血のような赤い夕日が差し込む放課後の教室。
そこに、三人の人間。
「あ……ああ」
放心して立ち尽くす■■■と、俺にすがって泣く■■■。
俺の横腹には授業で使うような彫刻刀が墓標のように突き立っていて、夕日とは違う赤色が広がっている。
真っ赤な血液は水溜まりのように広がり、俺の服や彼女の服に染みを作っていた。
……頭は、意外と冷静だった。
血液が抜けて、頭が冴えてきてるのかもしれない。
―――そして俺は、走馬灯のように彼女と出逢った日の事を思い出していた―――
―――
「柊つかさ……ああ、柊の妹か」
下駄箱。朝の登校時刻。
自分の出席番号のプレートが差し込まれた下駄箱の戸を開けると、ピンクの便箋が一枚。
裏返すと、3-B 柊つかさというまるっこい字体。
…………うむ、とりあえず前後左右の確認。
幸い、早めの登校なので誰もいない。
俺はそれを素早く学ランの内ポッケに入れて、教室に向かった。
「―――まだ、誰もいないな」
教室を覗きこみ、安堵の溜め息を吐く。
ま、朝の六時だし。そう教室には人はいないものだろう。
帰宅部である俺が何でこんな時間に登校しているかと言うと……まあ、習慣としか言いようがないのだが。
……とりあえず、開けてみるか。
内ポッケから取り出し、今一度ピンクの便箋を、今度はじっくりと見る。
……ってか、こんな朝早くにどうやって下駄箱に入れたのだろう? 昨日の放課後にでも入れてたのか?
くるりと裏返すとクラスと名前。便箋を留めているのはピンクのハート型シール。
……よし、開けてみよう。
破かないように慎重にシールをはがす。
中には、一枚の手紙が入っていた。
―――
『突然手紙を送ってごめんなさい。
3-Bの柊つかさです。
突然ですが、男くん、貴方に話したいことがあります。
もしよければ、放課後屋上に来てください。
柊つかさ』
……ベタな、それでいて簡潔な呼び出しの手紙だった。
字は実に女の子らしく、まるっこい字体だった。
俺は落ち着いてその手紙を便箋に戻し、内ポッケに戻す。
……まあ、何の用事かは分からないし、放課後行ってみよう。
……柊つかさ、か……。
―――
授業中、俺は落ち着かなかった。
あれがラブレターなのかフルボッコイベント発動フラグなのかは定かじゃないが、やはり緊張すると言うか、手に汗握ると言うか。
……何度か柊――言うまでもなく、柊かがみの方だが――を見てみたところ、何度か視線が合った。……普段はこんなことは無いので、彼女も知っているのかもしれない。……なんとも言えない気分だ。
そんなこんなで教員の話は耳に入らず、体感的に当社比三倍スピードで1日が過ぎていった。
そして放課後。
屋上に行くと、手紙の通り柊つかさが一人でいた。……フルボッコイベントでは無いようだ。
じゃあ何だ? まさかマジでラブレターじゃあるまいし。
「あっ……」
「えー、と。うちのクラスの柊……かがみの妹さん、だよな?」
「う、うん」
顔を赤らめながら頷くのはショートカットの少女。
柊かがみとは違い、穏やかで大人しそうなイメージを感じさせる。
「……それで、話って、なんだ?」
「え、えと、ね」
しかし、何の話だろう。
たしか、彼女と俺には面識は無いはずだが―――
「男くん、好きです! もしよかったら付き合ってください!」
―――そう、この日から、俺の世界は、変わり始めた―――
最終更新:2008年09月17日 17:10