梨々花「あっ、あっ……響原さん!!」
創「木川……お前、クマ凄いぞ」
梨々花「は、はい……最近眠れてなくて……」
創「無理もないな……こんな状況だ、追い詰められることもある」
梨々花「はい……それもあるんです、私が狙われるんじゃないかと怖くて……それもあるんですが………」
梨々花「ベッド……私のベッドが低すぎるんですっ……」
創「………例の低所恐怖症か」
梨々花「はい………」
梨々花「部屋、一般的には普通なんですけど私には細かいところで全然合わなくて………」
梨々花「家だといつも2段ベッドの上の方で寝ていたのですが、ここのベッドは普通の物で………」
梨々花「言ったのですが、恐怖症なんて甘え、ちょっと荒療治すれば治るなんて言われてしまって……」
創「アレルギーに理解の無い奴みたいなこと抜かすな、あのポンコツは………」
梨々花「ど、どうしましょう!私このままじゃ不安で不安でおかしくなりそうで………」
梨々花「また安心する為に高いところに登りたい!数千メートルの景色を見て心を清めたい!!」
創「このままじゃコロシアイが起こる前に死んでしまいそうだ……見てられん」
創「なにか俺に出来ることは無いか?」
梨々花「え?響原さんに出来ること………ですか?」
梨々花「お気持ちは嬉しいのですが、何か出来ることとなると………」
梨々花「じゃあ………少しでも、ほんの少しでもいいです!私をどこか高いところに連れてってくれませんか!?」
梨々花「1メートルでもいいんです!今ここにいる所じゃ高さが全く足りなく感じて………」
創「分かった………といっても近くに椅子も高台も何も無い」
創「………仕方ない、こうするか」
梨々花「え?ちょ、ちょっと……」
梨々花「待ってください響原さんっ!?なんで、なんで私に近づいて………」
梨々花「きゃああああああああああああっ!!?」
梨々花「な、な、何をしているんですか響原さんっ!!そんな、そんなこんなの………」
梨々花「ダメですうぅぅぅぅぅぅ!!!!」
ドタドタドタドタ…………
梨々花「ひ、響原さん………」
創「木川、前は急に逃げることも無かっただろう」
梨々花「だ、だって仕方ないじゃないですか!!響原さんが急に私を抱きしめるようなことをするから!!」
梨々花「私あの夜別の意味で寝れなくなっちゃったんですからね!!」
創「持ち上げようと思ったんだが………」
梨々花「も、持ち上げるにしてもそうなら言ってくれれば良かったじゃないですか!!」
梨々花「…………で、それであの、今日は大丈夫ですから、改めて……してもらっていいですか?」
梨々花「この際贅沢は言いません!高いところならたとえハグでも人の温もりでも、距離1mでもお構い無しです!」
創「………それを俺に頼むのか?シークレットブーツ込みとはいえ背はお前の方が上だぞ」
梨々花「知りませんそんなの!私にあんなことしたんですから………せ、責任とってください、という奴です!!」
梨々花「さあさあ!!私にハグして、その上で持ち上げて、もう後は一線越えて凄いことにしてください!!」
創「おい、高い所に登るから脱線してないか………ダメだ、よほど寝れてないのかテンションがおかしくなっているようだな」
創「分かった、来い」
梨々花「き、来ますよ………」
創「じゃあ持ち上げるぞ」
梨々花「どんとこいです!!」
梨々花「はい!!!リュックはちょっと下ろしますね!!!」
創「よいしょっ………」わしっ
創(軽い………)
梨々花「ほ、ほわっ、ふあぁぁぁぁ〜〜〜〜!!」
創「………どうだ、木川」
梨々花「す、凄いです……景色が変わって……すごくいい気分ですうう〜!!」
創「………だが、ちょっとこの体勢は疲れるな………」
創「おい、おんぶに変えていいか?」
梨々花「お、おんぶですかぁ!?そこまで私の体に密着したいんですか!?」
梨々花「それにその、私……樹さん達と違って………が………」
創「………」
梨々花「ちょっ!!何も言わずに体勢を変えないでくださ……」
梨々花「あ………凄い……なんだかすごく落ち着き………」
梨々花「Zzzz…………」
創「………全く、よほど追い詰められてたんだな」
創「しばらくこうして歩いているか………」
梨々花「………………」
創「木川、どうだ……ようやくいつもの調子に戻ったようだな」
梨々花「え、ええ……お陰様で………」
梨々花「で、ですけど、その……しばらく私をおんぶしたまま移動してたそうですね」
創「下ろしたら飛び起きそうな気がしてな」
梨々花「……そのご気遣いは、本当に有難いです」
梨々花「でも、その………男の人にそこまで接触するの初めてで……」
梨々花「………響原さん、変なことを伺いますけど」
梨々花「貴方って……恋人とか、いるんですか?」
創「………恋人?」
創「いないな、親友ならいるが恋人はいない。」
創「この人生、ずっと映画の為だけに生きてきて………俺の中の関係は映画製制作仲間が殆どだ」
梨々花「………へぇーーー、そうですか、その中に女性スタッフはいたんですか?」
創「当然だ、まず女優として……映画で出来る事は山ほどあるからな」
梨々花「その中で響原さんに気があったと思うような人は」
創「考えたこともない」
梨々花「…………」
梨々花「……………」
創「その顔はなんだ………自分でもつまらない男であることは理解している」
創「だが、それをどうしてお前が気にする?」
梨々花「え?そ、それは………」
梨々花「………だって、私にあんな事しましたから………」
梨々花「私の恐怖症にも問題はあります、それはそうなんですけど……あんなにドキドキすること、したらもう………みたいなものじゃないですか」
梨々花「大体響原さんは自分のスペックを理解して無さすぎです!」
創「………自分でこんな事言うのもなんだが、俺は映画監督として色んなスキルを得ている」
梨々花「それも充分すごいんですけど、なんというか、こう、外面的な………」
梨々花「そんな………な人に、ハグとか、おんぶされるのって、もう………」
梨々花「………あっ」
梨々花「なんでしょう、私……私、勝手に独りで思い上がっちゃって、こんな事言われても迷惑なだけなのに……」
創「木川?」
梨々花「………」
梨々花「ごめんなさいっ!!」
創「木川………?」
梨々花「…………あ、あの、響原、さん」
創「木川?」
梨々花「……その、色々とごめんなさい、こんな所じゃ助け合わないといけませんのに、私あなたに迷惑ばかりかけて………」
創「………」
梨々花「あの、響原さん!」
梨々花「話したいことがあります………私の部屋、来ていただけないでしょうか!?」
創「………分かった」
………
木川の部屋……確かに所々、木川からすれば低く感じるだろうインテリアが悪意のように置かれていた
創「これが低所恐怖症なら、想像以上に不便なんだろうな」
梨々花「はい………最近は台や木の板を無理矢理下に乗せて補強しているのですが………」
梨々花「………」
梨々花「ちょっと、ベッドに横たわってみてくれませんか?揺れ具合とか気になりますので……」
創「分かった」
創「………これでいいか?」
創「これでいいか?」
梨々花「むらっっっ!!」
ドンッ!!
梨々花「響原さん!!響原さん………!!」
梨々花「なんですかその無防備っぷりは………見えてる腹ァ!!ちょっと、興奮するじゃないですか………」
梨々花「はぁはぁはぁ………そんなの見たら、私………」
梨々花「いけない女になってしまいます!!ハーッハーッ!!」
創「おい、木川……?木川」
創「本当に大丈夫かお前?酸素吸えているか?」
梨々花「あ、貴方が………貴方が私をこんな風にさせたんですよ!!」
梨々花「貴方がハグなんてするから、私は貴方の酸素しか吸えない体になったんです!!」
梨々花「………も、もう………この際、私の中ではっきりしておきます………!!」
梨々花「好きです!!好きっ!!私は!!貴方のこと好きになっちゃいました!!」
梨々花「ちょろい女とか言われてもいいです!!」
梨々花「あれから私は貴方しか考えられなくなったんです!!」
梨々花「こ、こ、こ、こんな私ですけど!!!お、お友達から始めてもいいでしょう…………
…………
梨々花「………あれ?」
梨々花「響原さーん?何処に……」
梨々花「というか、なんで私床に寝て……今何時…………」
梨々花「」
梨々花「夢……だけと、夢じゃなかった………」
最終更新:2022年09月01日 18:34