安全な世界

正樹は唐突ながら地球を支配しに来た謎の宇宙人『マナトット星人』を止めるためにカードヒーローで勝負することになってしまった。

今回は正樹が後攻である。

(マナトット星人…名前からして使用するカードは間違いなくマナトットが中心)

(マナトットといえば何の能力も持たないただのバニラカードだ。だが、マナトットは……!)

マナトット星人の使用するカードを予想しながら正樹は手札を見てモンスターを用意する。
―――そして、マナトット星人の手番となる。
「マイ ターン」

盤面には想像通り両方ともマナトット。

正樹は後方にヤンバル、前衛に鉄拳シグマを置いた。
マナトットの攻撃で鉄拳シグマはダメージを受けるが、元よりHP6の高耐久のため、たったの2ダメージではビクともしない。

そしてマナトットは前衛向けモンスター、後方に置くと攻撃すら出来ない。


だがこちらは……!

「俺のターン!ヤンバルのワイルドクロウでひとつ飛んで攻撃!更に鉄拳シグマで攻撃してマナトットを撃破!レベルアップだ!」

マナトットのHPは4、これは後衛と前衛で合わせれば基本的に1ターンでやられる。
しかしマナトット星人は余裕そうだった。

「マイ ターン、プチトット召喚」

「プチトット…?ミラクル版のモンスターか」

出てきたのは、一回り小さマナトットのようなモンスター。
プチトットは特技もないようだ。
つまり、劣化版ということだろう。
このプチトットでその場しのぎという可能性もあるが、油断は出来ない。

(あのマナトットの連発から見て……敵は間違いなくスーパーカード『パパトット』を採用しているな)

パパトットとは、カードヒーローの中でもレアな限定カードの1つであり、マナトットをレベル3にすることで重ねて進化させられるモンスターだ。
パパトットは能力で相手モンスターを無条件でマナトットに変化させてしまうのだ。

(とにかくプチトットを潰して進化させないようにする!)
プチトットは攻撃力1体力3の超低ステータスだ。
そのため普通ならスルーしていい場面だが、パパトットの効果を考慮するならば話は別だ。

「マジックカード『スパーク』でマナトットにダメージを与えて鉄拳シグマで攻撃して撃破!前衛に来たプチトットをヤンバルのワイルドクロウで撃破!」

とにかく進化させない、どんどん攻撃して敵を倒してパパトットにさせる前に終わらせるしかない。

だが、次のマナトット星人のターンにそれは起こった。


「なっ……!!」


相手は一気に二枚もマジックカードを出てきた。
それは……『レベルチェンジ』

「た、確かにそれを使えば敵を倒さなくてもレベルは上げられる……だがそのカードは下がることもある!」

「スーパーカードに進化させるには2回連続で上昇を引き当てる必要が…!!」

「マイ ターン」

それでも発動した、両方とも……上昇を引いた

「降臨、我らが守護、我らが始祖にして王」

「パパトット」

召喚されたマナトットが一気にレベル3となり、スーパーカードの『パパトット』に進化した。

スーパーカードの召喚効果によって鉄拳シグマとヤンバルは一瞬で消し飛んだ。

「くっ……まさか無理矢理にでも召喚してくるとは」


モンスターが居なくなったので、強制的に正樹のターンに移る。

「パパトットの効果は強力だ、体力も多い……普通にやればジリ貧になるだろう、普通ならな」


「だが、スーパーカードは出せば勝ちの最強カードでは無い……!!」


「だが、まだ足りない……様子見だ、後衛にラティーヌ、前衛にボムゾウを召喚!」

「ボムゾウの自爆攻撃!こちらもダメージは受けるがラティーヌのヒーリングで回復させる!」

これでボムゾウは安心して攻撃出来る。
だが次のターン、やはりパパトットの効果でボムゾウをマナトットに変えられてしまう。
そしてマジックカードで入れ替えられて攻撃力を上げられてパパトットの攻撃でラティーヌも撃破され、今度は正樹の番だ。

「待っていた、この時を……俺のターン!!ガンタスを召喚して、マジックカード『悪魔のダンス』を発動!このカードは相手のモンスターのレベルを下げる!」

「そしてコレをスーパーカードに使用すれば…進化前に戻る!」

パパトットはレベルが下がり、ただのマナトットに戻る。

「これでマナトットは倒せる……俺の陣営のマナトットに攻撃した上で、ガンタスのバズーカ!!」

「1度進化させたスーパーカードはもう使用出来ない!そのデッキはただのマナトットの寄せ集めだ!」

………

そして、ついにマナトット星人を倒した。
マナトット星人は悔しそうにして母星に帰っていった。

「ああ……面倒な奴を相手にしたもので疲れたな、少し休むか……」

「…………おい彩月、そういえば俺はいつになったらここから出られるんだ?」


正樹は彩月に声をかける、だが返事は返ってこない。
この部屋は特殊な電波が流れており、こちらか、外部との連絡も取れないようになっている。
だから正樹も諦めていたのだが、この部屋の壁にある時計を見ると、時計の針は最初に来た時から動いていない。

いや、正確にはここに来て直ぐにマナトット星人が襲撃しに来てカードヒーローをしたので確かな事では無いが…

「彩月…ダメだ、何があったか分からないが、お前が何かやった事だ、危険ということは無いだろう」


………

そして、彩月の方は……

「く……遂にここのバッテリーでも持たなかったか、3日持ったのが奇跡みたいなものだったけど」

「ほんっ……と時空監獄のシステムは役に立たないな」

「でも、これで私が監獄にいる間……リアルワールドで何が起きても任天さんの安全は確保された」

「皆には悪いけど、私も全部は守りきれないからね」

「半年ぐらいの辛抱になるけど、私が檻に居るまでの間はそこで暮らしててね」

「侵略者とかを誘い込んで、カードヒーローで解決するように肉体と精神を書き換えるシステムは作成しておいたから大丈夫でしょ」

「ミラクル版は勧めたけど結局任天さんはDS版に留めたけど……」


「ま、任天さんが強くなりたいって言ったんだし大丈夫でしょ、頑張ってね」

【カードヒーロー】
END
最終更新:2023年05月20日 16:55