ロートルはRRRのヒーロースーツ開発を行っている技術者のシルバーと共にRRR事務所に向かっているところだ。
シルバーは仕事の為RRRに提供する新
グローリースターのデータをシルバーに渡していた。
「あの……どう、ですか?僕、そういうのに詳しくなくて……」
「
エンタープライズもいい技術者が居るみたいだな、いや何よりデザインが……はぁ……」
シルバーはヒーロースーツの話をする時デザインに対して不満があるようにため息を吐いているように見える
「そうですか……あの、デザインの話、よくされてますけど一体誰が……」
「ウチの所長!
エンタープライズみたいな美人で人を見る目が合って仕事が出来て、何より美人なそっちとは全然違う!」
(美人って2回言った……)
「とんでもないアホオヤジだよ、新しいヒーロースーツ思いついたかと思えばこうして俺をコキ使ってんのさ、ヒーロー共からも総不評な見た目だしな」
と、言っているとシルバーの腹からバイブレーション音と共に震え出す、シルバーは嫌そうな顔をしながら携帯を取りだして中身を開く。
「どぅやらデザイン決まったみてーだな……うわ、またこういう系かよ、やめろって言ってんのに……」
「え、どんな内容なんですか?」
「そうだな、お前はそれを取りに来たから見る権利はあるよな、ほれ」
シルバーはロートルに携帯を貸して、新デザインを見せてもらう。
「えっ……」
それは思わず困惑が言葉に出てしまう。
シルバーが見せてくれたとヒーロースーツのモデルは女性用のように見えた、シルバーによるとRRRに所属するヒーローは全員女性らしいのでそこは納得した。
だが、かなり露出度が高い。
兎のようなアンテナと、膝から下を大きく足の力を増強する巨大なブーツのような武装はいいとして、お腹周りは丸出し、胸元もあの所長のように大きく開き、背面なんてお尻の肉が全部見えている。
更に腕には手の甲まで覆うような手袋に、肩が剥き出しのノースリーブ。
胸の谷間が見える程深いV字カット……
「こ、これ……を、そちらの所長さんが……」
「だから言ったろ、ウチのヒーローから総不評って……そもそも街の防衛とかの為のスーツなのに素肌が剥き出しな面が多くちゃダメだろうが……」
(え、そこ?)
「……作りたくね〜〜、どーせヒーロー共には総スカンなのになんで頑なにケツを出すんだケツを。」
「あ、あの、シルバーさんは、その、やっぱりRRRの所長さんの事嫌いなんですか?」
「うん、あんなクソ所長、自分の趣味押し付けるし俺の給料少ねーし、もう
エンタープライズ入ればよかったって後悔してる」
「そんなに不満なら……抜けないのは?」
「……そりゃー………」
「ちょっと前に入ってきたに過ぎない俺より、ウチのヒーロー共の方が所長の事嫌いだし、そいつらが辞めないんだから……1人だけ抜け出す訳にはいかないだろ。」
「………」
「シルバーさん、ヒーローに優しいんですね…」
「………ついたぞ、ウチの事務所、所長のツラ見たくないからラボ室に来い」
……
ロートルはシルバーに案内されてRRR事務所の裏に連れていく。
「ここがラボに一番近いところだ」
裏口を開くと、美女達が続々とシルバーの所に来た、恐らく皆RRRのヒーローなのだろう。
「ちょっと聞いてよシルバー!またあのエロ親父あんな格好のスーツ用意する気なんだけど!」
「また外付けのプロテクターを忘れず作っとくから、あとケツに関してはまたクレーム入れとく」
「いつもいつもごめんシルバー、今度タピオカおごるから」
「ココアラテにしてくんない?」
……
次々と女性達と話していなしていく姿を……ロートルは見ていくだけしか出来ない。
というか、一応
グローリースターが隣にいるというのに無関心、よほどスーツに不満があったんだろう。
「慕われて……いるんですね」
「ヒーローはアンタみたいに多忙だからな、所長にこういう小さい事でクレーム入れられるのは俺みたいな裏方ぐらいだ。」
街を守るヒーローもこういう人達に助けられている……今映ってるのはちょっと特殊な例だが。
ロートルは帰ったらうちの事務所の技術者も労おう……そう思った。
………
改めてラボ室に入り、シルバーはロートルの端末を強引にパソコンにブッ刺してデータを受信している。
「もうちょっとしたらお前の方にもデータ送るから、しばらく待ってろ」
「あ、ありがとうございます……」
しばらく待っていると、ラボ室にまた誰か入ってくる……が。
「えっ」
ロートルは小さい声で驚く、入ってきた女性……恐らくまたヒーローの1人なのだが、大きい。顔は見上げないと見えない、それどころか天井に頭のウサギ耳のようなパーツ当たりそうになっているほどの高身長、1度RRRの新ヒーロースーツデザインを見ていたので衝撃は薄いがこちらも露出が大きく、全くそれを動じてないような冷たい表情。
胸はGカップ以上はあると思われる巨乳、下半身は網タイツにハイヒール、そして兎のように、赤い瞳。
シルバーは全く動じず、その女性に世間話をかける
「フレン?俺ちょっと仕事してんだけど、アポは?」
「……見に来て、悪かった?」
「ま、お前も着るんだから見るなってわけにはいかないけどよ」
「し、シルバーさん……その人は?」
「え?何言ってんだお前の方がこいつに詳しいだろ」
「え!?」
ロートルは焦った、こうやって返されるということは……
グローリースターに近しい人間…
ロートルは兄の人間関係を全然把握してないので反応に詰まってしまうが……
「……『キングバニー』」
「あっ!」
キングバニー、その名前は知っていた。
グローリースターに次ぐ人気ナンバーツーのヒーロー、それがキングバニーだ。
スーツこそつけているものの、顔は完全に素顔だったので、今まで気付かなかったのだ。
クールで寡黙なセカンドヒーロー、そんなイメージ通りの……
「そ、他 の奴らスーツ騒ぎで全然見えてなかったけど」
「ま、まぁ……僕、影が薄いので……」
「………?」
今、ロートルは非常に焦っている。
目の前には下手すれば
グローリースターに1番近しいヒーローがそばにいる、自分が代わっている存在であることなど露知らず。
もし、彼女が本物と入れ替わっていることに気付いた場合、一体どうなるのか。
最悪のケースとして考えられるのは……
(世間的に消されちゃうんじゃ……)
ロートルは冷や汗をかく。
兄さん……本当にとんでもない物を押し付けてくれたもんだ……と心の中で呟きながら、データが受信されるを待つ。
「あ、あ、あのそれで……フレン、とは」
「あっ、やっべ……本名で呼んじまった、悪いキングバニー」
「今更いい…隠してないし」
「改めて……その、コイツはフレン・ミッシュ。ここ、RRRでは最強のヒーローで………」
「……あのアホ所長の、娘。」
ロートルとは驚いてフレンを見る。
シルバーは続ける。
フレンは無言のまま、シルバーの隣に立つ。
フレンの衣装は露出が多い、おそらく現在のヒーロースーツ……あんなものではシルバーがよく言っていたようにヒーロー達の不満が出るのも当然のように見える…が、彼女はそう感じさせない……
ピーーーー
「……データ、取れてる」
シルバーはこれまた強引に端末を引き抜き、ロートルに返却する。
……これで壊れてなければいいと思いながら、
エンタープライズに戻るべく足を……
「え?」
「これも、渡しておいて……」
最終更新:2023年01月02日 23:05