「あ、零さん、制服来ましたよ。」 格納庫で雪風の整備をしている零をシンが呼ぶ。 「MSのほうは馴れましたか?」 「ああ、なんとなく感覚がつかめていたからな。すぐに戦闘マニューバの機動は出来た。」 「そうですか。」 シンと零は更衣室へと入る。 ”深井 零”と書かれたロッカーを開ける。 「え・・・っ!赤服!」 シンは驚きの顔をする。 まさかあの議長が異世界の人間を赤服にするとは・・・。 ついでに言うと制服に付いたバッジ。 「ふ、フェイスかよ・・・。」 「?」 「あ、フェイスは議会直属の部隊の事さ。緊急時となれば指揮権はそこらの隊長より優遇がきく・・・まぁ、おれの上官って事だな。」 「・・・そうか、だが好きにしろ。おれには関係ない。」 「ま、ゆっくり着替えてください”隊長”どの。」 そう言うとシンは部屋を後にした。 ― 「何ですって!?」 「えっと、”ユニウスセブン”が軌道上に乗っています。このまま行けば・・・。」 ブリッジが重い雰囲気へと変わる。 「・・・まぁ、いいわ。本艦に任は降りてるんでしょう?メイリン。」 「あ、はい。」 「わかったわ。本艦はこれより―――。」 ― 「うわぁ、凄い~!」 シンの同僚であるルナマリア・ホークが驚きの声を上げる。 彼女もエリートの1人である。 「私フェイスのバッジ初めて見た~♪」 いわゆる”アホ毛”をぴょこぴょこと動かしながらしつこく零の周りを回る。 「・・・。」 普段軍服を着るという習慣がなかった零は違和感を感じる。 何せ特殊戦は他戦隊員とも会う事はなかったし、特殊戦内でも同様だ。 それに零は地上勤務の時いつも青いスカジャンを着ていた。 なれないことが多すぎて頭が混乱してきそうだった。 「・・・むぅ・・・。」 いつもの零ならいつも”あっちへ行け”とか言って遠ざけるのだがどうしてもそれが出来なかった。 「どうしました?深井隊長。」 ルナマリアが目を光らせて零の顔を見る。 そんな時だった。 「あ、アラート!?」 「何よ、こんな時にぃ。」 ぷぅ、と頬を膨らませながらルナマリアは更衣室へと向かっていった。 ― 「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」 「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する。」 「アスラン・ザラ機、出る!」 3機のザクがミネルバのハッチから飛び出した。 『初陣ですけど、大丈夫ですか?零さん。』 「ああ。」 『じゃあ。』 短い会話をシンは終えると一気に怒鳴った。 「シン・アスカ。コアスプレンダー、行きます!」 ミネルバ中央ハッチから数機の戦闘機が飛び出し、合体、”インパルス”へとなる。 「B-3、雪風、発進する。」 ”FFR-31/MR”スーパーシルフが飛び出す。 公式資料にはこのナンバーはプロトナンバーとされていた。 ザフトでの正式名称は”ZGMF-X367/SR シルフィード”となっている。 雪風はPSV装甲を持っている。 色が変わる。 白い装甲は光るように闇を貫く。 加速。 今回、零たちに与えられた任務は”ユニウスセブン”と呼ばれる構造体を破壊する事だった。 今まで自分がしてきた偵察任務とは違う、実戦。 そんな時だった。 「っ!?」 雪風から警告。 <MS approach. Evade.> 自分は人型にまだ馴れていないという事を雪風はちゃんと知っていた 。 (人間は、必要さ・・・ジャック。) 零はそう思った。 自分の親友であり、上官であるジェイムズ・ブッカー少佐の顔を思い浮かべながら。 敵は――前大戦時に活躍した機体、”ジン”。 零はビームライフルを撃つ。 敵はそれを回避。 ハイマニューバのジンであるらしい。 敵はビームトマホークを抜き出し、突撃してくる。 零はビームライフルを腰のハードポイントに押し込み、背中の対艦刀、”クレイモア”を抜き出し、応戦。 速さにものをいわせ、敵を斬る。 ただの破砕作業と聞いていたのだが、さっきのジンといい、さっきから聞こえるビームの銃声等々、破砕作業にはないような音をセンサは拾っている。 「おかしい・・・。」