飛び込むしか、ない……!
かがみがナイフを振り上げる。
走れ。
たとえ筋が切れようが。
たとえこの先死んでしまおうが。
たとえ悲劇しかまっていなかろうが。
たとえ、意味がなかろうが。
俺が、止めなきゃいけないんだ……!
「あ、あああああ!」
かがみの声。
握られたナイフが唸る。
この傷付いた身体じゃあギリギリ間に合うかどうかだ。
―――つまり、命の保障はない。
でも、これは俺の問題だ。
俺のせいで起こったことだ。
俺のせいで殺し合う―――なんて、もう、見たくない。
だから俺は、二人の間に割って入った。
ざく、という音が、どこか、遠く聞こえたような気がした。
「づ……あ……っ」
俺から苦痛の声が漏れる。
「―――ぇ」
「……か、がみ」
……ナイフは胸のあたりに刺さった。
「……ど、う、して」
「……悪い。
殺し殺されって言うのは、ホントに、嫌でさ」
明らかに致命傷だ。
「……だから、もう―――やめて、くれ」
膝から崩れてく。
やがて、俺は床に伏した。
視界には、俺の好きな人達。
ありがとう。ありがとう。
俺みたいなやつのために泣いてくれた。
ありがとう。ありがとう。
ここまで、俺を愛してくれた。
―――でも、ごめんなさい。
俺は、もう死ぬ。
だから、
「……なあ、つかさ。かがみ」
ぼろぼろと泣き続ける二人に声をかける。
「なに……? 男くん……」
「男……?」
二人を、解放しなくては。
「―――もう、俺を、忘れてくれ」
俺は死ぬから。
もう消えるから。
どうか、引きずらないで。
「そんなの……っ、無理、よ……っ」
「……頼むよ。
俺は、俺のために二人が争うのは嫌なんだ。
―――全て、リセットしてしまおう。
俺と出会う前の、仲良しな姉妹に戻ってくれ。
俺は、もう、死んでしまうから」
二人は顔を伏せて返事をしない。
……大丈夫。俺が[ピーーー]ば、きっと忘れられる。
―――だから、忘れられるように。
二人に罪を、作っちゃいけないんだ。
刺さったナイフを、ずぼりと抜き取る。
ありえないほどの血があふれだす。
服の適当な場所でグリップに付いてる指紋を拭き取り、ぎゅ、と、強く握る。
そして、二人が見てない間に。
二人が仲直りすることを望みながら。
既に死を確定された己の身体に鞭打つように、
「ありがとう―――俺は、幸せだったよ」
そのナイフで、自分にトドメを刺した。
TRUEEND
【消えた異端、蘇る日常】
最終更新:2009年09月05日 07:48