八郎の通信簿イベント

八郎「ああ、響原………」

創「泥兄、お前にとっては最悪な状況になってしまったな」

八郎「ああ、怪盗Cが居るだけでも大変だというのに、奴と共に監禁され、コロシアイ学園生活と……」

八郎「まるで君の作る映画のようだね」

創「俺の映画でもここまで突拍子も無く滅茶苦茶な展開を連発はしないな」

八郎「事実は小説よりも奇なりか、全く嫌になる……」

創「大丈夫か泥兄?あれから大分無理をしているように見えるが」

八郎「気遣いありがとう、しかし俺は警察官として皆に殺し合いをさせない責任があるんだ」

八郎「いつものように交番でのんびりしながら困ってる人に手助けするのとは訳が違う………」

八郎「こういう時、現場慣れしている警察署の先輩達の事をよく頭に浮かべるな」

創(やはりこんな状況で一番参ってるのは泥兄か………)

創「泥兄、お前も少しは休んでおいた方がいい」

創「気を配るのもわかるが、それで体を壊しては却って無意味だ」

八郎「それはそうだが………」

創「それとも……俺達が誰も殺さないと信用出来ないか?」

八郎「…………」


八郎「君には悪いが……そこばかりは信用出来ない」

八郎「警察官の俺がこんな事言っちゃいけないのだが……どうして人が人を殺さないのか、俺なりに考えたことがあるんだ」

創「興味深い、その理由はなんだ?」

八郎「……報復が怖いからだ」

八郎「友人や家族、親愛なるものへの敵討ちもそうだが………法律という大きな壁」

八郎「バレればはみ出しもの扱いされ、重い罰を受け……二度と前と同じ生活を送れない」

八郎「そうなるのが怖いから誰もやらない、それを受け入れて人殺しする奴でも無い限り、自分が1番可愛いんだ」

八郎「人間というものは俺達が思ってるよりも簡単に、そして単純に死ぬ事が出来る」

八郎「ルールはあれどこの学校内に法律はない、だから……死の理由は下手したら俺には手が付けられない程に単純に生まれる」

八郎「だから………ここではそう易々と人を信用してはならない、付け狙われたり利用される事も………有り得る」

創「………そうだな、だからこそ知らしめてやらないといけない」

創「【フィクションでもリアルでも悪人に明日はない】とな」

八郎「………ああ、その通りだな、失礼する。」



八郎「ああ、響原か………相変わらずのようだな」

創「泥兄か……なんだか疲れているようだが、何をしている?」

八郎「ここの生徒一人一人を確認していた、何が異常でもあればすぐに観察しなくては……」

創(まずいな、泥兄が前以上に神経質になっている………)

八郎「お前は大丈夫か?誰か嫌いな奴はいないか?」

創「落ち着け泥兄、お前が殺されかねんぞ」

八郎「う、そうか、俺も被害者候補か………加害者にはならないとして、死ぬのは避けたいところだ」

創「俺はお前がコロシアイとは関係ないところで死ぬんじゃないかと不安だがな」

八郎「そういうお前は大丈夫なのか?」

創「被害者の方は俺も危険かもしれんが、特に殺したいと思ったことは1度もない」

創「派手な映像は現実には必要ない、映画に映るのは存在しないものだけでいい」

八郎「さっぱりしているな………映画監督というものは」

八郎「お前は前々からクールで真面目そうには見えていたけど………」

創「前々と言えば、入学したばかりののんびりとした雰囲気のお前だな」

創「まだここに来てからそんなに経っていないのに、あの姿がとても懐かしく思える」

八郎「ああ……アレか………」

八郎「実を言うとあの振る舞いは交番勤務の時の仕事用スタイル………」

八郎「簡単に言うと、ほぼ演技だ」

創「演技だったのか、大した役者っぷりだな」

八郎「交番勤務ならここまで事件に躍起になるのも合わないと思って、それっぽく振る舞おうと考えてあんな風にな………」

創「そこまでするなら、何故交番勤務に留まっている?」

創「素人目線になってしまうが、お前は学生とはいえ警察署に入れるだけのスキルは持ち合わせているように見えるのだが」

八郎「そう見えるか?」

八郎「ああ、そうだね………実は、少しだけ俺は警察署に配属させてもらったことがある」

八郎「それも、刑事をやらせてもらっていた」

創「刑事か……その言い方だと署内で失敗してしまったのか」

八郎「まあ、そうだ………これ以上は流石に」

創「そうだな、そこは軽はずみで深堀りしていいものじゃない」

創「お前も少しは休息を取るんだぞ」


八郎「ああ………」



八郎「響原か、ちょうど良かった………Cを見てないか?」

創「Cか、直前には見ていないが………」

八郎「そうか……Cめ、何を狙っている?」

創「どうした、Cに何かあったのか?」

八郎「先程モノクマ学園長から連絡が入ってな………Cがこの学園の宝物庫を蹴破ったらしい」

創「モノクマの言うことを信用するのか?」

八郎「確かにモノクマの言う事だ、だが………だがCだ、少しでも情報が得られるならウソでも乗っかりたい」

創「お前………」

八郎「すまないな、俺でもどうかしているとは思う……」

八郎「だが、俺とCには避けられない因縁があるんだ」

八郎「向こうからすれば、俺の事なんて覚えていなかったけどな……無理もないか、奴からすれば無数にいる警官の1人に過ぎん」

創「因縁……というのは、前に話していた警察署時代の事か?」

八郎「そうだ、その時俺はCを追っていて………」

創「……その件で何か失敗をしてしまい、交番勤務をするまでになった?」

八郎「そういうことだ、お前になら話してもいいかもな……」

八郎「その昔、まだ幼い怪盗Cは大人の相棒を引き連れていたんだ」

創「聞いたことがあるな、確か……怪盗Bだったか?」

八郎「そう、連れていたと言っても部下だの親子ではなく純粋な相棒………と言った感じだな」

八郎「俺とその他警察官はスポットライトに照らされながら夜の街を駆けるC達を追い掛けていた」

八郎「当時、半端物で焦っていた俺はCに拳銃を向けていた」

八郎「……初めて凶器を人に向けた、牽制のつもりだったんだ、殺意なんてものは無かったんだ、俺は………」

創「…………」

創「どっちが撃たれた……?」

八郎「Bだ……弾丸は膝に当たったが、それで足を踏み外して………落下死した。」

八郎「俺は皆とは違う……皆より先に、人を殺してしまった」

創「泥兄……」

八郎「例え相手が大怪盗でも悪人でも殺しは殺しだ、俺は罪に問われるべき男だ!」


八郎「だが………俺はそうならなかった、それどころか、ある同僚には『世間を騒がせるようなクズをこの世から消した』と賞賛までされてしまった」

八郎「俺が警察官だから、相手が悪人だから俺に罪は無いのか!?違う!俺は……」

八郎「俺は殺人者だ!!」

創(………)

創(今は、そっとしておいたほうがいいな)



創「泥兄」

八郎「響原か……前は悪かった」

創「いや、俺の方こそあまり深く聞きすぎたな」

八郎「………」

創「だが……」

創「お前がここまで躍起になるのも、ようやく分かった」

八郎「たとえどんな事情があろうと、どんなに許せなくても、偶発でも」

八郎「俺は俺以外に人殺しが増えていく所を見たくない」

八郎「ましてや大事なクラスメートだ」

八郎「………こんな所でそういう話をするのも何だ、俺の部屋に来てくれ」

創「お前の部屋か」

………

ここが警察官の部屋……部屋と言うよりは、まるで取調室のようだな

八郎「まぁ、そこに座れ」

創「お前のそこは取調を受ける側じゃないのか?」

八郎「いや、これでいい………いつもこっちを座ると落ち着く」

八郎「………」

八郎「人間……どんな状況でもどんな相手でも報復は怖いけど、それは受けなくてはいけない当たり前のことだ」

八郎「……あのね、響原」

八郎「『多分、俺はここで死んでしまうかもしれない』と思っている」

創「………!」

創「まさか、Cがお前を狙ってるのか!?」

八郎「そういうことじゃない、変な事言うが収束する運命って奴だ」

八郎「人を死なせてしまった俺にはそれ相応の罰が降りかかる……交番勤務しながらずっとそんな事を考えていた」

八郎「ここでコロシアイ学園生活が告げられ時、俺はその時が来たんだなって悟ったよ」

創「お前………」

創「死ぬ気か!?」

八郎「お前の気持ちもわかるよ、響原……」

八郎「だから、皆にもわかって欲しいし、お前にも聞いて欲しい」

八郎「どうか、俺の代わりに何一つ後に残るものが無い楽しい人生であってくれ」

創「…………」

八郎「………」

八郎「分かってるよ、皆にも人を殺してもらいたくない、俺と同じにしたくはない………」

創「…………」

八郎「………何より」


八郎「僕、君に殺されるのは嫌だなぁ」

創「………」

八郎「ありがとう、こんな事……1人で溜め込んでいたから、これを言えただけでも、楽にはなれた」

創「…………」

八郎「じゃあ、俺またパトロール行こうかな、響原も気をつけて」

創「………」


泥兄は死に場所を、運命を今も探し続けている

そんな彼を、部外者である俺に何が言えるのだろうか……
最終更新:2022年08月21日 13:27