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(選択肢)
→こなたと永遠を生きる。
それは出来ない。


男「……」

思えば、こいつほど哀しいやつはいない。
狐は長い時間を俺の側で過ごしていた。
決して自分の想いは伝えずに。
伝えたい想い、交わしたい言葉は沢山あったはずなのに。
ただ側にいることだけを望んで。

男「……こなた」
こなた「あっ……」

俺はこなたに口付けた。

なにより、こいつもこなただから。
姿は違っても、俺が好きになったこなたなんだ。
だから、これ以上悲しませるようなことは出来ない。

男「……お前の側にいるよ」
こなた「あ……」
男「もう狐だってやめていい」
こなた「あ……あぁ……」
男「一緒にいよう」
こなた「男ぉ!」

こなたが泣きじゃくる。
俺は優しくその身体を抱き締めた。
尻尾がぱたぱたして、俺の手に当たった。

こなた「嬉しい! 嬉しいよぉ!」
男「……」
こなた「やっと、やっと男といられるんだ! 今度は本当にいられるんだ!」
男「……」
こなた「ありがと……ありがと……」
男「アホ。礼なんかいらないっつの」
こなた「あは……あはは……あはははは! うん! いらないね!」
男「……」
こなた「あははははははは! 私……幸せぇ……男も、幸せ?」
男「……俺も幸せだよ」
こなた「ふふ。そっかぁ……ねぇ男」
男「ん?」

こなた「愛してるよ」


エンディングE『こなたと二人で』


(選択肢)
こなたと共に永遠を生きる。
→それは出来ない。


男「……出来ない」

俺はこなたの両肩に手を置いて、言った。

男「俺には出来ない」
こなた「……」
男「お前が嫌いなわけじゃない。でも……そんなこと出来はしないんだ」
こなた「……」
男「ゆいさん、峰岸、猫? そして……かなた」
こなた「……」
男「今の俺がいるのは、あいつらのおかげだ」
こなた「……」
男「だから出来ない」
こなた「……」

こなたの瞳から、光が消えた。
そしてその表情は前髪に隠れてしまう。
彼女が力無く呟いた。

こなた「そっか……」
男「……ループを終わらせてくれ。俺は、あいつらと25日を過ごしてみたいんだ」
こなた「……」
男「……」
こなた「……わかった」
男「こなた……」
こなた「よくわかったよ」
男「……」
こなた「私の知ってる男はもういないんだね」
男「……」
こなた「……それなら……」
男「……」



こなた「私、今の男なんかいらない」



男「……っ!」

俺はこなたを突き飛ばした。
言い知れぬ悪寒が、俺の背筋を冷たくしたからだ。

こなた「あは……。痛いなぁ……」
男「……」
こなた「そんなに拒絶しなくてもいいじゃん」
男「……」
こなた「ちょっと痛いだけだよ」

こなたの手には、いつしか大きな鉈が握られていた。

こなた「男が死ねば、また記憶の無い一週間が始まる」
男「……っ!」
こなた「誰にも邪魔させない。二度目の気まぐれなんてない」
男「そんな――」
こなた「だから、好きだけど……」

その言葉と同時に、鉈が俺に向けて構えられる。

こなた「死んじゃえ」

俺の眼前を刃がかすめる。
直前に身を引いてなければ、俺の首は真一文字に切り裂かれていただろう。
――こいつ、マジだ!

男「待て待て!」

距離を取りながら、呼び掛ける。

男「何トチ狂ってんだ!」
こなた「狂ってるかな?……うん。狂ってるのかも」

こなたは右手に持つ鉈をぶらぶらさせた。

こなた「それでもいいよ」

次の瞬間、彼女は突然切りかかってきた。
開いていた距離は、一瞬でゼロになる。
首筋に白光りする刃が当てがわれた。

男「くっ――!」

俺はあえて前に踏み込み、鉈を躱した。
それと共に差し出される形になったこなたの右腕を取った。

男「やめろっつってんだろ!」
こなた「おお。動きいいね。偽不良なのに、よく喧嘩とかしてたの?」

腕を取られていることなど意に介さないように、こなたが笑った。

男「そんなわけねぇだろ!」
こなた「あはは。冗談だよ」
男「……こんなときによく冗談言える――」
こなた「隙ありっ!」

こなたは右足の踵で、俺の足の甲を思い切り踏み付けた。

男「いっ!?」

俺は思わず取っていた手を緩めてしまう。
それを逃さず、こなたは右腕を強引に引いた。
こなたの手が自由になる。

こなた「――お命、頂戴!」

今度こそ鉈の刃が首筋に触れた。

こなた「うわっ!」

こなたが怯んだ。
別に俺の血を見て怯んだわけではない。
俺の首はまだ傷一つないままだ。
この隙に、俺はまた彼女と距離を取った。

こなた「ぺっぺっ! うぐぅ。目が痛いぃ……」
男「ふん。人を殺そうとするからだ」
こなた「忘れてたよ。塩持ってたんだっけ」

そう、俺の命を救ったのは塩。
首を切り裂かれる寸前、俺は咄嗟に塩を投げ付けたのだ。

男「ソルトマスターを舐めるな」
こなた「むー! じゃあ今からはもっと本気出すよー?」
男「……」
こなた「あれ? どったの?」
男「……ぷ」
こなた「んん?」

男「あははは!」

こなた「な! 何故笑うですか……」
男「だ、だって……ははは!」
こなた「むー」
男「なんかさ、久し振りじゃないか?」
こなた「何が」
男「狐のお前が俺に噛み付いてきて、俺がお前に文句言って……」
こなた「……あ……」
男「よくそんな喧嘩をしたよな。それと今がそっくりで笑えた」
こなた「……今は冗談じゃないよ? 本気で殺っちゃう気だよ? 私狂ってるんだからね!」

男「いいや、違うな」

こなた「え……」
男「今ハッキリわかった」
こなた「……」

男「お前も、世界が壊れるなんて嫌なんだ」

こなた「……何を言ってるの? 私は、男さえいれば……」
男「本当か?」
こなた「……本当だよ」
男「なら何故、そんな悲しい目をしてるんだよ」
こなた「……」
男「尻尾もぱたぱたしてないぞ」
こなた「……」
男「違うんだろ? そう思いたいだけなんだろ?」
こなた「……っ!」
男「なぜなら……」
こなた「あ……」


男「お前にもループを止められないから」


こなた「……」


男「さっき思い出したよ。狐のお前と、俺が喧嘩する理由……」
こなた「……」
男「俺がかなたにひどいこと言うと、お前は噛み付いてきたんだ」
こなた「……」
男「つまり……お前はかなたも大事なんだ」
こなた「……」
男「俺に噛み付くくらい、かなたも大事なんだ」
こなた「……」
男「それなのにお前は『二人きりでいい』と言った。矛盾してるよな」
こなた「……」
男「その矛盾は、こう考えればしっくりくるんだ」
こなた「……」

男「『お前にも世界が壊れるのを止められない』」

こなた「……」

こなたは自分の身体を抱き締めるようにして震えた。

こなた「怖い……」

蚊の鳴くような声で、こなたが言う。

こなた「怖いよ、男……」
男「こなた……」
こなた「男の言う通りだよ……。私はループを終わらせることが出来ない……」
男「やっぱりそうか」
こなた「どうすればいいの? 私のせいで壊れちゃうよ……」
男「……」
こなた「私が願ったせいで……私が望んだせいで……」
男「……」
こなた「だから男に助けて欲しかった……。それでいいんだって思わせて欲しかった……」
男「……」
こなた「壊れても悲しくないって、思わせて欲しかった……」
男「……」
こなた「前の男なら、そうしてくれたよね?」
男「……そうかもな」

こなた「かも、じゃないっ!」

男「……」
こなた「そうしてくれたっ! 前の男なら、それでいいって言ってくれたっ!」

身体を震わせたまま、こなたは俺を見据えた。
そのまま泣きそうな顔で叫んだ。

こなた「だって私は男の大好きな狐だから!」
男「……」
こなた「ねぇ……死んで……戻ろうよ……」
男「……」
こなた「あの頃の男に戻ろうよ。私と幸せに暮らして……」

こなたがゆっくりと歩み寄ってくる。
鉈が妖しく光った。

こなた「永遠に」

刃が首筋に当てられた。
今度は避けない。
塩も撒かない。
代わりに俺は問い掛ける。

男「……本当に終わらせる方法はないのか?」
こなた「ないよ」
男「もう一度願ってみたらどうだ? 25日が来る直前に」
こなた「それは前回やってみた」
男「あぁそう……それなら……」

俺が考えられる範囲で、ループを終わらせる方法は一つだ。
繰り返す世界を元に戻すために。
大切な人々を壊さないために。
俺は覚悟を決めた。

男「やっぱりこれしかないか」
こなた「これ……?」



男「俺達がこの世界から消えよう」



こなた「え……」
男「元々死んだはずだったんだ。それを歪めて俺達はここにいる」
こなた「……」
男「もう十分だろ? お前は長いこと俺といた。俺も……まぁ悪くなかった」
こなた「……男……」
男「二人してこの世界からいなくなれば、ループは終わるかもしれない」
こなた「……そうかもしれないけど」
男「なんだ? 貴様、まだ一緒にいたいとでも言うのか?」
こなた「当たり前だよ。……でも、男がそう望むなら私は……」
男「……」
こなた「……いいよ」
男「……ありがとうな」
こなた「男は、それでいいの?」
男「あぁ。そもそもお前に願われた命だ」
こなた「……ごめん」
男「謝るなよ。そのおかげで、俺は変われた」
こなた「……」
男「最高のクリスマスプレゼントだった」

こなた「男……っ!」
男「こなた……」
こなた「私も、すぐにいくからね」
男「あぁ。……しまったな。天国はあるのか、かなたに聞いておけばよかった」
こなた「あはは。自分だって一回と言わず死んでるくせに」
男「それを言うな。……あ。そういえば、ここで死んだら現実世界ではどうなるんだ?」
こなた「脳死? 心臓麻痺? そんな感じかな?」
男「……いきなり血が噴き出すとかはやめてくれよ? 人間のお前がびっくりするし」
こなた「いいのいいの。私だから」
男「そんなもんか」
こなた「そんなもんだよ」
男「というかお前、ちゃんと付いて来いよな」
こなた「うむー」
男「本当だろうなー?」
こなた「ひどいな! 愛の究極は死だって、偉い人も言ってたもん!」
男「あ、そ」
こなた「……最期に、私にも言って欲しいな」
男「は?」
こなた「好きだって」
男「……」
こなた「……」
男「切られると同時に言ってやるよ」
こなた「む……」
男「……」
こなた「じゃあ……」
男「ん」
こなた「いくよ?」
男「……」
こなた「好きだよ、男……」

鉈を持ったこなたの腕が引かれる。
刃が首筋を切り、一瞬遅れて熱い感覚が走った。
やがて血が噴き出した。

男「ぐ……!」

痛くはないが熱い。
……いや、痛すぎて熱いのか?
そんなことよりこなたに伝えなくては……。

男「……ぅきだ……」

力を振り絞って言葉を発すると、俺の意識は闇に墜ちていった。

男(しまった。好きだというはずが雨季だに……)

闇の中、最期に考えたのはそんな下らないことだった。

目の前には天使がいた。
長くて綺麗な髪に小柄な身体、そして慈愛に満ちた顔立ちに不法進入。
これを天使と言わずなにをそう呼ぼう?
……って

男「不法進入ゥ!?」
かなた「へ?」
男「なんだ貴様は! この部屋が俺専用聖域と知ってのことか!」
かなた「聖域……あー……思い出すなぁ。そうくんも時々そんな言葉使ってたっけなぁ」
男「出てけ」
かなた「それは無理です」
男「何故だ」
かなた「私、この家から出られないみたいですから」
男「……新手のストーカー?」
かなた「ストーカーじゃないです!」
男「じゃあなんなんだよ……」
かなた「おばけです」
男「おばかか」
かなた「おばかじゃないです! 幽霊なんですってば!」
男「じゃあその幽霊が、俺になんの用だよ?」
かなた「……えーと……ごほん…………」
男「もったいぶってないで早く言――」

かなた「突然ですが男くん、貴方は一週間後の24日に死んでしまいます」

男「え゛」





狐「終わらなかったね」





エンディングF『繰り返し続ける日々』

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最終更新:2009年08月24日 13:36