高良さんの雰囲気に少々気圧されながらも、俺は伝えるべきことを伝えることに決めた。
そう……言わないと!
「ぶっちゃけると、かがみにも告られたんだ」
「……かがみさんが。なるほど……そうだったんですか……」
「うん、そしてまだ……結論が出てない」
「………」
「ごめん、明日までにはちゃんと結論を出すから」
「……あの……男さん?」
「ん?なに?」
「そちらへ行ってもよろしいでしょうか?」
「え?う、うん」
高良さんはテーブルをゆっくり迂回してこちらへやって来た。
俺は思わず身を堅くする。
そして、
身を堅くした俺に、突然、彼女は抱きついた。
イスに座ったままの俺に。
「ちょ!?高良さん!?」
「すみません、男さん。でも……もう少しだけこのままで……」
彼女の身体越しに震えが伝わってくる気がした。
いや、実際彼女は震えていたんだろう。
「……わかった」
「男さんは優しい方ですね。そして私はその男さんの優しさに甘えっぱなしです……」
「………」
「私は、一度は男さんのことを拒絶した身ですから……男さんのことを傷つけてしまった身ですから……本来はこんなことする資格はきっとないのだと思います」
「………」
「一度、男さんからのお付き合いの申し出をお断りしたにもかかわらず、恥知らずな私は男さんにお付き合いの申し入れもしてしまいました。厚かましいですよね、本当に……」
「そのことならもう気にしてないよ。自分のことそんな風に言うのはやめなよ」
「ありがとう……ございます。最後に、厚かましいついでにもう少しだけ甘えさせてください。このままもう少しだけ……」
高良さんはいっそう強く抱きついてきた。
「明日、男さんが出した結論がどんなものであれ、私はそれに従います。他の誰でもない男さんの出した答えですもの。そのとき私が選ばれなかったとしても。私にとってどんなに残酷な結論でも喜んで受け入れます。ですから、私なんかに気兼ねせず、ご自分の思うまま結論を出してください」
いっそう強く。
「……ですが、選ばれたのが私でない場合は、もうこんなことはできませんから……モラトリアムな今のうちに。もう少しだけ。もう少しだけ……お願いします。」
ぎゅっと。
ぎゅーっと。
俺と高良さんの間にカベなんか入り込む余地がなくなるくらいに。
俺も高良さんを抱きしめたい衝動に駆られた……
………
けれど……
結局そうはしなかった。
そして、不意に俺を拘束していた力が緩む。
「さ、プリンを召し上がってください」
にっこりと微笑んで高良さんはテーブルの向こう側に帰っていった。
まるで潮が引くように。
……高良さんの豊満な胸の感触を味わっておくべきだった、なんてスケベ心を出す余裕すらなかった。
余裕なんて皆無。
その後、一緒に食べた高良さんのプリンは美味しかった。
最終更新:2008年07月05日 18:49