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男「…わかった。いいよ。でもこなたにも、つかさにも絶対に秘密だよ。」
かがみ「…うん。…ありがとう。」
男「…だけどさ、明日帰ったらちゃんと親に謝って、つかさと仲直りするんだよ?」
かがみ「うん。……男、やっぱり優しいね…。」
男「大切な…友達だからな…。かがみも、つかさも。」
ヴヴヴ…
ヴヴヴ…
ヴヴヴ…
俺のケータイが鳴った。
【from】
柊つかさ
【タイトル】
男君?
【本文】
男君、今そっちにお姉ちゃん居ない?
居るんなら教えてほしいな。
お父さん心配してるし、私お姉ちゃんと話さなきゃ。
【to】
柊つかさ
【タイトル】
いないけど?
【本文】
かがみがどうしたんだ?
今家にいないのか?大丈夫?
【from】
柊つかさ
【タイトル】
そっか
【本文】
ううん。大丈夫。私の思い過ごしだったみたい。
お姉ちゃん今日友達の家に泊まるって出てったから、ちょっと心配になったの。
ウソついてごめんね。
私の事嫌いにならないで…
おやすみなさい。
俺はケータイを閉じた。
かがみ「…もしかして…つかさから…?」
男「…うん。」
かがみは自分の肩を抱くような大勢で下を向き、少し震えた。
かがみ「あの子…私のこと憎んでる…!」
男「え…?」
かがみ「私…家出るとき、はっきりとつかさに『男が好き』って言った…。最近つかさは…男の事になると人が変わったみたいに怖い顔をするし…」
男「…」
…俺は思い当たる節があった。
わんこ以来、つかさは普段のその顔からは想像もつかないような恐ろしい目をすることがある。
かがみ「…男…私からもお願い…私が来たことはつかさには言わないで…。」
男「うん、もうそう言うメールしたよ。」
俺はかがみにメールの文面を見せた。
かがみは少しほっとした顔になったがすぐに気がついた顔をして言った。
かがみ「ごめんなさい、もう一回電話貸して。」
男「うん、いいよ。」
かがみは友達に電話をかけているようだった。
かがみ「…そう言う訳で家出しちゃって今日は彼氏の家に泊まるから、峰岸の家に泊まったって事にさせてもらっていい?」
…
かがみ「うん…そうよ。…うん…ありがとう。」
…
かがみ「あっ彼氏の事は誰にも言わないで…いつかきっと話すから…うん…じゃあおやすみなさい。」
かがみは電話を切った。
男「アリバイ工作した?」
かがみ「うん、なんとか。」
かがみ「つかさは…私のこと許してくれるかしら…?」
男「…そもそも『許す』ってのがおかしいんだけどな…」
かがみ「………。」
男「とりあえずさ、明日は朝家寄って服とか鞄とかとっていかなきゃいけないんだから、今日は早く寝よう?」
かがみ「…うん、そうだね。」
男「かがみはこっちの部屋で寝な。ここはお客様用の部屋だから、もう長年使ってないけど。」
かがみ「うん…ありがとう。………ごめんぬ。」
かがみが眠った後、俺も布団に入った。
ふと気付くとケータイが光っている。
男「ん?」
こなたからのメールだった。
【from】
泉こなた
【タイトル】
無題
【本文】
ありがとう、男。幼なじみの件は把握した。
そのうち家遊びに来いよー!
こなたのメールで何だか少しほっとした俺はそのまま眠りについた。
朝。いつもよりだいぶ早く起きた。
かがみを送っていくために。
今日はかがみとつかさと一緒に行こう。
つかさとかがみ二人だけ一緒に居させるのは、つかさにとってもかがみにとっても良くないような気がする…。
コンコン
かがみの寝ている部屋をノックした。
男「…かがみ、起きてる?」
かがみ「起きてるわよ。ちょっと待って。今着替えるから。」
パジャマのまま帰すわけにはいかないので、母親の服で、かがみが着てもおかしくないような物を選んで渡した。
家までだったら、大した距離じゃないし何とかなるだろう。
かがみが着替えて部屋から出てきた。
かがみ「おはよ。」
男「うん、おはよう。とりあえず朝ご飯食べよう。」
二人で朝ごはんを食べながら話す。
男「とりあえず、家の近くまで送るよ。で、着替えたらつかさと一緒に登校して。俺は偶然を装ってかがみ達に追いつくから。」
かがみ「うん…ありがとう。」
男「つかさと二人っきりだと何かと気まずいだろ?」
かがみ「うん…。」
食事が終わり、俺達は柊邸に向かった。
男「じゃあ俺この辺に居るから、家出る時ワン切りしてくれ。」
かがみ「うん。ホントにありがとう。」
男「ちゃんと親に謝るんだぞ。」
ケータイにワン切りが来た。
俺は二人が家を出て歩きだすのを確認すると、少し間を開けて後から付いていった。
…心なしか二人は少し離れて歩いている気がする。
男「あ、おはよう。」
つかさ「おはよー!男君。」
かがみ「おはよ。」
男「昨日つかさからメール来たけど、かがみは昨日友達の家に泊まり行ったんだって?」
かがみ「うん。同じクラスの友達のね。」
男「ふーん。」
つかさ「……。」
駅でこなたに会った。
こなた「おはよー。昨日はありがとね。」
四人で登校した。
いつも通りに見えるがやはりかがみとつかさの間には溝があるように感じた。
その証拠に、二人は一言も会話していない。
学校に着いてかがみが隣のクラスに行くと、少し空気が軽くなった気がした。
みゆき「おはようございます。」
三人「おはよう。」
こなた「みゆきさんも、昨日はありがとね。」
みゆき「いえいえ、プレゼント、気に入っていただければ嬉しいです。」
こなた「うん、大事にするよ。」
その日はつかさとかがみの張りつめた空気を感じたが、学校ではいつも通りだった。
かがみは、その日はこなたの家に寄ってから帰ったようだ。
俺は、二人の問題は時間が解決してくれると甘く考えていた。
しかし、事件はその日の夜起こっていたらしい。
その事を知ったのは、次の日だった。
次の日。
俺は登校中は誰とも会わなかったので、一人で学校に向かった。
教室に着くとしばらくして、こなた、つかさ、みゆきさんの三人が入ってきた。
三人は俺を見つけるなり、焦ったような表情で俺に質問した。
三人「(かがみん・お姉ちゃん・かがみさん)の事知らない?!!」
男「……えっ?!」
みゆき「男さん!昨日の放課後以降、かがみさんに会いませんでしたか?!」
男「えっ?!会ってないよ??」
つかさ「ホントに?!」
男「…本当だよ。」
一昨日は泊まっていかれましたが…
こなた「ホントになんにも知らない?かがみんの事!」
男「昨日は放課後会ってないし…むしろ昨日はこなたの家遊びに行ったんじゃなかったのか?」
こなた「その後なんだよー!!」
みんなの真剣な顔を見て、俺はやっと何らかの『異変』が起こったらしいことに気付いた。
男「……かがみに…何かあったのか……?」
みんなの表情が曇り、一瞬の沈黙が訪れた。
みゆきさんが、沈黙を破った。
みゆき「かがみさん…昨日の夜、家に帰らなかった様なのです。」
男「……え?」
こなた「…まだ、家にも連絡無いんみたいなんだ。ケータイも繋がらない…。」
男「と…友達の家とかに泊まったんじゃないのか?」
つかさ「確認したよ…。でもそれは無いみたい。」
男「けっ…警察に……!!」
つかさ「うん…。もう捜索願出したよ。」
男「……なんで…」
…かがみが失踪した。
三人の話を聞いた。
どうやらかがみは、昨日こなたの家を出た後から行方が分からないらしい。
こなたの家には昨日の深夜、警察が来て事情聴取をしていったらしい。
ケータイは所持しているそうだが繋がらず、位置の特定も不可能らしい。
HRで黒井先生が、かがみの事を言った。
黒井先生「…という訳でうちの学年の生徒が行方不明になっとる。…何か本人から聞いとった人や、昨日の放課後以降見かけた人がおったら、後で先生に教えて欲しいんや。まだ事件て決まったわけじゃないけど…みんなも登下校は気をつけや…。」
授業中、頭の中はかがみの事でいっぱいで授業は頭に入ってこなかった。
…何より俺にはついこの間の、かがみの告白があったからだろうか、良くないイメージがよぎる。
…かがみはしきりにつかさを怖がっていた…。
『…いやっ!そんな事はない!!つかさが関わってるなんて有り得ない…!有り得てほしくない!!』
ともかくも昼休みに、俺は確かめなければならないことが有ることを感じていた。
かがみのクラス。
俺は入り口にいるショートカットの女の子に聞いた。
男「あの…すみません、このクラスに峰岸さんていますか?」
『峰岸』かがみがアリバイ工作といって電話をしていた友達だ。
ショートカットの女生徒「おーい!あやのぉー!!」
するとロングヘアでカチューシャをした、おでこの広い、おとなしそうな女の子が現れた。
峰岸あやの「みさちゃん、そんな大声ではずかしいよ…どうしたの?」
ショートカットの女生徒「なんかこの人がサ、あやのに用事有るんだって!」
あやの「…?そうなんだ。ありがとう。」
ショートカット女生徒「じゃあサ、私先ご飯食べてるよ!」
あやの「うん。」
ショートカットの女生徒はダッシュで教室内に戻っていった。
あやの「…えと、あなたは…?」
男「あ…俺E組の男って言うんだけど、かがみの事でちょっと聞きたいことがあって…。」
そう言うと、峰岸さんの顔は少し考えるような表情になった。
そして、ふと気付いたような顔をすると口を開いた。
あやの「…あなたが…柊ちゃんの彼氏さん?」
男「…えっ?いやっその違うんだけど…うーん…。」
『彼氏』ではないけど、峰岸さんが頭の中に思い描いている人と俺は、たぶん一致している。
俺「…そのことも含めて、峰岸さんに聞きたいことがあるんだ。」
あやの「ええ…私もあなたに聞きたいことがあります。」
俺たちは屋上に向かった。
屋上のベンチに腰掛ける。
俺「…まず、誤解がないように言っておくけど、俺はかがみの彼氏じゃない。」
あやの「えっ?!」
俺は一昨日、かがみがつかさとけんかをして、成り行きでうちに泊まったことを説明した。
…もちろん、つかさやこなたの事は伏せた。
あやの「なる程、そうだったんですか。」
男「うん…。一昨日はかがみが迷惑かけたみたいですみません。……で、昨日の放課後以降、かがみに会わなかった?」
あやの「先生にも言ったんですが…糟日部駅で会いました。」
男「えっ?!そっ…それで?!」
あやの「ちょっとだけ立ち話したんですが、どこに行くとかは言ってませんでした。」
男「…そっか…。」
あやの「ただ…」
男「?」
あやの「『確かめなきゃ』と言っていました。何を?って聞いたんですが、柊ちゃんは『大したことじゃないわよ』って…。」
男「『確かめなきゃ』?」
かがみはこなたの家に行った後、なぜか糟日部に向かった。
何かを『確かめる』ために。
男「とりあえず、ありがとう。俺もかがみの行きそうなとこ捜してみるよ。」
あやの「…柊ちゃんは…」
男「え?」
あやの「男くんのこと、好きなんだと思いますよ…。」
男「……うん。」
あやの「柊ちゃんが帰ってきたら、一度ゆっくり話してみるといいと思います。」
男「うん…そだね。」
昼休みは半分ほど終わり、教室に戻った。
教室にはつかさとこなたの姿はなく、みゆきさんが一人でご飯を食べていた。
男「あれ?みゆきさんだけ?」
みゆき「ええ。お二人はどこかに行ってしまいましたよ?」
男「そっか(珍しいな…)。」
俺はみゆきさんと一緒に昼食を食べることにした。
みゆき「…男さんこそどうしたんですか?昼休みになったらすぐにどこかに行ってしまったようですが…。」
男「いや、かがみのクラスに行ってさ、かがみの事何か知ってる人いないかって思って…。」
みゆき「…そうですね。かがみさんの事、心配ですよね。」
男「うん…。」
みゆき「変なこと聞いていいですか?」
男「え…?…うん。」
みゆき「前に…かがみさんが元気がなかったとき有りましたよね?」
男「うん。」
みゆき「あの時…感じたんです。かがみさんは……その…男さんの事好きなんじゃないかって…。」
男「え?!」
みゆき「あの後から、男さんはかがみさんと仲良くなったような気がしましたし…」
男「……」
みゆき「何か、あったんですか?」
…
…
気まずい沈黙を作ってしまった。
こなた、つかさ、かがみとの微妙な関係。出来ることならみゆきさんまで巻き込みたくない。
男「かがみは…」
俺は悩んだ末、やはり三人との関係は言わないことにした。
男「大切な友達の一人だよ。かがみが俺をどう思っているかとかは関係なく、かがみが困っているんなら出来るだけ力になりたいと思うし、今回だって…ヘンな感情とは関係なく、早くかがみが無事に帰ってきてほしいと思う。」
みゆき「………そうですね。私もそう思います。」
お互い言葉に詰まって、また沈黙となった。
ちょうどそこにつかさが入ってきた。
つかさ「あれ、こなちゃんは?」
みゆき「つかささんが教室を出て行った後、どこかへ行きましたよ。」
つかさ「ふーん…。」
男「つかさこそどこ行ってたんだ?」
つかさ「…先生のとこ行ってね…お姉ちゃんの事話してきたよ…。」
男「…そっか…。」
つかさ「……実はね…一昨日お姉ちゃんとケンカしたんだ…。お姉ちゃんが居なくなったのは…私のせいかもしれない…。」
…そう言って涙目になるつかさを見ていると、かがみの失踪に、つかさは少なくとも深く関わっていない気もする。
男「きっとつかさのせいじゃないよ。自分を責めるより、とにかく今は早くかがみが帰ってくることを祈ろう。」
つかさ「…うん…。」
…むしろかがみの失踪には俺自身が関わっている気がする。でも今はとにかくかがみが見つかるように最善の努力をするべきだと思った。
授業が始まる直前、こなたが教室に滑り込んできた。
また午後も集中できない授業を聞いた。
放課後。
かがみを除いた四人で帰る。
駅でみゆきさんと別れ、柊家の前でつかさと別れた。
今日はみんな口数が少なかった…。
特にこなたは一言もしゃべらなかった。
『やっぱり親友が行方不明になるなんて相当ショックだったんだろうな…』
わずかな距離をこなたと歩く。
するとこなたが俺の服の裾を掴んで言った。
こなた「…なんでかがみんはいなくなったんだろう…」
男「…わからないよ。」
こなたには…一昨日かがみがうちに泊まった事は言えない、と思った。
こなた「…そーだよね。…。」
男「こなたこそ、かがみから何か聞かなかったか…?」
こなた「………。」
男「?」
妙な沈黙が流れた。
直感的に俺は、『こなたは何か知っているのかもしれない』と思った。
しかし、うまくそれを切り出せずにいるとこなたの口から意外な言葉が出た。
こなた「ね、男。」
男「ん?」
こなた「…今日さ、昼休み屋上にいたよね…?」
男「…へ?」
こなた「………誰?……あの女?」
こなたの大きな目が俺を覗き込む。
服の裾を掴んでいたこなたの手が、今度はそのまま俺の手首を掴んだ。
こなた「だれ?」
こなたが俺をつかむ力はだんだん強くなる。
男「お…落ち着け、こなた!」
こなた「落ち着いてるよ、男。で、だれ?」
男「かがみの友達だ!かがみがいなくなった理由知ってるかもしれないと思って聞いてたんだ!!」
こなた「………ホント?」
男「本当だ!」
こなた「…ホントにホント?」
男「うん、本当だ。」
こなた「………」
男「……こなた?」
こなた「……うん、分かった。」
男「こなた…」
こなた「フラグだったらさー、バッキバキにしてあげようかと思ったけど、男がそう言うなら信じるよー。」
男「ど…どうしたんだお前…。…大丈夫か?」
こなた「んー?私はいたって正常だよ。毒もマヒも混乱も受けてないし。」
男「そいうことじゃなくてさ……。」
こなた「………なー男。」
男「ん?」
こなた「…おとこは…私の味方だよね?」
男「え?」
こなた「味方だよね?」
こなたの声はひどく落ち着いていて、少し笑っているように見えた。
男「ど…どういうことだ?」
こなた「ちがうの?」
男「こなた…?」
こなた「ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちがうの?ちが…」
男「味方だよ!俺は…こなたの味方だから!!とりあえず落ち着け!!!」
こなた「………ふぅ…危うくゲシュタルト崩壊するとこだったよ。」
男「げしゅ?」
そう言うとこなたは俺に抱きついてきた。
男「ちょっ…!!」
こなた「かがみが、つかさが、みゆきさんが、私の敵になっても…男は私の味方だよね?」
こなたは俺の胸に顔を埋めながら喋る。
声が少し震えていた。
『誰かと…何かあったんだな…。』
そう感じた俺は、その場はとにかくこなたの気持ちを落ち着かせることだけを考えることにした。
男「おっ…幼なじみだろ。俺はこなたの味方だから…。」
俺はこなたの頭を撫でた。
こなたが俺の背中に回した手がいっそう強くなった気がした…。
暫くしてこなたは俺から離れるとまたいつもの眠そうな顔に戻って笑った。
少し目の周りを赤くして。
こなた「なーおとこー。」
男「ん?何だ?」
こなた「………コクハクの答え、まだ出ない?」
男「……うん…。」
こなた「……そっか。」
男「……今はさ、かがみの無事を確認しなきゃ…。」
こなた「………」
男「………こなた?」
こなた「……うん、そうだね。」
男「……。」
こなたの家の前に着いた。
こなた「じゃあさ、また明日ね。」
男「うん。…その……あんまり無理するなよ?」
こなた「うん……あのさっ…」
男「ん?」
こなた「……んーやっぱ何でもない。」
男「何だ?」
こなた「………私が未来から来たって言ったら、笑う?」
男「昨日なんか見たろ。」
こなたが家に入るのを確認すると、俺は自分の家の方に向かって歩き出した。
何だか時をかける感じではぐらかされたが、こなたは何か言いたいことがあったのかもしれない。
…まさか、こなたはかがみの失踪のことを知っていて…
『いや、やめとこう。』
こなたがかがみの失踪に関わってるなんて考えたくなかったし、何かあるならきっとこなたは自分から言ってくれる。
さっきはまだ心の準備が出来てなかっただけで…。
こなたが言ってた『敵』の事も気になったが、こなたが自分から言うまではただ見守ろう…。
そんな事を頭の中でぐるぐる考えながら歩いていると、後ろから俺を呼ぶ声がした。
声「おとこー」
男「ん?」
黒井先生「やっぱり男かー」
男「おわっ先生!どうしたんですか?」
黒井先生「散歩や。」
男「散歩っすか…。」
黒井先生「突然やけど、ウチとデートせんかー?」
男「はい?」
黒井先生「いや、一緒に夕食行かんかーって意味や。奢るでー?」
男「と…突然どうしたんですか?」
黒井先生「いや、深い意味はないで。…ただな、男はいっつも一人で夕食食べてるんやないかなーって思ってな…。」
男「…先生…。気持ちは嬉しいです。ただ…迷惑じゃないですか?」
黒井先生「ハッハッハー!生徒が先生に気を使う必要ないんやでー?!…それになー先生も一人や。安心せーや!」
男「なんか…すみません。いつも色々気を使ってもらっちゃって…。」
黒井先生「だから、気にすること無いでー?!」
なんだか悪い気もしたが、断りづらい雰囲気になったので先生と一緒に夕食を食べることにした。
家に一旦帰って荷物をおいた後、黒井先生の車に乗り郊外のレストランに行った。
男「…なんか本当にスミマセン。」
黒井先生「マジに気にすること無いでー」
料理が運ばれてきて黒井先生と話しながら食べる。
詳しくは知らないが、黒井先生とは境遇が似ているからだろうか?お互い昔からの知り合いの様に壁もなく話すことができる。
食後のコーヒーが運ばれてきた頃、黒井先生が思い出したように、とんでもないことを口走った。
黒井先生「ところで…男は泉と付き合ってるんか?」
俺のコーヒーを飲む手が止まった…と言うかヘンなとこに入った。
男「…ゲフッ!ゲフッ!!なななっ何言うんですか!!!」
黒井先生「ほーう…ずいぶん焦っとるなー」
男「違いますよ!先生が急に変なこと言うからコーヒーが入ってはいけないとこに入ったんですよ!!」
黒井先生「男は付き合ってもいない女と道端で抱き合うんかー」
男「!!あれは…その……」
黒井先生「見てたでー」
男「………。」
黒井先生「………。」
男「……あの…」
黒井先生「…泉は……やめときーや……。」
男「えっ………?!」
黒井先生「…女の勘や。」
男「………。」
…黒井先生は確かにお節介な人のようだけど、こういった事に口を出す人じゃないはず。ましてや先生とこなたはネトゲ仲間で仲良いんじゃないのか?
俺は完全に【状態:混乱】になっていて、こなたとは、少なくとも今はそんな関係じゃ無いことを弁解することは出来なかった。
…その後、黒井先生の車で家の近くまで送ってもらい、黒井先生と別れた。
俺の脳裏にさっきのこなたの言葉が浮かんだ。
…まさか、こなたの言う『敵』は黒井先生…?
…いやいやいや!こなたはさっき黒井先生が言った事なんて知らないはずだ!
その瞬間、余りにタイミング良くケータイが鳴った。
【電話着信:泉こなた】
トゥルルルル
トゥルルルル
トゥルルルル
トゥルルルル
トゥルルルル
→電話を無視
→電話をスルー
→電話にでんわ
…なんて選択肢は俺には無く、一度深呼吸してから電話をとった。
男「どした?こなた。」
こなた「んーあのさー…突然だが日曜は空いているかね?」
男「今週?」
こなた「うん。」
男「…いいよ。どっか行きたいんだろ?ついてくよ。」
こなた「にょへっ!……ナゼ私の心を読んだ?」
男「おまえの思考は読みやすいんだよ。」
こなた「男はニュータイプだったのか…」
男「マチルダさーん!」
こなた「うおっ!男のノリがいい…そゆこと言ってるとジアースから落下するよ?」
男「…で、どこ行くの?」
こなた「ん?東京。」
男「また秋葉腹か。」
こなた「そんなとこ。」
男「じゃあ時間とか決めといてな。」
こなた「うん!りょーかいした!」
電話を切った。
その週は、こなたもつかさもみゆきさんも、余り喋らなかった。
無理もない、かがみがあんな形でいなくなって、まだ手掛かりも掴めていないらしい。
だが、土曜日帰宅時につかさとこなたと三人で歩いていると、こなたが思い出したように言い出したことで、又関係はぎくしゃくし出した。
こなた「…そういえば男、明日は朝八時くらいに男の家行くんでいいかー?」
男「え……あ…うん。」
つかさ「…あした?」
男『う゛…こなた空気嫁』
こなた「うん、明日男と二人で遊び行くんだー。」
つかさ「………へぇ…私も行きたいなぁ……。」
つかさはそう言って笑顔で俺を見つめた。
あの笑顔で。
男「え…えと…場所がアキバだからさ、多分つかさ来てもつまんないよ?」
つかさ「そうかなぁ?」
こなた「そうだよ。お土産買ってきてあげるよ。」
つかさ「うーん、いらないや。じゃあまた月曜ね。バイバーイ。」
気付くともうそこは柊家の前で、つかさは何だか不自然に笑いながら家に入っていった。
つかさと別れた後、俺はこなたに言った。
男「こ…こなた、つかさのいる前で明日のこと言わないでもいいだろ。」
こなた「なんで?」
男「なんつーか…変に勘違いされるかもだろ。」
こなた「別にいいじゃん。」
男「…こなた…。」
こなた「それよりさー明日はどんな起こし方がいい?」
男「へ?」
こなた「やっぱここはキャッツカードで『あなたの唇はいただいた』って…」
男「おま…住居不法侵入する気か。」
こなた「へ?昔みたく、おばさんに入れてもらうからー」
男「うちの母さん死んだって言っただろ。」
こなた「そか…そうだったね。ゴメン。」
男「…お前らしくないから気にしないでいいよ。」
こなた「あれーなんかビミョーにバカにされてるのカナー」
男「…ま、とにかく明日は八時な。」
こなた「うむ。」
男「それとさ、こなた。」
こなた「ん?」
男「これ、うちの鍵。」
こなた「へ?」
男「持ってっていいよ、合い鍵だから。」
こなた「………わ」
こなた「わわわわわわわわ私は男の嫁って事でFAなのかな?かな?かな?かな?」
男「とりあえずもちつけ。い…いや、明日おまえが来たとき俺が寝てたら待たせちゃうだろ。だから、一応渡しておくだけだからな。」
こなた「フヒヒ」
男「変な声でニヤけるな。」
こなたと別れて家までの距離を歩く。
…この間、黒井先生に言われたことが逆に俺の気持ちを押したんだろうか?
あの後俺はこなたのことをじっくり考えた。
こなたの…子供っぽくて自分勝手だけど純粋なアピールは少しだけ俺の心を動かしたみたいだった。
『こなたと…二人でアキバか…。二回目だけどなんか前とは違う感覚だな…。』
…しかし違うのは感覚だけでなかった。
最終更新:2008年08月02日 20:36