時刻は20時。
既にどんな季節でも日が沈み、夜空を星が照らす頃。
正義の魔法少女トレスマジアは珍しくこんな時間だというのにエノルミータと戦っていた。
大都会を明るく照らす壮大なレストランの目の前でキスマークが陣取っている。
「エノルミータ!貴方達が最高級レストラン付きホテルを占拠したという話は聞いたわ!今すぐ中の人達を解放して!」
「そんなことするわけないでしょう?せっかくマジアベーゼ様への労いの為に私が招待したのですから」
「半ば無理矢理突入してスタッフ脅して何の言い草やコイツ………」
マジアサルファが強行突破を仕掛けようとしても、扉に触れた途端に元の場所に戻される。
さっきからその繰り返しだ。
「その力……やはり貴方の魔法は時間停止!」
「そう、私の魔法は停止……きっかり1分時を止める魔法!」
この間トレスマジア3人が何も出来ず鎖で拘束されたのもこの魔法によるものだ、止められた時間の前では無力になる。
なお、この魔法を知ったマジアベーゼは「あまりにもやる側が一方的すぎる物はつまらない」と不満であった。
「今頃マジアベーゼ様は最高級のディナーフルコースを満喫しているはず……そんな至福の一時をトレスマジアなんかに邪魔させるわけには!」
「う……こっちだって夜中だし、最近はアイツら以外にも倒さないといけない悪が多いっていうのに」
平行世界を誰でも越えられるようになったことでありとあらゆる世界の正義と悪が飛び交い、トレスマジアもエノルミータも例外無く別世界の善悪とも戦わなくてはならない為、お互いにヘトヘト……それでも尚、互いは互いを無視できないのだからヒーローには辛い世の中である。
「……貴方は何なの?どうしてそこまでマジアベーゼの事を………」
「私は初めてテレビでマジアベーゼ様を見てからもう彼女の全てに夢中なんです」
「あの方の事はなんでも知っています、趣味、身長、体重、スリーサイズ、BMI値、ムダ毛の処理頻度、生理日、妊娠の安全日と危険日、自慰行為のネタと頻度、性感帯、性癖、貴方達にやりたいプレイ、それから……」
「気色悪い!!!」
と、入口前でキスマークVSトレスマジアの壮絶な戦いが繰り広げられている中……マジアベーゼは屋上で優雅な食事を………
堪能出来てなかった。
「か、帰りたい………」
柊うてな、裏の顔はエノルミータ総帥マジアベーゼ。
実は彼女も晩御飯を食べようという時に無理矢理キスマークに拉致されてしまい、この屋上内で1人ディナーを食べることになったのだ。
言うまでもないがべーゼとしての姿はドレスコードもクソもない状態、更に言えばうてなは高級料理店なんて行ったこともないのでネットで知ったかぶった程度の礼儀作法しか知らない。
変なところで真面目な彼女はなんとかこの場をやりきりたかった。
気分を誤魔化すためにジュースを飲んだ、緊張でどんな味かも分からなかった。
その姿が傍から見れば悪の総帥が苛立っている姿だったのでスタッフも恐怖しかなかった。
震えながら前菜が出される、なんか見たこともない赤と緑の小さな塊。
(えっ、なにこれ………なにこれ!?)
(前菜……オードブル!?これどうしたらいいの!?丸ごと全部食べていいかな!?汚いって思われるかな!?)
(と、というかこの料理何……?)
キラキラしたものに疎い自分からすれば未確認生物、もしかしたらキウィちゃんならこういうのにも詳しいかもしれない、リードしてくれるかもしれない。
そもそもの話、1人で高級レストランの屋上はただただ虚しい。
「このまま帰って録画しておいた深夜アニメの魔法少女見たい……」
うてなの地獄のフルコースはまだまだ続く、しょっぱい味の前菜というなの何かを怖くて呑み込みながら、自分への当てつけのように眩く光る夜空を眺めた。
(つ、次は確か………どっかの漫画だとスープだったっけ?)
(この場合スプーンで飲めばいいの?直でゴクゴク飲むと下品かな……)
(大丈夫だようてなちゃん、スープなんて結局ただの液体だから一気飲みしても)
寂しさと不安からイマジナリーキウィちゃんっぽいものを生み出した、解像度は低めである。
キウィちゃんが言うようにスープを一気に飲み干す、なんだかドロドロとしていて舌触りが悪く、口の中に張り付くような感触……それでいて喉越し悪く残り続けるような、いくらなんでも高級レストランに出てきていい味ではない。
「うっ………なにこれ……」
………
その一方、強行突破や撃退を試みていたトレスマジアの方にも異変が訪れていた。
「うっ……!?」
マゼンタは膝から崩れ落ちて、うずくまって倒れ込む、息は荒々しくなり、目は虚ろになる。
「どうしたのマゼンタ!?」
「あら、多めに入れて置いて良かった」
「何をしたの!?」
「何をって……時間停止の時間は1分、ぴったり1分、絶対に時間まで解除できない」
「でも、ただ動かすだけで待つのも面倒だから………止めてる間に少しづつ媚薬を入れさせてもらいました」
「もちろん効きはバラバラですが貴方達にも」
「最低やなお前……うっ」
話してる間にもアズールとサルファにも体全体に媚薬の効果が回ってくる、足が痺れて体全体が疼き熱さで頭がおかしくなる。
精神を整えるので精一杯だ。
そんな中アズールは腰砕けで足がガクガクになりながらも立ち上がる。
「く……ふふ、貴方に出来ることはその程度?マジアベーゼならここから何もしないわけがないわ」
「マジアアズール……」
「時間停止……1分持て余す貴方に私を止められるかしら」
キスマークもアズールの余裕を見て構えを取る、これまでのように考え知らずに突っ込んでくることもない、ましてや誰よりも先に真化を済ませているのだ……
このままやられてはマジアベーゼ様に合わせる顔が無い、すぐにでも時間停止を出来る体勢を取る。
「何を考えてるかは分からないけど、この瞬間だけは通さない!」
「だって………」
「今頃マジアベーゼ様がそろそろメインディッシュのラッコ鍋を食べているはずだから!!」
「お前上司にも盛ったんかい!!」
………
「ええ”……?この店鍋とか出てくるのぉ……?しかもなんか……食べてたら熱くなってきた……」
「というかこれ、何の肉……?変わった匂い……」
発情のせいか鍋のせいか知らないが、今現在マジアベーゼは下の魔法少女以上にただでさえ持て余している性欲が爆発しそうになっていた。
自然と腰をヘコヘコと情けなく動かし身体中から色んな液体が漏れだして足元が水浸しになりながら食事を済ませていく。
イマジナリーキウィちゃんはホテルに連れていこうとする、ここがまさにレストラン付きのホテルだが。
(ああ……これ食べ終わったらトイレで5回くらい済ませてから帰ろう……あ〜めっちゃむらむらむらむらする、こんな時魔法少女がいればちょっと一発)
「お”お”お”もう考えただけでイ”クッ」
改めてこの悪の組織は別の意味で最低である。
…………
「いくわよキスマーク!!」
「止まれ!」
「んお"おおおおおおおおッッッ!!!」
「何がしたいんやお前!!」
時間停止後の感覚を認識できるのはキスマークのみ、それ以外からすればマジアアズールがキスマークの目の前で突然ガニ股ブリッジ足ピン絶頂したようにしか見えない、はっきり言って異常。
なにかしてくるようで何もしてこない、拍子抜けにキスマークは次はサルファに手を伸ばすが……
「油断したわね、キスマーク」
「っ!?」
いつの間にか背後にマジアアズールが立っていた、正確に背中から高出力の氷を放出させキスマークを完全凍結させる。
突然の事だったので時間停止も間に合わず、完全に硬直してしまった。
氷の中では能力も意味を成さない。
「な、何をしたの……?」
「私は何もしていないわ、でも貴方……好きなだけいじくってくれたじゃない」
「!!」
「ま、まさかこいつ……わざと私にイカされたの!?賢者タイムになることでリラックス状態となり、正確に私を凍らせる為に……」
「貴方さてはオナニーやり慣れてますわね!?」
「最低やないか!?」
「お……オナニーって何?」
「ええんやマゼンタ!まだ知らんでええ!」
だがまだ終わっていない、キスマークを凍結させたのはいいがマゼンタとサルファがムラムラしてるのは変わらないし、ホテルの中にはマジアベーゼがいる。
「そ、そういえばこいつはマジアベーゼにもラッコ鍋その他諸々を食べさせている……今ここで突入したら鴨が葱を背負って来るのと同じ……!」
「その通り……今あのお方はライオンとなって魔法少女を食べるのを待っている、性欲モンスターと化したマジアベーゼ様はもう誰にも止められないわ!」
3人は言われてみるとホテルの中が巨大な罠に見えてくる、ただでさえべーゼが性欲モンスターなのは元から変わらないのにそこから強力な媚薬キメてタガが外れたらいよいよ冗談抜きでお茶の間に流せなくなってしまってその手の方々から苦情が殺到してしまう。
「とりあえず私は1回イったからある程度は時間稼げるけど……問題はマゼンタ達ね、仕方ない」
「ねえ、ここは三角形になって3人で舐め合わない?」
「マゼンタ!!相撲するで!!!」
「相撲!?なんで急にここで!?」
「なんでもええからはっけよい!!」
突如魔法少女2人によるつっぱり大相撲、頭がうっすらとしながらも冷静になれないのでマゼンタとサルファはホテル前ではあどすこいどすこい、魔法少女同士の肌が密着し合い、手で思いをぶつけ合う
(なんか……これはこれでスケベやないか)
(この魔法少女……スケベすぎる!)
………
そしてマジアベーゼも遂に最後のコーヒーまで飲み干し、ほぼ全部キスマークが勝手に用意したドスケベフルコースを完食した。
「はあ……」
「魔法少女で10回はヌキたい」
溜まりに溜まった性欲は逆にオーバーフローを引き起こし、賢者タイム以上の冷静さを引き出していた。
暑さでありとあらゆる物を脱ぎ捨て、生まれたままの姿を晒しても開放感も羞恥心も無く、そこにあるのは静かな顔で今夜はヒイヒイ行くまでヤリたいという純粋な性欲であった。
もう人として越えてはならない一線を反復横跳びしている。
「そういえばそろそろ下に魔法少女居るかな、イクか」
ベーゼは遂に禁断の全裸徘徊という罪の上塗りまで始めようとした瞬間だった。
「うてなちゃんただいま〜とりあえず撤退はさせて……え」
「なんですっぽんぽんなの?」
ちょうどレオパルドが遠くの魔法少女との戦いを終えて帰ってきたところだった。
べーゼは壊れた。
(は……?考えればレオちゃんエッチすぎない?何その下半身ほぼ丸出しじゃん、誘ってるのかな?おっぱいもたゆんたゆん、あーこれたまらん、よし)
「え、いや、ちょ、うてなちゃん積極的………」
レオパルドの叡智な姿を見て改めて自分がムラムラしていたことを思い返したべーゼは息遣いが荒くなりそのまま腰を打ち付けて体を押し当て、その手でほぼ丸出しのレオパルドの尻を撫でる。
「おう”ぇっ!?うてなちゃんなんか今日は積極的………」
「なんか……キスマークが用意したフルコースを食べてから……」
「あー……あの野郎ヤク盛ったな……」
「そしたら体熱くなって、もうめちゃくちゃに魔法少女をアヒアヒになるまで虐めたい気分が止まらなくなってきました」
「うん分かるよ、今うてなちゃんすっごいぐしょ濡れだよ………よし」
レオパルドも覚悟を決めた、普段ホテル行こうヤろうと言っていたがその時が結果的に来た。
いつか来るもしもに備えて時空通販で取り寄せた超強力なマムシドリンクを一気飲みする。
急速に火照った体はキウィを戦闘態勢に変えて、服を脱ぎ捨てながらべーゼを引っ張って階段を駆け下りてベットに向かって投げ飛ばす。
もうお互い準備万端でびっしょびしょだ。
「うてなちゃん!!!もうここまで来た以上ド直球で言うけどヤろう!!!」
「いいよキウイちゃん!!もう我慢出来ない!!」
ズギュウウウウン!!遂に女達は2つの唇が重なり合い、体を擦り付けて快楽に溺れる。
ラッコ鍋その他諸々フルコースとマムシドリンクでボルテージが限界突破した2人のメスは10分で5回イク最高潮まで達し、部屋丸ごと濃厚な愛の空間に塗りつぶされていく。
「うてなちゃん!!!うてなちゃん!!!うてなちゃん!!!」
「キウィちゃん!!!キウィちゃん!!!キウィちゃん!!!」
もうどっちがウケてどっちがネコか、どっちが攻めててどっちが受けていたか、止まらない欲求と貝合わせ、共に下半身が汁まみれになっても意識が途切れることなく気が済むまでやり続けた。
「イキスギィ!!イクイクイク!!!」
「アーーーーーッ!!」
………
上の方では祭りになっている一方、どうにかトレスマジアもなんだかんだで欲求を相撲ということにして発散させることに成功した。
「あれは相撲……あれは相撲なんや……」
「じ、時間かかったけど……皆でべーゼを止めに行くよ!」
トレスマジアは元の調子を取り戻し、ホテルに突入する。
エレベーターを使いホテル屋上のレストランへ向かうが、もう既にもぬけの殻で、あるのは脱ぎ捨てられたマジアベーゼとレオパルドの服のみだけだった。
「どこに行ったの……?」
「というかこの匂い……一体私たちが戦ってる間にどんなモノ食べていたの」
「アイツの服も落ちとるってことはまあ十中八九一緒になってヤリに行ったんやろなぁ」
「問題はどの部屋行ったかってことや」
サルファはレオパルドのパンツを凝視する、走る勢いが凄すぎたので飛び飛びだが、床に2人の股から溢れ出して我慢限界の愛液が所々に道のように残っていた。
「あいつら猿か!!!?」
「この手の辿っていく物で1番最低な手がかりね………」
「ウチもうアイツらがサカってる部屋に突入すんの嫌になってきたわ」
………
「ごめんレオちゃん、やばいと思ったが性欲を抑えきれなかった」
「いやなんか私も売り言葉に買い言葉で獣みたいにやってごめんべーゼちゃん、本当はもっとロマンチックにやりたかったよね」
短時間で500回イクところまでイッてヤるところまでヤった2人は人生最長の賢者タイム及びピロートークへと突入。
まだ若いのに色々と卒業した早すぎるうてなとキウィは我に返り、これからどうしようかとベッドの中で考えていた。
「というか今すぐヤリたいと思ってたから服向こうに置いてきちゃったよ、もう来てるよ絶対……」
「もうこの際だから全裸で魔法少女と戦わない?アイツらだってやってんだし」
「う……確かにそうだけどさ、もう1つ問題があって」
「魔法少女でまた抜けなくはないけどこれ以上イッたら本当にテクノブレイクで死にそう」
ここに来てマジアベーゼ命の危機、そしてそれを………
部屋の真ん前まで嗅ぎつけたマジアサルファは聞き逃さなかった。
「テクノブレイクでやられる悪の総帥なんか嫌ね……」
「何?テクノブレイクって」
「簡潔に言うとこの世で最も恥な死に方や」
マゼンタに余計な知識がどんどん増えていく。
「というかアイツこの雌臭い感じからしてもうめちゃくちゃやってるのにまだウチらに欲情すんのか………」
「あ、大丈夫べーゼちゃん、私面白いもの時空通販で買ったから」
「え?」
…………
数分後、もう覚悟を決めてマゼンタを先頭に扉を開けて突入する。
「マジアベーゼ!レオパルド!ホテルから出……」
「はあ!!」
べーゼはハサミの怪物を大量に用意し、入ってきて早々トレスマジアをひん剥いて全裸にしてしまう。
「いやーっ!」
「なんや!今度はウチらで2回戦する気か!?」
「いえ、うっかり服を置いてきたのでこうでもしないとフェアじゃないんですよ!」
「それに関しては貴方達の自業自得じゃない!!」
トレスマジア、エノルミータ、お互い一切纏わぬ姿で遂に決戦が始まる___
「その前にレオちゃんアレやったげて!」
「おう見たいか私の通販品!」
レオパルドがスイッチを押すと、全員の体全体にモザイクがかかっていく。
「えっなにこれ!?」
「検問装置!大事な所にモザイクを掛けてくれる!」
「素晴らしいですレオちゃん!!」
「モザイクで見えそうで見えないのが一周まわってエロい!!」
モザイク全裸を前に鼻血が漏れるべーゼ、その瞬間存在そのものが卑猥と判断され顔面にもモザイクがかかり始める。
「あいつもう悪の総帥やなくてただの怪奇全身モザイク変態女やないか」
「あっ待ってモザイクで何も見えない!!」
「アズール!」
「一思いにしとめる!!」
「ぎゃー!!」
と、結局エノルミータはいつもの流れで吹っ飛ばされてしまい、ようやく仕事が終わったトレスマジアは元の家に戻り、すぐさま眠りについた……
後日、獣のように乱れたうてなとキウィが腰と足の痛みが暫く収まらなかったのは言うまでもない。
さらに言えば、キスマークが凍ったままと気付いたのは1週間も後であった。
「マジアベーゼ様……放置プレイもアリです」
最終更新:2024年05月02日 23:54