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 とぅるるるる………
 とぅるるるる………
 とぅるるるる………
 とぅるるるる………



「はい……高良です。

 ……男さんですか?」

 携帯でも律儀に名乗る高良さん。

「こ、こんばんは。うん、俺だけど……い、今、電話しても大丈夫?」

「ええ……大丈夫です」

「そ、そっか。よかった。正直、電話に出てもらえないかも、と思ったから……」

「……いえ、そんなことは……で、ご用件はなんでしょう?」

「……あ、あのさ、この前のドーナッツ屋でのことなんだけど。あの時はいきなり告っちゃったり、帰り際に余計なこと言っちゃったりして……その、なんか後味悪くなっちゃったし、もう一度ちゃんと話したいんだけど……」

「……ええ、実は私も男さんともう一度、二人でお話したいと思っていたんです。……でもこの前はいきなり帰ってしまって、男さんに失礼なことしてしまいましたし、なかなか言い出せなくて」

「あ、いや、失礼だなんて、全然!」

「男さん、明日のお昼間、お時間空いてらっしゃいますか?」

「明日?うん、空いてるよ」

「では、駅に1時というのでいかがでしょう?」

「うん、じゃあ、その場所、その時間に」

「では、また明日。失礼します」

「じゃあ、また明日。バイバイ」

 ピッ!



 高良さんとの電話はこんな感じだった。

 ……どうやら怒っているわけではなさそうだ。

 高良さんも話したいって言ってくれたし……

 怒ってるってのは、俺がそう思い込んでいただけなのかな?

 こんなんことなら……

「やっぱり、昨日、校門の前で高良さんを見かけた時に声をかけておくべきだったかな~?」

 案外、すんなり話をできたのかも……

 一瞬『社交辞令』というワードが頭をよぎったが、すぐに頭から追い出した。

 ムズカシイ日本語、ワカリマセーン!

 とは言え、一度フラれてるからな。

 気まずい感じは否めない。

 ――明日、高良さんへの気持ちに区切りをつけて、そしてかがみと……

 さすがに、いまさら逆転があるとは思えないし。

 フラれたから『ハイ、次!』っていうのも、あまり良くない気がしないでもないけど……

「でも、かがみがいいって言ってるんだから、まあ、いっか。

 実際、かがみに告られて、俺も嬉しかったしな……」





 ――翌日、日曜日。

 俺は、一時間前には駅前にいた。

 ……緊張のあまり、早く来てしまった。

 しょうがない。本屋で立ち読みでもして、時間潰すか……

 本屋に入る。

 そこで目に飛び込んできたのは、見覚えのある、薄紫色のショートカットにリボンを巻いた頭だった。

「あれ?つかさちゃん?」

「ふえ?あ!男くん!バルサミコ酢―!」

「あ、ああ。バルサミコ酢―」

 ……なんでこの子の挨拶はバルサミコ酢なんだ?

「えへへ、偶然だね~男くん。こんなところで何してるの?」

「あ、えっと。ちょっと人と待ち合わせをしてて、それまでの時間を潰しに……」

 何となく、高良さんと会うと言うのをためらった。

「つかさちゃんは何を?」

「お菓子作りの本を買いに来たの~おねえちゃんも誘ったんだけど、『昨日、本屋に行ったからいい』って断られちゃった……」

 残念そうな顔をするつかさちゃん。

 感情は素直に顔に出る子だ。

 何を考えてるのかイマイチつかめないけど。

 ちなみに、かがみの言ったその『本屋』には俺と一緒に行ったんだけどね……

 って、あれ……?

「ねえ、つかさちゃん。今日は親戚のお兄ちゃんの誕生日会じゃないの?」

「え?親戚のお兄ちゃん?お姉ちゃんじゃなくて?しかも誕生日会って……何?」

 ん?あれ?話が噛み合ってない。

「……あ、いや、えっと。だって昨日、かがみと……」

「昨日?お姉ちゃんとどうかしたの?」

「あ、いや、昨日、じゃなくて金曜日に、かがみがそんなこと言ってた気がしたんだけど。俺の気のせいだったかも……」

「私たちの親戚はお姉ちゃんしかいないよ。うちもお姉ちゃん達と私だけだし、親戚中女だらけなの~」

 うわ、それ何てハーレム?

「だから男くんの気のせいじゃないかな~?」

「あ、う、うん。多分そうだと思う。あはは、ごめんね。変な事言って」

「ううん。でも、びっくりした。てっきり私、昨日男くんとお姉ちゃんがどこかに遊びにでも行ったのかと思っちゃった」

 ……ブホッ!!

「……ゴ、ゴホッ!ゴホッ!」

 無邪気な顔して、なんてクリティカルヒットな発言をかますんだ!?この子は……

「え?え?男くん!?大丈夫!?」

「あ、うん。あはは、喉の調子が急に……

 ってか、そんなわけないじゃん!そんなデートみたいな……」

「てへへ、そうだよね~ごめんごめん。でも、私から見ると、男くんってどことなくお姉ちゃんに似てるんだよね~なんだかお兄ちゃんみたい!」

「え?そうかな?」

「お姉ちゃんと男くんが結婚したら、ホントのお兄ちゃんになるね」

 ……ブホッ!!

「……ゴ、ゴホッ!ゴホッ!」

「男くん!?ホントに大丈夫!?」

「や、やっぱり喉の調子が……」

 話が飛躍しすぎだろ!!

 相変わらず、つかさちゃんは何を考えてるかイマイチつかめない……

 とはいえ、このままだとかがみとは付き合うことになるかもしれないし。

 あながちありえなくもないかも……



 たたたたた!

 走り寄ってくるつかさちゃん。

 『おにーちゃ~ん!』



 以上、俺の妄想。

 う~ん、妹属性があるやつにはたまらんだろうな。

 しかし俺はどちらかと言うと姉属性――、

「あ、そうだ、男くん。ちょっとお願いがあるんだけど……」

「あ、うん。なに?」

 妄想からに現実に引き戻された。

「え、えっと……えっとね、えっとね。今度新しいレシピのクッキーを焼こうと思うんだけど、その……男くんにも食べてほしいな……と思って」

 もじもじしながら言うつかさちゃんは、とてもあのかがみと双子とは思えない。

「おう!ぜひぜひ。むしろこっちがお願いしたいくらいだよ。俺としては、チョコチップが乗ってると嬉しいな」

「ありがとう!チョコチップだね!わかった~!」

「いやいや、こちらこそ」

「それじゃ、わたし行くね。またね~」

「うん、じゃあね。バルサミコ酢~」

「あはは!さよならの時に『バルサミコ酢』はおかしいよ、男くん」

「え?あ、そうなの?あはは……じゃあ、バイバイ」

「うん、バイバ~イ!」

 本屋を出て行くつかさちゃんを見送った。

 ……バルサミコ酢は別れの挨拶には不適、と。

 一体、どういう基準なんだ……?

 やっぱり、何を考えてるかイマイチつかめない……

 ……それにしても、かがみのやつ。

 『親戚のお兄ちゃんの誕生日プレゼントを買う』ってウソだったのかよ……

 俺と買い物に行くのに、ウソの口実を使うかがみ。

 しょーもない嘘ついちゃってよ、


 ……ちょっと萌えるかも。


 にしても結局、つかさちゃんにはかがみとデートしたなんてことは、まして告られたなんてことは、言わなかったけど……

 まあ、言うべきときが来たら言えばいいか。


 ……さて、そろそろ時間だ。

 ひとまず、かがみのことは置いといて、と。

 俺は本屋を出る。

 そして約束の場所へ向かう。




 高良さんとのギクシャクした関係に区切りをつけるために。

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最終更新:2008年07月05日 18:42