家に帰ってきた。
……今日は、もう寝よう。
時刻はもうすっかり遅いし、眠いし、何か食べる気もしないし、寝よう。
念のために目覚ましをいつもより一時間早くして、今日は寝た。
―――
……。
―――
「―――っぁ」
声にならない妙な悲鳴が口から漏れた。
時刻は五時。
早すぎて暇すぎて朝からハンバーグとか大量に作っちまった。
アバウトに表現するとそう、それは山のよう……!
寝ぼけながらもよく作ったよ俺も。
バーカ! 俺のバーカ!
……疲れてるなあ、俺。
「どーするかなあ……あ、こなたの見舞品にすっか」
味には多少の自負がある。
一学期からずっと自炊していたのだ。
よっしゃ、半分は見舞品として、四分の一は今食べて、残りは昼飯にしよう。
いえーい、俺天才。
「あっはっはっー!」
……駄目だ、俺疲れすぎて精神病んでるかもしれん。
「……ま、いいや。
そうと決まったら特製ソース作るか!」
こなたのには薄味のを作ろう。怪我人だしな。
そうして、気付けば普段の登校時間になっていた。
……どうしようか。
今日も、つかさは家に来るのだろうか。
待ってるべき、なのかな。
……つかさを、信じよう。
そう決めて、俺は食べ過ぎの胃袋を休めるように腰を落ち着けた。
ピンポーン。
腰を落ち着けてから数分後、チャイムが鳴った。
……腰を上げて、玄関へと向かう。
ガチャリ、とドアを開けるとそこには、
「あ、おはよ、男」
何故か、柊かがみがいた。
「え? かがみ?」
「そうよ? 見て解るでしょ?」
「な、何故に?」
「つかさが全然あんたん家に行かないから、それを言いに来たのよ。
どうせあんたの事だから、じっと待ってるんじゃないかと思ってね」
「う」
図星だ。
「あはは、ま、それがあんたらしいんだけどね」
「それは馬鹿にしてんのか?」
「ばか、褒めてるのよ」
普通の会話だった。
違和感なんか存在しない。
まるでこなたの事がなかったかのような―――
「でさ、どうする? このまま学校行く?」
うーん。
どうするか……。
いや、もうちょっと待とう。
「もう少しだけ待つよ。
念のため、な」
「…………そ、なら私、上がっていい?」
「ああ、ついでにハンバーグを食べてくれると助かる」
「は? ハンバーグ? 朝からそんな重たいもの作ったのあんた!?」
「それはもう……山のよう……!」
「…………」
冷めた目で見るな。痛いから。視線が痛いからっ。
―――
そして、ハンバーグとの戦いは始まった。
ひき肉の嵐。
ご飯を食べる余分もないような、ギリギリの戦い。
食う。食う。食う……!
ひたすら口に含み、咀嚼する。
それは肉の園。
人はそれを天国と呼ぶのか、地獄と呼ぶのか。
さあ、戦いを始めよう。
食事と言う名の戦いを―――
「ってこんなに食べれるか―――!」
「あんたが作ったんでしょうが!」
以上、俺の病んだ脳内。
「ってか、かがみはもっと食べれるだろ? 全然少食じゃないか」
「何よそのイメージは!?」
「え? だってかがみんはもの凄い食べるんだよーってこなたが前」
「こなたぁー!」
……騒がしい食卓でした。
そしてもうしょうがないや、と諦めて雑談していた時、俺の部屋に無機質なチャイムが鳴り響いた。
「…………」
「…………」
無言の確認。
かがみが頷くと同時に、俺は玄関へと向かう。
ガチャリ、とドアを開けた。
軽くデジャブ。
状況的にも、さっきとそっくりだ。
俺の立ち位置。
ドアの角度。
そして、ドアの向こうに居る、その姿さえも、さっきとそっくりだ。
……髪の長さが、髪型が違うだけ―――
「……おはよう、つかさ」
そこにいたのは、柊つかさだった。
最終更新:2009年09月04日 19:55