「ふ~、歩き回って疲れたね、男。」
「ああ、そうだな~」
すでに日が傾いた17時。
俺たちは公園のベンチで休憩していた。
かがみの手元には左右に二つずつ、計四つの袋が置かれていた。
もちろん、その全部が「親戚のお兄ちゃん」の誕生日プレゼントなわけがない。
「親戚のお兄ちゃんへのプレゼントのキーケース、気に入ってもらえればいいな」
「え?あ、うん。お兄ちゃん、きっと気に入ると思う」
「そっか、そりゃ良かった」
「それに、新しい服もゲットしたし、ラノベの新刊もゲットしたし……」
「おいおい、親戚のお兄ちゃんへのプレゼントの買い物じゃなかったのかよ?結局自分の買い物のほうが長かったしさ」
「こ、これは!その……ついでってやつよ!自分の買い物も一緒に済ましたほうが効率がいいでしょ!」
ははは、どっちがついでだよ……?
「男ももっといろいろ買い物すればよかったのに」
「う~ん、そんなにお金ないし、それに……」
「それに?」
「サッカーやってた頃は土日関係なく練習があったから、あんまり買い物のとかやり慣れてないんだよな。買うものを決めてからしか買い物しないっていうか……」
まして、女の子と二人で買い物なんて……
「ふーん。男ってケガでサッカー辞めちゃったんだよね?」
「辞めざるを得なかったって感じだけど……」
「転入してきたのも、それが原因なの?」
「ん?ん……まあ、ね」
「あ、ごめん。言いたくなかったら言わなくていいよ」
「別にそういうわけじゃないけど……まあ、いいじゃん。こんな話やめようぜ?」
「そう……」
「………」
なんとなく、気まずい沈黙。
別に言いたくないわけじゃないのに。
むしろ言いたいくらいなのに。
むしろ聞いてもらいたいくらいなのに。
でも、言うと、なんだか暗い雰囲気になりそうで俺は何も言えなかった。
会話を打ち切ってしまいたくて、俺は言葉を濁し、沈黙を選んだ。
ふと思い出すのは、ドーナツ屋で、会話を打ち切った高良さん。
高良さんも同じような気持ちだったのかな……?
「ねえ、男……」
沈黙を破ったのはかがみだった。
「今日は楽しかったね!」
「お、おう!楽しかったよ。」
それは正直な気持ちだった。
正直、楽しかった。
結局、もしかしなくてもこれは、第三者から見ればデートってことになるんだろう。
親戚のお兄ちゃんへのプレゼントの買い物は最初の一時間くらいで終わってしまったし。
あとはかがみとお昼を食べて、服屋を回り、雑貨屋に寄り、本屋で物色して……
まあ、とにかく楽しんだ。
楽しんだはずなのに……
楽しみきれないのは、高良さんのことがあるからだろうか……?
「ねえ、やっぱ男、昨日から様子が変だよ?元気ないっていうか……」
「ん?あ、いや……別に……」
「あんたは沢尻エ○カか!?せっかく人が心配して上げてんのに!」
「ご、ごめん……」
「……やっぱり……みゆきのこと?」
「―――ッ!?」
不覚にも言葉に詰まった。
というか、呼吸が詰まってしまった。
ふう、とため息をつくかがみ。
「昨日は男が『ない!それはない!』って言ったから、思わず信じちゃったけど――」
俺はかがみのほうを見れなかった。
「――よく考えたら、あのときの男の否定の仕方、不自然だったもん」
俺は、そっと横目でかがみの様子を伺う。
「やっぱり、男はみゆきのことが好きなんだね?」
かがみは……
「あの子、美人だし、スタイルもいいし、頭もいいし、おしとやかだしね……」
かがみは……
「それでも……それでも、私は……」
かがみは……
「……男が好きッ!」
泣いていた。
最終更新:2008年07月05日 18:28