【タイムパラドクスゴーストライターのストーリー】
主人公「佐々木哲平」は、自身の夢である漫画家を目指すべくジャンプに投稿を続けていたが、担当編集からは「描きたいものが見えてこない」「ありふれた作品」と酷評されて没続き、気が付けば25歳となっていた。
失敗続きから夢を諦めようかと思ったその時、雷が哲平と家を襲い電子レンジが壊れてしまう、だが電子レンジは突如起動し、中にある物を転送した……それは今から10年後の未来の週刊少年ジャンプであった。
そこに掲載されていた新連載『ホワイトナイト』に大いに感銘を受ける。しかしその翌朝、未来のジャンプが消え失せていた事から哲平はそれを徹夜の疲労が見せた夢あるいは幻覚だと思い込んだ。
そして最後のチャンスとして夢で見たホワイトナイトを読み切り用に修正して提出した所、ジャンプ編集部からは大絶賛で即座に掲載。発売後には絶大なアンケート数を勝ち取り、ホワイトナイトの連載まで決定した。
あっという間に人気漫画家となった哲平だったが、あるものを見つけてしまう。
幻覚と思われていた未来ジャンプが、本当に存在していた……勿論ホワイトナイトも載っている。そして壊れた電子レンジは再び未来のジャンプを送っていたことに気付き、哲平は真っ青になる。
佐々木哲平は、他人の十年後の漫画を盗作して連載を掴んでしまったのだ。
そして、哲平の知らないところで発売されたジャンプを読んでいたある少女は哲平に対し怒りの目を向けていた。
その少女こそ、十年後にホワイトナイトを連載していたはずの人物「藍野伊月」であった………
哲平は、ホワイトナイトが自身の深層意識の産物などではなく盗作である事実を突きつけられ、1度は連載を拒むが、編集者や読者からの期待の声に押される形で仕方なく連載を続ける事にする。
毎週送られてくる未来のジャンプに掲載されているホワイトナイトを元に話を描き続ける生活を続けていたある時、哲平の元にある人物が訪れた。
それは未来の、及び本来のホワイトナイトの作者である、当時はまだ学生の伊月であった。
未だ制作中の自分の作品であるホワイトナイトがジャンプに掲載されたのを不信に思い、真相を問いただすために哲平の情報を調べて上京してきたのだ。 しかし伊月に事情を説明したところで信じてもらえず、自分が描いたホワイトナイトが本物だと証明するために一方的に連載作家となった哲平のアシスタントとなり、本来の時間軸より数年早く漫画家への道を歩み始める。
そこから、哲平の電子レンジが突如未来のジャンプを転送してくるようになり1年が経過した。ある日、哲平の元に未来のジャンプが届くことはなくなってしまった。だがその一週間後には何事も無かったかのように未来のジャンプは届いたが、そこに書いてあったのは藍野伊月の訃報と、それに伴うホワイトナイトの連載終了のお知らせであった。
更に、ジャンプの他に焼け焦げた跡のある1枚の紙があった、そこには「ホワイトナイトを継続させ、伊月を救え」と書いてあった。
そして、未来で自分が死ぬなんて事は想像だに現在の伊月は哲平のアシスタントを卒業して、同じく少年ジャンプでホワイトナイトとは別の漫画を持ち込み既に連載まで漕ぎ着けていた。
一方哲平は未来のホワイトナイトが終わってしまった為に以降は自分で考えて執筆しなければならず、その上で全く覚えのない伊月の死の未来を変えなくてはならない。
ホワイトナイトの急速な人気降下と伊月が描いたものに並ぶ展開を思いつかないスランプから「なぜ自分は無関係な彼女を助けようとしているのだろう」と打ち拉がれてしまうが、伊月から励ましの言葉を受け立ち直る。
それから哲平は、今まで以上に必死になって原稿に取り組むようになる。
だが、一向に良いアイデアは浮かばなかった…… そんな時、ふとした事から過去に自分が書いたホワイトナイトを読み直す事になる、未来の伊月の物を模している為、出来は今とは大違いだった。
1から読み直した哲平は、自分は元々伊月を救うためではなく人々に喜んでもらう漫画を描きたかった事と自分が未来の伊月から盗作していたという事実から今でも逃げていたことを思い返し、伊月を呼び出して真実を打ち明ける事を決意する。そして、遂に2人は対面を果たす。だがその瞬間、哲平の家に再び落雷が発生し電子レンジが完全に壊れてしまう。
これまで送られてきたジャンプの山を見て未来のホワイトナイトと未来の自分の死は理解した伊月だったが、未来からの情報を得る手段を無くしてしまった。
苦し紛れに伊月が壊れたレンジにチョップすると、電子レンジは最後の力を振り絞って中から小さな紙を取り出した。
そこに書かれていたのは、このまま藍野伊月は漫画を描き続ければ連載中に謎の死を遂げるというものだった…… 哲平はその事を伊月に告げると、彼女はショックで1度気絶してしまう。
その後、改めて哲平は盗作の件を伊月に謝罪しホワイトナイトを打ち切る事に決めるが、「結果はどうあれ貴方の物語になったのだから自己責任」と伊月に止められる。
このまま漫画を描き続ければ伊月は死ぬ、つまり何らかのタイミングで彼女が漫画家を辞めればいい。
伊月に生きてもらう為に筆を折るように考える哲平だが、これまで送られてきた未来の自分よりも面白い漫画を描きたいと決心した伊月の気持ちを考え、口を開くことが出来なかった。
哲平が葛藤し押し黙っていると、伊月は今度は冷蔵庫がおかしいと指差す。
電子レンジのように未来に関連したものになってしまったのかと思い開けてみると、冷蔵庫の中に大きな渦巻き状の穴が形成されていた。
穴に触れてみるとかなり深く、自分達でも中に入ることが出来るようだ。
哲平は一瞬入るのを躊躇ったが好奇心から伊月が先に飛び込んでしまったので、覚悟を決めて中に入ったのだった。
穴の先には大きな本を開いたような床に椅子、真っ暗な空と2つの明かり、そして奥には玩具のロボットが座っていた。
哲平はそのロボットが自室にあった宝物の「サンダーくん」だと気付くが、哲平が近付くとロボットは言葉を発し、2人に色んなことを説明した。
自分が電子レンジから未来のジャンプを現在の哲平に送ったこと、伊月が漫画家として成功して死んだ未来から来たことなどだ。
しかし、哲平はタイムパラドックスについての説明を聞けば聞くほど混乱してしまい、話がよく分からなくなっていた。
ロボットは2人に説明したいことは山ほどあるが時間が足りないと言い、哲平と伊月はそれぞれ1つずつのみ質問することにした。
まず伊月が何故自分が十年後に連載を続けると死んでしまうのか、連載を続けていくと1番覚えのある「過労死」や「病死」ではなく「謎の死」なのかと聞いた。それに対してロボは、伊月は漫画家として成功を収めるが、その死後に様々なメディアで取り上げられて死に様が有名になりすぎた結果、死因不明のまま突然死扱いになってしまうと説明した。
そして、最終的なその死因は自身にも分からないと言う。
次に哲平が伊月が生きている未来に変えるという大事な使命を何故、当時伊月とは全くの無関係な自分に託したのかと聞いた。
これに対してロボは、過去にホワイトナイトを送り、未来に近い状態で完全に再現できたのは哲平のみと話し、改めて伊月に漫画を勝手に盗作させたこと、哲平に盗作という罪を背負わせたことに謝罪する。
そして哲平は何故冷蔵庫を繋げ、ここに呼び出したのかを聞くと、ロボは藍野伊月が生存し尚且つ漫画家になれる可能性の未来を現在の2人なら導けると判断したからという。
それでも確率は1%に遥かに近いと言うが、全く躊躇わない伊月にロボは『最後の手段』を提案した。
それは、これまで未来に送ってきた自身のタイムマシンのエネルギーを利用して世界の時間を止め、その間に手当り次第漫画を描くというもの。
その内容に2人は首を傾げるが、ここで伊月はあることに気付く、哲平は今までずっと勘違いをしていたこと。
最初の説明の紙には「藍野伊月を救え」と書いてあり「死なせないで」とは一言も書いていない。
救うというのは命を救うことでは無いと指摘され、哲平も驚く。
本当の目的に気付いたロボは、改めて正体を明かす、その正体はロボットの体を借りていた、他でもない未来の伊月の幽霊であった。
曰く未来の伊月は死んだことよりもホワイトナイトを途中で描けなくなった事を無念に思い霊になり、過去を変えようとやって来たのだという。
未来の伊月は漫画を完成させるために、過去の哲平に助けを求めたのだ。
哲平は伊月の死を変えられない事を知りショックを受ける、だがそんな哲平に未来の伊月は力強く言い放つ。
「私は無くても、ホワイトナイトはそこにある、漫画家は作品の名前さえ残っていれば幸せ」
その言葉を最後に時間が来て、未来の伊月は『最後の手段』を決行した……。
気が付くと哲平と伊月は元の世界に戻っていたが、未来の伊月が言っていた通り世界の何もかも止まっていた。
そして、未来の伊月が言った通りに漫画を描いていく。
最初は何が何だか分からず混乱していたが、漫画を描いている内に落ち着いてくる。
未来の伊月から漫画に対する情熱を受け取った哲平は、まるで漫画の神になったかのように漫画を描き続ける……
………それはそれとして現在の伊月はその隣で40本くらい漫画を描いていた。
そして止まった世界の中で1万日以上が経過した後、哲平は遂に止まった世界でホワイトナイトの原稿を数百話におけるエピソードを重ねた末に最終回まで描き切った。
傍に居た伊月の助言もあり、最後には哲平1人でもあの未来のホワイトナイトのような読み応えのある作品になっていた。
哲平は完成した原稿の山をロボの前に置くと、未来の伊月は嬉しそうにそれを見続け………
時間は再び動き出し、全てが終わった。
………
それからについてだが、哲平は静止した時間で描いた原稿は使わず、普通の漫画を描いた。
そして、普通に働きながら、たまに漫画家志望の若い子にアドバイスをしたりしていた。
そして今、自分の部屋の机には、かつて自分が書いたホワイトナイトの続きが置いてある。
仕事の合間に読んでみると、やはり面白い。十年経った今でも面白い、伊月のものとは違う自分のホワイトナイトを面白いと感じられるようになったのは初めてだった。
そして伊月の方だが、なんと未来の伊月が言っていた通り本当に死なずに今でも連載を続けている。
むしろ止まった時間で色んな題材やネタを見つけて描きまくった影響か、何十年もピンピンしてそうだと感じるのだった。
最終更新:2022年07月24日 23:47