「いや~、それにしても……」
こなたがニヤニヤといたずらっぽい笑顔を浮かべている。
「男は幸せもんだね~ 転入早々、美女四人に囲まれて下校なんてベタな展開かましちゃって!これなんてエロゲ?」
「また、あんたは大きな声でそういうことを言う!」
柊(姉)がツッコむ。
「こなちゃんはホント、ゲーム好きだよね~」
柊(妹)は屈託のない笑顔。
「ちょっと、つかさ!こなたのやってるゲームは特殊なんだから!こんな話してたら私たちまで男くんにオタクと思われちゃうわよ!」
「ううう、つかさ~ かがみんがいじめるよ~」
「まあまあ、お姉ちゃん……」
「そっか、あんたたちは類友だもんね」
「一緒かよ~ッ?」
「んなっ!?つかさまで……よし!やはりここは私が責任を持って男を育て上げるしか……男には素質があるし」
「いや、俺にとって、いまだにこなたの発言の約70%は解読不能なんだけどな」
やっとこさ俺の発言。
やっとこさ俺のターン。
「あれれ~?この前まで80%とか言ってなかったっけ?ちょっと成長したようだね~」
まるで弟子の成長を喜ぶ師匠のようなこなた。
「あ、あれ?そうだったっけ?」
「ダメよ、男くん!こなたのペースに引き込まれちゃ!……でもあれよね、男くんはこうしてノートを借りて勉強しようって意欲がある点がこなたとは違うわよね~」
「ぬう!私だってよくノート借りてるじゃん!」
「あんたは、宿題丸写しするためでしょーが!男くんが借りるのは授業の板書だけでしょ。誰かさんと違って、宿題は自力でやるのよね?」
「ま、まあね。勉強しないと父さんがうるさいからな」
そう、父さんが――
お前からサッカーを取ったら何も残らないんだぞ――
せめて勉強くらいは人並みにやれ――
――か……
「男くん?」
「へ?あ、ごめん、ちょっとボーっとしてた。はは……」
「んも~、せっかく褒めてあげたのに。意外とボーっとしてるのね、案外つかさとキャラ被ってるのかしら?」
「ちょっと、おねーちゃ~ん!」
「む~、なんつーか、柊さん(姉)は確実に教育ママになるタイプですな」
「そうそう、かがみんはきっとこわ~いお母さんになるよ~ ふちのとんがったメガネなんかかけてさ。ぷぷぷ。」
「あ~、はいはい、あんたらみたいな子供が生まれないことを切に願うわ」
「どんだけ~」
ふむ……柊さん(姉)に、ふちのとんがったメガネか……メガネフェチの俺としてはそれもなかなか趣があって、うむ、いいな。
「あの~、男くん?さっきから視線が痛いんですけど……私の顔に何かついてる?」
「はッ!?あ、いや、別に……」
『教育ママメガネ』をかけてる柊さん(姉)を想像しているうちに、いつの間にか彼女に視線が行ってたようだ。
これはちょっと恥ずかしい……
「あ、ほら、近くで見ると柊さん(姉)の眼、キレイだな~と思ってさ!」
とっさに余計なことを口走る俺。
しかし、さらりと受け流されるかと思ったが、予想に反して柊さん(姉)は顔を赤らめ俯いた。
「バ、バカ!何変なこと言ってるのよ!」
さっきまでの威勢の良さはそこにはなく、はにかむ少女そのもの。
何と言うか……不覚にもグラッときてしまいそうだ。
隣でこなたがニヤニヤしている。
もしかして、これがいわゆるツンデレってやつか!?
確か『こなた先生直伝オタク用語集~初歩編~』に出てきたような……
しかし、だとすると、これはいわゆるフラグ立ってるってやつか!?
フラグ。
もちろんこれも『こなた先生直伝オタク用語集~初歩編~』より抜粋だ。
しかし、それを即座に否定する俺。
さすがにそれはないだろう。
クラスの違う柊さん(姉)と俺は普段あまり絡みがない。
いくら彼女がしょっちゅううちのクラスに来ているとは言え。
だいたい新しく覚えた言葉をすぐ使いたがるって、小学生か俺は……
そう、それに俺には桃色の女神様がいるのだ。
高良みゆきという女神様が――
高良さんは相変わらずニコニコしながらみんなの話を聞いている。
普段、教室でもそうだが、あまり積極的に会話に参加するタイプではないようだ。
一瞬、昼間白石から聞いた話が頭をよぎった。
が、しかし俺はすぐにそれを頭から追い出す。
彼女は女神。
女神様は平民たちを温かい笑顔で見守る――それくらいが調度いいのだ!
それが逆にいいのだ!
なんていう手前勝手な妄想が頭をめぐっている間にコンビニに着いた。
高良さんにノートのコピーを取らせてもらい、そこで解散となった。
バス通学の俺はみんなとは方向が違うのだ。
「今度は高良さんと二人きりで帰ってみたいもんだな~」
そんな独り言をいいながら、バスに乗り家路につく俺。
高良さんと二人で下校。
下校タイム・ウィズ女神。
――そう、その時はまだそう思っていた。
俺は彼女を女神なんだと信じて疑わなかった……
最終更新:2008年07月05日 18:24