グローリースターの事実

エンタープライズに味方はいない?」

フレンはそう言った、確かに1度俺は……軽いジョークでフレンにグローリースターには人望が無いの?と言ったことはある、だが……

「グローリースターの味方はいない……?どういうことですか?」

「まさか、どっかのアンチヘイト物語の如く、ヒーロー達が実は裏では私利私欲を重ねあくどい事をしてた……なんて言うんじゃないだろうな?」

「いえ…シルバーさん、サービス所長は人の心を読む能力者ですから、そんな事あるわけないです」

「彼の言う通りエンタープライズのヒーロー達は皆優秀、不正は一切犯していないし欲求は私室のカスタマイズで発散している……」


「じゃあ、なんで?」


………その中で、一つ大きな可能性に思い当たった、そしてこれはほぼ結論なのだろう。
これまで、フレンは分かってて俺にグローリースターの事を詳しく教えてくれなかったのか。


「フレン、お前はこう言いたいんだな?」


「今コイツが名乗っている……グローリースターただ1人に、何かデカい問題があったんだな?」

「えっ………?」

ロートルの言葉を聞き、フレンが驚きの声を上げた。
それはそうだ、そもそも元になったグローリースター死んでんだから……と、そういうわけではない、生前、所謂このロートルの兄貴、便宜上Mr.アルタイルと呼ぶが、こいつは……

「そもそも……兄弟が血の繋がったかけがえのない弟を1人小さな家に住まわせて、様子を見るだけなんて……私が知っていれば、ヒーロー捨ててまで……」

「あの、それはいいんです、僕もう慣れましたから……」

「あー分かった、一旦整理な……つまりだ、ロートル君から見たMr.アルタイルこと君の兄!それは世間一般的なスーパーヒーロー!だがフレンのような見知った人からすればそうではない……だな?」

フレンは黙って頷く。

「どういう奴だった?」

「……私はあくまで、承認欲求は人として活躍するなら誰しもが持っている物とは思っている、私も少しばかりはあるかもしれない」

「だが、あのグローリースターは……あまりにもその欲求が強く、そして、それが暴走していた」
フレンは淡々と話していく。
そいつの話を。

「あいつはヒーローとして認められる為に、手段を選ばず、ヒーローとして生きてきた」

「その為にどんな犠牲を払ってでも、自分の利益を最優先にして、ヒーロー活動をした」

「そして……次第にそれは手段を選ばないものになった」

「そもそも……我々RRR含めたヒーロー事務所が技術を共有するのは、グローリースターが全ての技術を独占する為だ」

「いや、このヒーロー技術だけじゃなく………」

「おいおいおいストップストップ、話が飛躍しすぎだ、何の根拠があってそんな事を?」

「そ、そうです!それにそんなのサービス所長が黙って……」

「黙って、何も出来なかったら?」

「!」

黙って、何も出来なかったら……なるほど、ここにフレンのロートルに対する気遣いが感じられる。
出来ないってことはグルじゃない、サービス所長って奴には悪意がない……というのを、ロートルも浮かんだんだろう。

「じゃあ、サービス所長は……そ、その、僕はよく分からなかったんですが、前に本人からオトナの関係、と……」

「オトナの関係って何よフレン」

「シルバーは知らないなら知らなくていい……」

「え、何それ酷くない?」

「知っててもろくな事じゃない……オトナの関係というのは……つまり、プライズ・サービスも望んでそうなった訳じゃない。」

「何かしらの弱みを握ってたわけか」

………だが、ロートルも感じてるだろう、ある違和感を。
俺もそうだ、納得いかないところがある。


「おかしいな、それ」

「じゃあなんで今もこうしてグローリースターが居る?あ、いや……こういうことだ」

「善良なヒーロー達からは裏ではよく思われず、プライズ所長も弱みを握られたとしてその……オトナの関係?だとして」

「グローリースターが死んじまったなら、エンタープライズの全員にとって万々歳じゃねーか、なんでコイツを代役にする?」

「ましてや代わりならお前みたいな強いやつの方がいい、弟だからってロートル・アルタイルである意味がある?」

確かにロートルもそう思った
シルバーの言う通りだ。
もしそうだとしたらヒーロー事務所の連中にとっても、本物が死んでくれるのがベストだったはずだ。
わざわざ偽物を用意せずとも、プライズを追い詰めるものは無いのだから全部打ち明けてしまえばいい……だが。

ロートルはこう言った。

「子供の夢を……壊したくないから、でしょうか?」
子供の夢、そう。
ロートルがつい最近まで思ってたように、たとえ沢山の何かを踏み台にしていたとして、
アレはナンバーワンヒーロー。

「…………でも、兄さんが………そんな……とても、凄いヒーローなんだ、兄さんが……でも……」

「………ロートル、1回寝ろ、俺も腹括ってやる、フレンがお前を皆の理想のグローリースターにしたいってんなら、付き合うしかねーじゃねぇの」

「………」


「はい、たとえどんなに言われても兄さんは僕の全てです。」

「皆から僕の兄が最高のヒーローとして思ってくれるように……頑張ります、その為なら、死んでも……」

………

寝ろと言ったらその場で寝やがった。
止めようとしたが、硬い床の方が寝慣れているらしい……こいつの兄は、一体どこまでこの弟に酷い生活を送ってきたのだろうか。

改めて、俺はフレンに話をつける。

「向こうはグローリースターが死んで偽物が成り代わった事を知ってると思うか?」

「分からない、知らないから酷い反応をしてるのかもしれない、知った上で扱いが酷いのかもしれない」

「………こういう時は、身近なお話だな。」

実は、前に端末にヒーロースーツのデータを送受信していた時に、データを1度パソコンの中にコピーしておいた、使えるものはなんでも使おうと思ったが……
やはり、こいつが電話番号に入れていたのはプライズ・サービス所長のみだ。

「それ……後で私の番号、彼に後付けで入れられないかな」

「俺の番号も念の為入れる、その時お前のも入れてやるよ、えーとこれを……」

……パソコンでも、ちょっとシステムとプログラムを弄れば、テレビ通話みたいな真似が出来る。

『ハロー?こちら愛と平和のエンタープライズ所長……』

「ロートル・アルタイルの件でお話いいかな」

『…………』

「あ、切るんじゃない、そしてこれは脅しじゃない……ただの好奇心だ」

「このロートルって子に何があるんだ?グローリースターの偽物とか、代換えとかこの際俺たちはいい、俺は……」

『貴方と、同じ』

「はい?」

『貴方がこうして好奇心でアルタイル君の為に動いて私に通話してきた……行動原理でいえば、同じかもしれないわね』
フレンの奴が、自分の携帯端末を取り出した。
多分録音しようとしているんだろう
だがその前に、切れた。
恐らくあの所長が言っていたことは本当だろう、ロートルの事を知りたい……

いや、アイツのことを偶然知って心に思うところがあったんだろうな。

今のフレンのように………
最終更新:2023年01月02日 23:20