どうもこの殺し合いの場へと飛ばされてから、自分の内面の調子に違和感がある気がする。
と言ってもこのノイズ事態は不快なものではないので、特に問題視もしてはいないが。

「……ぐすっ……涼子おねえちゃん……」

自分の胸にしがみついたままで、ヴィヴィオが朝倉の顔を見上げる。
涙や鼻水を強引にごしごしと拭った後とは言え、可愛らしい顔を至近距離で見つめられて悪い気はしない。自然と朝倉の顔に微笑みが浮かぶ。

「どうしたの?」
「ううん…ただ…ありがとうって言いたかったの……」

恥ずかしそうにわずかに目をそらしながらつぶやくヴィヴィオ。
その健気さやいじらしさに心がどんどん癒されるのを感じながら、朝倉は「どういたしまして」と答えようとして、

「………ねぇ…なんでおねえちゃんは、ヴィヴィオの事こんなに助けてくれるの?」

少女の何気ない質問に硬直した。

本当に、ただ気になったから聞いてみただけなのだろう。ヴィヴィオの顔からは純粋な好奇心や疑問しか浮かんでいない。

だが、この質問は朝倉にとって非常に衝撃的だった。

―――どうして、私はここで初めて出会ったばかりの子供をここまで助けようとしている?

今まで行動してきて考えもしなかった疑問が、朝倉の中でむくむくと膨らんでいく。

※

朝倉涼子は、情報統合思念体の急進派によって生み出され、主流派に属する長門有希のバックアップとして涼宮ハルヒの通う北高へと派遣された。
感情表現に乏しく、口数も少ない長門に反して、朝倉は物腰も柔らかく人好きのする性格である。だが、彼女の本質はそうではない。

『死ぬのって怖い? 殺されるのは嫌? 私には、有機生命体の死の概念が良く分からないのだけど』

かつて、涼宮ハルヒの反応を見るためにキョンを襲った時、朝倉は不思議そうにこう尋ねた。
生物の『死』を理解できない朝倉は、他人の生き死に対して非常に鈍感であり、ドライな反応を返している。
自分自身の死ですらも笑顔で受け入れるほど、彼女の死生観は希薄な物であった。
そして他人の死生に鈍感であるという事は、他人に関する無関心さの表れとも言える。
それはこの『殺し合い』に呼び出された時も変わる様子を見せなかった。
この会場でのルールは『殺し合い』、その事実を純粋に当たり前に受け止めた。
まるで息をするように、特別な感情を抱くこともなく、最初にこの会場で出会った草壁メイという少女をナイフで手に掛けようとした。
それがルールだから、と。
その後、どうにか彼女やウォーズマンと友好関係を築けたが、草壁メイが謎の変態マスクマンに拉致され命の危機に陥った時は、
ウォーズマンに後を任せて早々と彼らに見切りを付けた。
これ以上は自分の身に危険が及ぶ、と。

そんな朝倉に、少しずつノイズが入り始めたのはいつ頃からだっただろうか。

最も印象に残っているのは、第一回の放送直後。
涼宮ハルヒの死というイレギュラーを知った朝倉は、今回の一件を長門有希の暴走であると仮定し、事態の打倒を志した。
なぜならば長門の暴走を止める事が、彼女と同じく情報統合思念体が作り出したヒューマノイドインターフェースとして必要な事だと判断したからだ。
ここまでの事に筋は通っている。だが、たった一つだけ疑問が残った。

『――バックアップを舐めるな、根暗娘』

なぜ、あの時の自分はあそこまで怒りを露わにしたのか?

朝倉涼子は、長門有希のバックアップとしてこの世に生を受けた。バックアップとして長門有希の補佐に回るのが朝倉涼子の最大の存在理由でもある。
だが、だからと言って朝倉はそれに盲目的に従う事を良しとしなかった。涼宮ハルヒの出方を見るために、独断専行でキョンを殺そうとしたのもその現れである。
だからこそ、暴走している長門に対して、まるで彼女に仕える召使か何かのようにただ黙々と言う事を聞け、と言われているような現状に対して強い怒りを現した…
いや、それだけでは無いか。
あの時、重要な観察対象であった涼宮ハルヒの死を知り、初めて朝倉は死という物に強い嫌悪感を覚えたのだ。
柄にもなく手酷い暴言を吐き捨てる程に。
ここで初めて、朝倉は『死とは忌むべき物である』という、生物が持つ最も根源的な思考――――の片鱗に近づくことが出来たのだろう。

『私には有機生命体の死がよく理解できない』。

ほんの一~二時間前にも、妹のために死地へ向かおうとするヴィヴィオに告げた言葉だ。だがもしかしたら、実際は…?

この島には、『死』が溢れている。ここで過ごす時間が長くなれば長くなるほど、『死』に触れる機会は増えていく。『死』が、身近に迫ってくる。

第一回の放送が終わり、移動した先の学校にてキン肉スグルと初遭遇した時。
かの涼宮ハルヒの死体を、キン肉スグルが抱えていたのを見た瞬間、涼宮ハルヒを殺したのかもしれないこの男を抹殺してやろうとすら思った。
その場は、実際にそうであるという確証がない為に踏みとどまったが、その際に自分の中にそんな激情があった事に驚いたのを覚えている。
思えば、この時朝倉涼子は生まれて初めて死に付随する強い怒りという物をこの身で体験したのでは無いだろうか。

そしてまた、目の前にいる少女、ヴィヴィオと初めて接触したのも、この時だった。
ヴィヴィオとは、学校での接触から10時間以上の間共に行動している。それは何故かと聞かれたとしても、ただ成り行きで、意図せず自然とそうなった、としか言いようがない。
だがそれでも、朝倉はこのヴィヴィオという少女に好感を持っているのもまた事実だ。
素直で、健気で、人懐っこい。それでいて頑張り屋な面もあり、顔も仕草も可愛らしいとなれば、その評価も当たり前か。
自分にも懐いてくれた様子のヴィヴィオに荒んだ心が癒された経験も、一度や二度ではない。

だから、自分はこのヴィヴィオという、出会ったばかりの少女に気を掛けているのだろうか。

『私は朝倉涼子! ヴィヴィオちゃんの事は必ず守るわなのはさん!』
『必ずもう一度ママに会わせてあげるわ! だから行くわよヴィヴィオッ!』

先の市街地戦にて、荒れ狂う謎の攻撃と炎の中でヴィヴィオ達を助けながら叫んだ台詞を思い出す。
あの時、朝倉は妹と共に障壁を張り、突然の爆発からヴィヴィオを身を呈して庇ったのだ。
草壁メイの時は、自分の身に危険が及びそうと見ればすぐに見捨てる事が出来ていたというのに。

自分の観察対象を殺した長門への強い怒りを覚え、『死』に対して特別な感情を抱いたあの時をきっかけに、朝倉は徐々に―――――「涼子お姉ちゃん?」

※

ヴィヴィオの不安そうな声を聞いた瞬間、朝倉は深い思考の海から浮かび上がった。
改めて腕の中の少女の顔を見てみれば、酷く心配そうに自分を見上げている。

「涼子お姉ちゃん、難しい顔してた…わたし、悪いこと聞いちゃったの?」

罪悪感に溢れた表情でそんな事を言われて、逆に朝倉の胸が罪悪感でチクリと傷んだ。
慌てて彼女を安心させるために笑顔を作りながら、優しくその頭を撫でてみせる。

「気にしないで、別にヴィヴィオちゃんの所為じゃないわ。……大分時間も経っちゃったし、そろそろ戻りましょう?ドロロさん達も待ってるだろうし」

ひとまず気をそらすために、別の話題を振ってみせる。
しかし、大分長い時間退室してしまったのも事実だ。そろそろ戻る頃合いと見ても間違いは無いだろう。

「ドロロ…さん? …そうだ…私…妹さんを追いかけて…そこで、キョンさん…に似た人を見かけて…頭が真っ白になっちゃって………えーっと…?」

朝倉の言葉を聞き、ここにきて初めてヴィヴィオは現状がどうなっているのかという疑問にぶち当たったらしい。
うーんうーんと唸りながら難しい顔で首をかしげている姿は微笑ましいが、いつまでも放置しておく訳にも行かない。

「あの後何があったのかについては、おいおい話していくわ。ひとまずは行きましょう?」

微笑みながらそう言って、ヴィヴィオの手を握った時だった。

「あ……涼子お姉ちゃん!」

ヴィヴィオがハッとしたように朝倉の名を呼ぶ。彼女に握られた手も、同時に強く握り返された。

「なぁに? どうかしたの?」

ヴィヴィオの行動に全く心当たりの無い朝倉が、不思議そうな顔でそれを聞き返す。
対するヴィヴィオは、しばらくもじもじと視線を泳がせた後に、朝倉の目をまっすぐ見上げながらこう言った。

「えっと……その……ヴィヴィオは、涼子お姉ちゃんのこと信じてるから! だから、えっと…心配しないでください!」

太陽のような笑顔を浮かべながらの、純真で真っ直ぐな言葉。幼いゆえに単純ながらも、だからこそそこに込められた気持ちはストレートに朝倉の中へと届く。
不思議な感覚が胸に広がっていくのを、朝倉はゆっくりと感じていた。

「……ええ。ありがとう、ヴィヴィオちゃん」

朝倉は今までそのほとんどの時間を笑顔で過ごしてきた。
なぜならば、笑顔である事により円滑に他の有機生命体とコミュニケーションが取れる事を知っていたからだ。
自分自身の情報連結が解除され、その命が消える瞬間になってもなお笑顔を浮かべるほどに、彼女と笑顔とは切り離せない関係にある。

だが、朝倉涼子はこの時、生まれて初めて『笑顔』になれたのかもしれない。

※

「……あ、そうだ」

微笑ましく、心温まる笑顔の数分後。手を繋ぎながらドロロとリナの待つスタッフルームへと向かっていた朝倉は、突然立ち止まるとこうつぶやいた。

「ふぇ…? どうしたのお姉ちゃん?」
「うん、ちょっと思いついた事があってね…」

ヴィヴィオの疑問の声に答えた後で、朝倉は微笑みながらヴィヴィオに顔を近づける。

「ねぇヴィヴィオちゃん。ちょっと、私と寄り道しちゃいましょうか?」
「寄り……道?」

楽しそうな笑みを浮かべながらの朝倉の一言に、ヴィヴィオは可愛らしく小首を傾げた。


【06.強殖殖装体の激情】

『学習室』と銘打たれた、博物館の一室。
先の放送を期に始まった、酷く重苦しい雰囲気は未だにこの部屋の中を覆っていた。
その中心にいるのは目玉のモンスター、スエゾー。
つい先ほどまで大声を上げながら泣いていた彼は、今はもう涙も流しきった様子でただ俯いているのみだ。
ただ、彼の足もとにいる小トトロだけがチラチラと彼の顔を心配そうに見上げている。
彼とそれなりに長いあいだ交流してきた晶も、未だに掛けてやれる言葉が思いつかないままで、苦しそうに押し黙っている。
停滞しきった空気を強引に打破したのは、やはり雨蜘蛛だった。

「おーい、いつまで黄昏てるつもりだぁ? そのまんまず~っと1時間なんもせずにボーっとしてる気かよお前ぇらは?」
「……っ…そんな言い方は無いんじゃないですか、雨蜘蛛さん!」

スエゾーに対する思いやりの気持ちなど欠片もない、ただただ面倒臭くだるそうなその声を聞いて、晶は強い口調で雨蜘蛛を咎める。
しかし、対する雨蜘蛛は大して悪く思う素振りもなく、冗談めかして「おお、怖い怖い」と肩を竦めるだけだった。
余りにもあんまりなその態度に、思わず席を立ち雨蜘蛛に喰ってかかろうとする晶。

「……いや、ええ。確かに悪いのはいつまでもへこみ切ってる俺の方やからな。すまんな、晶、雨蜘蛛」

中腰を挙げた姿勢のままで晶の動きが止まる。顔をスエゾーの方へと向けてみれば、本当にすまなそうな顔をした目玉と視線がかちあった。
だが、やはりその表情には色濃い精神的疲労が見え隠れしている。

「スエゾー…大丈夫なのか?」
「ったく、そんな所までは俺は面倒見切れねぇ~ってんだよ」

心配そうにスエゾーに声をかける晶と、心底迷惑そうに零す雨蜘蛛。
二人の様子をゆっくりと見比べた後で、スエゾーは天井を見上げて呟いた。

「大丈夫、か………いや…たぶん、大丈夫じゃあらへんなぁ、俺は…」
「スエゾー……! 辛いんなら言ってくれ、お前はそれぐらいのワガママを言う権利はあるんだ! 俺達に出来る事なら、なんだって言ってくれていいんだぞ!」
「ってぇおい! 勝手に俺も含めんじゃねぇよ! 先言っとくが、俺はこいつの為になんかしてやる気は砂漠の砂粒一つっぽっちもねぇんだぜぇ!?」
「雨蜘蛛さんは少し黙っていてください!!」
「いや、ええんや晶……これは俺一人の問題なんやからな。雨蜘蛛もそれでええ。俺は、俺のしたい事をやるだけや」

自分の事で言い争いを始めかねない二人を、スエゾーは天井に目を向けたまま、静かな口調で押しとどめる。

「スエゾー…?」

晶は、スエゾーの奇妙な言い方に違和感を覚えた。スエゾーが、したい事?
疑問の声をあげて自分を見つめている晶に、スエゾーがゆっくりと顔を合わせる。
彼は、少しさびしそうな、すまなそうな、悲しい笑顔をしていた。

「悪いなぁ、晶……俺はもう、ここまでみたいやわ…」
「………ここまでって…どういう事だ……?」

スエゾーの言葉を理解しきれない晶が、呆然としながら聞き返す。
いや、頭では漠然と予想をしていた。だがそれは、余りにも哀しく辛すぎる予想だ。だからこそ晶は、その予想に目をつぶり、見えないフリをした。
しかし、傍らにいる地獄の取立人にとってはそんな葛藤など無意味な物だった。

「なんでぇスエゾー、お前、仲間の死を悲しんで自殺でもするってぇーのかぁ? ま、俺は止めねぇがなぁ~ライバルが減るんならそれに越した事はねぇ」
「……雨蜘蛛さん! また…あなたって人は!!」

やはり、スエゾーの心中など多少も慮る気配を見せない雨蜘蛛の言葉を聞いて、晶がいきり立つ。
だが、誰よりも雨蜘蛛の言葉に憤ったのは、他でもないスエゾー自身だった。

「俺が自殺やと……! じゃかぁしいわこのドアホ!! 俺が死ねるわけ無いやろうが!! 
あいつらに…あの大バカ野郎共に目に物見せんうちには、死んでも死にきれんわ!!」

それまで穏やかだったスエゾーの豹変に、雨蜘蛛と晶は思わず顔を見合わせた。
今、スエゾーは歯を食いしばり、ここには無い何かを睨みつけるかの様に眼光を振り絞っている。そこにあるのは決して消えることのない怒りと憎しみだ。
自分はもうここまで。自分でやりたい事をやる。あいつらに目に物見せない内には死ねない。
ここまでのスエゾーの言動を纏めた二人が、ようやくこの目玉がやろうとしている事を察した。

「スエゾー、お前…主催者のバカ共に喧嘩売りに行くつもりか?」
「それも…たった一人で行く気なのか!?」

大小の違いこそあれ、確かに驚きを含んだ二人の質問に、スエゾーは歯を食いしばったまま力強く頷いた。

「せや…俺はもう、あいつらを許すことが出来へん!
 皆の死をゲラゲラ笑いおったあいつらに、ゲンキやホリィやモッチーに『すいませんでした』って土下座させへんうちには、俺の気ぃがすまへんのや!!」
「無茶だ! さっきの放送を聞いただろう!?」
「ああ、良ぅ聞いとったわ! あいつら、ノコノコとこの会場をウロついてるそうやないか! 好都合や、アホ共が呑気に顔出した所を見計らってボッコボコにしたる!!」
「違う、そっちの方じゃない!! 主催者に反抗した人間が、始末されたって話の方だ!!」

先ほどの雨蜘蛛の考察によって、『主催者が首輪をそう簡単には作動させない可能性』というのが明らかになった。
だが、だからと言って『主催者に反抗して命を落とした』という情報までもブラフとは考えずらい。
むしろ、微妙な言い回しを使った所を見るに、こちらの方は事実であると予想した方が自然だ。

「そら、返り討ちに会うかもしれへん…やけどなぁ!! 俺はもう、ここでじっとなんてしれられへんのや!!
 ドロロも言うとったやろ!? ゲンキも闘っとったってなぁ!!」
「確かにそうだけど、今スエゾーが闘おうとしている理由とゲンキって子が戦おうとしている理由は全然違うだろう!?
 ゲンキは他人を守るために闘った…けどスエゾー、お前は!」

どうにかしてスエゾーを思いとどまらせようと、晶は必死で説得する。
最早友人とも呼べるほどの間柄になった相手を、みすみす失うような真似は何としても避けたかったのだ。
しかし、スエゾーの決意はどこまでも硬く、強い。

「じゃかぁしいわ!! たとえ晶がなんと言ったところで、俺はもう止まらへんでぇ!!」

どれだけ晶が心をこめた説得を繰り返しても、帰ってくる反応はけんもほろろだ。
困り果てた晶は、半ば祈るような気持ちで雨蜘蛛の方を向く。自分だけでダメでも、二人で説得すれば。
しかし、そんな甘い願いを聞いてやるほど、雨蜘蛛は善良な人間では無い。

「別にいいんじゃねぇのか? 俺は反対しないぜぇ、むしろ行くんならてめぇ一人で行ってもらおうかい」
「雨蜘蛛さん!」

咎めるような晶の叫びに対しても、ふん、とくだらなそうに鼻を鳴らすと、雨蜘蛛は手近な椅子を引いてどっかと座りこんだ。
そのまま足を組み、机に肘を突きながら晶とスエゾーをそれぞれ見つめる。

「さっきの放送でアホゥのオッサンが言ってたろうがよ? 
 自分に逆らうものはその場で粛清、そんでもってその場に居合わせた全員纏めて道連れの連帯責任だってなぁ…
 俺ぁたった一人のバカの為に命を捨てるのはゴメンだね」
「ああ、それはわかっとる…これは俺一人のワガママなんや。その為に晶や雨蜘蛛を巻き込むわけにはいかんのは、ちゃーんとわかっとるで」
「でも……それでも!!」

あくまで自分の命優先でドライな雨蜘蛛の言葉と、自分達を思いやった上でのスエゾーの拒絶の言葉。
そこに内包された感情は相反する物でも、同じ趣旨を持って語られるそれを聞き、晶の拳が固く握りしめられる。
この殺し合いに巻き込まれる以前から、晶は自分の周りにいる人々を何人も失ってきた。
戦闘の面でも情報の面でも自分達をサポートしてくれた、村上征樹。
クロノス遺跡基地への侵入を補佐し、降臨者とガイバーについての重要な情報を得るきっかけを作ってくれた、小田桐主任。
そして、妻を失っても、自分を男手一つで育ててくれた、大事な父親を。
彼等を失った時に感じた身を裂くような辛い痛みを、もう一度味わいたくは無かった。
それに、スエゾーが命を落とすのを、結局会う事は叶わなかった彼の友人たち…
ゲンキ、モッチー、ホリィ、そしてまだこの会場のどこかで生きているハムは望まないだろう。
その気持ちは、彼等に比べればほんのわずかな時間しかスエゾーと過ごしていない晶も同じだった。
苦しみ、悩みぬいた末に、晶は一つの結論を出す。

「だったら、…俺も、スエゾーと一緒に行かせてくれ! 一人よりも、二人で行った方が奴らに何か出来るに決まってる!」
「ぶるぁぁぁぁぁ!?」

この一言に激しく反応したのは、スエゾーではなく雨蜘蛛の方だった。
ふんぞり返って座っていた椅子から盛大にずり落ちた後に、黒衣の男は慌てて立ち上がると正義の少年に勢い良く詰め寄る。

「おいおいおいおいおいおいおい!! それは幾らなんでも困るってんだよ! お前にはやってもらう事があるっつーただろうが!?」
「だったら、雨蜘蛛さんも一緒に行きましょう!! 三人で行けばもしかしたら何か――!」
「だぁぁかぁぁらぁぁ!! お前ぇはどうしてそうも正義ボケ天然ボケ平和ボケなんだよぉい!!」

雨蜘蛛がここまで反対するのも無理はない。
数時間前に見つけた、あまりにも怪しすぎるあの岬の洞窟。そこの調査をするためには空を飛べる人間、すなわちガイバーⅠ・深町晶の協力が必要不可欠なのだ。
主催に刃向かって勝手に命を落とすことを止めはしないが、かといってやる事をやってもらう前に死なれてはこっちが困る。
関東大砂漠の住人特有の正義アレルギーによって全身に発生した蕁麻疹を掻き毟りながら、雨蜘蛛は晶だけは必死に引きとめようとする。
そしてまた、晶を止めたいという気持ちを持っているのはスエゾーも同じだったようだ。

「せや、雨蜘蛛の言うとおりや!! 晶はここに残っとき!! あいつらに喧嘩売るのは俺一人でええ!!」

そう言うや否や、スエゾーは姿勢を低くして何かの力を貯め始める。
ギリリと歯を食いしばり、唸り声を挙げ、虚空を睨みつける目玉の体から、桜色のオーラが徐々に溢れだしていく。

「スエゾー!? 一体何をする気だ!?」
「来るなぁ! 来たらアカン!!」
「ぐぁっ!?」

突然起きたスエゾーの異変に、思わず晶が駆け寄るが、スエゾーの強靭な舌による殴打『ベロビンタ』によってはじき飛ばされる。
強力な一撃を受けた晶は激しく地面に尻もちを付くが、ガイバーを身に纏っていた事もありその身に受けたダメージは少ない。

「お前にはお前のやる事があるやろ! リングの情報を纏めて、そんでドロロ達としっかり情報交換せい!
 俺はアホやからあんま考えるのは苦手やけど、晶やったらそれが出来る!!」

呆然とこちらを見上げる晶にそう叫んだ後で、突如スエゾーが自分の頭上に視線を動かした。
いつの間にそこに移動したのか、目玉の頭部分には白いもふもふがしがみついている。

「小トトロ、お前もや!! このまま俺にひっついとったら『巻き込まれる』で!?」
「…………!」

それを引きはがそうとスエゾーが強い口調で小トトロに呼びかけるが、可愛らしい小動物は目を閉じたままブルブルと激しく体を振るだけだ。
こっちは何があっても一緒に行く心づもりらしい。

「ちっ、勝手にせぇ!!」

強情な小トトロをすぐに説得するのは不可能と判断したスエゾーはそれを諦め、今度は自分の同行者二人に呼びかける。

「晶!! 俺、お前と会えて良かったと思うとる!! お前、お人よしすぎる所とか正義感強すぎる所とかがゲンキの奴にそっくりや! 
 お前やったら色んな奴を仲間にして、みんなで力を合わせて主催のアホ共を倒すことも出来る!!」
「スエゾー…!」

ガイバーⅠは、その声を震わせながらスエゾーの名を呼ぶ。
ここまで来たら、もう彼を止める事は出来ない―――そう分かっていても、引きとめてやりたかった。

「雨蜘蛛! お前はうっさんくさくて変態チックで酷い奴やけど、その実力や頭のキレは本物や! 晶の奴を、しっかりサポートしてやってくれ!!」
「……………」

地獄の取立人は、何も答えない。
マスクの奥からじっとスエゾーの姿を見つめているその素顔を、窺い知る事は出来ない。

二人の相棒に対して最後の一言を伝えた後で、スエゾーは体により一層の力を込める。
それに比例して、彼の体から立ち上る桜色の光は、その輝きと量を増していく。

「二人とも、良ぅ見ときぃ!! これがスエゾー様の全力全開、最強の必殺技や!!」

そして、力の輝き、『ガッツ』が最高潮に達した瞬間、スエゾーは大きく目を見開いて、叫んだ。


「ガッツ全開! テレポーーーーーーーートッ!!!!」


そして次の瞬間、スエゾーと小トトロの体が激しくぶれて―――その場から消え失せる。

「なっ…………!?」
「き、消えやがっただとぅ!?」

突然起きた予想外の事態に、晶と雨蜘蛛は驚きの声を挙げる。
すぐさま雨蜘蛛が先ほどまでスエゾーの居た地点へと移動し、手を振って見せたり足踏みをして見せるが、そこには何の感触もない。
少なくとも、光学迷彩のような特殊技術を使った訳では無いようだ。スエゾーは、確かにこの場から消え失せていた。

「おいおいおい…何がどうなってやがるんだ……!?」
「テレポート、だって…!? スエゾーにそんな力が合ったなんて……」
「知っているのか晶! あの目玉、一体何やりやがった!?」

砂漠育ちである雨蜘蛛には、スエゾーの残した言葉『テレポート』の意味を理解することが出来なかった。
そんな雨蜘蛛に、晶はゆっくりと『テレポート』とは何なのかを解説してやる。

「『テレポート』、というのはつまり…瞬間移動です。思い描いただけで他の場所へ移動することができる超能力で…クロノスの中でもこんな力を使える奴はいなかった」
「な………なんだってぇーーーーーーー!?」

自分自身、まだ軽い混乱から回復していない晶の解説を聞いて、雨蜘蛛はその場で地団駄を踏む。
テレポート、瞬間移動。そんな力があったならば、空を飛んで移動するよりも遥かに楽に洞窟探索が出来ただろうに。
返す返すも、そんな『使える』奴をあっさり捨ててしまった事が惜しまれる。

「くぅぅぅ…そういう力が使えるんならさっさと言いやがれってんだよぉう! だったら俺だって必死であの目玉オバケを止めてたぜぇ!? あぁぁ、勿体ねぇ~~~!」

頭を掻きむしりながら悔しがる雨蜘蛛を見ながら、晶もまだぼんやりとした頭で考えている事があった。
テレポート。クロノスの獣化兵はおろか、獣神将にも使えるものがいるかどうかわからないその能力をなぜスエゾーが持っていたかは、この際置いておく。
雨蜘蛛が悔しがるのも無理は無いほどに、それは便利な力だろう。遠く離れた場所への移動時間も遥かに短縮され、敵に追われた時の緊急脱出にも使える。
そしてその力は、どう考えても。

「便利すぎる……!」

晶は、自分の両手を広げじっと見つめる。この会場に来てからずっと身にまとっているガイバーの装甲。そして、そこにある違和感は未だに彼の中に居座っている。
ガイバーの能力の、制限。それが違和感の正体だ。
それ自体の道理は理解できない事もない。ガイバーの力は強力だ。おそらく、制限が無い状況であればそんじょそこらの相手に手間取る事もないのだろう。
だからこそ、ガイバーの力に制限が掛かっているのだと予想出来る。参加者間の不公平という奴を少しでも減らそうという主催の考えだろうか。

そして、その制限が単純な戦闘能力だけでなく、『テレポート』などというある意味反則な特殊能力にもかかっていたとしたら?

「………スエゾーが、危ない!!」

スエゾーの姿が確かに消えていることから見ても、テレポート自体は成功したのだろう。
だが、だからこそ不安は募っていく。もしも失敗したのならば、それはそういう制限なのだと納得できるが、
発動自体が行えるとすればその制限はどこに掛かっているのか。
そして、彼についていった小トトロの安否は?
不安に耐えきれず、晶は勢いよく立ち上がると『学習室』の出入口へと向かっていく。

「あ? お、おい晶、お前どこ行くつもりだってんだぁ?」

未だに悔しがっていた様子だった雨蜘蛛が、晶の動きに反応して声をかける。
そちらを見ようともしないままで、晶は言葉を返した。

「スエゾーを探しに行きます! 一緒についていった小トトロだって危険な目に合うかもしれない!
 テレポートによる制限がどんな物なのかもわからない以上、放っておけないんだ!!」

そのまま、ドアノブに手をかける。
スエゾーがどこに行ったのか、その予測は全くつかない。だが、それでもじっとしてはいられなかった。
ガイバーの力を使って、島の中を全速力で飛びまわれば或いは―――――

そんな思考は、晶の頬を掠めた衝撃と、扉に埋め込まれていたガラスが盛大に破壊される音と映像によって強制的に中断させられた。

「おいガキ。あんまりふざけた事抜かしてんじゃねぇぞ」

氷点下の夜の砂漠のような、冷たい声が背中から聞こえる。
ゆっくりと振り向いた晶の目に入ったのは、硝煙が残るリボルバーを構えたままで、冷徹な瞳で自分を睨みつけている『地獄の取立人』の姿だった。


【07.少女魔道士の選択】

(ふぅ………まぁ、こんなもんかしら)

ソファーに座り、手の中の赤い宝石『レリック』から幾らかの魔力を取り入れた魔道士、リナ=インバースはそんな事を考えながら息をついた。
『レリック』を使用した精神力の回復も、大分板に付いてきた。最初にそれを試みた数時間前から比べても、それに掛かる時間も回復量も目に見えて増加している。
が、それでもやはりこの宝石が回復用に作られた物なのかどうか、というのには疑問が残っていた。

(確かに結構な魔力が詰まった宝石だけど、こんな物見た事も聞いた事もないわよね……あ、そういえば)

しばし眉間に皺をよせ、頭を悩ませていたリナだったが、ある事を思い出してぽんと小さく手をたたく。
すぐ傍に一人、というよりは一個、魔法に関係する知識を持つ存在がいたではないか。
朝倉涼子とヴィヴィオが持っていた金色のブローチ、バルディッシュ。
ここのパソコンのkskのキーワードを知っていた所から見ても、あのデバイスとかいう物体は自分とは別の世界から来た可能性が高い。
その上で、その世界は自分たちと同じく魔法というものが一般的な世界らしい。とすれば、この宝石もまたそちらの世界の産物なのではなかろうか。

(アサクラ達が帰ってきたら、この宝石についても色々聞いてみるべきか。
 もしかしたら想像もつかない物凄い便利な使い方がある、レアなアイテムなのかも…あー早く帰ってこないかなぁあいつら)

レリックの効果でだいぶ回復している事もあって、随分と余裕の出てきたリナがそんな事を呑気に考えている時だった。

「むぅ………」

ふと、自分の背後から聞こえた声に振り向く。
自分が離脱した時と全く同じ姿勢で、パソコンの前に座っていたドロロが何事かを呟いていた。
時計を見てみれば、さっきからはそれなりに時間が経っている。情報交換も終わったころ合いであろう事を思えば、おそらくはkskの調査に入った頃合いか。

「どうしたのドロロ? kskについて何かわかった?」

ドロロにそう呼びかけながら、ソファーから立ち上がり自分もパソコンに近づく。
青い忍者蛙はこちらを振り向いて、少し心配そうな顔をした。

「リナ殿、もう体は大丈夫なのでござるか?」
「うん、もうバッチリ!『竜破斬』だってオマケ付きで打てるぐらい……って言えれば良かったんだけどねー。
 まぁ、それなりには持ち直したわよ。で、あたしの事はいいからそっちの方はどうなの?」
「うむ、もう晶殿達との情報交換も終わって、kskを調べていたところなのでござるが…これを見てくだされ」

言いながら、ドロロはパソコンのディスプレイを指し示す。
それを受けてリナもドロロの顔からパソコンへと注目して、液晶に映っているものを確認した。

その画面を、最も身近な物に例えるとすれば、(リナ=インバースの知識には無いが)それは『履歴書』だろうか。
液晶の向かって右上部分には、制服を着た、微妙にパッとしない顔をした少年のバストアップ写真が映っている。
反対の左上には『Name』と書かれた欄があり、そこには『キョン』というカタカナが踊っている。
その名前の真下には『備考』の欄が存在しており、続いて『県立北高校1年生』の文章が続いている。
最後に、画面の下半分には次の二つの単語が横書き縦並べで記されていた。

[金属バット]
[コントロールユニット(ガイバー0)]

「これは……」
「見ての通り、参加者の顔写真、及び支給された支給品……それからその人物の肩書きがわかる簡単な備考と言ったところでござろうか」

カーソルをそれぞれの部分に動かし、一つ一つ口に出し確認しながらドロロが解説する。

「肩書きについては完全な補足事項にしかならなそうでござるが、参加者の顔と名前、そして支給品がわかるのは非常な強みになるでござるな」
「そうね………」
「……? リナ殿、どうされた?」

貴重で実用度が高そうな情報が手に入った事に少し喜ぶドロロだが、対するリナの顔は何故か少し暗かった。
少し考えてみても、この情報を前に落ち込む要素はさほど見られない。不思議そうに自分を見つめるドロロにチラリと眼だけを合わせた後で、リナは深いため息を付く。

「いや…あたし、肩書きって言うのにあんましいい思い出無いのよねぇ…」

思い出すのは、長い旅を続ける中で自分が受けてきた数限りない風評被害。
『ドラゴンもまたいで通る、通称ドラまた』ぐらいの肩書ならばまだ良いが、
『魔竜王が、人間の魂を狩り集めるために人の姿に変化しており、ある程度ダメージを与えると、巨大な竜になる』、
『本当の年齢は数百歳、巨城を一撃で粉砕できるほどの呪文を連打できる』、
果ては『額から触角が伸びてハエを捕食する』、『口から怪光線を発射して悪人を一掃する』などイロモノ極まりない噂までが広まり、本気でそれを信じられていた事もあるのだ。
元々の知り合いが数人しかいないこの会場でも、まさかそんな素っ頓狂な噂話を聞く羽目になるとは思………あ、一回だけあった。
まぁともかく、多少ウンザリこそすれそれを理由に調査を取りやめる程にリナも馬鹿では無い。

「まぁいいわ、とにかくさっさと調べときましょ」
「しょ、承知……」

殺し合いが始まったばかりの頃、リナに付いての奇妙な肩書きを聞く羽目になったのはドロロも同じ。
リナの微妙な反応の理由をなんとなく察しはしたが、それにあまり触れすぎるのも悪いという事もあり、改めてkskの調査を開始する。

「晶殿の話では、キョンという人物はガイバーとなっているという話でござったが…この[コントロールユニット]なるものがガイバーに変身するカギなのでござろうな」
「ご丁寧に[ガイバー0]なんて書いちゃってるわね。こんな物騒な物が支給されちゃったから、このキョンって奴は殺し合いに乗った、と…」
「…いささか、やりきれんでござるな。確か、晶殿はガイバーとしてのキョン殿の姿しか知らなかったはずでござる。この素顔をどうにかして伝えてやりたいでござるが…」

そんな事を呟きながら、ドロロはマウスを操作してどうにかキョンの画像を保存し、場合によっては晶のいる博物館へのパソコンへと送信しようと試みるが、どれも不発。
どうやらこのページ自体に何かしらのセキュリティ・ロックがかかっているようであり、印刷という形で外部に打ち出す事も出来ないようである。

「残念ながら、この情報を確認するには逐一このパソコンでアクセスするしか無いようでござる」
「けど、この情報は時間で更新される物じゃないみたいだし、一通り参加者の顔写真に目を通して、めぼしい支給品をメモしておけばいいんじゃないの?」
「うむ、それが良さそうでござるな。周囲が禁止エリアで囲まれている以上、そう何度もここに足を運ぶことは出来そうにないでござろう」

ここのkskについての今後の対応を話しながら、ドロロがマウスのカーソルを下の方に持って行く。
支給品情報が書かれているその下には、黒い「←」のマークと青い「→」のマークが存在していた。

「ここの右の矢印をクリックすれば、名簿一覧に戻らずとも次の参加者の情報を確認することが出来るようでござるな。
 左をクリック出来ないのはこのキョンという人物が名簿の一番最初の人物であるからか…」
「栗……? えーと、まぁいいからとりあえず先に進んでみてよ」
「うむ、承知つかまつった」

まだパソコンに関する用語を理解しきれていないリナに促されて、ドロロが右の矢印をクリックし、次のページに進む。
すると、キーワードの入力画面も現れる事無く、頭にリボンを付けた活発そうな少女の画像が液晶に表示された。

「ふむ、順繰りに参加者を見ていくのならばキーワードの入力もパス出来るようでござるな」
「まぁ適当にピックアップしてみる為にはこの前の名簿一覧から飛んだ方が早いからそうする事になりそうだけど…しかし親切なんだか気が利かないんだかわかんな――え?」

主催者に対する不満をブツブツと呟きながら、何とはなしにこの参加者『涼宮ハルヒ』についての情報を眼で追っていたリナが驚きの声を挙げて固まる。
隣のドロロも、眉根を寄せた悩みの表情で画面を見つめていた。
二人が見ているのは、どちらも同じ部分。先ほどドロロ自身が『あまり使えない情報』と評した、備考部分。
そこには、こう記されていた。


[県立北高校1年、自立進化の鍵]


「…ねぇ、これどういう意味?」

ディスプレイの中の文章の意味を掴み切れずに、表示された文の右半分を指で指しながらリナが尋ねる。

「進化…というのは、ある生物が特異な環境に適応するように変化していく事でござるが…」
「それがこの女の子とどう関係があるわけ?どう見たって普通の子じゃないの」
「…ここで拙者達が考えた所で埒が開くとも思えないでござる。ひとまず詳しいことは朝倉殿が帰ってきてから、皆で考察を進めた方がいいのやも…」
「アサクラ、ね………ん、ちょっと待って」

朝倉の名前が呼ばれた瞬間、ふとある事に気付いたリナがディパックを取り出して中から名簿を取り出す。
確認するのは、その順番だ。
キョン、涼宮ハルヒ、朝倉涼子、キョンの妹……そこまで目を通した所で、リナは名簿を再び仕舞った。

(この並び順……キョンって奴と、キョンの妹っていう奴に挟まれているところから見ても、アサクラは涼宮ハルヒの知り合いである可能性が高い。……それと、もう一つ)

顎に手を当てて、そこまで考察した所でリナは顔をあげて液晶へと視線を移す。
画面の中では、白い矢印が[クロスミラージュ][ホリィの短剣]と書かれた文章の下へ移動しかけ、そのままもう一度上へ上がろうとしていた。
その動きが意味する事は、リナにも大体察しが付く。
だからこそ、彼女はドロロを止めた。

「待って、ドロロ」

リナの声に反応して、画面の中の矢印は動きを止め、それを操作していた蛙がこちらを見る。
バツが悪そうな、咎めるような彼の視線を、リナは真っ向から受け止めた。

このkskの詳細名簿もまた、参加者全員に配布された名簿と同じ順番で並んでいる。つまり、この次に情報が載っている人物は。

「…行ってもいいと思うわよ」
「しかし、リナ殿!」
「チラッと見るだけでもいいでしょ? あのヴィヴィオって子かなりショックを受けてた様子だし、もう少し時間はあるんじゃないかしら」

やや強い口調のドロロを前にしても、リナは一歩も引く様子を見せない。
大げさかもしれないが、自分の命が掛かっている場面なのだ。多少の事でも、妥協は許したくなかった。

「…拙者、いらぬトラブルの種は招きたくないでござる」

頑固な様子の相棒に、少女魔道士はやれやれと言った様子で溜息を一つ。
このドロロというカエルは、良く言えば良い奴、悪く言えばお人よしだ。彼の中では、もう既に朝倉涼子は信頼に足りえる仲間になっているのだろう。
だが、リナに取ってはそうではない。確かに、警戒は幾分か解かれてはいるが、それでも尚得体のしれない相手であるという感覚は消え去ってはいないのだ。

そして二人の間に流れるこのギャップが、僅かに軋みあいながら不協和音を奏で始める。

「ドロロ。こういう状況での情報がどれだけ大事かわかるでしょ? これで疾しい所があの子にないんであれば、逆に安心できるじゃない」

筋は通っている、リナの説得。ドロロは押し黙ったままで、リナとパソコンを見比べている。

沈黙が満ちた部屋の中で「カチリ」という小さなクリック音が聞こえたのは、その数分後だった。


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彼等彼女等の行動(03~04) 朝倉涼子 彼等彼女等の行動(08)
ヴィヴィオ
リナ=インバース
ドロロ兵長
深町晶
彼等彼女等の行動 (01~02) 雨蜘蛛
スエゾー [[]]


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