第2話
【真空の刃】
彩月の果たし状と朝礼の後………さくら組小等部は縮こまって、あまり行動を起こさなくなってしまった。
彩月
「問題児と言われたさくら組が途端に静かになっちゃった。」
しずく
「ば……爆発なんてされたら普通そうなるんじゃないかな……?」
彩月
「時空なんてあんなのがしょっちゅうだよ………私より強い人も結構いるし」
しずく
「ええ!?あれよりもっと強い人居るの!!?」
彩月
「まあね………これから強くしていけばいいだけだから。」
しずく
「で、でも彩月ちゃん……あまりにも勝手な行動は風紀委員が許してくれないよ……」
彩月
「風紀委員?」
しずく
「うん……この
名無シ超人学園は5つの寮、5つの組があって……そこを仕切っているのは寮長と風紀委員なんだ。」
彩月
「分かりやすいカースト制度はこっちも覚えやすくて助かるね、その言い方だとさくら組の風紀委員って………」
しずく
「………
神葉ミツキ、さくら組高等部でいちばん強い人で……面倒事があると即座に止めに行くの。」
彩月
「ああ、そういえば爆発した時も即座にそれっぽいの来てたっけ。」
しずく
「悪い人は許さない、そして………この学校の流れが乱れたら、それを止める。」
彩月
「典型的な風紀委員さんね……それはそうと」
彩月
「粒先さんはどうしたいの?」
しずく
「……うえ!?つ、強くなりたいかって!?」
しずく
「無理無理無理無理無理!!私には無理!!」
しずく
「私はそういう仕事はしないから!体がこんな風だからってだけで入れられただけだから、その………」
彩月
「………それもいいんじゃない?」
しずく
「え?」
彩月
「能力者だから必ず世界でも通用するはずっていうのが尽く失敗してるのがこの学校だから」
彩月
「手に職付けるやり方っていうのも悪いとは思わない、粒先さんがそうしたいなら応援くらいはするよ」
しずく
「あ……ごめんね、身勝手なこと言って。」
彩月
「いいんだよ、誰だって安定した生活が1番だから。」
………
ミツキ
「桜井、彩月………か。」
ミツキ
「この流れは、早めに断っておいたほうが良さそうだな………」
………
彩月
「おはようございます」
「「『「おはようございます姉御!!」』」」
彩月
「番長か私は!!」
………
あの一件以来、さくら組小等部は完全に彩月の舎弟になってしまった。
彩月
「………というか先生は?」
「先生だったらレベルが高すぎて無理って辞表出したよ」
彩月
「貴様ァァァァァァ!!逃げるなぁァァァ!!!責任から逃げるなぁァァ!!!」
………
彩月
「え?マジ?これ授業も私がやらないといけないの?」
彩月
「教材をハッキングして、授業のやり方を………私生徒なのになんで先生やらされてるんだ………」
「先生!それよりも能力つよくしてください!」
彩月
「誰が先生よ!!あーもう分かった!!実戦あるのみ!!全員グラウンドに出ろ!!」
そう言って彩月は窓の外から飛び降りてグラウンドに移動する。
……
彩月
「ミラー!!ニンジャ!!」
彩月は能力を使用することで多重に分身する。
彩月
「さくら組計30名!!私の分身に能力をぶつけてみなさい!!」
彩月
「ミラーの能力で全部はね返してやるんだから!」
「いくぞおおおお!!」
彩月の分身に向かって一斉に能力が放たれていくが、その全てが跳ね返される
「「「ぐわあああああああああ!!」」」
彩月
「まだまだぁ!もっと本気を出せぇ!」
彩月
「この程度じゃそういう組織で肉壁とか使い捨ての電池にしか扱われないよ!」
………
彩月は技をはね返しながら一人一人の能力を確認していた。
彩月
「鉄槍生成、炎、硬質化、次元収納、人間弓矢………なんか珍しいけどイマイチパッとしないな………」
彩月
「ん?」
と、その時上からカマイタチが飛んでくるが、それをガラスの刃でガードする
彩月
「…………上?」
「あっ、あれは!!」
高等部教室のベランダに、風紀委員と書かれたリストバンドを袖に巻き、木刀を構えた青年が立っていた。
ミツキ
「……………桜井、彩月………!!」
彩月
「来たね、さくら組の風紀委員!」
「うわああああああ!!高等部、風紀委員の神葉ミツキ!!」
彩月
「風紀委員さんも一緒に強くなりましょ〜?」
ミツキ
「っ!!」
ミツキは力強く木刀を振るうと、その先から風の刃が飛び出す、彩月は臆せず刃を凍らせて自壊させる。
彩月
「カマイタチ………というよりは、降った時の勢いから刃を飛ばしている能力?」
彩月
「いいね、ようやくそれっぽいの見つけた………風紀委員ならこうでなくちゃ。」
彩月
「こうなったら本気で勝負するよ!!」
彩月は鞭を飛ばしてベランダに巻き付かせ、引っ張って屋上まで飛び上がった。
………
ミツキ
「応えろ、何の能力者だ?目的はなんだ?」
彩月
「つまりそれは………」
彩月は息を吸い込んで、右腕にソード、左腕にベルを構える。
彩月
「星のカービィが使えるコピー能力がこうして全て使える!!」
彩月
「たああっ!!」
ミツキ
「っ!!」
ミツキの木刀と彩月のベルがぶつかりあう!!
彩月
「やっぱり、振らないと刃が出ないタイプの能力!」
彩月
「ならこのままフリーズで凍らせて………」
ミツキ
「………」
が、ここでミツキは腰を落とし………
彩月
「足!?」
足を振り上げることで、そこから刃が飛び出してくる!
………
ミツキ
「結局、この手に引っかかる類か」
彩月
「………なるほど、振れるならどこからでも出せるんだ。」
ミツキ
「!」
彩月は体を鋼鉄化させて、咄嗟に刃を受け止めていた。
彩月
「どう?私ここだと強いでしょ。」
ミツキ
「なるほどな………時空とやらも戯言では無さそうだ。」
彩月
「あなたもだいぶ検討しているよ………『組織』から送られてるだけはあるね。」
ミツキ
「!」
彩月
「忘れてない?元々私、ハッキング能力の方をメインに動いているんだよ……この一日で怪しそうな生徒の裏は大抵取っておいたから。」
彩月
「風紀委員の貴方の正体には驚いたけど、まさかね……」
ミツキ
「場所を変えるぞ」
彩月
「了解。」
ミツキと彩月は学校から飛び出していった………
「な、なんだ………なんの勝負だったんだ?」
「やってることが凄すぎて目が追いつかねぇ………」
そして2人は誰も来ないような木の裏まで降り立った。
ミツキ
「どこまで知っている。」
彩月
「貴方がとある能力者の組織出身ということ、何らかの目的があってこの学園に来ているぐらいまで。」
ミツキ
「………大まかその通りだ、うちの組織もお前に破られるほど舐められたものではなかったはずだがな」
彩月
「うん、セキュリティは時空に出たことないにしてはしっかりしてたし余程大きいものみたいね、1人だったら喧嘩売りたくない。」
ミツキ
「………俺の使命は、能力者達が問題を起こさないように抑制させること。」
ミツキ
「ウチの組織でも適当な能力者を回収して兵士として扱わせる運用法をしている。」
彩月
「いつからこの仕事を?」
ミツキ
「来た頃は中等部……3年になるか。」
彩月
「卒業生の組織の評価は?」
ミツキ
「そんなものお前に教えてなんになる。」
彩月
「まぁですよね……私と似たようなものか。」
ミツキ
「それより、あの能力者が時空で通用しないというのは………」
彩月
「別に能力者だから戦えとは言わないけど、そういう仕事したいなら本当にやめておけってレベルね」
彩月
「貴方ならいけるかもってぐらいで………」
ミツキ
「俺も……ここに来るまでずっと組織で鍛えていたからな。」
彩月
「そういうのがこの学校には無いって感じかな。」
彩月
「それで聞きたいんだけど、私さくら組の事しか知らなくて………他のクラスはどうなの?」
ミツキ
「名無シ能力学園には5つのクラスが存在する………状況によって途中で別のクラスに送られることもある。」
ミツキ
「まず、ここ『さくら組』……問題を起こした生徒や厄介者の能力が所属している。」
彩月
「私みたいなやつね。」
ミツキ
「その逆で優れた能力者、すなわちエリートが多いのが『あじさい組』だ」
ミツキ
「あじさい組の風紀委員がこの学園で1番強い能力者でな………『聖盾』という防御能力を持っている。」
彩月
「あじさい組風紀委員……『伊西ファクト』さん……あ、この子
時空ヒーローの子供!」
彩月
「中堅時空ヒーロー『ホワイトニング』の息子!」
ミツキ
「時空の戦士か……強いはずだな………」
ミツキ
「他にもすみれ組、あさがお組、たんぽぽ組などがあるが……上でもなく下でもない平凡といったところか」
彩月
「なんかこうして聞いてると能力者育成機関に思えないんだけど…幼稚園か何か?」
ミツキ
「そんな事俺に言われても困る。」
彩月
「………ま、宣言しちゃった以上は頑張って強い能力者にしてみせるよ、貴方の組織の為にも。」
ミツキ
「……………。」
ミツキ
「俺の組織は言っていた、行く行く訪れる大きな戦いに備えなくてはならないと。」
ミツキ
「その為にも、もっと協力者が必要だ。」
彩月
「私を協力者って言ってくれるんだ?」
ミツキ
「勘違いするな…お前もあくまで組織から見れば敵のようなものだ。」
ミツキ
「この学園で怪しい動きをすれば、風紀委員として即刻叩き切る」
ミツキ
「さくら組の生徒であることを忘れるな。」
彩月
「…………そうは言ってもねぇ、実はさくら組の小等部教師が耐えられないって逃げ出して、私が代わりに教師やってるんだけど。」
ミツキ
「そうか、問題ない。」
彩月
「あ、組織の方から誰かしら呼んでくれる?」
ミツキ
「お前のせいで教員がほとんど辞めていった」
彩月
「は?」
ミツキ
「さくら組だけじゃない、小中高全てのクラスで半分近くの職員が失踪だ。」
ミツキ
「レベル、というものを理解してなかったのは上もおなじようだな……」
彩月
「………あのぉ、ミツキ先輩?」
彩月
「ここまで私のせいにされる筋合いはないと言うか」
彩月
「むしろこの程度で投げ出すとか時空舐めてんじゃねぇよってキレたくなりますけど???」
ミツキ
「知るか」
……………
そして夜………
しずく
「………彩月ちゃん、今日ミツキ先輩と戦ったって聞いたけど………」
彩月
「え、ああ大丈夫。話通じるタイプの人だったから。」
しずく
「え!?な、何も無かったならいいけど………」
彩月
「組のこととか色々教えてもらったけど……思ったより面倒そうだなって感じたよ。」
彩月
「………まず最初に。」
彩月
「殆ど出ていった先生とかどうしよう…………」
最終更新:2022年02月14日 07:39