………
俺は先程の公園訓練の惨状を見て、やっぱりトレーニングは自分が指南しようと思った、フレンにやらせたらロートルが死ぬ以前に公園が1個消し飛びかねないからな。
1度アイツを呼びつけて「もう何もするな、飯食わせてブラブラしろ」と伝えておいた。
さすがに飯連れていくぐらいなら大丈夫だろと思って観察してたらいきなりバイキング系の店に入っていきやがった! しかもあいつのトレーには肉しか乗ってねぇ!!
完全にあいつの趣味…………
まあいい、どうせ明日か明後日にはまた仕事が入るだろうしな。
その時までに対策を練ればいいだけだ。
俺は一応背後の席に座って、ロートルとフレンの様子を確認する。
「どうした、なんでもいいんだぞ」
「でも……五百以上でも、高く感じて……」
「なら、私はこれから普段の食生活の3倍分の金を使う、とりあえずこれを食え」
「んぐっ」
そう言ってあいつはどこかから持ってきた結構分厚いステーキを突っ込む……
五百円より下?このメニューだとせいぜいライスとコーンスープ食って、それで終わりじゃないか、そりゃあれだけガリガリにも……
「1食五百円は少ない、もっと千円以上は……」
「い、いえ違います……」
「一日三食で五百円んんんっ (ドカッ)
「ロートル……俺のサラダ食え、千五百円分のサラダ食え」
「シルバーさん!?」
いかん、こいつ結構食わせないとまずいやつだ。
俺はとにかく野菜を食わせた。
こいつは健康的な体つきをしてるんだからちゃんとしたもんを食べさせればなんとかなるはずだ。
それにしても……
フレンが言うには今度の敵はかなり強いらしい。
他のヒーロー事務所が無視するほどなのだから相当なものなんだろう。
フレンもそれを想定して
グローリースターに手紙を出して……まぁ今はこの調子だが。
「それぞれやることがあるから互いに口を出さないと約束したばかりじゃないか、シルバー」
「予定変更だよ!」
………
「どうしたよ、もっと食ってもいいんだぞ?」
「気持ちはありがたいんですが、シルバーさん……そんな何皿も頼んで…どんな物でも出されたものは責任をもって食べないとダメって兄さんが……」
「問題ない、シルバーはどんなに口にしても絶対太らない体質をしているらしい」
「そ、俺結構エネルギー消費が激しいんだよ……それはそれとしてゼリー食え!あとこの店のスープも栄養あって美味いぞ!」
(……肉は食わせないのか?)
(まずは消化のいいもの段階なの!)
………
「きょ、今日は……ありがとうございました……あんなに食べたの、生まれて初めてで……」
「問題ない、今のお前は食うのも鍛錬の一つだ。」
「とにかく体良くしないとな!」
「………で、フレンこれからどうするよ」
「トレーニングはいつやる?」
「夕方とか夜あたりでいいけど」
「なら夕方までは私の好きにしていいんだな」
「えっ?」
そう言うとフレンはロートルを持ち上げ……いや、これは……抱えてる……どんだけ軽いんだあいつは。
そう言うと肩に乗せるように背負い、そのまま歩き始めた。まるで荷物のように。
ロートルの体重を考えてなのか、かなりゆっくり歩いている。
……
少ししてフレンの姿が見えなくなった。…………
ロートルの奴、大丈夫かな。
俺はとりあえず加速してあいつらの後をつけることにした、また何か変なことされても困るしな……
……
「あ、あの……これでいいですか?」
「よし、身長制限は問題ないようだな」
いやめっちゃ遊んでるやん……
おいフレン、公園→お肉バイキング→遊園地って何?なにこのスケジュール?デートじゃないんだぞ?いやデートで選ぶにしても結構狂ってんなこの組み合わせ?デートプラン未経験かお前?
しかも外出経験無いやつに、ジェットコースター乗らすか?
そして、そのロートルはというと……ベンチに座ってぐったりしている。
「…………」
「…………」
これ俺が声掛けた方がいいよな絶対。
「おい大丈夫かロートル、生きてくれよ、兄共々グローリースター飛び越えて星になるには速いぞ」
「う、うう……」
「なんだもう来たのか」
「うるせぇ!どこの世界に遊園地どころかブランコも知らない奴にジェットコースターというガチガチの奴をやらせる奴がある!」
「乗ってみたかったからな……」
「お前が乗りたかっただけかよ!!」
………
「悪かった、ロートル」
「いえ……」
「その、こんな事を言えるのは、というか……思い切り話が出来るのなんてお前とシルバーぐらいだが」
「実は私も、遊園地に行くのは初めてだった」
「バイキングの料理店も行ったことがなかったし、公園でボールを投げたことも1度もなかった。」
「だから………加減が分かっていなかった、すまない。」
「お前……」
「フレンさんも……ずっと昔は家から出ずに過ごしていたんですか?」
「………出ずにというよりは、出られずに……いや、まだこの話はしないようにしよう。」
「………あの、なんだか疲れました、トレーニング、僕の家でやってもいいですか?」
「らしいが、シルバー」
「俺は別に構わんよ、そんな激しい動きする訳でもないしな」
「じゃあ僕、先に帰ります……今日はありがとうございました」
ロートルは深々と礼をして、よたよたと家の方向に向かっていくが……
「行くぞ、シルバー」
「え、もう追いかけるのか?」
「恐らく私が知っている『グローリースターの家』じゃない、前に彼が話した実家に行くはずだ」
「私はその場所を知らない」
遊園地を出て、電車に乗り、30分程経った頃。
目的の場所近くに到着し、降りてすぐ、ロートルの姿を見つけた。
揃ってロートルの家らしきものを探すが、当てはまりそうなものは無い……と、思っていたのだが
「お、おい……フレン、ロートルって、アレに住んでいたのか?」
「私に……聞かないでくれ、それを探すために付けてきたんだ」
「それにしたってアレは……」
正直、今ロートルが入ったところが家なのか疑ってしまった。
多少ボロくても想定範囲内なはずだった。ただ、ただ……あまりにも、あまりに予想外過ぎた。
それは、一言で言うなら……穴屋敷。
それも酷く荒れ果てている。
ゴミ袋の中身を見ると、おにぎりの容器などが大半を占めている。
多分過去にあいつの兄貴が用意したものだ。
袋もあちこちに置いてある、これはロートルがまとめたんだろう……
水道・電気・ガスは見て判断したがアレで通っている。
…………ロートルは、ずっと、兄貴だけ見て、あんな家で、1人?
「フレン言いたいこと解るか?」
「お前もその気になったか」
「大掃除じゃオラァッ!!!」
俺とフレンは早急に部屋に乗り込み、色々としておいてやった。
………今日は、俺も疲れそうだな。
最終更新:2023年01月05日 22:10