たくっちスノー、試験開始。

そして……遂に、運命の日。

冒険者ライセンスを得る為の試験の日が始まった。
外したら終わり、貧困なる者は人権も何もかも失うシビアな世界。

それでも……強くなるためにライチはここまで来た。


あとデニも参加することにした。

「し、ししょー……?」

「ここで少しでも生きるなら持ってて損は無いと言われたからな」

こうして見ると本当に参加者が多い、自分達の他にも数多くの行列がある。

「すげぇな、これ全部冒険者候補か……それがこの街に集結してんのか」

ヤッパン。
ライチによると『千の街』と呼ばれ、世界の中心とも言える大国。

その国には冒険者になるために集まってきた者達が集まっているらしい。
「さぁ!お前ら!全員並べ!」
そう言われて前に行けば、そこには黒髪の女がいた。
「私は今回この会場の責任者を勤めるベルガ・ラディアだ。早速だが試験の内容を説明するぞ」

「事前に調べたものは分かっている通り、今日より数時間一対一のタイマン勝負、これを3日間やってもらう。」

「なお、結果は勝負内容を問わず我々が求めている分野で決める」


「では一日目を開始する!」
開始と同時に皆一斉に駆け出す。
俺はどうしようかと迷っていると、ライチが手を引っ張ってくる。
見れば、既に目の前には対戦相手がいる。
しかも相手は……


「胡散臭いチャイナ兄妹共!」

「ジュ達のことそんな覚え方してたのかお前!!」
破浪の兄妹達……そういえば、こいつらも冒険者試験に出るとか言ってたな。

「ジュも売った武器相手にするのは慣れてるネ」

「シャンとしては、早めに知り合いと相手取りたいアルヨ」

「確かにそうだ……お前はどっちとやる?俺は兄の方だが」

「となると、僕は妹の………」

と、喋ってる間もなく商のヒザ蹴りがライチに飛び……

「ライチ!」

デニの方も右腕に鎖鎌が巻き付けられていた。
鎖鎌の先には朱が……

「悪く思うんじゃないネ、売人は常に”常在商売”、戦士なら”常在戦場”アル」

「この試験にはジャッジもスタートの合図もない、ただ制限時間があるのみ、だったらシャン達は好きなようにやらせてもらうアルヨ」

「うぅ……」
ライチが涙目でこちらを見てくる。
仕方がない、これも生きるため……それにあいつらはライチなんかよりもずっと強い。
ここは、修行の成果に期待してこっちは朱に集中していくしかないだろう。
そう思い、朱に向かっていく。

「まずは、お前から血祭りネェ!」

「おっと、これ返すわ」

デニは手にかかってた鎖鎌を引きちぎり、朱に向かってぶん投げるが、足でサーベルを掴んで跳ね返しそのまま突っ込んでくる。

それに対してデニはハンマーで対抗し、せめぎ合いになる。

「アンタ随分器用なのね」

「お前自分誰か分かってるアルか、『武具商人』ネ、あの時ライチに売ったムチも含めジュが1番売り物の使い価値分かってるネ」
朱の拳をかわしつつ、会話を続ける。
しかし、このままじゃジリ貧……
なんとかしないと……
そう思ってると、突如として自分の腕に痛みを感じる。
見ると、朱の拳が自分の腕を貫いていた。腕にはかぎ爪が付いている。
そしてその勢いのまま、地面に叩きつけられる。
だが、デニもタダでは転ばない……背中からハリネズミのように針を展開して、朱の武器を跳ね除ける。
傷もあっさり塞がる。


「不死の体……ほんッッとそれズルいネ……」

「俺も好きでこんなもの得たわけじゃないがね……」

更に言えば、デニにも武器を好きなだけ生み出す力がある、武具商人には敵わないかもしれないが武器の扱いに関しては負けるつもりはない。

そういえばライチの方はどうだろうか、商と戦っているが……商は、何も持っていない。

「武器、持ってないけどいいの?」

「ああ……商には必要無いネ」


「商はこうやって外部の武具を必要としない、体が武器そのもの、『全身武器』アル」

「こういう点で見れば、商はジュよりも強いアルヨ」
商の拳が飛んできて、ライチがそれをかわす。
すると今度は、足裏のスパイクが地面をえぐる。
やはり、武器が無くても十分戦えるようだ。
ライチは鞭を巧みに操りながら、商に迫るが……

「おいデニム、ここは一旦待って弟子と妹の戦いを見物といこうネ、どうせ時間は山ほどある」

「ライチ、気をつけろ!その妹マジでヤバそうだぞ!」

「骨にかかる負担を99%まで和らげる『柔拳』……シャンは朱よりコレを極めたことで、髪の毛先から足のつま先まで、全部分が凶器になったアル」
商は、まるで踊ってるように軽やかなステップを踏み、ライチの攻撃を避けている。
ライチは必死になって攻撃しているが、掠りもしない。
商の蹴りがライチの腹に入り、そのまま吹き飛ばされる。

「痛いか?商の足で蹴飛ばすのと、デカいハンマーで殴り飛ばすのとでは大きな差がアルネ」

「アレが全身武器……?」

「足は踵を当てれば巨大な木槌、爪を軸にすれば下手な刀より斬れる、もちろん足だから絞め技も出来る」

「脚部分だけでこれだけ出来るアル、全身武器の恐ろしさはその『利便性』ネ」
商は、ライチの鞭を掴み、そのまま引き寄せて顔を鷲掴みにする。
商はそのまま、投げ飛ばして地面にぶつける。
ライチの意識が飛びそうになるが、なんとか立ち上がろうとするところを……

「立ち上がろうとするのは典型的な隙アルネ……!!」

商はその瞬間を見逃さず、ライチのすぐ側で膝をつき……大きく腰を上げて、胸部をぶるんと揺らし……
乳房を脳天に叩きつける!!

「な……あ、あ、胸を鈍器みたいに!?」

「何驚いてるアル、そもそも乳というのはデカいと肩がこるくらいの脂肪の塊ネ」

「アレで勢い良く叩かれたら普通に痛いアルよ」

「しかも全身武器である商のパイパイは、ただのパイパイではないネ、アレを作るために数多の努力を重ねてきたし、商売でも割と使えるアルヨ」

「いや……それよりライチ!!大丈……

と、横からナイフが飛んでくるが、それを掴む。

「勝負再開ネ、もう向こうの決着は付いたんだからこっちの戦いに………」

「そうだな……」

デニはナイフを破壊し、右足を巨大な塊へと変化させながら迫って……


「こっちもすぐ決着が着く」

「へ?」

______ズッ!!
最終更新:2023年02月14日 17:05