ルボワール氏来航。

「町田、お前やけに時間を気にするようになったな」

「いえ、最近同居人が出来ましたので」

「毎日帰ってくると夜食を作るようになったので、20時ぐらいには帰っておかないと申し訳ないので」

「お前そんな事考える知能あったのか……」

「今まで1人の生活だったから仕事しか考えてなかっただけですよ」

町田がいつものように仕事をしていると、また電話がかかってくる。

「総理大臣ですか」

『その……君も忙しいのに急にかけてきて悪いとは思っているのだが』

「総理大臣が一般人社員に謙遜する事はありませんよ、わざわざ昼に掛けてきたということは何か用が出来たのでしょうか」

『その……今回、君の仲間には連絡出来るだろうか』

「真奈美さんは大丈夫です、レッドナイトさんも今は働いているので連絡を入れれば来てくれるかと」

「ただ……勇者だけは絶対に無理ですね、もう誰にも離さないようにと閉じ込められています」

『それは……そういうものでしょう、勇者として連れ去られた彼はまだ小学生である以上、親としては』

「ではレッドナイトさんには私から連絡を入れて、後から真奈美さんと合流するということで」

「ああ、すまないね」

電話が切られると、町田はデスクから離れて上司の方を見る。

「すみません、定時よりも早いのですが」

「どこの会社が総理大臣の要請より仕事を優先しろなんて言えるんだ、言ってこい」

「申し訳ありません」

上司の説教を喰らいながら、町田は急いで会社を出る。
(この会社はホワイトだけどブラックだ)
町田が家に帰ると既に真奈美が料理を作って待っていた。
彼女は町田が来るなり、彼の頬に手を当てる。

「……また総理大臣から呼ばれました、今度は仲間も呼べないかと言われたので真剣なものらしいです」

「そう……私も準備しないと」

「………真由美さん」


「そろそろ終わるかもしれません」

「……それって、前に言っていた……」


「科学の世界と魔術の世界、現代とファンタジー、言うならば右と左の相反する存在」

「2つの要素の両立なんてことが……私にはあり得ると思えない」

……

「これはこれはお二人方!」

「この間ぶりですね、レッドナイトさん」

日本政府のすぐ側で3人は再開する。

「勇者殿のあの子に関してなのですが……問題ありませんぞ」

レッドナイトはカバンを開けてタブレットを出す、
そこには監視カメラの映像が映されていた。
そこに映る映像には、鉄格子の中にいる小さな少年の姿がある。
勇者はまるで人形のような表情をして座っていて、一切動こうともしない。
食事を持っていく母だけが唯一、勇者とコミュニケーションを取る事が出来る人間であった。
そして親がいなくなると、勇者は鉄格子に向かって手をかざす。

「皆、久しぶり!」

「リモート越しならまあ問題ないと考えてこういう形で……」

「現代文明も使いよう……ですね」

………

「なんか、こうして4人集まるのも久しぶり……だな」

「皆ブレンシュトルムに無理やり呼び出された、元は赤の他人ですからね」

「………小生、未だにあの時の感覚が忘れずに居ますぞ」

「あんなもの忘れたくても忘れられませんよ……総理大臣が待ってます、急ぎましょう」

総理大臣の所へ向かうと、そこには以前と同じく応接間に通される。
そこには総理が待っていた。
前回と違う点は、勇者パーティが揃っていることである
彼は座ったまま、ぺこりと頭を下げる。
そして町田は皆と合流すると、そのまま首相の元へ歩いていく。

「本日はどうなされましたか、総理」

「いや、それが……ブレンシュトルム側の国の事なのだが……」

「アルシュウ大国……そういえば聞いてなかったような」

「融合後のあの国の位置、日本列島からだいぶ離れてますからね」


「君たちを国に引き渡せと、数日越しに連絡が来た」

「え……!?」


「ああ……無かったことにはなってませんよね」

「我々、あそこで処刑されそうになったから元の世界に帰ろうとしてましたし」

「………」


「引き渡すと思うかね?」

「私がやったことが無駄になるので出来ればそうならないであって欲しいと言ったところですね」

「………ふむ」

「というか小生達としては、勝手に呼び出しておいて使えないなら処分て!せめてチートスキルくらい神からくれと言いたいところでありましてな!」





「よくあるんだぞ、そうやって問題が解決出来なくなったから他所に責任を押し付ける異世界転移事故」

「!?」

突如、総理達のすぐ近くに謎の男が立っていた。
護衛のSPが全員男に向かって銃を向ける。

「おいおいやめとけって、弾が無駄になっちまうだけだ」


「貴方は……ブレンシュトルムの人でも無さそうだし、魔族でも無いみたいですが」

「だいたい合ってる、俺の名前はルボワール・オール、その2つとも違う全く新しい世界から来たと言っておこう」

「新しい世界……?」

「そ、アンタらが巻き込まれたブレンシュトルム以外にも異世界ってのはこの世に数多くあってな、俺はワケあってそういう所を旅している」

「そんで、異世界と現代社会の二つの世界が突如融合したと噂に聞いて観光してみればこの通りだ……」

「まさか人間がそのレベルのことをやっちまうとは、時空ってのはこれだから面白いな」

「俺にどんな状況なのか聞かせてくれよ」

「………どうします?町田さん」

「私よりも総理に聞いた方がいいのではありませんか?国の代表ですし」
ルボワールは町田を見て、ニヤッと笑う。
そして指を鳴らすと、部屋にあったテレビが急に付く。
画面にはニュース映像が流れており、そこには先程町田が話していた内容についての報道が行われていた。
総理大臣はため息をつくと、そのニュースを見ながら話し始める。
国会では総理の緊急会見として記者会見が開き始めた。

「俺の事を信用してくれてありがと、総理大臣」
最終更新:2023年08月08日 20:19