「第3話」
「この学園は面倒地獄也」
そして、彩月がしばらく能力者たちの育成に携わってから早くも3日が経過した。
案の定というか、教員が行き届いてないせいで普通の授業すらマトモに行われないという酷い状態になってしまった。
彩月「…………そっちの組どう?」
ミツキ「いくら高等部と言えど自習で通すには限界が来始めたな。」
彩月「こっちもそろそろ私がくたばりそう………」
ミツキ「これでは能力育成どころではないぞ、
桜井彩月。」
彩月「う……分かってるけどさぁ……まさか先生共が逃げ出すなんて思わないじゃん。」
彩月「貴方も風紀委員ならこの事態を何とかする方法とか考えてくれない?」
ミツキ「そうだな……」
ミツキ「分かった、こういう時は"アレ"を使うべきだな」
彩月「あれ?何か考えでもあるの?」
ミツキ「まあ見ていろ。」
……
その日の午後。
校舎裏にて一人の生徒が一人の少女に向かって土下座をしていた。
彩月「………ミツキ先輩?」
ミツキ「どうした?」
彩月「貴方の言うアレってこれのこと?」
ミツキ「そうだが?」
彩月「私に頭下げてるのは?」
ミツキ「胸に手を当てて考えてみるんだな。」
彩月「どいつもこいつも私の事モンスターみたいに思いやがって。」
………
改めて、彩月は土下座していた生徒を無理矢理起こして話を聞く。
ミツキ「改めて、コイツの名はアルカナ。」
ミツキ「少なくとも俺の居るさくら組高等部クラスの中ではまだマシな方と思った能力者だ。」
彩月「………それで彼が、どう教員不足問題を解決するわけ?」
ミツキ「アルカナの能力は『分身』だ。」
ミツキ「自分の意思で複数の分身を出せる。更に言えば分身の数に応じて必要なエネルギーの量が変わるらしい。」
彩月「ふーん。確かに他と比べたら『マシな方』だね。」
アルカナ「目の前でそういうこと言うのやめて傷つくから。」
ミツキ「問題はエネルギー配分だが……」
彩月「聞くまでもないけど、明日から十人近く分身して半日近く代わりに授業やってと言われたら?」
アルカナ「死んじゃう!!死んじゃうよ!!」
彩月「だよね、この間の私もそうだったし………ミツキ先輩こう言ってるけど?」
ミツキ「問題は無い、エネルギーとは言うが多少の水分で補える。」
彩月「でもそうなると水でもクビグビ飲むことにならない?」
アルカナ「そうなんだよ……水能力者のせいで購買にもそんな売ってないし、それをどうしようかと悩んでたところ。」
彩月「水………水かぁ。」
その時彩月の脳内に電流が走る………!!
彩月「それって水分なら何でもいいの?」
アルカナ「え!?……一応飲むものだから綺麗なもので頼むよ?」
彩月「任せといて」
ミツキ「問題は無い、エネルギーとは言うが多少の水分で補える。」
彩月「でもそうなると水でもクビグビ飲むことにならない?」
アルカナ「そうなんだよ……水能力者のせいで購買にもそんな売ってないし、それをどうしようかと悩んでたところ。」
彩月「水………水かぁ。」
その時彩月の脳内に電流が走る………!!
彩月「それって水分なら何でもいいの?」
アルカナ「え!?……一応飲むものだから綺麗なもので頼むよ?」
彩月「任せといて。」
…………
そう言って彩月が連れてきたのは………
しずく「無理無理無理無理!!!」
彩月「お願い、ほんと学園全体の助けになるから。」
しずく「出来ない!やれるやれないじゃなくてプレッシャーが強すぎて出来ない!!」
アルカナ「……えーと、その子は?」
彩月「粒先さん、私と同じ部屋の人。」
彩月「スライム化の能力持ってるんだけど、そのおかげで水分を吸収するんだ。」
ミツキ「水分を吸収?」
彩月「えーと要するに、水とか吸って体積を大きくすることが出来るの。」
しずく「言わないでよぉ………これ自分でもコントロール出来ないからお風呂に入るだけで全部吸っちゃうの………」
ミツキ「その割にはそこまで肥大化してないように見えるが。」
彩月「スライムだからね、増えても余計な部分は切り離せる」
ミツキ「なら見せてみろ。」
彩月「よし」
しずく「ま、待って!?ちょっと待って!?」
彩月は能力を使い手から水を出してしずくに浴びせる!
しずく「ああああ!!」ムクムクムクッ!!
しずくの体にかかった水はタオルに吸われるように乾いていき、しずくの体の肉が増えていった…
むちっむちっという擬音が不思議と聞こえてくるようだ。
しずく「や、やだ……私これですぐぽっちゃりになっちゃうから見られたくないのに………」
彩月「分かった、どこ取ればいい?」
しずく「お腹とか……太ももあたりを……」
彩月がしずくの足を揉んで引っ張ると……握ってる部分が次第に青くなって、ぷるんと小さなスライムを取り外せた。
彩月「これも一応水分の塊だから、エネルギーが欲しくなったらこれを啜ればいいよ。」ハイ
アルカナ「有難いけどちょっと飲むの躊躇うな!?」
…………
そして一同はパソコン室に移動し、彩月がパソコンをいじる。
しずく「そ、そもそも……居なくなった先生達の分を2人で補うなんて無理だよ。」
しずく「2人が病気にならない訳でもないし……」
彩月「私はほぼならない……けどアルカナ先輩みたいに回復手段もないし。」
アルカナ「俺も俺でハードスケジュールに心が持つ気がしない。」
アルカナ「というか生徒の俺たちがバタバタしてるけど、肝心な教員側どうなってるんだ……居ないわけでもないのに。」
ミツキ「この3日間、桜井彩月が教師代わりになって何も言わない時点で察するものがあるがな。」
彩月「上から下まで約立たずばかりがよぉ……」
アルカナ「で、結局雇用も考えてるわけか。」
彩月「なんで生徒の私らがここまで考えなきゃならないのよ………」タッタッタッ
しずく「でも見つかるの?」
彩月「仕事を探してる能力者って結構いるんだよ。」
彩月「能力を持ってる人は就活で有利みたいにこの学園では言うけど、実際は自分が普通の人間とどう違うのかを企業に見てもらわないといけないから逆にハードなんだよ。」
彩月「ヒーローの成底内みたいなのもいるし、条件さえ良ければ来てくれるんじゃない?」
アルカナ「ここの給料ってどうなってるんだ神葉。」
ミツキ「風紀委員をなんだと思っている、分かるわけないだろう。」
彩月「まぁ(勝手に)募集かけさせるからいいよ、あちこちの求人サイトに登録させるからこれで様子を見て………」
彩月「それまで私達で頑張って耐えよう。」
アルカナ「どの道俺たちは酷使されるのか………」
彩月「粒先さんもいっぱい水飲んでいっぱいスライム出してね。」
しずく「助けて」
ミツキ「どうしようもならん」
……
1週間後。求人サイトを確認すると……
彩月「来た!30人くらいきた!」
しずく「これ全員能力者なの……?」
彩月「どうする?とりあえず全員採用する?」
ミツキ「信用出来ない、能力はどうあれ性格面で問題があることもあるだろう。」
彩月「まぁ就活シーズンでもないのにまだ探してるのって大抵ボンクラだけど……じゃあ保留ってことで。」
………
彩月「一向に進展しなさすぎて泣きそう。」
アルカナ「俺なんてもうお腹がスライムを受け付けなくなってきた、味ないのキツい。」
彩月「塩か醤油でも使う?」
アルカナ「余計にエネルギー減るわ」
しずく「いなくなった先生達を呼び戻すのはどうかな……」
彩月「………それも私は考えたよ、だが。」
ミツキ「どこに行ったかも分からない、残ってる奴に聞いても吐こうとはしなかった。」
彩月「ハッキングして個人情報から痛いところ指摘しても、給料上がるようになんとかすると言ってもダメだった、あの執念なんなの?」
アルカナ「………知り合いに頼むのは?」
彩月「知り合い………あの人らにも仕事があるから……」
彩月「教師もいるっっちゃいるけど巻き込みたくない。」
ミツキ「俺の方も……暇そうな奴はいない。」
アルカナ「どうするんだよこの学校!このままじゃ停止とかになるんじゃないのか!?」
彩月「あー、全員教育するとか言わなきゃ良かった……このままこんな学校からおさらば出来たかもしれないのに……」
彩月「……ん?停止する、そうなると学園経営としては結構ガタガタってことになるわけだよね?」
アルカナ「この状況がガタガタじゃないならなんだって話だけど。」
彩月「だったら………禁じ手レベルの最後の手段がある、ちょっと失礼」
彩月はそう言ってスマホを待って部屋から離れる。
………
彩月「よし、後はもうどう転んでも知らん。」
ミツキ「どこに連絡を入れた?」
彩月「時空って色々あるんだよ、私が連絡入れたのは教育関係のサポートセンター。」
彩月「本気で経営やばーいってなった時に電話したら何かしらの処置はしてくれる。」
アルカナ「最初からそれに頼めば良かったじゃん!!」
彩月「………あのね、あそこに助けて貰うっていうのは社会的に終わってる場所って思われる事なんだよ。」
彩月「そもそも時空レベルにビビって教師が逃げた時点で向こうからすれば失笑物なんだけど。」
ミツキ「…………俺の組織も頭を抱えるだろうな。」
彩月「これで時空に通用するとか言わなければまだワンチャンあったかもなんだけどね………」
………
こうしてしばらく後に時空から能力者が呼び出され、
名無シ超人学園の教員問題は何とか解決した………だが。
ミツキ「………それはそれで問題が起きていないか?」
しずく「新しく来た人達がこの学校の事凄く冷めた目で見てるよ……」
アルカナ「色んな奴らが新しい授業についていけてないしな……」
彩月「だから何度も言ってきたじゃん、あのレベルで時空で通用とか無理って。」
彩月「私あの時口悪くなっちゃったけどこれでも言葉は選んでたんだよ?」
しずく「私、授業についていける気がしないかも……」
アルカナ「なぁ時空のヤツら数百人近くまで分身できないかとか無茶ぶり言うんだけど」
彩月「時空における分身の基準はナルトの影分身の術だからね。」
アルカナ「無茶苦茶言うな。」
ミツキ「俺はむしろ興味が湧いてきたな、時空がどれ程の人材を求めているのか………」
しずく「これ今度は生徒の方が居なくなっちゃうんじゃ………」
彩月「それでもいい……とは言いきれないのが私の立場なんだよなぁ……いきなりレベル上げすぎたかな……」
彩月「ちなみに先輩達はどんな授業受けてきたの?」
ミツキ「この鉄の筒を壊せるかどうか、というやつを………」
彩月「ダイヤモンドの十倍硬いと言われてる超合金だね、時空間の建物とかみんなそれで作られてるよ。」
ミツキ「なるほど、戦闘する以上これくらいは壊せなければ話にならんというわけか………」
アルカナ「ねぇしずくちゃん、普通に就活すること考えてみない?」
しずく「うん………私達も望んでこんな力手に入れたわけじゃないし………」
………
こうしてある程度レベルアップは挑めたが、完全に心が折れたのか現実を理解してしまったのか。
時空に出て能力をアピールしようとする層は極端に減ってしまい、ずっと小さかった就活相談室がぎゅうぎゅう詰めになりました。
この結果にサポセン教員が余計にキレて、私を差し置いて大改革を始めると言い出しました。
彩月「………なんか、どんどんめんどくさい事になっていってる気がするんだけど。」
ミツキ「お前が始めた物語だろう」
彩月「…………辛い。」
最終更新:2022年02月20日 23:35