でも、私に嫉妬する資格なんてあるのでしょうか?
一度、男さんを拒絶した私に……
でも……あの時、男さんを拒絶した時の気持ちは私の本心ではなかったのです。
本当は嬉しかったのに、どう対応していいのかわからなくて、
その「わからなさ」が「恐さ」に変わってしまって……
だから、
だから、今度こそ自分に正直になりたい!
意識下に、
無意識下に、
カベを作ってばかりだった私を変えたい!
他の誰でもない、男さんが、そう思わせてくれたのですから!
「お母さん!」
「な~に?みゆき?」
「あの、私にお菓子作りを教えてください!」
「そうねえ……でも私もそんなにお料理得意なほうじゃないんだけど……」
……ええ、存じております。
……でも、今はお母さんしか頼れる人がいないんです。
「それにお菓子って言っても色々あるわよ?何を作るつもりなの?」
「そうですね。……あ、風邪を引いている方が食べたくなるお菓子なんて、何かありませんでしょうか?」
「風邪?それなら、もうプリンで決まりね!」
「プリンですか?いいですね!でも何故にプリンなんですか?」
「風邪にはプリンって相場が決まってるの!みゆきが風邪をひくと、いつもミルクセーキを作ってあげるでしょ?本当はプリンを作ってあげたいんだけれど、いつもめんどくさくなっちゃって、味や材料が似ていて作るのが簡単なミルクセーキで済ませちゃうの。うふふふ、内緒の話なんだけどね」
「は、はあ……」
……この人は、何故に内緒話を本人の前でするのでしょうか?
「う~ん、卵にお砂糖に牛乳に生クリームに、ええと……あとバニラエッセンスも確かあったはずだから、今すぐにでも作れるわよ?」
「で、では、早速お願いします!」
「ふふふふ、明日はその男の子のお見舞いかしら?」
楽しそうに、ニコニコしているお母さん。
私は自分の顔が熱くなるのを感じました。
「え、ええ。今風邪をひいてらっしゃるようなので……」
その後、私は早速プリンを作りました。
初めて作る私のほうが、お母さんよりも手際が良かったように感じましたけど……
……それは、気にしないことにしましょう。
この私が、男の人のためにお料理をするなんて……
それだけでなんだか舞い上がってしまいそうです。
うふふふふ。
……男さん、喜んでくださるでしょうか?
「ようやく完成ですね」
「ふ~、初めてにしては、上出来ね。私も手伝った甲斐があったわ」
お母さん……
……後半は完全にプリン作りに飽きていたようでしたけど?
「あ!私、プリン作りに夢中になって、男さんに明日お伺いする旨伝えるのを忘れてました」
携帯電話を取り出そうとする私を、何故だかお母さんは緩やかに制しました。
「まあ、お待ちなさい、みゆき」
「……?何でしょう?」
「こういうときに必要なのは『サプライズ』よ」
うふふ、っと少女のような笑みを浮かべるお母さん。
「明日、いきなり押しかけちゃいなさいよ」
「え?でも……そんなことしてご迷惑にならないでしょうか?」
「大丈夫よ。誰もお見舞いに来ないな~と思っていたところに、突然のお見舞いサプライズ。男の子ならきっと心躍るわよ~」
「そ、そんなものでしょうか?」
「そんなものよ。それにサプライズでお見舞いに行って迷惑なら、きっと事前に連絡差し上げて行ってもどうせ迷惑よ!」
えっへん!とでも言いたげに腰に手を当てて、持論を展開するお母さん。
お母さんの言うことを完全に信用していいのかどうか……
普段が普段だけに少し迷いましたが……
「わかりました。お母さん、サプライズ作戦を実行してみます」
「うふふ。頑張ってね。チャンスがあれば押し倒すのよ!」
……後半は聞こえなかったことにしました。
今宵は、
作ったプリンに願いと、思いとをこめて。
おやすみなさい。男さん……
最終更新:2008年07月05日 18:46