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―――
そして朝。
ボロ家を出て、学校へ向かう。
十月も半ば、肌寒くなってきた。
秋ですなー。
―――
ちょっとした距離を歩いたのち、駅についた。
そこに。
「あ、男くんっ」
「おー、男」
柊姉妹がいた。
「お、おう……奇遇だな、……えーと」
「? ……ああ、私達は下の名前で呼んで。ややこしいから」
「お、おう、わかった。
……おはよう、かがみ、つかさ」
―――
「お、男くんもこの駅からだったなんて、私知らなかったよー」
「そういえば会わなかったな。何でだ?」
「もう、今日は会うために早く出てきたの。男は登校早すぎなのよ、まだ6時前よ?」
「すまん。癖なんだ」
「いや、それは知ってるけど……」
「ああ、ひ……かがみには前に言ったことあったっけか」
「お、男くん。……あの、昨日の……ことだけど……」
来た。
微妙に逸らしながら話してたんだが、やっぱり無理があるか。
「あ、ああ……悪い、……つかさ。もうちょい時間くれないか?」
「う、うん。ホントにいつでも良いからっ」
「男、あんたちゃんと真剣に考えなさいよ! ふざけたら承知しないからね!」
「お、おう……分かってるよ、ひ……かがみ」
慣れないな、これ。
☆―――
食堂。
「ふあぁ……」
「あれれー? 今日はやけに眠そうだねかがみん。どかしたのー?」
「あ、いや、何でも無いわよ。ちょっと今日は早く起きて……ふぁ」
「へえ、何時に起きたんですか?」
「……四時半」
「うわー! かがみんすごっ 私にはちょっと考えられないなあ。
あ、だから今日は食堂なんだね。伏線が解けたよ!」
「何よそれ……」
「でも、どうしてそんなに早く起きたんですか?」
「あー、そこは私よりつかさに聞いて……ふぁ」
「でも今つかさは列に並んでんじゃーん。
ねえねえかがみんが教えてよかがみーん」
「うー……うるさいー」
「あ、こなたさん、つかささんが来ましたよ」
「お、つっかさー! こっちこっちーって、つかさも今日は眠そうだねぇ。理由はかがみんと一緒?」
「ふぁ……うん、そうだよー……ってお姉ちゃん!? 話しちゃったの!?」
「話してないわよ。理由はね。なんで眠いかは言ったけど……ふぁ」
「なになに!? 何なのさつかさ! 教えてよ! かがみんは教えてくれなくてさー」
「えー、恥ずかしいよー」
「おーしーえーてーよー」
「……こなたさん、あんまり無理言ったらかわいそうですよ。
お二人ともつらそうですし……」
「むむー」
「ごめんねこなちゃん。落ち着いたら教えるから」
「わかったよー、ちゃんと教えてよ! かがみん!」
「何故に私にふる」
☆―――
「ごちそうさん、と」
自作の弁当を平らげる。自炊ついでに作り始めた弁当も、いまや習慣だなー。
「お前もよく毎日作ってこれるよなー」
一緒に机を並べて箸をつついているのは俺の友人こと岸場友樹。通称友。……そういやこいつ、情報通だっけ。
「なあ友」
「なんぞよ男」
「お前3-Bの女子のことわかる?」
「もちろんだぜ」
頼もしいな。そこまではっきり言われると逆に。
「で? なんて子だい男よ」
「柊つかさ」
「柊、つかさ、な。
えーと柊つかさ。
誕生日は七月七日。血液型はB型。左利き。身長は158cm。体重は―――」
「いやまてまてまて。なんだよその情報量はっ!」
「お前が聞きたいって言ったんだろうが」
「誰が身体情報を欲しがるかっ。評判とか、性格の話だよっ」
知ってることにも驚きなのはもうあえて突っ込むまい。
「ああなんだそう言うことかよつまんね」
「……いいから、教えてくれよ」
「知らね。
……ああ睨むな真面目に答えるから。
ええと、評判は良いみたいだぜ。告白とかはされたりしないらしいけど。裏もなくて至って善良な子だよ」
「……ふーん」
やっぱり、イメージ通りと言うか、そんなかんじか。
―――
放課後。
朝は柊姉妹と一緒だったものの、別に帰りは約束なぞしていないので、無論友と二人で帰ることになる。
「なあ男」
「なんだ友」
「ゲーセン寄らね?」
「いいね。でも手加減しろよ? 俺は久々だからな」
―――
ゲーセンに入る。
ゲーセン独特の喧しい音が頭に響く。久々に見るゲーセンは懐かし―――あれ?
「? ―――なんだ、今の」
デジャブか? つい最近ここに来たような気がする。
―――まさか、
「男ー? 早く来いよー、十七分割してやる!」
「……おう! 今行く!」
―――ま、気のせいだろ。
―――
ゲーセン内。筐体前で、俺と男は唖然としていた。
「き、九十九連勝……?」
「ば、化物であろうか……?」
そう、九十九連勝。そして今、またしてもストレートで。
「「「おおおお!」」」
ギャラリーが一層沸いた。
―――百連勝目だ。
席が空く。誰も近寄れない。そこに、
「―――十七分割してやるぜっ!」
無謀人間岸場友樹が突撃した。
「かつてはゲーム中毒と言われたこの俺が! この流れを変えて見せるっ!」
今も中毒だろうが。
ま、一発負けてくるまでの間、俺は暇だな……。
どれ、百連勝突破の猛者の顔でも見てやるかね。
ええと、対戦相手の筐体は……あっちか。ちょい離れてるな。
「「「おおおお!」」」
早いなオイ。
……友のいる筐体に戻ろう。
……戻ると、筐体の前に死体らしき物が一つ。
「おーい友ー、生きてるかー?」
「じ、十七分割されました……」
しかも同じキャラに負けたのか。それは屈辱だな。
「お、俺の仇を……」
「ヤだ」
「ぐふっ」
いいからもう帰れよ、お前。
―――
さて、友がホントに帰ったところで、改めて百一連勝の相手を見に行くか。……あっちだな。
―――
「ってあれ? 柊?」
「おー男。かがみでいいって」
相手の筐体のそばに寄ると、そこには筐体の画面をつまらなそうに覗き込む柊かがみがいた。
「どうしたんだこんなところで?」
柊かがみのイメージではないな。
「ああ、私はちょっと付き合いよ。……友達がゲーム好きでね」
「ほう。峰岸……はないだろうから日下部か?」
「違うわよ。つかさのクラスの友達」
ほう。そういえば昼休みは向こうのクラスに入り浸ってるようだし、そういうのがいてもおかしくないか。
「で? その友達とやらは?」
「? そこに居るじゃない」
指差すかがみ。その先には目指していた筐体。……こっからプレイヤーの肩が見える。確かにうちの制服だ。
「……って女子か!?」
「ええ!? あ、当たり前じゃない! わ、私が男子とこんなとこ―――」
「じゃ、なくて! この百連勝突破の超強者は女子だったのか!?」
「あ、ああ……なんだ、そう言うことね。
私は慣れちゃったから気にしてなかったけど、確かに凄いわね」
感覚が、鈍っている……!
「……今、何か失礼な事考えなかった?」
「気のせいだかがみ。それよりその強者を紹介して欲しいんだが」
「な、なんでよ」
「なんでって、こんな偉業を果たした人間と合間見えたいと願うのは普通のことだろ」
「……あんたもそっち系か?」
どっちだよ。
「ふー、かがみん。私は疲れたから代わらない?」
と、筐体の影から声が聞こえた。
おお、女装の変態とかじゃなくてマジで女子だ。
筐体の影から出てきたのは、ちっこい女の子だった。
……中学生?
「ち、ちょっとこなた! 私やり方知らないわよ!」
「まあまあかがみ~ん」
かがみが無理やり交代させられてる。
かがみん?
「お、男! あんた出来るでしょ! 代わりにやってよ!」
かがみんに引っ張られて台に座らされる。……しょうがない、やるか。
相手は……こちらと同じキャラか。
―――かくして、魔眼同士の戦いが始まった。
―――さあ、殺し(ry
―――
「ま、負けた……」
二勝三敗のギリで負けた。
プレイヤーが代わっていると知っているこっちでは大して声は上がっていないが、向こうの対戦台では歓声が上がっている……気の毒な。
「ああー、残念だったねぇ」
先程の……確かこなた、と呼ばれていた女の子が話しかけてくる。
俺は台を立ち上がった。
「えーと男。つかさのクラスの泉こなた」
「よろ~」
かがみが泉こなたという少女を紹介してきた。
「あ、ああ、俺はひ……かがみと同じクラスの男だ。よろしく」
―――そんなかんじで、俺と泉は出逢った。
☆―――
余談。
「はっはっはー! やったぜ! 百連勝の化物に勝ったぜー」
気の毒な人は帰ってきた友でした。
☆―――
自宅。
「なにか色々事情があるようで、今度改めてちゃんと紹介するから今日は帰ってほしいそうで、自宅でポツンと一人いるのは私、男です」
一人言はつまらない。
……一人は虚しいな。
……暇だな。
テレビでも……いや、今の時間はあまり面白いのはやってないな。
「…………」
「…………」
「…………」
「……風呂入ろ。シャワーでいっか」
遅く寝なくちゃいけないし。
―――
風呂場。
蛇口を捻る。
ザーザー。
……って。
「冷水じゃねえかっ!」
寒い! メッチャ寒い!
畜生! オンボロアパートめ! シャワーまで壊れたか!
俺はすぐに風呂場を出た。
明日、大家に文句言ってやる。
―――
「寝よう」
夜の十二時。……まあ、大丈夫だろ、きっと。
紐を引いて、電気を消した。
……決めた。つかさへの返事は、明日しよう。
だから今日は……ぐっすり……ね……よ………………………。
最終更新:2008年09月17日 17:11