たくっちスノー、早急に敵を倒す。

「あーーーーー!!なんでそんなあっさり終わらせるネ!」

試験一日目の夜。
試験者は終わるまで国から出られず、特別な屋敷で過ごすことになる。

「だってまだ一日目、明日も明後日もぶっ続けで?消耗は避けたいじゃん」

「そうアルヨ朱、だからシャンも一撃必殺でライチを仕留めたネ」

「この日に備えて武器色々持ってきたというのに………」

ライチ、デニ、朱、商は屋敷内の人部屋でゆっくりと過していた。
当たり前のことだが洞窟よりは過ごしやすい。
朱が持ち込んだ荷物には様々な種類の武器があった。
剣や槍、斧など一般的なものばかりだ。
しかしデニにとってはどれもが一級品である。

「ししょー、武器いっぱい持ってたんですね」

「持ってたっていうか、作れるんだよ……つっても、ライチの前じゃあえて見せなかったけど」

「………ライチ、負けたことは気にするな、商も言ってたろ、勝ち負けで試験の合格判定が決まってるわけじゃないっぽいって」

「でも、僕は強くなるために……」

「いや、商のアレは規格外だからいいんだ、初戦でアレとかついてなかっただけだから……」

「あの二人は?」

「そうじゃん、あいつらどこだ?」
ライチがキョロキョロと辺りを見回す。
朱と商が部屋にいない。
ライチが心配している様子はない。
デニが一緒にいるからだ。
それに、休息中はこの部屋から出ないことがルールなので問題は無いだろう。


「おい商!!ここキッチン結構充実してるアルよ!!」

「マジアルか朱!!洞窟でずっと揚げ物と刺身ばっか食ってて飽きてきたところアル!!」

「中華鍋は無いけどフライパンあったネ!!」

「おお!これは期待できるぞ!!早速何か作るアルよ!!」

「任せるネ!!こう見えてもシャンは料理得意な方アル!!」

と、案の定台所の方で2人揃ってなんか盛り上がっていた。

「……いいかライチ、あくまで俺の偏見だがああいう中華系の料理ってやつはとにかくデカイし、辛いし、味が濃いから慣らしとけよ」

「え、えぇ……はあ……」

朱が作っているのは中華料理らしい。
食材が山のように積まれている。
どう見ても3人で食べる量ではない。
朱が言うには、食料庫の冷蔵庫にもまだまだあるとのこと。
ていうか、3日で食い切れるのだろうか……


……
そして、2日目。
一日目は流れであの兄妹と戦ったのでスムーズに済んだが、本来はそうもいかない
はず。
この日のためにどれだけの準備をしてきたのか分からない。
少なくとも、ただ闇雲に選ぶのはダメなのは確かだ。
試験二日目。この日は別の人物と戦うことになる。
改めて他の試験者達をライチとデニは確認する。

よく見ると、人間には見えないものも多い。

「ししょー、これは……?」

「お前は知らなくて当然だが、今の時代旅行感覚で別世界に移動出来るからな、俺もそうだし」

「へー……」

「だが、この世界に来る奴らは大抵が戦闘狂の連中、マトモに話が通じない奴もいる、気をつけろよ」
ライチは興味津々にデニの話を聞いている。

慎重に相手を選ばなくては……という時。

「そして、勘違いしちゃいけない事がひとつある、ライチ」

「はい」



「俺達は決して選ぶ権利が常にあるわけではない」

その瞬間……空、空から何かが来る。それはデニの目の前に降り立った。
その大きな見た目。
黒い翼に身を包み、鳥のマスクを付ける。
デニはその男を知っている。
いや、時空に出れば知らない者などいないだろう。
そう、彼は……。
コンドルマスク

「あんな風にな……して、ライチ、お前にとっては汚名返上、昨日の戦いを巻き返すつもりでやってくるんだ」

「そ、それってつまり……」

「ああ、あいつと戦ってこい」
そう、ライチにとっては前回のリベンジマッチとなる。
コンドルマスクが目の前に現れた。
しかし、ライチはまだ準備が出来ていない。
いきなりのことで戸惑いを隠しきれないようだ。

デニの方はと言うとさっきの言葉はどうしたのやら既にマッチングして他の相手と戦いを始めてる。

「へーっ、俺も色々世界を旅してきたが、そんな見た目のやつは初めてだな」

デニの対戦相手は、両腕が翼であり、体が鳥と人を混ぜたような生物……『ハーピー』
目撃例自体はあるかもしれないが、まさかこんな冒険者試験の会場で見る事になるとは。
また、女性的な特徴も持ち合わせている。
顔は美しく、美女と言っても過言ではない。
デニは構える。
相手も身を構える。
両者が向かいあい、今にも一瞬即発……

(また時間かけるのもアレだし、今度は一撃で終わらせるか)

「私の名前はリント……」
「えいっ あっやっべ」

まだ喋ってる途中にも関わらず、デニは膝を大きくぶつけてしまった。
仰け反って、空の上で体制を立て直す

「おお……空飛べるやつは空で軌道を直せるんだな」
リントは空を飛びながら向かってくるが、デニはとりあえず上へ飛ぶ。
ハーピーであるリントは負けじと飛ぶが、デニの方が早い。
一気に距離を詰めると、デニは空中で大きく飛び上がった。
そしてそのまま、勢いをつけて両足を揃えて蹴りを入れる。


「ちょっと!!なんでアンタ飛べるのよ!」

「ああ悪い悪い、ほらちゃんと羽生えてる、今生やしたんだけどな」

「……そういえば空中戦には縁があまり無かったな……いざ!!」
リントが両手を広げ、風の魔法を使う。
空気の流れが変わる。まるで強風が吹き荒れるような感覚だ。
その風圧にデニの動きは止まる。
その隙を狙い、リントが突撃してくる。
鋭い爪で切り裂くつもりか。


「なるほど、冒険者を目指すだけは……あるっぽいな!」

が、それでもまだ足りない。デニは拳を構え、リントの顔面を殴った。
殴り飛ばされ、地面へと落下していく。
地面に激突する前に体勢を整え着地するリント。
デニもそれに続き地上へ降りる。
だが、その時既に次の攻撃が迫っていたが……


「悪いけど愛弟子のタイマンを見たいんでね、元より一撃必殺で片付けるつもりだった!」

「ちょっと大人気ないが、特別奥義!」


【ブラック・ビッグバン!!】
黒いオーラのようなものが全身から溢れ出る。
その黒いオーラに包まれたデニの体は黒く染まり、巨大化する。
その姿はもはや人間とは言えない姿であった。
黒い巨人となったデニはそのままリントに突進する。
リントはそれをなんとか避けるものの、すぐに方向転換し、ぷちっと潰された。

「はーっはっはっは、本当に大人気ない技を作っちまったな。」

「さて、ライチの方はどうなったかな」

デニは元に戻り、リントの安否を確認した後ライチの方へと向かっていった。
最終更新:2023年02月14日 17:05