いくら物事を先延ばしにしたがるのは人間の性・フロンティアだと言っても、あれはひどい。
俺は、ベッドに寝転びながら、今日の帰りの自分を思い返した。
学校の帰り際に高良さんを見つけたのに、声をかけることができなかった……
「高良さんともう一度ちゃんと話すチャンスだったのに……ちゃんと話して、謝るチャンスだったのに……」
でも、考えれば考えるほど、あの日のこと、俺が高良さんに告白したあの日のことはなかったことにしたほうがいいんじゃないかと思えてくる。
なかったことに……
これからも触れずに……
実際、高良さんはそうしようとしてるみたいだしな……今日、学校でいつもどおりの笑顔を向けてきたし。
「あ~、もう、どっちがいいんだ!?どっちが正解なんだ!?」
幸い、今日は金曜日。月曜日までにゆっくり正解を探すか……
――ヴィィィィ!ヴィィィィ!
その時、ベッド脇に置いた携帯が鳴った。
誰だろう?こなたかな?
――電話は知らない番号からだった。
「……?」
ピッ!
「もしもし?」
「あ、もしもし、男?私よ、かがみ」
「あ~、かがみか!どしたの?」
そういえば、クラスの違うかがみとはまだ番号を交換してなかった。
「あ、あのさ……男って明日ヒマ?」
「え?ヒマだけど……なんで?」
「えっと……大学生の親戚のお兄ちゃんの誕生日プレゼントを買うことになったんだけど……男の人にどんなもの買えばいいか良くわからなくて……」
「ああ、そういうことなら手伝うぜ」
「ほ、本当?ありがとう!じゃあ、明日11時に駅前でいい?」
「おう、わかった!じゃ、また明日な」
「あ、男……」
「ん?」
「な、なんか今日ごめんね、日下部が変なこと言って。あいつにもちゃんと言い聞かせといたから」
変なこと……?
そういえば「しょっぱい顔」とか言われたような気が……
「あ~、いや、別に気にしてないよ。日下部さんにはあんまり友好的に思われてないみたいだったけど……」
「そ、そっか……ごめんね。でもあいつ、あれでもいいトコあるから」
「おう、日下部さんにもよろしく」
「うん、じゃあ、また明日ね!」
ピッ!
買い物、か……
まあ、家に閉じこもるよりはずっといいだろう。
――翌日、土曜日、場所は駅前。
いたのはかがみ一人だった。
いつもどおりのツインテール。しかし、いつもの見慣れた制服姿ではなく、今日は私服だ。
ちょっと新鮮。
「つかさちゃんは?」
「え、えと……つかさは料理担当。私がプレゼント担当」
「そっか。つかさちゃん、料理うまいもんな、つかさちゃんが作るときの柊姉妹の弁当は豪華だし」
柊姉妹は当番制で弁当を作っているのだ。
「……悪かったわね!どうせ、私は料理下手ですよ!」
「そんなこと言ってないじゃんか。かがみが作った弁当も慎ましやかで趣が………」
「うるさいわね!さっさと行くわよ!」
「はいはい、了解です。かがみ様」
ん?そういえば、当然のごとくつかさちゃんがついてくるものと思っていたが……
よく考えたらこの状況、女の子と二人で買い物なんて、もしかしてもしかするともしかしなくても――
「ほら、ぼけっとしてないで、行くわよ!」
「あ、はいはい」
俺はかがみのあとを追った。
最終更新:2008年07月05日 18:27