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12月24日

男「ふーむ」

翌朝、俺は居間で一枚の紙切れを見てうなっていた。
そこにかなたが現われる。

かなた「あ! まだ行ってなかったんですか! 昨日あれ程言ったのに!」
子狐「くぅん!」
男「アホかお前ら。まだ1時間も余裕あるだろ」
かなた「むー。ちゃんと行くんですよ? 男の子は女の子をエスコートするものなんですよ?……私はされたことないけど」
男「わかったわかった。それよりさ、これ見ろよ」
かなた「んぅ?」

「クリスマス企画! タウンライトアップイベントのお知らせ!」
そう書かれた広告を、二人(?)に見せる。
さっきから俺が見ていたのは、これだ。

子狐「……」
かなた「クリスマスイベントですかー。いいですねー」
男「なんか街中をライトアップするみたいだぞ」
かなた「私も見たいなぁー」
男「無理。お前は狭く寂しい俺の家で一人きりのクリスマスを迎えるのだ」
かなた「すんすん……」
男「俺さ、街が一望出来る所を知ってるんだよな。これどうかな? あいつ、こういうの好きかな?」
かなた「いいと思いますよ。……ふふ」
男「……なんだ」
かなた「いえ。なーんにも?」
男「なんか腹が立つぞ、その笑顔」
かなた「ふふ。あ、でも……」
男「……心配すんな。夜には帰るよ。自分が死ぬ瞬間なんか、あいつに見せたくねーし」
かなた「……」
男「真夜中の夜景を見れないのは残念だが、まぁ我慢するさ」
かなた「……男くん……」
子狐「……」
男「お。そろそろ行くかな。……喜べ。帰りにケーキでも買ってきてやる!」
かなた「……はい。じゃあ……いってらっしゃい、男くん」
子狐「こん」
男「いってきます」

男「……あれ? あいつ、まだ来てねーのか」

そう呟いた瞬間、目の前が真っ暗になった。

男「っ!?」
(=ω=.*)「だーれ……」

俺は咄嗟にその腕を取り、背負い投げを放った。

男「セイッ!」
(=ω=.#)「トウッ!」
男「何ッ!?」
(=ω=.)「しゅたっ」
男「馬鹿な……。あの体制から自ら身を投げ出し、一回転して着地だと……?」
(=ω=.)「ふ。甘い、甘すぎるよ男」
男「タイミングは完璧だったはず……何故だ!」
(=ω=.)「坊やだからさ……」
男「……」
(=ω=.)「……」
男「……おはよ」
(=ω=.*)「うん。朝からノリいいね、男」
男「……言うな。我ながらアホなことしたとわかってる……」
(=ω=.*)「いやいや、それでオケオケ。嬉しいよー」
男「親子揃ってマゾか」
(=ω=.;)「親子?」
男「あ。いや、なんでもない。それより、早く行こうぜ」
(=ω=.*)「うんっ」

(=ω=.*)「どこ行く?」
男「んー。どうすっかなぁ」
(=ω=.*)「私は、男と一緒ならどこでもいいけどねー」
男「そうか? じゃあ……水族館でも行くか?」

(=ω=.)「それは絶対に嫌だ」

男「……」
(=ω=.)「……」
男「な、何故だ」
(=ω=.;)「あえて言うなら、前世の記憶か平行世界の記憶かが、私に行くなと言っている気がしたから」
男「お前の脳は本当にエロゲ脳だな。そんな世界が現実にあるわけないだろ」
(=ω=.;)「むー。まぁとにかく水族館は却下ね」
男「じゃあどこ行くんだよ?」
(=ω=.)「……カラオケ? ゲーセン? アニメイト?」
男「せ、せっかくクリスマスイブなのにか?」
(=ω=.;)「だって思いつかないんだもん」
男「……まぁいいか」
(=ω=.*)「うんっ。どこでもいいよー。男が一緒ならー」
男「そ、そういうこと言うなアホ!」
(=ω=.)「……」
男「なんだ?」
(=ω=.)「男ってさ」
男「……」

(=ω=.)「ツンデレ?」

男「塩(シ)ッ!」
(=ω=.;)「うわばっ! ぺっぺっ! なんで塩を投げるの!」
男「……間違えた」

ジョニー『ミストファイナー! ミストファイナー!』
(=ω=.#)「違うっ。そこでロマキャンだってば!」
男「こ、こうか!」

ジョニー『俺を本気にさせたのはぁ……ミステイクだったな』
男「勝った! 勝ったぞ!」
(=ω=.#)「相手が弱かったんだよ。慢心こそ己が敵だと思って!」

そうしてかれこれ二時間修行していると、ついにあいつが現われた。
この前対戦したカイだ。

男「この動きは……あのときの!」
(=ω=.)「大丈夫、今の男なら楽勝楽勝」
男「あぁ……俺の強さを見せてやるぜぃ」

戦ってみると、こなたの言う通り前のように苦戦することはなかった。
いやむしろ、俺が圧倒している。

男「見える、僕にも見えるよ! そこっ!」

ジャキーン!

ジョニー『それがァ……俺の名だァ……』
YOU WIN!
男「やったぞ! ついに勝ったぁ!」
(=ω=.*)「おめでと」
男「ははは! 連コインも出来ないようだな! 俺が最強だ! 出来る、新世界!」
(=ω=.)「……最強?」
男「格ゲーなんか楽勝楽勝! 誰でもかかってこんかーい!」
(=ω=.)「……私、ちょっとトイレ行ってくるよ」
男「あ? トイレ?」
(=ω=.)「うん。あ……そうそう。前に言ったけど、私はスレイヤー使いだからね」
男「……そうか。わかった。行ってこいよ……トイレへ」
(=ω=.)「ふ……。いい目だね。じゃあ行ってくる」
男「ああ……」

男「……」
(=ω=.*)「ただいまー。いやぁ。トイレが込んでてまいったよー」
男「……」
(=ω=.*)「次から次へと人が来てさぁ。しかも全部同じジョニー使い。20戦もしちゃったー。もちろん全勝ね」
男「トイレの話じゃなかったのかよ」
(=ω=.)「おぉ。そうだったそうだった!」
男「……」
(=ω=.*)「あれぇ? どうしたの、男? よく見ると、なんかやつれてるよ?」
男「黙れアホ! 貴様とは二度と対戦しない!」
(=ω=.*)「あー。待ってよージョニー」
男「うっさいわ!」
(=ω=.;)「うわらばっ! だ、だからなんで塩を投げるの!?」
男「また間違えた」

(=ω=.*)「あ、ここにギルティの同人誌があるよ? 男、買わないの?」
男「まだ言うか!……というか」
(=ω=.)「ん?」
男「なんつーかさ、その……」
(=ω=.*)「あ。エロゲコーナーがご所望で? じゃあ行こうかー」
男「ち、違う! いや、行きたいのは行きたいが!」
(=ω=.)「じゃあ何ー?」
男「……なんか俺達、周りの客に見られてね?」
(=ω=.)「見られてるね。まさか男、そういうので感じちゃう人?」
男「アホか。だが何故見られてるんだ?」
(=ω=.)「クリスマスイブといったら、飢えた男性の敵だよね」
男「そうなのか?」
(=ω=.)「……その発言、色んな人を敵に回すよ?」
男「え?」
(=ω=.)「でさ、そういう人はやっぱアニメイトとかに引きこもるわけだよ」
男「ふむ」
(=ω=.)「男がそうだったとして、そこに幸せそうなカップルが現われたらどう思う? しかも貧乳な彼女」
男「貧乳は関係なく、腹が立つだろうな」
(=ω=.)「まさにそれですよ」
男「……」
(=ω=.)「……」
男「出るか……」
(=ω=.;)「うん……」

(=ω=.*)「男ーっ! 何か歌って欲しい曲のリクエストあるー?」
男「じゃあメス豚」
(=ω=.#)「だ、誰がメス豚かっ」
男「お前のことじゃねーよ! 銀杏BOYZだ!」
(=ω=.;)「そんなの歌いたくない」
男「そ、そんなの……」
(=ω=.*)「じゃ、オーソドックスにアニソンでいいか」
男「アニソン?」
(=ω=.)「送信」

……チャラチャラチャラチャラ♪チャッチャチャ~♪

男「あぁ。これは聞いたことあるな。ど、ど……ドランゴボールの主題歌だ」
(=ω=.;)「ドラゴンボールだってば。ドランゴはドラクエの竜だし」
男「……」
(=ω=.*)「よーし! 歌うよーっ!」

(=ω=.*)「すぱーきぃん!」

(=ω=.)「ひっかるく~もをつきぬぅけふぁいあえ~~~~~ぇっ!」

(=ω=.*)「からだっじゅうぅにぃひぃろがるぱのらむぁ~~~!」

(=ω=.*)「かっおを蹴られた地球がおこっおてぇ~~~~っ!」

(=ω=.*)「火山っをっばぁくぅふぁつさぁせるぅ~~~~~~ぁっ!」

(=ω=.*)「とぉっ! けぇたこぅおるぃのぬぁ~~~~かにぃ~~~!」

(=ω=.#)「恐竜ぐぁいぃたら~た~むぁのぉりしっこみとぅあいねぇーーーーーーーーっ!」


(=ω=.#)「ちゃあらぁ! へっちゃらぁ!」


(=ω=.#)「ぬぁにーがおぉきてぇも気分はぁぁぁ゛ぁ゛ーーーーっ! へのへのかぁぱぁぁああああーーーーーーーーーっ!」


(=ω=.#)「ちゃあらぁ! へっちゃらぁ!」


(=ω=.#)「むぅねぇぇぇ゛ーーがぷぁちぷぁちするぅほどぉ゛ぉ゛ーーーーーーっ!」

(=ω=.#)「騒ぐ! げ・ん・き・だ・まぁーーーーーーーっ!」


(=ω=.*)「すぱぁーーーーきぃんっ!」

男「……歌い切りやがった。……これでいいのか? いいんだよな?」
(=ω=.*)「じゃあ次の曲いくよーっ!」
男「だ、駄目だ! これ以上歌うと世界の法則が!」
(=ω=.)「法則?」
男「え? 俺、そんなこと言ったか?……まぁいい。というか俺にも歌わせろ!」
(=ω=.*)「いいよ。ちょうど鳥の詩いれたから、どうぞ」
男「……なに?」
(=ω=.*)「だから、鳥の詩。ほら、始まったよ」
男「……」

俺は歌った。

(=ω=.;)「……」
男「ふぅ。歌った歌った」
(=ω=.;)「じゃ、ジャイアンリサイタル……!」
男「あ? 何か言ったか?」
(=ω=.;)「まさかこの世に本気で『ぼえ゛ぇ゛ーっ!』て声を出す人がいるとは」
男「ぼえ? 褒めてんのか、それ? じゃあもう一曲いってみるか!」
(=ω=.;)「うおっ」
男「歌うぞー! 俺の歌を聞けーっ!」
(=ω=.;)「ちょっ! まっ!」
男「今度はシャウトするぞーっ!」
(=ω=.;)「ひっ――」



「アッー!(誰にも届かないこなたの悲鳴)」





男「あー疲れた。外ももう真っ暗だ」
(=ω=.<)「……」
男「どした?」
(=ω=.<)「なんでもない」

俺達は、イルミネーションで飾られた街を歩く。
……そろそろ、切り出してみるか。
朝考えていた計画。
景色のいいあの公園からだと、この街をこれ以上なく見られるはずだから。

男「なぁ、こな――」
(=ω=.*)「そうだ、男!」

しかし、俺の言葉は彼女によって遮られてしまった。

男「な、なんだ?」
(=ω=.*)「これからさ、私の家に来ない?」
男「お前の? いいけど、その前に夜景……」
(=ω=.*)「夕食ご馳走するよ! おとーさんにも紹介するよ!」
男「だからその……夜景が……」
(=ω=.*)「手料理作るからねー! 実はさ、最初からこのつもりで、買い物は済ませてあるんだー」
男「ん……そ、そっか」
(=ω=.;)「……やっぱ嫌かな? おとーさんとかいると、困る?」
男「……いや。困らない。そうくん、だろ?」
(=ω=.)「あれ? 名前教えたっけ?」
男「ん。まぁな」
(=ω=.;)「でもその呼び方はやめた方がいいかも。ただでさえ私の彼氏ってことに嫌な顔するだろうし」
男「了解」
(=ω=.*)「じゃ、レッツゴー」

俺はこなたの後について、歩き出した。
夜景は見たかったが、まぁ、仕方ないさ。

男「料理なんて出来るのか?」
(=ω=.#)「し、失礼な!」
男「はは」
(=ω=.)「あ……」
男「ん?」
(=ω=.*)「今の顔、好きかも」
男「……うっせー」

そうじろう「名前は?
男「男……」
そうじろう「性別は?」
男「男……」
そうじろう「性癖は?」
男「おと――あっ、あぶねっ!」
そうじろう「チ……。男って言ったら、追い出してやるつもりだったのに」
男(……本気の目だ……)
そうじろう「……」
男「……」

(=ω=.*)「おまたせー! ローストチキン完成したよ!」

そうじろう「……」
男「……」

(=ω=.;)「……って、何このムード。私は間違えて地獄に来てしまったのだろうか」

そうじろう「……」
男「……」

(=ω=.;)「もー。二人とも仲良くしてよー。特におとーさん。男くんに般若のような目つきを向けないように」
そうじろう「だ、だってこなた! おとーさんはこんな男男した男は絶対に認めないぞ!」
(=ω=.)「誰でも認めないくせに」
そうじろう「そうだけどっ!」
(=ω=.)「でもおとーさんの知らない所で娘は大人になるもんなんだよ?」
そうじろう「貴様ァーッ! ウチのこなたに何をしたァーッ!」
男「ぐえっ……な、何もしてないですってば!」
(=ω=.#)「おとーさん、ここにいたかったらやめなさい!」
そうじろう「こ、こなたっ!? ここ俺の家なんだけど!」
(=ω=.)「じゃあ私、男の家で食べようかな」
そうじろう「ゆっくりしていきなさい、男くん」
男「……」

ゆたか「わー。いいにおーい」

(=ω=.*)「あ。ゆーちゃん、帰ってたんだ?」
ゆたか「うん。みなみちゃんとご飯食べてきたんだけど、私もちょっと摘んでい……」
男「ん?」
ゆたか「……」
男「……」
ゆたか「あ、あの……えと……?」
(=ω=.*)「あぁ。その人はねぇ」

(=ω=.*)「私の恋人の男だよー」
そうじろう「ゲイが恋人の男だぞー」

ゆたか「……え? ごめんなさい、同時に喋ったから、よく聞こえなかった」

(=ω=.#)「私の恋人!」
そうじろう「ゲイ!」

ゆたか「う? ほ、本当にごめんね。また聞こえなかったの。もう一度だけ言って貰っていい?」

(=ω=.#)「おとーさんのばか! 五月蠅いよ!」
そうじろう「ゲイィィィッッッッッ!」


ゆたか「……おとーさんの……ゲイ……?」


(=ω=.#)「違うよ!」
そうじろう「違うぞ!」
男「違う!」

ゆたか「ひんっ!」

(=ω=.)「……というわけだよ、ゆーちゃん」
そうじろう「こなたにびんたされたこなたにびんたされた……」
ゆたか「へー。じゃあ男さんは私の……その……」
男「ん?」

ゆたか「おにーちゃん……?」

男「……」


おにーちゃん……。


おにーちゃん……。


おにーちゃん……。





男「 ア ッ チ ョ ン ブ リ ケ ッ ! 」





(=ω=.;)「あぁっ。男が限界を超えてしまった! 駄目だよ、ゆーちゃん、殺戮兵器だって言ったでしょ!?」
ゆたか「そ、そんなこと言われてないよぉ」

男「ぴくぴく……」
そうじろう「こなたにびんたされたこなたに……」


(=ω=.;)「ここはやっぱり地獄だ」

ゆたか「わー。このお肉、おいしいねー」
男「そうだな。……あ。こなた、ティッシュ取ってくれ」
そうじろう「ほらよ」
男「……アリガトゴザイマス」
(=ω=.;)「なんでおとーさんが取るのさ!」
そうじろう「いいじゃないか」
ゆたか「あつっ」
男「おい、気をつけろよ。その器、まだ熱いんだから」
ゆたか「ご、ごめんなさい」
男「火傷してないか?」
ゆたか「うん。ありがとうおにぃ――」
(=ω=.#)「ん゛ん゛ぅっ!(咳払い)」
ゆたか「……男さん」
男「おにーちゃんでいいのに……」
そうじろう「お前はこなただけでなく、ゆーちゃんまで誑かす気か! 俺の世界を返せバカヤロー!」
ゆたか「はわっ。お、叔父さん、私は別にそんなぁ」

ゆい「おぉ。なんか盛り上がってるねぇ……ヒック!」

(=ω=.;)「ゆいねーさん、また飲酒運転ですか」
ゆい「固いこと言わない言わない! ダンナがいないクリスマスなんてーっ!……って、おぉっ! なんと男少年じゃないか!」
男「こんばんは」
(=ω=.)「あれ? 知り合い?」
ゆい「ちょっとした私の弟子だよ」
男「そう弟子……弟子?」
ゆたか「ゆいおねーちゃんも一緒に食べようよー」
ゆい「もちろんさー! おじさん、お酒持ってきてーっ!」
そうじろう「……俺の世界……エロゲ世界……」
ゆい「騒ぐぞーっ! 飲むぞーっ!」
ゆたか「あ。これもおいしいなぁ」

男「はは……」
(=ω=.;)「男……(こそこそ)」
男「ん? どうした、こなた?」
(=ω=.;)「ごめんね、なんか騒がしくなっちゃって」
男「いや、なんつーか……」

ゆい「お! おじさん、今日はやけに飲むねーっ!」
そうじろう「ううっ! かなたがいたらなぁ! 娘があんなどこぞの馬の骨と付き合うのを止めてくれるのに!」
ゆたか「む。これはちょっと辛い……」

男「こういうのも、悪くないもんだな」

俺が今まで経験したことがないほど、その夜の食事は賑やかだった。
こなたの作る料理は旨いし、ゆたかは可愛いし、ゆいさんは酒を飲まそうとしてくるし
親父さんは泣くし、こなたは笑うし、ゆたかは可愛いしで、息つく暇もなかった。

最後に、デザートの大きな手作りケーキを食べた。
一切れ持ち帰ると言ったら「食いしん坊」の称号を与えられてしまった。
俺は密かにかなたを憎んだ。

ケーキを平らげた後、まずゆいさんが帰った。
ダンナが突然帰って来たらしい。
次にゆたかが寝たのを契機に、俺も帰ることにした。

そうじろう「帰るのか! 残念だなあ」

と言った親父さんの顔には、太陽のような笑顔が張り付いていた。

そしてこなたと共に、外に出る。

男「うお。さみ……」
(=ω=.;)「中は温かかったからねー」
男「だなぁ」
(=ω=.)「でも、この寒空の下で延々と恋人を待ってた人も、ここにいるけど」
男「罪悪感で殺す気か」
(=ω=.*)「あは」
男「はは」

男「……」
(=ω=.)「……」
男「……」
(=ω=.)「……あっ。そうだった」
男「え」
(=ω=.*)「ちょっと待っててね! すぐ戻ってくるからさ!」
男「お、おう」

そう言うと、こなたは家の中に走っていった。
俺は煙草を取り出そうとしたが、生憎切らしてしまっていた。
白い息を吐きながら、腕時計を見る。
21時30分。

男「まずいな……」

何が原因で死ぬのかは知らないが、これ以上ここにいるのはまずいかもしれない。
……死ぬのではなく、殺されるってセンもあるかもしれない。
そんな嫌な考えが過ぎり、俺は辺りに通り魔がいないか確認した。
しかし、やはり誰もいない。

男「……ま。そりゃねーよな」

誰に恨みを買ってるわけでもない。
頭を軽く振っていると、こなたが帰ってくるのが見えた。
彼女は駆け寄ってくる。
――もの凄い速度で。

男「ちょっ! アホっ! こっちくん……」

きらり、とこなたの手の中で何かが光るのが見えた。

男「……え……」

一人だけいた。
俺が恨みを買った人物が。

男「ま、まさか…………」

俺、こいつに殺される?

みるみる内にこなたが近付いてくる。
というかもう目の前だ。
こなたは加速をたっぷり乗せて、俺の胸に飛び込んだ。

男「ぐぅっ!」

腹に鈍く重い衝撃が走った。

男「ぐあ……や、やられた……」
(=ω=.*)「誕生日、おめでとう!」
男「……へ?」

俺の胸から頭を離しながら、こなたは言った。
腹に置かれていた彼女の手が、目の前に差し出される。

男「これは……」

小さな手の中にあったのは、美しく輝く石を繋げて作られた、ブレスレットだった。

(=ω=.*)「ラピスラズリのブレスレットだよ。男、12月生まれだからね」
男「……知ってたのか?」
(=ω=.*)「当たり前だよ。男に関する情報なら、尻の毛一本に至るまで集まってるよ」
男「やはり貴様はストーカーだ」
(=ω=.*)「最近はそんなニーズもあるらしいよ」
男「ふーん……そういうもんか……」
(=ω=.*)「そういうもんよ」
男「そういえばお前、なんで俺のストーカーになったんだ?」
(=ω=.)「ん? なんでって、好きだからに決まってんじゃん」
男「だからなんで好きになったんだよ。話したこともなかったろ」
(=ω=.)「んー……」
男「……」

(=ω=.*)「……あぁ! そうだ、あのときだ! 学校の帰り道だ」
男「帰り道?」
(=ω=.*)「そうそう。私達はまだうら若き1年生のときでさぁ。強い雨が降ってる日だったね」
男「ふむ」
(=ω=.)「そんな日に、一匹の猫が路上に捨てられてた」
男「……」
(=ω=.)「誰も助けなくて、にゃーにゃー泣いてる猫はだんだん弱ってった」
男「……」
(=ω=.*)「そんな中! 現われたのが男!」
男「……あー……」
(=ω=.*)「男は辺りに誰もいないことを確認すると、さっそうと猫をつまみあげた」
男「……」
(=ω=.*)「でも実は私が見てたんだけどね。男もすぐに気付いたもんね?」
男「……」
(=ω=.*)「気付いた男は私に近付いてきて、怖い顔で言った」


(=ω=.)「誰にも言うな。それとペットフードってジャスコに売ってんのか教えろ」


男「ぐ……!」
(=ω=.*)「私は痺れちゃったんだ! ジャスコにはなんでも売ってるよ! わざわざ確認する男が可愛い過ぎたんだよ!」
男「う、五月蠅い黙れ! 過去の汚点だ!」
(=ω=.*)「可愛いなぁ、男は」

(=ω=.*)「それからというもの、私は男にひたすら片思いしてたよー」
男「知ってるー……」
(=ω=.*)「えへへ。だからさ!」
男「うわ!」

再度、こなたに抱き付かれた。

(=ω=.*)「こうして付き合えて、とっても嬉しいよ」
男「あ……」
(=ω=.*)「これから、もーっと男のこと教えて貰うからね!」
男「……」

それは、出来ない。

(=ω=.*)「年末には冬コミもあるから、手伝ってね?」
男「……」

それも、出来ない。

(=ω=.*)「そうだ。今回はコスプレもしよう! 男はどんな格好がいいかな?」
男「……」

俺にはもう、何も出来ない。

(=ω=.*)「それから……」
男「……っ!」
(=ω=.;)「わっ」

俺はこなたの身体を引き剥がした。

(=ω=.;)「お、男……?」
男「……いい加減離れろっての。二階から親父さんが睨んでたぞ」
(=ω=.;)「うぞ!」

嘘だった。
例え本当にいたとしても、涙の溢れ出したこの目では、見つけられはしない。
キョロキョロしているこなたに、俺は背を向ける。

男「じゃあな」
(=ω=.)「え……あ、うん!」
(=ω=.)「おやすみー!」
男「……」
(=ω=.)「また……」
男「……っ!」

俺は、声から逃げるように走り出した。
こなたが「また明日」と言う気がしたからだ。
彼女の家も見えなくなった辺りで、俺はようやく振り向く。

男「……さよなら」

かなた「あ……」
男「……」
かなた「おかえり……なさい」
男「おう。ただいま」
かなた「……」
男「ほれ、土産のケーキだ。こなたお手製だってよ」
かなた「あ、はい。ありがとう……」
男「なんだよ、もっと喜べっての。それを持ち帰ったせいで、俺は食いしん坊にされたんだぞ」
かなた「はい……ごめんなさい……」
男「……喜べというのに」
かなた「……」
男「ん? そういえば狐は?」
かなた「あの、部屋に……」
男「ふーん。あいつが出迎えなしとは、珍しいこともあるもんだ」
かなた「……」
男「じゃ、俺も部屋に帰るとするか」
かなた「はい……」
男「玄関なんかで最後の時を迎えたくねーしな」
かなた「……そうですね」

部屋に帰ると、狐が窓から月を見ていた。
暗い部屋の中で月明かりに照らし出される狐。
それは幻想的な光景だった。

男「……お前、何してんだよ?」

狐は答えず、ただ月を眺める。

男「……お前にも、主人が死ぬことがわかってんのか?」

部屋の電気も付けず、狐の横に座る。
かなたも同じようにした。

そのまま一緒に月を眺めていると、時刻は23時30分を回ってしまった。

男「……なぁかなた」
かなた「はい?」
男「本当に俺は死ぬのか? 今日は後30分しかないが」
かなた「……そのはずです」
男「そっか……。じゃあ、最後の一服といくかな」

俺は煙草を取り出そうとし、気付いた。

男「……切らしてたんだった」

がっくりした。
映画でよくある、こういう場面での最後の一服を試してみたかったのに……。

男「あ。そういえば、一個だけあるじゃないか」

俺は唐突に思い出した。
前に買った、パチモン煙草「ラッキースター」のことを。
机の奥深くにしまっていた、それを取り出す。

男「ま。ないよりマシだよな。どうせもう死ぬし」

ラッキースターと書かれたカラフルな箱から一本取り出し、火を点ける。

男「すぅ……」

吸い込む――途端にむせ込む。

男「げほげほ! あ、甘っ! まずっ!」
かなた「でもいい香りですねー。本当に煙草ですか?」
男「知らねーよ」

不味い煙草を吸いながら、俺は時を待った。

23時55分。

時計と月とを見比べるように、何度も視線を動かす。

23時56分。

時間が進むのがやけに遅く感じる。

23時57分。

鼓動が少し早くなる――まだか。

23時58分。

二本目の煙草に火を点ける。
やはり不味い。

23時59分。

俺は目を閉じた。
そして……





00時00分――





世界が、白く包まれた。


12月25日(?)。

(=ω=.)「……」

街を一望出来る、あの公園にこなたはいた。

(=ω=.)「……男……死んじゃったんだ……」

壊れた手すりを見ながら、こなたは呟いた。

(=ω=、)「ううっ……」

その目に涙が零れる。

(=ω=、)「いらない……」
(=ω=、)「こんな……男がいない世界……いらない……」

壊れた手すりに近付くこなた。
地面は遥か下に見えている。

(=ω=、)「想いも伝えられなかった」

(=ω=、)「私が本当に好きな人は……なんでこうなっちゃうの?」

(=ω=、)「もう……いい……」

(=ω=、)「……出来るなら男のそばに……いたかった……」

(=ω=、)「あの人が飼ってる猫みたいに」

(=ω=、)「ずっと……ずっと……」

そして、こなたは身を投げた。


エンディングB『悲劇の始まり』

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最終更新:2009年08月24日 13:29