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12月22日☆

かなた「あ。おはようございます、男くん」
男「よう。もう怒ってねーのか?」
かなた「全然怒ってませんよ。はいどうぞ、朝ご飯作りました」

こと、と俺の前に巨大なホットケーキが置かれた。
直径30センチ。厚さは10センチ。

男「……」
かなた「にこにこ。どうしたんですか? 食べないんですか?」
男「食えるかァーッ!」
かなた「あいったぁっ! 塩痛いです! せっかく作ってあげたのに」
男「悪意が見えるんだよ」

かなた「そういえば、今日はどうするんですか?」
男「モニュモニュ……そりゃあ狐探しさ」
かなた「そうですか。昨日のことがありましたから、家で何か考えるのかと思ったんですが……」
男「モキュモキュ……家にいて欲しいのか?」
かなた「……」
男「……モグモグ」
かなた「うぅ。毎日毎日家に一人は、案外寂しいんですもん……」
男「ゆ、幽霊のくせに俗物的な……モフモフ」
かなた「人を呪う幽霊さんの気持ちが、少しわかりました」
男「わかるなよアホ!……まさか、このループも貴様の呪いじゃないだろうな?」
かなた「違いますよ! ほら、この目を見て」
男「だから近付くなって言ってるだろァ!」
かなた「すんすん」
男「ったく。ご馳走さま」
かなた「……あっ。ぜ、全部無くなってる」
男「……ふん。腹減ってたからな」
かなた「……えへへ」
男「にやにやすんなこのっ!」
かなた「あっ! し、塩いたっ!……ふふ……いたたぁっ!」
男「ふんっ。じゃ、行ってくるぞ」
かなた「行ってらっしゃい、男くん」
男「行ってきます」

(=ω=.)「いないねー」
男「いないなー」

こなたと二人で街中を歩く。

(=ω=.)「ね。やっぱり昨日の……」
男「だからそれは違うと言うに。本人も言ってただろ」
(=ω=.;)「猫本人が言ってたって、言い得て妙だね」
男「ま、まぁな」
(=ω=.)「でもさ、あの猫様じゃないなら、もうアテはなくない?」
男「む……」
(=ω=.)「街中はあらかた探し回ったし……」
男「……そうなんだよなぁ……」
(=ω=.;)「ね。やっぱ張り紙……」
男「それは無理だ!」
(=ω=.)「でもしないよりマシだと思うけどなぁ……」
男「マシじゃない。時間がない」
(=ω=.)「え? なんで?」
男「なんでもだ! とにかく、まだ探してないところがあるかもしれない」
(=ω=.;)「そんなところはないってー」
男「うーん……」
(=ω=.)「ほら、諦めて張り紙をするんだ。私も、バイト先とかに張ってあげるか――」
男「あ!」
(=ω=.)「ら?」
男「あるぞ! まだ探してないところが!」
(=ω=.)「どこー?」
男「いや……でも今日はなぁ……」
(=ω=.;)「はい?」
男「カップルがいるかも……」
(=ω=.;)「……き、気にしなければいいじゃん」
男「でもなぁ。前も邪魔したのに、また邪魔するのはなぁ……」
(=ω=.*)「それに私達もカップルだよ。雰囲気を壊さないよ」
男「……」
(=ω=.*)「……」
男「ま、いいか。ちょっとだけなら、邪魔にもならないだろ」
(=ω=.#)「な、何それ! ちょっとじゃなくても壊さないって! おーい! 聞いてるー!?」

俺はぶーぶー五月蠅いこなたを引き連れ、車道沿いの公園に向かった。
前回と同じなら、そこには峰岸とその彼氏がいるはずだ。

(=ω=.)「あれ?」
男「お?」

車道の脇を歩きながら、俺達は気付いた。
道に点々と花びらが落ちている。

(=ω=.)「また桜だね」
男「そうみたいだな」
(=ω=.)「どこに生えてるんだろ?」

その答えは、すぐに見つかった。
公園に着くと、大きな桜の樹が生えていたのだ。
桜吹雪が冷たい風に乗って舞い踊る。

(=ω=.;)「うわ。異常な光景。まだ冬なのに……」

だが俺は、それより気になることがあった。

男「……こんなの前はなかったぞ……」

どう思い返しても、前回はこんな桜はなかった。

男「どうなってんだ……」
(=ω=.)「あ。男が言ってたカップルがいるよ。……あれ、峰岸さんかな?」
男「む」

見ると、確かに峰岸と彼氏だ。
しかし彼等も前回とは違い、桜の樹の下でしゃがみ込んでいた。

(=ω=.)「何やってるんだろ? 死体でも埋めてるのかな?」
男「死体の養分を吸って育った桜は美しい……ってアホか!」
(=ω=.*)「あは。ま、行ってみよっか」
男「うむ」

(=ω=.)「やぁ峰岸さん」
峰岸「あ。泉ちゃん、男さん……」
男「そんな所で何してんだ?」
峰岸「あ……その……」

峰岸の視線を受けて、横にいる彼氏が振り向いた。
その手の中には


男「――狐!」


ぐったりした俺の狐がいた。
俺は峰岸の彼氏から、狐をひったくる。

峰岸「あっ。な、何を……」
男「俺の狐なんだ! なんでこんな――!」
子狐「……」

狐は目を閉じ、小さな身体を苦しげに上下させている。

(=ω=.)「すごく弱ってるね……」
峰岸「私達がここに来たとき、この樹の下で見つけたの。そのときにはもうこんな……」
男「狐……大丈夫か、狐……?」
子狐「……」

俺が呼び掛けると、狐はぴくっと微かな反応を返した。

男「い、医者! この中にお医者様はおられませんかーっ!」
(=ω=.;)「いるわけないって! 冗談言ってないで早く獣医に連れていこうよ!」
男「わ、わかった! 峰岸、ありがとうな!」
峰岸「う、うん」

峰岸に別れを告げ、俺は公園から車道に飛び出した。
その瞬間、車のブレーキ音が甲高く響き渡った。

ゆい「――っ! 何してるの! 急に飛び出すと危ないよ!」
(=ω=.)「ゆいねーさん!」
ゆい「おろ? こなた? それに、男くん……何を抱えてんの?」
(=ω=.#)「ちょうどいいや! ゆいねーさん、乗せてって! くれぐれも安全運転で!」
ゆい「……急ぎみたいだね。ほら、早く乗って。飛ばすよー!?」
(=ω=.;)「安全運転っ!」

ゆいさんは安全運転で走ってくれている。
俺は揺れる車内で、狐を励ます。

男「狐、しっかりしろよ? もうすぐだからな?」
子狐「……」
ゆい「その子、男くんのペットなの?」
(=ω=.)「らしいよ。まさか本当に狐だとは思わなかったけど」
ゆい「狐のペットなんて珍しいもんね」
男「……」
子狐「……」

そのとき一台の車が凄まじい速度で、俺達のパトカーを追い抜いた。

ゆい「あの野郎……」
(=ω=.;)「だ、駄目だよ、ゆいねーさん! 安全運転、安全運転」
ゆい「わ、わかってるよー」

追い抜かれてもトロトロ走るパトカーを見てどう思ったのか、追い抜いていったはずの車が前についてきた。
ブレーキランプから見ると、意図的にスピードを落としているらしい。

ゆい「……舐めやがって」
(=ω=.;)「うわぁ。ふざけた車だね」
ゆい「こいつ、いつもこの辺で暴走してるんだ……ってああああ! イライラするぅぅぅっ! 見逃してやるから早く行けっての!」

ゆいさんはクラクションを何度も鳴らした。
しかし前方の車は、一向に意に介する様子を見せない。
ゆっくり走って、こちらを挑発しているらしい。
こうしている間にも狐は……!

男「……ゆいさん」
ゆい「なに!」
男「ぶっちぎってやって下さい」
ゆい「……え?」
(=ω=.;)「男!?」
男「狐は俺が守りますから! 早く!」
ゆい「……わかった。でも勘違いしちゃ駄目だよ」
(=ω=.;)「勘違い?」
ゆい「あんなやつ、ワインを手に持ったままでも楽勝! 一滴も零さないよ!」

ゆいさんは対抗車線に躍り出ると、一瞬で前の車を抜き去った。

(=ω=.)「追ってきた!」

暴走車は俺達の車に続いてきていた。

ゆい「チ……チ……」

軽い舌打ちと共に、ゆいさんの手がギアレバーに伸びた。
後方の車を振り払うようにパトカーが加速する。

ゆい「……」

速さを維持しつつ、急カーブを華麗に曲がった。
だが後ろの車もまた、粗い動きながらも食らいついてくる。

(=ω=.#)「シツコイヤツ! 車の色もオレンジだし!」
男「……オレンジ色は何か関係あるのか?」
(=ω=.#)「ええい! 私達を全力で逃がすんだ!」
ゆい「心配しない! もう動物病院に着くからね!」

彼女の言う通り、まもなく病院前に到着した。
ゆいさんが弧を描くように車を病院前に止める。
後ろのオレンジは一人で真直ぐ行ってしまった。

ゆい「……よし」
(=ω=.*)「行っちゃったね。一人でレースしてればいいんだ。心中相手としては好みじゃないし」
男「心中って、狐は死なねーよ!」
ゆい「さぁ、早くその狐を――」

言葉の途中で、車にドン、と重い衝撃。

男「……っ!」

その瞬間、俺の頭が真っ白になる。
気分が悪くなる。

ゆい「あ、あいつ! わざわざ戻ってきてぶつけやがった!」
(=ω=.#)「オレンジがァーッ!」
ゆい「待てーっ! 戻ってこいこの野郎ーっ! 逮捕してやるーっ!」
男「……」
(=ω=.)「……あ! そんなことより、男! 早く狐を!」
男「……」
(=ω=.)「男……?」
男「……」
(=ω=.;)「どしたの?……顔真っ青だよ? まさか狐が……」
男「……いや、そうじゃない。狐は大丈夫だ……」
(=ω=.;)「じゃあどうしたの?」
男「……なんでもない。行こう」

獣医に狐を診察して貰った結果は「栄養不足」だった。

(=ω=.)「自宅で栄養あるもの食べさせろってね」
男「……まぁ、大事じゃなくてよかったよ」
(=ω=.)「これから、家で世話すんの?」
男「あぁ。そのつもりだよ」
(=ω=.)「ふむ」
男「探すの手伝ってくれてありがとうな」
(=ω=.)「よし!」
男「ん?」

(=ω=.*)「私も手伝ってあげよう!」

男「……な、なに?」
(=ω=.*)「だから、今から男の家行って手伝ってあげるよ!」
男「ま、待て! 大丈夫だから! 俺一人で大丈夫だから!」
(=ω=.*)「遠慮しなさんな。おーい! ゆいねーさぁん!」
ゆい「うぅ……パトカーの傷が取れなひ……」
(=ω=.*)「ゆいねーさんってばぁ」
ゆい「う?」
(=ω=.*)「今日私、男の家でこの狐の世話するから!」
男「待て! 勝手に決めるな――」
ゆい「おぉ! いいねぇ。それでこそ恋人ってもんだね!」
(=ω=.*)「エロゲ的にもここはイベントだし!」
男「だから俺の話を――」
ゆい「うんうん。いいねぇ。一匹の狐のために夜通し看病する……青春だねぇ!」
男「よ、夜通し!?」
ゆい「叔父さんには私から上手く言っといてあげるよー。さぁさ、車に乗って。送ってってあげるから」
(=ω=.*)「わーい」
男「俺の話を聞け貴様らあああああぁぁぁぁぁーっ!」

かなた「おかえりなさーい。狐ちゃんは……」
男「大変だぁーっ!」
かなた「へ?」
男「早くしろ! すぐしろ!」
かなた「お、落ち着いて下さい。最近の男くん、帰って来るなり慌ててばっかりですよ? たまには落ち着きましょうよ」
男「今日は緊急だ! ある意味一番マズい!」
かなた「私ももういい加減慣れましたよ。だから落ち着いて何があったか教えて下さい」
男「わ、わかった。落ち着く……」
かなた「はい、いい子です。それで、何があったんですか?」
男「こなたが来たんだ」
かなた「……」
男「……」

かなた「何を落ち着いているんですか!?」

男「貴様が落ち着けと言ったんだろう!」
かなた「そういうことは早く言って下さい! 悪い子ですね、めっ!」
男「めっ、じゃねええええええぇぇっ!」
かなた「そ、それにしてもあわわわわ! ど、どうしてこなたが!」
男「狐の看病をするためだ! 今は外で――」

(=ω=.)「お邪魔しまーす」

男「待ってなかった!」
かなた「ど、どこに隠れれば! 隠れれば!」
男「どこいいから早くしろこのアホーっ!」
かなた「塩いたたたっ! そ、そうだ! とりあえず床下に……」

そういうと、かなたは床下に沈んでいった。
間一髪、こなたが部屋にやってきた。

(=ω=.)「ん? 今誰かと話してなかった?」
男「な、なんのことだ? 一人暮らしだって言ったろ?」
(=ω=.)「……怪しい……」
男「……」
(=ω=.)「まさか……」
男「……」
(=ω=.;)「男って、そういう趣味の人? 人形とかに話し掛けてたり?」
男「そんなわけねーだろアホがあああぁぁぁっ!」
(=ω=.;)「うわっ! ぺっぺっ! な、なんで塩を投げるの!?」
男「またまた間違えた……」

(=ω=.)「ほーら、ミルクだよー」
子狐「……」
(=ω=.)「ペーストフードもあるよー」
子狐「……」
男「この狐はそんな動物用のもんは食わん」
(=ω=.)「じゃあどんなものを食べるのさ」
男「ほーら、狐。ステーキ肉だぞー」
子狐「……」
(=ω=.;)「弱ってるのにそんなの食べられないって」
男「む」
(=ω=.;)「……」
男「じゃあこれならどうだ。ほーら、狐。チョココロネだぞー」
(=ω=.*)「ぱくっ!」
男「よしよし。よく食べたなー」
(=ω=.*)「もぐもぐ」
男「いい子いい……」
子狐「……」
男「……」
(=ω=.*)「もぐ?」
男「なんで貴様が食うんじゃああああぁぁぁぁっ!」
(=ω=.;)「ぅわりぶっ! だ、だから塩はやめっ! は、は、ハックショーイ!」
男「汚っ」

そんなこんなで、その夜は更けていった。
ちなみにかなたは物置に隠れていた。

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最終更新:2009年08月24日 13:33