………
「ん……んんん?」
昨日、色々ありロートルが目を覚ますと……
「えっ!?」
ボロボロだった部屋、既に老朽化を向かえる寸前だった家が、まるで新築のように………
「目が覚めたか、ロートル」
「え!?」
しかも部屋にはフレンが居た……なんか丸くて膨らんだ物体を持ちながら。
「朝ご飯としてRRR名物のうさぎパンだ、食え」
「ま、待ってください!これは一体……」
「あの通りだ」
「えっ」
フレンが指を指した先には、なんだか干物みたいになっているシルバーが。
聞いたところによると、シルバーの異能力は全身の血液、骨、内蔵が全て黒いゲル状のようになっているという、この世界でも異彩を放つ物で……その物体はあらゆる物を取り込み、どんな傷でも一瞬にして治してしまうと言う……しかもこれでもまだ出来ることの1つに過ぎないという。
要は、家に同じことをして全てを新品同然にまで直したらしい。
「文字通り肉体をすり減らす行為だからめっちゃ疲れた」
「アレで生きていることの方が不思議だな」
「まぁ半日もすればまた再生して本調子に戻る……でだ、お前……」
「まだ特訓始めてから1日しか経ってないのに結構体つき良くなってないか?」
「え?」
確かに、言われてみるとそうかもしれない。
毎日腕立て伏せとかスクワットをしてるおかげかな。
それにしても体が軽い気がする。
「恐らく今までろくな食事を採れず得られなかったエネルギーが昨日の内に大きく補給された事である程度標準的な体になりつつあるのだろう」
「スゴいね人体♡って奴か……ちょっと俺もびっくりしている。」
「後はトレーニングを何かしらしておけば、足でまといにならないぐらいにはなるはずだ」
「だが、今日はとてもトレーニングが出来そうにない」
「それはまぁシルバーさんがこの調子では……」
「そうではない」
「特番だ」
……
ロートルはフレンに担がれて高速道路を走る。
以前、シルバーがヒーロースーツを付けた状態だとスポーツカー並の速さが出ると言ったように、全力で走ると危ない為専用の道路が搭載されている。
「く、車に乗らなくていいんですか!?」
「私はこうした方が速い」
「そ、それに特番って!?」
「ヒーローはテレビに出る権利がある……契約書にも、そう書いてある、ロートルは知らないと思うけど」
「それはヒーロー活動だけ」
つまり、ヒーローとしての活動以外は普通に出来る。
しかも、ロートルは知らなかったのだが、
グローリースターの活動停止を発表する直前、ヒーロー事務所RRRが勝手に特番を企画していたらしく、そこで正式に発表される予定だったようだ。
その為、今度の放送に
エンタープライズも参加することに……
………
テレビ局に到着すると、既にプライズが車の中で準備をしていた。
「ごめんなさいねバニーちゃん、私が送り迎えしようと思っていたのだけれど」
「いえ、私も……最近は彼に用事がありますので」
「じゃあ、またスタジオでね……」
「はい…父の所に行ってきます」
ここで一度フレンと別れ、話をする為に一度ロートルを車に乗せた。
「ごめんなさいね、本当なら番組に出る時はもっと事前に話を……うん、いい体になったわ」
「あの、プライズ所長……僕、その……」
「大丈夫、テレビに出ると言っても何か話すってわけじゃないのよ。」
「……というか、これはなんの番組なんですか?」
「ヒーロー事務所が収入を得る上で大事な番組……ファッションよ」
「ふぁ、ファッション……?」
プライズ所長によるとこういうことだ、ただ悪を倒したり人々を守るだけでは仕事として、お金が出ないので成立しない。
一応ヒーローを元にしたファングッズを制作する会社と契約を結んだりしているが、それでも心持たない。
そこで、ヒーロースーツ作成の技術を応用してそれぞれオリジナル・ブランドを作り出した。
それを番組内で定期的に宣伝していったことから、ヒーローのテレビ出演が始まっていったという。
「だから、貴方は事務所が用意した服を着てくれるだけでいいの、痩せ細ってた頃に比べたら体も良くなったし……」
「な、なるほど……でも、まだサイズも測ってないのに……」
「それなら大丈夫よ、ついてきて」
………
ロートルはプライズに案内されるがまま楽屋に入ると、中に真っ白な髪と肌をした少女が居た。
「お待ちしておりました、ご主人様。」
「紹介するわアルタイル君、この子はアンティーク7、
エンタープライズが作ったアンドロイドであり、ヒーロー兼技術者、並びに貴方の忠実なお人形さん」
「貴方の姿を認証させる為にメンテナンスしてたから、今まで見せられなかったけど……」
「この人……機械……?」
ロートルは目の前にいるのが何なのか理解出来なかった。
ただ、これが人間ではないことだけは確かだ、人とは違う無機質さを感じる。
「こ、この人は何のためにここへ……?」
「気になる?やってあげて」
「かしこまりました」
そう言ったかと思えば……
「終わったわ。」
「え?……えええええ!?」
ロートルは驚いた、自分が着ていた服が全く別の物に全部変化している。
着崩れもせず、シワもなく完璧に自分に合った形のものが付けられている……。
「街の叡智を持って作られたアンティークにも異能力があるわ……それは『時間停止』」
プライズはロートルに言う。
この能力は……アンティークのみが動ける特殊な空間を作り出すことで類似的に停止させているという、その空間が維持出来るのは最大1分。
服を用意し、今着ている服を脱がし、改めて着せる……これを1分で行ったという。
「服の仕立てはアンティークがやってくれる、貴方はただカメラの前で動いたりしてくれればいいわ」
「す……すみません……_」
「何故貴方は謝るのですか?私は
グローリースターを満足させるために作られたものです」
彼女は感情のない声で僕に言う。
僕には分かる、彼女はただ
グローリースターに従うためだけに作られた
僕はあの人なんかじゃない。
ただの一般人で、兄の代わり。
でも……どんな状況であれ、少しづつ知り合いが増えていのが、少し嬉しかった。
今、やるべきことをやろう。
それはそれとして……
「所長は兄さんとオトナの関係と言ってましたよね」
「ええ、ちょっと前にね……」
「キングバニー……フレンさんともなにかあったんですか」
「フフ、それも色々と……」
「それで、そのアンティークさん……」
「なんか兄さんの関係者……女の人ばかりじゃないですか……??」
「あら、不思議?安心していいのよ?ちゃんと男の人とも話くらいはしてるから」
「いや、そういう問題じゃなくてですね……」
「さ、番組が始まるわよ、頑張ってきなさい」
最終更新:2023年01月05日 22:12