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―――
朝の駅。
「お、今日もいる」
翌日、駅にはまた、つかさとかがみの姿が。
「あ! 男!」
「男くん!」
「おはよ、お二人さん」
「風邪はもう……?」
「おうよ、一日で治ったよ」
「そっかあ、……よかったあ」
「はは、心配してくれたのか。サンキューな、つかさ」
やがて電車が来て、俺等は乗り込んだ。
その後も平凡な雑談。……楽しかった。
……やっぱり、人といるのは、心地良い。
☆―――
今日もお姉ちゃんと一緒に朝早くに駅に来た。
……あ、やっぱり来た。
「お、今日もいる」
先に声をかけられる。少し意外そうだ。
「あ! 男!」
「男くん!」
「おはよ、お二人さん」
にこやかに挨拶をする男くん。元気そうだ。
でも一応、聞いてみた。
「風邪はもう……?」
「おうよ、一日で治ったよ」
「そっかあ、……よかったあ」
「はは、心配してくれたのか。サンキューな」
はにかむ彼は、何故かとても、嬉しそうだった。
……金曜日に勝手に家に入ったことは、黙っておこう。
☆―――
電車を降りた後、学校の廊下で。
教室前の廊下でつかさと別れた後、かがみが自分の机に鞄を置いて向こうの教室に行く前に呼び止めた。
「おいかがみん」
「ぶっ……! な、なんで……!?」
「いや、この前泉がそう呼んでたからだな」
「余計なことをするなっ」
……よし、反応が面白いからまた使おう。
「いやすまんすまん。
かがみ。つかさに伝言頼めるか?」
「はあ? そんなの今から自分で……」
「放課後。こっちの教室に来てくれ……って」
「―――。
返事、するの?」
「ああ」
「……そ、わかった。伝えとく」
かがみはそう言って、つかさのいる教室へと走っていった。直後に何かにぶつかる音も聞こえた。
……何やっとんだあいつ。
―――
「―――つまり、ここのxが2bと等しくなり―――」
……授業が耳に入らない。
緊張という名の縄に全身が縛られてるようだ。
指すらまともにノートをとろうとしない。
教員の話など右から左へ、だ。
……だって、土日挟んでの返事だぜ?
タイミング逃しまくりだぜ?
緊張するに決まってる。
「……はあ」
……暇だし友の横顔でも見てるか……ってあいつサボりだった。
じゃあかがみ……ん?
今、視線がぶつかった。
慌てた感じで顔を背けるかがみ。
……? 何だ、あいつ。
…………、…………、…………。
……しばらく見つめても反応がないので、しょうがないから窓の外を見て過ごした。
―――そして、今日は速く、速く過ぎていった。
―――
時は速くも放課後。
今日の体感的スピードは当社比五倍でした。
ぼう、と机に座ったまま、時間が経つのをまった。
……やがて、教室から生徒が居なくなる。
また、窓の外を見る。
天気は昨日雨が降ったおかげで、晴れ。
今は夕方だから、綺麗な夕焼けだ。
ムード満点である。
ガラ……。
教室の、ドアが開いた。
……来た。
ドアの方を見ると、予想通りに柊つかさ。彼女がいた。うつむいている。
俺は立ち上がる。
「……呼び出したりしてごめんな、つかさ」
声をかけた。
するとつかさはピクッと反応し、顔をあげた。
「あ……ううん、私も、呼び出したし……」
ゆっくりとつかさは教室内に入ってきた。それに対応するように、俺もつかさに近寄る。
……そして、ピタリとちょうど教室の真ん中で、同時に足を止めた。
……距離は1・5メートル程。
微妙な距離だった。
「つかさ……」
「な、何……?」
「俺の話を、聞いてくれるか?」
「……うん」
「ちょっと……長くなるけど」
「……うん」
許可を貰い、俺は独白を始める。
「……俺さ、人と居るのが怖いんだ」
「え……?」
「俺は昔……といっても、ここに来る前だから、半年程前だけど」
「……ある、事情で、迫害を受けてたんだ。
気味悪がられてた。クラスメイトにも、教員にも、……両親に、さえも」
「その内、人と居るのが、ただ関わるだけで嫌われるのが、怖くなったんだ」
独白を続ける。
つかさは真剣な顔で、聞いてくれてる。
「……でも」
「―――でも俺は、人と話したり、一緒に居るのが、大好きなんだ」
「誰かと居るだけで。
誰かと何気なく話してるだけで。
……俺は、幸せだった」
「……でも、それが叶わなくなって」
「……それでも、必死に、誰かとの関係を築こうとしてた」
「……寂しくて、虚しくて……孤独だった」
「それで……全ての関わりを、一度全部断とうと考えた」
―――それは、俺にとって死ぬほどつらいことだったけど。
「……じゃあ、それで男くんは……」
「ああ、この町に来たんだ。
全てをやり直す為に」
「この町に来て……かがみに会った。
初対面の俺に親切にしてくれて、めちゃくちゃ嬉しかった」
あの好きという感情は、多分、ホントの好きとは違うんだろうな……。
優しくされて、ココロが揺れただけだったんだと思う。
「学校に通って、友……岸場に会った。
久しく居なかった友人ができた」
あいつは最初っからバリバリ馴れ馴れしくて、でもそれが、また嬉しかった。
「そして、色んな人達と、関われた」
それが俺にとって、どれだけの幸福だったか。
「そして、五日前、―――つかさに、告白、された」
その言葉を聞いて、つかさが赤くなる。
……ちょっと、言い方が不味かったかな。
「え、えーと。
……それで、つかさと、しばらく話してなかったかがみと、関わりを持った」
「……楽しかったよ」
「ありがとう」
「そ、そんなこと……」
突然のことに慌てるつかさ。
……そう、そんな彼女が、可愛かった。
「そんなこと、あるんだ。
……つかさ、俺はまだ、君にあったばかりだし、……俺みたいなのが、なんて思うよ」
ここ数日で、色々わかった。
とてもいい子だってことも。
……一緒に居たいって、思うことも。
「……でも、つかさが好いてくれるなら、こんな俺で良いのなら……俺は、つかさと付き合いたい」
沈黙。
しばらくの沈黙の後、
「……うぐっ、ひぐっ」
―――泣き出した。
「うええっ!? どうしたつかさ! な、何泣いて……っ」
「ご、ごめんね……男くん……わ、私、私嬉しくて」
「…………つかさ」
「ぐすっ……男くん」
涙を拭い、つかさが俺の顔を見る。
顔は、既に真っ赤だ。
「……五日、経っちゃったから、もう一回、私から、言うね?
―――私、男くんのことが、好きです」
「―――ああ、よろしくな、つかさ」
―――その顔は、真っ赤になってて、飛びきりの、笑顔だった。
最終更新:2008年09月17日 17:13