ブレンシュトルム崩壊!?

「ほへー……異世界転移、生きている内から連れていくタイプか、悪質だな」

「異世界に連れていくのに悪質とかそうじゃないとかあるんですか」

「ま、見方によっては有無を問わず拉致してるんだからな、召喚と言うとき声はいいがアフターケアが整ってなけりゃ誘拐と大差ねーよ」

「そもそも、こっちから見れば別世界から召喚して助けて欲しいって時点で………」

「どういう意味で?」

「どうして異世界で魔王が現れて勇者がそれを討伐するって話が定番か分かるか?」

「神がそうなるように仕向けているからだ、世界の発展の為に」

「………と言ってもな、だいたい自分達の世界では解決しきれなくて仕方なくよその死人を引っ張り出したり、アンタらみたいに転移とかさせて無理矢理解決させるんだよな」

「自分のケツくらい自分で拭けっての」


「………その、貴方はつまり、神様……なのですか?」

「そうだな、お前らの世界やブレンシュトルムのではないが、俺の管理してる世界は融合前のお前らに似た文明ではある」

「………で、それで都合が悪くなったから処刑と、酷いもんだな」

「あの……小生は一応聞いておきたいのですが、こういう召喚って返す事って」

「よほど技術が進んでない限り召喚は基本一方通行だ、それどころか返そうとしたという事例すらろくに聞いたことがない」

「いやいやマジでさ、だから法律とかでも規制してるはずなのよ本来」

「ここの神様共は何してるんだか……」

ルボワールはそう呟きながら空を見る
だが、そんな事はどうでもいい。
問題は二つの世界が融合したことにより、様々な弊害が出ているということだ。
そして、それはまだ始まりに過ぎない。

「で、お前らはこんな状況になっても呼ばれておいて役立ずとか処刑してやるってのがまだ終わってなかったと」

「それで今日本から連れてこいと海の向こうまでブレンシュトルム側の国が」

「これ、なんとかなりませんかね?」


「何とかって言われても………俺の管理してる世界でも無いしな……」

「………ていうか、嫌な予感しかしねえな、ここにも日本があるのは分かったが、そのアルシュウ大国ってここからだいぶ離れてんだろ?」

「ここから離れた先の外国でも戦争してるところあるんだろ?なら……」

「まあ、そういうことなんだろうなぁ」
「とりあえずそいつらに話つけてくるわ」
そう言ってルボワールは立ち上がり外に出ようとする。
するとその瞬間……

大きな揺れが周囲を襲った!!

「うおっ!?」

「ひゃっ………」

「大丈夫ですか真奈美さん」


「な、な、な、な、なんですかな!?敵襲!?それとも爆撃!?」

「直ぐに状況確認をしなさい!」

「はい!防衛軍から報告ありました!!」


「………突如、巨大な爆発と共にアルシュウ大国、並びにその周辺数十メートルが、木っ端微塵に消滅したとの報告です」

「何!?」
報告を受けた一同は驚きの声を上げる。
それもその筈、突然の出来事だったのだ。
つい先程まで戦争していた国と、知ってる国でいきなり大爆発が起こったのだ。
それはまるで爆弾でも落とされたかのような光景だったという。
だが、それが本当に爆弾なのか、それともそれに近い何かなのかは不明だ。
しかし、どちらにせよそんな事が出来る存在は限られる。
この場にいる全員の頭に真っ先に浮かんだのは……

「まさか魔王が!?」

「おいおい、待て」

「そのアンタらが倒せと言われた魔王ゼノバースってこういうこと出来ると思うか?」

「………いや、出来るなら最初からやってるでありますなあ」

「だろ?これはゲームじゃないんだ、勇者を接待する必要なくガチでやれるんだよ」


「勇者なら魔王の動向くらい分かってるだろ?」


「…………じゃあ、今度は何で」


「召喚術……ですかね」


「町田さん?」


「なるほど……あの国はブレンシュトルムへ召喚する技術はあるにはあったらしいからな」


「こういう系のセカンドオピニオンは俺も覚えがある、人間の異世界転移に失敗したヤツは次に何をするか分かるか?」

「えっと……我々が処刑されそうになった時はまた何か召喚してましたね、私はその時の勢いを利用してこんな事になりましたが」

「もう1回召喚してたかやっぱり、そうなると向こうもやってるはずだ」


「人間が信用できないやつは必然と武器を、兵器を召喚したがる、奴らもそうしたはずだ」
ルボワールはそう言うと地図を広げてある場所を指す。
そこは、アルシュウ大国があったところである。
そして、そこには……

「これ、国があったところにあるコレなんだか分かるか?」

「………見たことない物体だ」

「ふっ……分かんねえだろ、俺も分かんない」

「十中八九どこかから召喚してきた物体だ、しかもそれの使い方ミスってこの通りだ」
ルボワールはそう言いながらその場所に指を置く その場所には何も無かった。
文字通り何もなかった。
そこにいたはずの人間も、建物も、街も、森も、山も、川も、海も、空も、全てが消えていた。
綺麗さっぱりに無くなっていた。
まるでそこだけくりぬかれたかのように その景色はまさに地獄絵図そのもの。

「あの、旅人さん」

「どうした」

「兵器のあるところ……」

「それは無論俺が回収する、軍隊が利用されたらたまったもんじゃ………」


「いえ、そうではなくて」



「何やら……その周囲の空間がおかしくありませんか?」

「え?」



「あっ、やっべ」


「1つの世界にあまりにも支離滅裂な要素が混ざりすぎて、世界が自己崩壊を始めつつある……」



現代日本と異世界の強制的な融合。
相反する文化と技術の無理矢理な両立によって世界そのものが不安定な中、更に無関係な物が突如置かれたことにより、限界を迎えつつあった。ルボワールはそれを見越して急いで行動を開始するが、それでも間に合わない。
既にアルシュウ大国は消滅し、周辺諸国はパニック状態。
そして、そんな世界が不安定になったところに更なる問題が襲い掛かる。
ルボワールはそんな状況を見て思わず舌打ちをした。
最終更新:2023年08月08日 20:21