五十鶴「あ………響原クン」
創「ああ、五十鶴か……」
手久保五十鶴……超高校級の幸運。
折角選ばれた1人だというのに、その結果がこれでは大層納得いかないだろうな。
五十鶴「その………まさか、こんな事になるなんて」
創「そうだな、お互い………最悪の事態だけは避けたいところだが」
五十鶴「うん、響原クンが誰かを殺すところなんて僕は見たくないよ………それに……」
五十鶴「…………」
創「どうした?」
五十鶴「ねぇ、こんな時に言うのもなんだけど……いいかな、響原クン」
創「どうした、改まったように」
五十鶴「響原クン……僕と、友達になってくれないかな?」
創「………?」
五十鶴「僕ね、この超高校級の皆……出来れば全員と友達になりたいと思ってるんだ」
五十鶴「それで、まず最初に君と仲良くなりたくて………」
創「………何かと思えばそういうことか」
創「俺はむしろ、お前とは既に友人関係を築けていると思っていたのだが」
五十鶴「えっ……」
創「お前は違ったか?勿論、今から改めて友として接する事も構わないが」
五十鶴「え……本当!?」
五十鶴「僕は君と友人なんだね!?」
創「少なくとも俺はそう考えている」
五十鶴「あっ、そっか……そうなんだ、ならよかった!」
五十鶴「じゃあ、改めて友達としてよろしく!」
不思議なことを言われた………まさか、友人になってくれなんて事を今更問われるとは。
もちろん、俺としては構わないのだが
五十鶴「でも響原クン、僕はその……君のように優れた才能とかは無いけど、本当にいいの?」
創「構わん、お前は俺の事を………どう思う?」
五十鶴「え?超高校級の映画監督って聞いたから変な人なのかなとは思ってたけど………」
五十鶴「話してみると、結構身近で、僕や僕の前のクラスの子達とそんなに変わんないのかもしれないなって感じてきた事はあるけど」
五十鶴「…………あ、失礼だったかな?」
創「気にするな」
創「俺はお前と話してすぐ友人にしたいと考えた、それは間違ってなかったようだな」
五十鶴「え?え?」
創「………おたがい、少し話しすぎたな、そろそろ失礼する」
五十鶴「うん………」
五十鶴「あっ、響原クン」
創「五十鶴か、どうした?」
五十鶴「そういえば気になってたんだけど、響原クンはどうして映画を撮ろうなんて思うようになったの?」
五十鶴「やっぱり、お父さんとかが映画作ってたの?」
創「いや、俺の父親は世間一般的には普通の会社員とやらだ」
創「最初の映画は小学校の頃だったな」
創「夏休みの自由研究で友人10人くらいと協力して作ったな」
五十鶴「小学校から!?」
創「落書きの怪獣がパラパラ漫画のように歩くだけの物だったが、それを公開した時の俺と皆の達成感は相当な物だったな」
創「それからはまた人を集めては映画を作り、この通りだ」
五十鶴「それ、思いっきり趣味じゃん………流石超高校級………」
創「しかしまだ俺でもプロ顔負けの作品は作れていない、かの名作達に比べれば俺もまだまだだ」
創「それに俺は監督、人々に支持しただけでデザイナーや脚本家、音楽と色んな担当達の頑張りあっての作品だ」
五十鶴「な、なるほど………凄いね、響原クン」
五十鶴「才能もだけど、ここまで自分の力を謙遜出来るのが凄いよ」
創「才能なんて、自慢したって面白い事など何も無い」
五十鶴「…………」
五十鶴「ありがとう、そんなこと教えてくれて」
創「お前は特別だ、友達だからな。」
五十鶴「………響原クン」
五十鶴「これからもずっと友達だよね?」
五十鶴「大人になっても、ここから出ても友達だよね?」
創「当然だ、お前も……勿論他の奴らも」
五十鶴「そうだよ!僕も響原クンだけじゃない………皆と仲良くなりたい!」
創「ああ、そうだ」
創「でもこれだけは言わせて欲しい………俺の会った中ではお前は2番目に信頼出来る友人だ」
五十鶴「え、まさかここまで言ってくれるなんて………」
創「俺は本当にお前を信頼している、もちろん撮影スタッフになってくれる皆も大事だが、お前のような奴は貴重だからな」
五十鶴「そっか」
五十鶴「響原クンにとって僕が特別なら、すっごく最高だよ」
………五十鶴と軽く話をした後、別れた。
不思議とあいつの前なら気楽に話せる気がする。
また暇があればアイツと話をしに行こう
五十鶴「あっ、響原クン!」
創「ああ、五十鶴……良かったらまた話でもしないか?」
五十鶴「勿論いいよ、何せ僕は君の友人!だからね!」
前に話した時よりも明るいヤツになっているな……俺にとってかけがえのない存在と言われたのが、よほど嬉しかったのだろう。
五十鶴「ねぇ、君の1番の友人って誰なの?」
創「俺の映画でいつも脚本家を担当している男だ、幼なじみでもある」
五十鶴「へー、脚本家かぁ、それは僕でも勝てないや」
創「ああ、だが………アイツにも超高校級の才能があるように感じたが、何故かここにはいないんだよ」
五十鶴「そういう事もあるんだよ」
創「そうか……」
創「そういえば、俺は五十鶴の事を少ししか聞いてなかったな、俺からも色々聞いていいか?」
五十鶴「えええ!!?ぼ、僕の事!?」
五十鶴「いやいやそんな、僕の詳細なんてほんと平凡でありきたりで、映画監督の君からしたらつまらないストーリーだよ!?」
創「別に構わない、映画のネタが欲しいから話してるわけじゃない、友達の事を何かしら知っておきたくてな」
創「もちろん、無理にとは言わんが」
五十鶴「………」
五十鶴「そうは言っても、本当にさっぱり浮かばないな………」
五十鶴「普通の家庭で、普通の学校で、普通に友達とか作って………」
五十鶴「就職して、お金持ちになって美人と結婚したいっていう、人並みの願望を持つ人間だよ」
創「夢は人並みだが、それを堂々と明かせるのはいい自信だな」
五十鶴「それ、褒めてるの?」
創「ああ、俺としては」
五十鶴「でもなんか………ね」
五十鶴「希望ヶ峰学園に行くまでは、僕にもあんな才能があれば人生が楽なんだろうなって思ってたよ」
五十鶴「でも実際は、皆も皆で人並みで厄介な悩みを抱えてるんだなって、苦労してるんだなって思ったよ」
創「まあな、彼らも努力や苦難の積み重ねでここに来ているわけだ」
五十鶴「僕は本当に幸運でよかった………」
創「何か言ったか?」
五十鶴「なんでもないよ、響原クン」
五十鶴「じゃあまた今度、僕の話を色々聞かせてあげるよ」
五十鶴と話を終えて別れていく。
アイツと会えない以上五十鶴が俺が最も安心して話せる相手だ、また暇を見つけたら話そう。
五十鶴「あ、響原クン!ちょっといいかな!?」
創「ああ、どうした五十鶴」
五十鶴「今、暇してたりしない?」
創「時間なら余裕であるな」
五十鶴「だったら………僕の部屋に来てもいいよ」
創「え?」
五十鶴「あ、迷惑だったかな?」
創「いや……」
創「入っていいなら行きたいかもな、お前の部屋」
………
ここが五十鶴の部屋か………
俺の部屋よりもよほど快適に住みやすく感じるな
いや、俺の部屋がおかしいだけか
五十鶴「どうかな?結構普通なんだけどさ………」
創「いや、悪くないな………俺の部屋は結構滅茶苦茶だから住みやすくていいと思う」
五十鶴「え………そうなんだ、他の人もそんなこと言ってたし案外僕の部屋が1番快適?」
五十鶴「………で、それでさ響原クン」
五十鶴「改めて聞くけど、僕が君にとっての2番目の友人なんて大層な存在でいいの?」
創「ああ、ここまで話してきてお前は信用出来ると思っている」
創「………分かった、お前でも納得出来るように話してみよう」
創「俺にとって今のところ友人と呼べるのはアイツとお前ぐらいだ」
五十鶴「え!?だって映画監督でしょ!?交友関係とかもっとあるんじゃ………」
創「それは『映画監督として』の話だ、このブランド目当てに近づく奴もいるしな」
創「でもお前はアイツは俺と同じで映画監督じゃなく『響原創』という俺の事を知りたくて話をしているだろう」
創「だから俺は腹を割ってここまで話をしてきた」
創「映画監督として仲間は大事だ、でもそれはそれとして………」
創「お前は俺が心から信用出来る友達だ、映画以外の話も検討したいような………」
五十鶴「…………」
五十鶴「じゃあ、聞かせてくれないかな」
五十鶴「そこまで信頼出来るなら、遠慮なく聞きたいくらいだよ」
五十鶴「改めて、僕は【幸運】だよ………最初に君と友達になれて良かった。」
五十鶴「僕達、大人になってもずっと友達だからね!!」
こうして俺は五十鶴と、部屋の中である程度プライベートな話をし続けた。
真っ直ぐで平凡なアイツが、俺は心から安心出来る存在だ。
最終更新:2022年08月15日 20:50