――時間を数時間遡って、ここはお見舞いに来た4人が帰った後の男の家。
つかさの作ってくれたクッキーは美味かった。
美味かったけど……
………
俺はついさっき、みんながお見舞いに来てくれたときのことを思い出していた。
つかさがクッキーを取り出し、俺に渡してくれたときに言った言葉。
『昨日言ってた通り、男くんの好きなチョコチップたっぷり乗せてるからね!』
その言葉で、一瞬その場が凍りついた気がした。
とくに高良さんとかがみの表情が。
『超低温は静止の世界だ……』っつーくらいに、
固まっていた。
色々な感情をまとめてドロドロになるまで煮込んだやつを、冷やして固めたみたいな……
そんな顔のままで。
その感情が何かまでは俺なんかにはよくわからなかったけど、
一つだけ、
「つかさへの敵意」
これは確実だった気がする……
……とはいえ、まあ、別につかさとはなんでもないし、
つかさの事に関しては放っておいても大丈夫だろう。
誤解だってことはすぐにわかってもらえるはずだ。
「なんでもない」つかさのことは……
じゃあ、
高良さんとかがみ。
この二人は?
「なんでもない」ことなんてまったくない。
どちらを選ぶのか……明後日までに決めないと。
二人共を選べたら楽なのに……
とはいえ、nice boat.な結末は嫌だしな。
もちろん刺されたくはないし、
どこに行っても「氏ね」って言われる主人公になりたもくないし……
いまだに俺は答えを出せずにいた。
選択には責任が伴う。
俺が一方を選ぶと、俺たちの関係は、
今の関係は確実に崩れてしまう……
あの時、
今日うちの玄関先で『ホワイトアルバム』が発動したあの時、
高良さんとかがみから向けられたつかさへの「敵意」
それが高良さんとかがみの間で互いに向けられたら……
あの四人(+俺)の関係はもう……
ヴイィィィィィ……
ヴイィィィィィ……
そのとき、おもむろに携帯が鳴った。
俺は思わず体をこわばらせた。
恐る恐る携帯のディスプレイを見る。
ヴイィィィィィ……
ヴイィィィィィ……
そこにあった名前は……
「……こなた?」
最終更新:2008年07月05日 18:46