☆―――
「―――ふう」
やっと終わったよー。
お姉ちゃんはどっか行っちゃうし、私以外には誰もいないし、疲れちゃったよ。
早く帰って男くんと電話したいな。
カチャカチャと道具をしまって、美術室を出る。
……一応、教室を覗いて行こうかな?
☆―――
夢を見ている。
昔の夢だ。
嫌な夢だ。
誰もわかっちゃくれない。
誰もが気味悪がる。
そして、誰も彼も、傷付けた。
……そんな記憶を辿る悪夢。
……覚めて。
こんな、夢、俺は、見たく、ない。
……覚めて。
嫌だ。苦しい。もう関係ない。助けて。
……覚めて!
無限地獄。
苦痛に苦痛を上乗せし、我が身を穿っていく。
「お――――とこ」
……その時、声が聞こえた。
「起きて、――こ」
それは、その声は、
「起きて、男」
柊、かがみ。
「―――ん、柊?」
……つい、前の呼び方で読んでしまった。何故だろう。
「む―――何よ、急に他人行儀に」
「何だ、寂しい?」
「て、寂しくなんか無いわよっ。誰がそんな……!」
顔を赤くして起こるかがみ。
照れてる。が、それを指摘するとちょっと怖いのでスルースルー。
「悪い悪い、かがみ。
……ええと、」
……ふむ。
どうやら補習の課題をこなしている内に眠ってしまったようだ。
「……で、あれ? 何でかがみがここに? つかさは一緒じゃないのか?」
「……うん。
…………ええと、男」
「?」
何だ? さっきからいまいちかがみの行動が解らない。
「―――少し、話を聞いてくれない?」
話とな?
「何だよ、改まって」
「……真剣な、話なの」
「…………わかった、聞く」
何だか解らないが、大切な友人の真剣な話なら、聞かないわけにはいかない。
俺が姿勢を改めて、真剣に聞くことを表すと、かがみも緊張したように、
キョロキョロと目線を泳がせている。
……一体なんの話だろう。
つかさのことか? それとも、こなた?
解らないが、話すことさえ戸惑われるような話なんだろうか。
そして、
「……私さ、素直じゃないんだよね」
柊かがみの話は、そんな言葉から始まった。
「……て、知ってるよ」
「うるさいっ、いいから黙って最後まで聞けっ」
茶々を入れたら頬を真っ赤にして本気で怒られた。照れ怒りか。
「……もう。……えーと、そう、私は素直じゃない。
これはよくこなたにも言われる事なんだけど、…………ツンデレ、とか。いや、
認めるわけじゃないけど……まあ、あんまり率直に気持ちを伝えられるタイプじゃないのよ」
「……だから、そういう気持ちが出来たとき、どうすれば良いのか解らなかった。
……当然よね。今まで全く経験の無いことだったんだから」
……何だ? 恋の悩みか?
「例えば後をつけてみたり。
盗み聞きをしてみたり。
こっそりプロフィールを調べてみたり……そういう行為に走っちゃう位に、解らなかった」
「……ストーカー?」
「うっ、……そうね、そう言うわよね……」
「と言うか、何が話したいんだ?」
さっきからはっきりしない。うすらぼんやりとしか掴めない話だ。
「…………わかったわよ。ちゃんと話すわよ
……こなたの事なんだけど、」
―――こな、た?
「何か、知ってるのか!?」
正直行き詰まっていたこなたの情報。それは今の俺にとっての最優先事項だ。
……だから、気付かなかった。その前後の繋がりの、決定的におかしさに。
前に立つかがみは勇気を振り絞るようにこちらを見る。
顔には汗を垂らし、足は震え、手は強く握り締めていた。
―――そして、次に紡がれた音は、俺の脳を揺らした。
「こなたの事を刺した犯人は――――――私、柊かがみです」
―――え?
なに、を、いって、いる、んだ……?
「―――そして、私は―――」
なにがおこって。
なにがなにがなにが―――
「男のことが、好き―――」
最終更新:2009年09月05日 07:59