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「さあ、お見舞いザマスよ」
「え、えーと。行くでガンス」
「ふんがー!」
「……まともに挨拶しなさいよ!」

 あれ?えっと……お見舞いはいらないって言わなかったっけ?

 まだ寝ぼけてるのかな?

 両手で自分の頬をパンパンと叩いてみる。

 うむ、夢ではなさそうだ……

「……なんだか、体調悪そうだね……?」

 と、こなた。

「当たり前でしょ!風邪ひいて休んでるんだから!」

 かがみが大きな声を上げる。

 ここで「仮病です。今はただ寝ぼけてるだけです」など言えるわけもない。

「やはり、大人数で押しかけたのはご迷惑だったでしょうか?」

 心配そうな高良さん。

 ふと、高良さんと目が合う。

 一瞬、見つめ合い、そして高良さんが恥ずかしそうに目を逸らす。

 その様子を見て、かがみがあからさまに表情を堅くするのが目の端に映った。

「え、えっと!ほらこなた!男も気分悪そうだし、早くプリント渡しなさいよ!」

 こわばった表情を完全には崩せないまま、かがみが声を上げた。

「あ、そだね。ほい、男。これ今日配られたプリント。あとゴールデンウィークの宿題が出たからその一覧もね」

 こなたがプリント数枚を取り出して、俺に手渡した。

「男が『お見舞いはいらない』って言ってたから行かないつもりだったんだけど、プリント渡してくれってななこ先生に頼まれちゃってさ~
 先生は最初、セバスチャンに頼むつもりだったみたいなだけど、あいつ『今日は収録なんスよ~』だなんて言ってさ。まったく執事にあるまじきご奉仕精神の無さだよね!」

「ま、まあ、白石も忙しい身みたいだしな」

 フォローしといたぜ、白石。今度なんかおごれよ

「あ、そうそう、これ」

 こなたがゲームを手渡してきた。

「ああ、貸してくれるって言ってたゲームか?ありがと……ってこれ、18禁のゲームじゃねえのか!?」

 ……パッケージのイラスト的に。

「また、あんたはそんなもんを!」

 かがみの怒号が飛ぶ。

「男さん……」

 高良さんが、『受け取らないで』と目で訴える。

「はいはい、ちょい待ち!いるんだよね~そうやってすぐ決め付ける人達。言っとくけどCLANNADは人生、じゃなかった、全年齢対象だよ!」

「あ~、これがあの有名なクラナドか?」

 エロゲじゃなかったんだ……

「まったく、そういう偏見が――」

「とにかく、風邪ひいてるんだから、ゲームなんかしてないでちゃんと寝なさいよ!」

「そうですよ。お体に触りますから!」

 こなたの声を遮って、かがみと高良さんが声を上げる。

「明後日は絶対学校に来てもらわないと困るんだから!」
「明後日は絶対学校に来てもらわないと困りますから!」

 二人の声がハモった。

 二人がハッとしたように、顔を見合わせる。

「いや~、男モテモテだねえ~」

 ニヤニヤ顔のこなた。

 いや、こなたさん……

 今の状況じゃ、それ、シャレにならないっス……

 かがみはあからさまに高良さんを意識しているし、高良さんにも、困惑しながらも、かがみに対するライバル心のようなものが芽生えたようだ……

 なんだか、居心地が悪い……

 これだからお見舞いを断ったんだけどな……

 二人とも、お互いがお互いに俺に告ったことを知らないはずだけど、もし知ったら……

 ……昼ドラ的展開?

 善良な高校生である俺は昼ドラなんて見ないからよくわかんないが。

「まあまあ、かがみんもみゆきさんもそんなにムキにならないで。男も、ゲームをやるくらいのほうが精神衛生上の観点からもきっと早く元気になるって!」

 珍しく難しい言葉を使うこなた。

「あんたの精神構造は特殊すぎて参考にならん!」

 かがみが切り捨てる。

「では、男さんのお体に触らぬうちに、おいとまいたしましょうか?」

 高良さんが、俺の居心地の悪さを察するかのように言った。

「そだね、じゃあ、そろそろ……」

「男の風邪が悪化しないうちに帰ろっか」

「ああ。ありがとな、みんな」

 その場がお開きになろうとしたその時、

「あ、ちょっと待って。男くん、これ!」

 それまでおとなしくしていたつかさが声を上げた。

 手には、リボンのついた包みを持っている。

「昨日の夜、早速クッキー焼いたの~これ男くんの分!」

「え?あ、ああ。ありがとう、つかさちゃん」

 そういえば昨日、新しいレシピのクッキー焼くからとか何とか言ってたな。

 早速焼いてきてくれたんだ。

「ああ、あんた、男の分も作ってたんだ?」
「美味しかったよ~それ(=ω=.)」
「……ええ、美味しかったですね」

 高良さんの表情がちょっと曇ったが気になったが……

 ま、気にしないようにしよう。

「えへへ~、昨日言ってた通り、男くんの好きなチョコチップたっぷり乗せてるからね!」

「お!そっか、ありが――」



「昨日!?」

 再びかがみと高良さんの声がハモる。

 その声で俺はハッとなる。




 その瞬間、場の空気が凍りついたのに気づかないほど、俺も鈍感ではなかった……

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最終更新:2008年07月05日 18:43