文吾「あ、響原!」
創「阿良々木か………」
文吾「………ねぇ、やっぱりこれって、現実……なのかな?実際はってことは、やっぱりないのか?」
創「……認められたい気持ちは分かるが、残念なことに現実だ」
文吾「事実は小説よりも奇なりとは言うけど、まさか実際にフィクションみたいな展開に巻き込まれることになるとはね………」
文吾「今もネット更新で続けているんだから、完結するまでに死ぬなんて勘弁したいよ」
創「そうか、ネット小説は俺と違っていつでも書くことが出来るな」
文吾「まあね………と言っても今は、趣味と言うよりはまるで現実逃避みたいになってる」
文吾「俺もね、実は結構不安なんだ……確信は無いけど、俺も誰かに殺されるんじゃないかと………」
文吾「でもパソコンに向かってストーリーを書いている時だけは全てを忘れられる、その時だけがいつもの俺なんだ」
創「………羨ましいな、俺は1人では映画の準備すら始められない」
創「俺も時々、創作をして現実逃避をしたい時もあるが………」
創「生き残る為にも、俺たちはしっかり今を見ないといけない……」
創「出来ることなら……死なせたくない」
文吾「………というよりは、死にたくない、じゃない?」
創「そうだな」
文吾「………」
文吾「ねぇ、響原は今作りたい話ってある?」
創「話?……」
創「そうだな、俺は決めてない………」
創「いや、お前には話してもいいか」
創「俺には昔、相棒がいたんだ」
創「昔から馴染みの……脚本家の相棒だ」
文吾「脚本家……とすると、その人がストーリーを書いていたんだ」
創「ああ、あいつが物語を書き、俺が映画にする……もちろん俺たち以外にも絵や音楽、配役といった様々な人間が集まってようやくひとつの作品になるんだが」
創「俺はあいつ以上の優秀な脚本家は居ないと思っている」
創「だからこそ……俺はあいつが【超高校級の脚本家】として居ると信じていたのだが」
文吾「まぁ、そんな事もあるよ……でも結果的に良かったんじゃないか?」
文吾「そんな大事な人と殺し合いをせずに済んだじゃないか」
創「………ああ、そこは本当に安心している。」
文吾「あ、響原!ちょっといいか?」
創「阿良々木、どうした?」
文吾「実はちょっと困ってることがあって………」
創「なんだ?言ってみろ、俺とお前の仲だ」
文吾「え、そこまで言ってくれるの?ちょっと嬉しいかもしれない………」
文吾「と、そうじゃない……大変なことになった」
創「何!?アイツあんなことを……何故そんな事に?」
文吾「モノクーロンの期限を損ねることはしていないはずなんだ」
文吾「パソコンでも特に怪しいサイトを踏んだ訳でもない、いつものように小説の続きを書いていただけ………」
文吾「そしたら急にモノクーロンが現れて、俺のノートパソコンを奪っていったんだ」
創「あいつも横暴になってきたな………分かった、取り返すのを手伝おう」
文吾「話が早くて助かるよ響原!」
創「モノクーロンはどこに行った?」
文吾「それを今聞いて回ろうとしていたところ!」
創「よし分かった、見つかり次第連絡する」
…………
しばらく歩いていると、モノクーロンの姿があった。
モノクーロン「あっ………響原でアルか!」
創「おいモノクーロン、阿良々木のパソコンを奪ったそうだな?」
モノクーロン「な………何が悪いネ!オマエラ風情が現実逃避して少しでも楽しく過ごそうなんて学園長代理として私が許さんネ!」
モノクーロン「オマエラなんて、絶望して死ぬこと以外何一つ許されていないんだから!」
創「お前……」
モノクーロン「オマエラは大人しく私たちに服従して絶望してればいいアルヨ!」
モノクマ【いやいや、いいよモノクーロン、そんな事しなくても】
モノクーロン「え?学園長?でも………」
モノクマ【あのねぇ!ボクは選択肢を奪った上で決まりきった絶望なんて見せられても、困るんだよ!学生生活のストレスにもかかわること!】
モノクマ【希望にすがってる人々が、それすら抗えないほどの絶望に包み込まれるのが、最高のエンターテインメントなんだから!】
モノクマ【ほら!分かったら阿良々木クンのアイデンティティを返してあげなさい!】
モノクーロン「………認めたくないけど、学園長がそこまで言うから返すアル」
文吾「響原!」
文吾「助かったよ………パソコン取り返してくれてありがとう」
創「何、創作家として作れなくなるのは死活問題だからな………」
文吾「感謝しきれないよ、響原……」
創「そうだ、聞かせてくれ……今、お前はどんな小説を書いているんだ?」
文吾「え?もしかして読んでないの?」
創「すまない、俺の部屋にはパソコンがなかったし、PCが置いてある環境も無い………」
文吾「ああ、そうだったんだ…………なら、仕方ないかな………」
創「…………」
文吾「あ、それで……連載してる内容だっけ?それって商業化してないやつ?」
創「現行作品もまだ書いてるやつがあるのか?」
文吾「ああそうだね……何年も前から書いてるやつも含めると、5本くらいかな」
創「5本!?」
文吾「もちろん日ごとに書く作品は分けて……1日10時間くらいは書き続けてる」
創「1日10時間………」
創「それはこの生活でも変わってないのか?」
文吾「ああ、寧ろ生活内でやることが少なくなったから執筆時間は前よりもちょっと伸びているかもしれないね」
創「……………」
文吾「勿論、小説書く以外にもこうしてお前と話したり睡眠とったり気分転換もしているよ」
創「睡眠は果たして気分転換に含んでいいものか疑問だが………」
文吾「いや、ちゃんと気分転換のつもりだよ?」
文吾「やりすぎると夢の中でも小説更新してて、それを前提で続き書こうとしちゃった時あるから………」
創「それは色んな意味で危なくないな!?」
文吾「うん、その時は保存、更新し忘れたのかと思ってすごく焦っちゃったよ……」
文吾「で、ああ……それで何の話だっけ?」
創「今書いている小説の話だ、商業化していない………新しいものもあるのだろう?」
文吾「あ、ああー………あるにはあるけど……今日はそれ書く日じゃないんだよ」
文吾「まだ全然書けてないしさ………その時が来たら、また説明するよ」
創「そうか、前々からお前の小説は読んでいたからな……楽しみにしている」
文吾「うん、期待して待っててよ………と言ってもここじゃ読む手段、無いけど」
文吾「………」
文吾「言えるわけないよなぁ………」
文吾「響原」
創「阿良々木……どうした、そんな顔して」
文吾「いや、その………なんだ」
文吾「パソコンの礼もあるしさ」
文吾「俺の部屋に来て……小説見てみない?」
創「………俺でいいのか?」
文吾「そりゃ勿論、さっきも言ったけど礼も兼ねてるからな」
…………
阿良々木の部屋……正に小説家が缶詰するような部屋だな。
文吾「…………」
創「本も山ほどあるな、これ全部お前が書いたのか」
文吾「響原の部屋だって映画が山ほどあるんだろ?」
創「確かに映画は多いが、俺は商業化はしていないからあるのは有名な作品だけだな」
文吾「つまり俺と逆か………自分の作品よりもっと色んな名作用意して欲しかったなー」
創「………」
文吾「あ、そうだったね、俺の小説だろ……?」
文吾「待ってろ、投稿サイトからログインして………」
文吾「はい」
創「………本当に凄い数を連載しているな、よくもまぁ時間と気力があるものだ、少し羨ましいな…………」
創「ん?」
文吾「………ああ、そう、そうなんだよね………」
文吾「ちょっと前に始めた商業化されてない新連載………ってやつ」
文吾「それ………デスゲーム物なんだよね………」
文吾「……もちろん言いたいことは分かる、状況が状況だし、怪しむかもしれない」
文吾「擁護しておくとね、この小説を書き始めたのは入学するよりずっと前だ」
文吾「ていうか、小説で起きていることを現実でも起こすとか、いくら超高校級でも無理があると思わない!?」
創「そうだな、いくら超高校級と言えどまるで世界を改変しているかのような力なんて有り得ない」
創「それで何かしら関係性を疑われると思ったのか?」
文吾「………案外モノクーロンが俺のパソコン取ろうとしたのって」
創「有り得るな……奴はそういう奴だ」
創「だが、あまり気にする事はない」
創「お前やお前の作品を見れば、そんなことはしない………出来ない奴だということはわかっている」
創「自分の小説を恐れるな、好きなように書けばいい………そうしてきたんだろう、お前は」
文吾「響原………」
文吾「ありがとう、俺の小説……見てってよ」
最終更新:2022年09月01日 18:36