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「……頼み?」

「ああ、頼みだ」

「ほほー……何だよ、言ってみ」

「ああ、あのな……―――」


『でも、一つだけ忠告だよ。
 ……男も危ないかもしれない。
 だから、気をつけて』


「…………」

 ……いや、もしかしたら、友に危険が及ぶことになるかもしれないな……。

「なんだ? いわねーの?」

「ええと……これから話す頼みは、危険かもしれないんだ」

「……ほう」

「それで……もし嫌なら、―――このまま、聞かずに帰ってくれ」

「…………」

「…………」

 無言。

「…………」

「……………………」

 ……無言。……やはり、駄目か。そうだよな、たかが同じクラスの友達に、こんな話をいきなり振られて、聞こうとするはずがない。

「……―――泉、こなたのことか」

「―――え?」

「お前の頼みだよ」

「……あ、ああ……」

「そか。ほれ、話してみ」

「お、おい!」

「んだよ」

「まだ、答えを聞いて―――」

「―――いいから話せよ。大事な頼みなんだろ? なら、どんなんでも聞いてやらあ。ま、受けるかはたのみ次第だけどな」

「……友……」

 ……ああまったく、俺は、良い友達を持った。

―――

「ほーん。それで、俺にその時間。その場所での目撃者や手がかりを探す協力をしてほしい、と」

「ああ。でも、最初に言ったとおり、危険なことだ。なんせ、刺された本人に警告されたくらいだからな
 ……受けるかどうかはよく考えて―――」

「―――ま、うけちゃる」

「軽うぅ!?」

「別にそんなに危険でもねーだろ。調べるだけなんだから。俺の隠密性なめんなよ? ステルス迷彩並みだぜ?」

「例えがいまいちわかんねえよ……」

「―――ま、俺様に任せとけよ。……お、ここまでだな」

 ―――駅前か。友の家は学校から近く、電車に乗る必要がないのだ。

「ああ、じゃあ、また明日」

「おう!」

「……危険だと少しでも感じたら、すぐに辞めろよ?」

「……ああ、心配すんなよ。俺様を誰だと思っちょる。天下のゲーム中毒、ともき様だっぜ!」

 ……やっぱり今も、ゲーム中毒なんじゃないか。


 ―――まったく、……こんな俺には、もったいないくらいの、友人だ。







☆―――

 ぐつりぐつり。

 想いが沸騰するような温度に上がる。
 妬ましい。妬ましい。

 ねえ、何で邪魔をするの?
 男くんを、なんでわざわざ帰らせようとしたの?

 ―――何で? お姉ちゃん。

 お姉ちゃんは味方のはず。
 私と男くんを応援してくれるはず―――

『じゃあね、男』

 ―――そうだ、あの日。
 遊園地から帰ったあの日、おねえちゃんは男くんとでんわをしていた。
 ……あのひから、私はお姉ちゃんの行動が気になるように、みんなのこうどうが気になるようになった。
 おねえちゃんと男くんがわらいながら話してる。
 こなちゃんとおとこくんが私の知らない話で盛り上がってる。
 ゆきちゃんに男くんが勉強をおそわってる。
 おねえちゃんがおとこくんをからかってわらってる。
 こなちゃんがわたしがよくしらないねっとげーむをおとこくんにやらせようとしてる。
 あ、あのこ、いまおとこくんにぶつかった。
 あのこ、いまおとこくんをみてた。
 いまおとこくんのわだいをはなしてた。
 いまおとこくんにわらいかけてた。おとこくんもわらってた。おねえちゃんがたのしそう。おとこくんといっしょにたのしそうこなちゃんがこうていであそんでるおとこくんといっしょにわたしいがいのおんなのことはなしてるいやだやめてわたしをみてわたしだけをみておとこくんはわたしのかれしなのにいやいやいや―――!!!!
 ―――いやだ!

 ぐつり。
 ぐつりぐつり。

 あ、あああ。
 ああ、あああああ。
 あああ、あああああああ!











「―――あ」


 ―――目が覚めた。
 いつのまにか、眠ってた。
 ……今のユメ。

 ―――私の、本心。

 醜い部分。
 いやな、直視したくない部分。
 ……気分が悪い。
 私は、もう一度、ゆっくりと目を閉じた。


 ―――『それ』が殻を破るのを、必死に堪えるように。






☆―――

 カタカタカタカタ。

 少年―――岸場友樹はパソコンのキーボードを激しくタイプしていた。
 男からの調べ物をこなすためだ。
 帰ってくすぐ、パソコンを開き、情報を集めた。

 彼は顔が広い。
 リアルでも、ネットでも、だ。
 故に彼に集まらない情報はほぼないと言っていい。
 さらに今回は―――普段は絶対しないのだが―――町の警備システムにまで手を出して、つまりハッキングまでしている。

 ―――これで完璧。この町のことについて、もはや彼に分らないことはなくなるだろう。
 ……そして、彼は目的の情報を見つけた。

「! これは……」

 それはいくつかの情報だった。
 目撃情報、である。
 本来警察の聞き込みでは判明しきらないであろう情報の断片だ。
 そこにあった情報の欠片と、彼の頭に記憶している、凌桜の女生徒のデータを照らし合わせた結果―――その残酷な答えは、導き出された。


「泉こなたの友人、柊かがみ―――」


 そして、物語は、近づいていく―――
 ―――あの赤い、教室へと。





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最終更新:2009年09月04日 20:32