【第十七話(裏√);ミツマタ】
【セーブポイント④裏をロードしました】
男「かがみ…。」
俺はかがみの思いに逆らう事が出来ず、かがみの背中を優しく抱いた。
…瞬間、かがみは、その体重を全て俺に預けてきた。
…俺は…何て心が弱いんだ…
かがみの涙は、かがみの言葉は、そんな弱すぎる俺の心の鎧を剥ぎ取るには、十分すぎる位、俺を貫いた。
もうすでに、その快楽を知っているからだろうか。俺のカラダは、こなたの時以上の強い刺激を求めて、かがみの体を貫いていた。
男「……かがみっ…かがみっっ……!!!」
かがみ「おっ…男ぉぉぉ…[らめぇぇっ!]!!……[らめぇぇっ!]!!!!」
…
かがみが俺の部屋に入って、一時間ほど過ぎただろうか…
かがみは額にうっすら汗を浮かべ、息を絶え絶えに、俺の腕の中で目を閉じていた。
かがみがゆっくり目を開ける。
その切れ長で強気な目は、俺と目が合って『へへっ…』と、いたずらっぽく笑う。
『可愛い…』
俺は思わず頬にキスをする。その瞬間は、つかさを、こなたを忘れて…。
かがみ「…男は…悪いんだぁ…」
男「…ごめん。」
かがみ「…いいよ…。」
男「…えっ?」
かがみ「黙っててあげる…。私を…愛してくれたから…。」
男「かがみ…俺…」
かがみ「…何も言わないで…。」
そう言ってかがみはその唇で、俺の口をふさいだ。
かがみ「ただいま。」
つかさ「おかえりー…遅かったね。」
かがみ「参ったわ。ゴトーヨーカ堂で小麦粉売り切れててだいぶ歩かされてね。おまけに男はこなたのプレゼントをどこやったか分からなくなるし…。」
みゆき「それは大変でしたね。」
つかさ「おねーちゃん!早く小麦粉ちょうだーい!」
かがみ「ハイハイ。」
こなた「…。」
つかさの作ったケーキをみんなで食べて、こなたにプレゼントを渡した。
しばしみんなでゲームをやった後、解散となった。
つかさ「バイバーイ!また明日ねー!」
かがみ「じゃあね。」
こなた「うん。今日はみんなありがとー。」
みゆき「こなたさん、今日は本当におめでとうございます。また明日学校で。」
俺はこなたと一緒に歩き出した。
こなた「…」
男「…」
沈黙…。無論、俺から話しかけられる気持にはなれない。
するとこなたが口を開いた。
こなた「…なぁー男…。」
男「…うん。」
こなた「変な事聞くけどさー…かがみんと何してたの?」
男「何ってなに?」
[禁則事項です]などと言える訳もなく、俺は内心ドキドキしながら、精一杯平静を装った。
こなた「…別に…ちょっと嫉妬してた。ゴメン。」
『まぁ…かがみんは軍師になってくれたし…さすがにそれは無いか…。』
こなた「なあ、男…昨日さ、今日は一緒に話すって約束したよね?ちょっとだけ男の家に行ってもいいよね?」
男「…いいよ。でも遅いからちょっとだけな。」
『大丈夫…痕跡は消した…。ベットメイクはしたし、部屋の空気はファブった…大丈夫。』
こなた「おじゃましまーす。」
男「…。」
こなた「ね…部屋で話そうよ。」
男「…うん。」
こなた「大丈夫だよー!今日は襲いかかったりしないからさ!今日は危険な日だからしちゃったら[あぼーん]だし。…昨日もだけど。」
男「!!!…mjd?」
こなた「MJD。」
こなたは部屋に入るなり男のベッドにダイブした。よく知ってる匂いがした。男の匂いと………かがみの匂い。
『MJD…?』
こなたはその後、何を話したかははっきりとは覚えていなかった。
中学の時の友達のこと、男の前の高校のこと…そんな事はどうでもよかった。
男の事を、誰よりも知っているからこそ感じた違和感…。親友の裏切り?それとも男の?
…でもそんな事を全て天秤にかけてもこなたは、男を好きで、その気持ちに変わりがないという事を再確認した。
こなた「じゃあ今日は帰るね。…もらったマグカップ、大切にするから。」
男「うん…。送ってくよ。」
こなた「大丈夫だよ。じゃあまた明日ね。」
男「…うん。また明日。」
翌日。
かがみとこなたが同居する空間が怖かった俺はみんなと時間をずらして登校した。
教室。
男「おはよう、みんな。」
こなた「おーす。」
つかさ「おはよっ!」
みゆき「おはようございます。」
他愛ない会話の後、始業のチャイムが鳴ったので席に着いた。
昼休み。
ぼーっと外を見ていた。
『…ダメだな…俺………かがみにまで………。』
『………誰かに…相談したい……』
ふと職員室棟の方を見ると、意外な人物が見えた。
『あれは…こなたのお父さんじゃないのか…?』
なんだか嫌なデジャヴュを覚えた俺はこなたたちには覚られない様に職員室棟に向かった。
ちょうど、こなた父と黒井先生が例の会議室に入って行くのを見た。
『…なんだかおかしいぞ…』
クラスの生徒の親と、クラス担任が話す…それだけのことのはずなのに、俺は違和感を覚えた。
会議室の前でこっそり聞き耳を立てる。
…前とは違い今度は静かに話しているようだ。ほとんど何も聞こえない。
…
席を立つ音がした。
俺は慌てて教室棟に戻った。
『…何なんだ…??』
午後の授業中。
横目でこなたを見る。
…こなたは相変わらず普通に授業を受けている。
『やっぱり、父親が来たことは知らないみたいだな…』
…分らない…。でもよくよく考えてみれば、不自然すぎることでもない。
俺はとりあえず、こなたに言うのはやめる事にした。
放課後。
少し考え事をしながら俺は一人で帰った。
ゲマズによる。
こなたに連れられて、初めて来たときから一年くらいが経ったような気がした。
…特に買うものはない。…そういえばハリポタ全然読んでねーや…。
現実がまるで魔法世界みたいで、ファンタジーはもう飽和気味だ。
歩きながら考えた。
この状況…なんとかしなきゃ…。
家が近付いて俺は鍵を取り出す。視線を玄関に向けると、そこには、俺のよく知ってるツインテールの少女が居た。
男「…かがみ。」
かがみ「男………来ちゃった……。」
ガチャ…
かがみ「おじゃまします。」
男「…何か飲む?」
かがみ「うーん、じゃあ麦茶とか。」
男「うん。」
俺が麦茶をグラスに注ごうとした時、かがみはいつのまにか俺の背後に居た。
かがみが後ろから抱きつく。
背中が熱い。
男「!!!」
俺は思わず麦茶をこぼしてしまった。
かがみ「…男…。」
俺は、かがみを『お姫様抱っこ』していた…。
着地地点は、俺のベッド…。
…
次の日も、その次の日も、家の前にはかがみが居た。
三回目くらいから、終わった後、二人でシャワーを浴びるようになった。
俺の体は、かがみのカラダをすっかり覚えていた。
土曜日の夜、柊家。
つかさ「お姉ちゃん…最近帰り遅いね。…何してるの?」
かがみ「勉強よ。もうこの前のテストみたいな悪夢は見たくないの。」
つかさ「ふーん…図書館?」
かがみ「…だいたいね。」
つかさ「…ねえ…来週はさ、私も連れてってよ。私もお姉ちゃんと一緒に勉強したいな。」
かがみ「…。」
つかさ「…。」
かがみ「いいわよ。」
つかさ「うん…じゃあ帰るとき声掛けてねー。」
かがみ「分かったわ…。」
つかさ「それとさ、お姉ちゃん…」
かがみからメールが来た。
【from】
柊かがみ
【タイトル】
【本文】
来週は放課後、つかさと勉強するわ。
確証はないけど、私たちの事疑ってる気がするから。
ケータイを閉じる。
俺は震えていた。
自分がしていることが、どんなに罪深いことか、俺は知ってる。
事実を知って、つかさがどんなに傷つくか、知ってる。
…なにかの手違いで、つかさがかがみに来たメールを見てしまうのが怖くて、俺は返信をしなかった。
日曜日の朝。
『彼女』から電話が来た。
つかさ「男君、おはよう!今日は予定空いてる?」
男「…空いてるよ。どうしたの?」
つかさ「…デートしたいな。」
男「いいよ。どこ行く?」
つかさ「二人っきりになれるとこがいいな。」
男「うん…てか、家だよね?…その…かがみとかにばれちゃうよ、俺たちの事。」
つかさ「家じゃないよ。」
男「えっどこ?」
そう俺が言うと、玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン…。
ピンポーン…。
音が受話器から少し遅れて聞こえる。
男「うわっ!!」
俺は驚いて一瞬ケータイを耳から離した。
つかさ「おじゃましまーす。」
大きなバッグを持ったつかさが現れた。
男「…おはよう、つかさ。」
つかさ「おはよっ!!」
つかさは俺に抱きついた。
男「どうしたの?こんな時間に。」
つかさ「実はね、男君に報告したい事があったの。」
男「何?」
つかさ「実はね…私の方から言ったのに約束破っちゃたんだけど、昨日お姉ちゃんに男君と付き合ってること言っちゃった!」
男「…そうなんだ。」
つかさ「…反応薄いね。」
男「えっ?!…いっ…いや、なんて言うか恥ずかしいなーと思って!」
つかさ「ふーん…。」
男『今さらって思ったけど、よく考えたらつかさとの関係は、まだ誰も知らない事になってるんだった…。』
つかさ「…明日からは学校でも手繋げるね!」
男「えっ!?繋ぐの?!!」
つかさ「…嫌なの?」
男「嫌ではないけど…」
つかさ「私も恥ずかしいけど、手繋ぎたいな…。」
男「…うん、分った…。」
『…俺はやっぱりダメだな…。』
つかさ「…じゃあ私帰るね!」
男「えっ?」
つかさ「それだけ言いたかったの!それじゃバイバイ!!」
つかさは帰って行った。
…つかさは…ホントにそれだけ言いに来たんだろうか…。
【第十八話(裏√);ツヨクナイ】
新しい週が始まった。
ニュースキャスター『…は東海地方、関東甲信越地方の梅雨入りを宣言し、関東北部では午後から大雨の可能性が…』
男「あーじめじめする季節になってきたな…。」
傘をさして家を出た。
カラフルな柄の、青い傘と赤い傘が近付いて来る。
かがみ・つかさ「おはよう。」
男「おはよ…二人ともどうしたの、どうしたの?うちの前まで来て…」
かがみ「つかさがね、どうしても男と一緒に登校したいって言うから仕方なく来たのよ。」
つかさ「えへへー///今日からは男君と一緒に行くって決めたんだー!」
男「俺にとってはつかさたちの家は通り道なんだから、明日からは俺の方から行くよ。」
かがみ「てゆーか私に気を使わないで二人で行けばいいのに…」
つかさ「ふっ…二人っきりはまだ恥ずかしいよー!!」
男「…」
かがみの様子は、俺と関係をもつ前と変わらないように見える…。女の子ってすごいな…。
つかさ「今日は雨だから…手繋げないね///」
学校に着いた。
こなた「おはよー、つかさ、男。」
みゆき「おはようございます。」
男「おはよう。」
つかさ「おはよー!」
こなた「かがみんから聞いたよー!まずは二人の出会いから聞こうか?」
つかさ「えっとね…四月の終わりに教室でね…」
男「…つかさ…それはみんな知ってることだ…。」
………ホントに女の子はすごいな…。
みゆき「つかささん、男さん、本当におめでとうございます。私…なんだか自分の事の様に嬉しいです…!」
男「あ…ありがと…でもさ…ちょっと声大きいよ…。」
みゆき「!!!ごっ…ごめんなさい…。」
…こなたの…かがみの…事が無ければ…本当に心から『ありがとう』って言えるんだけどな…。
放課後。
かがみがメールで告げたように、つかさはかがみと一緒に図書館に向かって行った。
みゆきさんと別れて、こなたと歩く。
こなた「じめじめする季節になったねー。」
男「…うん。」
こなた「今日から梅雨入りだってさ。」
男「…そうみたいだね。」
こなた「…。」
男「…。」
こなた「三又はツライかい?」
男「!!!…知ってたのか?」
こなた「Lでも引っ掛る事があるんですね。今ので100%確信に変わりました。」
男「!!!!………。」
男「…ゴメン…。」
こなた「…私はさ…ずっと昔から男の事見てたから……だから、何となくね…」
男「かがみは…悪くないんだ…悪いのは全部俺だ…。」
こなた「男は…悪くないよ。かがみも、つかさも、たぶん私も…みんな悪くない。」
こなた「実はかがみんには、男の事相談してたんだ。…だからちょっとショックだったけどさ…。」
…雨が強くなってきた。
こなた「私は…男がどんな道を選んでも…やっぱり男が好きだから…。」
男「こなた…」
こなた「おーい男!傘ちゃんと差さないとカバンびしょびしょになるぞー!!」
男「…こなたは…強いな。」
こなた「とりあえず今日は男の家に遊び行っていいかー?」
男「…うん。………格ゲーでもするか!」
こなた「ふっ…!!望むところだ!!!」
『………強くなんか…ないよ……』
ガチャ。
こなた「おじゃましまーす。」
男「今タオル用意するよ。」
こなた「さんきゅー。」
…
男「何飲む?」
こなた「コッペパンを要求するッッッッ!!!」
男「…なんだそのモデルガンは…お茶でいいな…?」
こなた「…男に貸す本のリストが増えた、という事だけ伝えておこう…。」
…
男「なんでお前はそんなにゲームがうまいんだ…」
こなた「かがみんもなかなかだよ。シューティングとか特に。」
男「へー…意外だな。よく一緒にやるのか?」
こなた「まあねー。かがみんは俺の嫁だし。」
男「アホ。」
男「…雨、止まないな。」
こなた「もう今日は止まないんじゃない?天気予報もそんなようなこと言ってたよ。○純だから当てにならないけど。」
男「そうか…」
こなたはゲームに飽きたのか、床にゴロンと横になった。
こなた「なー男。」
男「何?」
ひょいひょい
こなたが手招きする。
男「?」
こなた「…横に来て…。」
俺の腕に頭を乗せて、目を細めるこなたは、まるで幼児が親に甘えるみたいに、表情だけで俺にじゃれつく。
ふと、細めたまぶたの隙間から、まっすぐ俺を見つめて、小さく俺に聞いた。
こなた「…ねえ…かがみんと何回したの…?」
男「………。」
こなた「………言えないんなら、いいや。」
男「……………!!!」
こなたが俺の服のボタンをゆっくり外し始めた。
男「こなたっ………!」
男「…!!お前、今日だって[禁則事項です]しちゃまずいんじゃないのか……?!」
こなた「カンケーないよ…。」
こなた「…男がかがみんの事忘れてくれる位…男に私を染み込ませるから…。」
男「…こなた……」
……俺は…本当にダメだ……。
『……ほらね……私は…強くなんかない………。』
…雨は一向に止まない。
こなたと、ゼロ距離で抱き合いながら、お互いの体温を感じあう。
この物語に、エンディングはあるんだろうか…?
そのとき俺が抱きしめてるのは誰なんだろうか?
…少なくとも、心の弱すぎる今の俺には、『正解』は導けないだろう。
こなたは少し眠そうに目をこすった。
こなた「…泊まりたい。」
男「ダメ…。」
こなた「うん…わかってる。」
…
こなた「じゃあ帰るね。雨すごいし、送ったりはしなくていいから。」
男「気をつけてな。」
こなた「うん。じゃーまた明日なー。」
遠ざかっていく青いビニール傘を見送りながら、俺は一つの決断をした。
『…みゆきさんに相談しよう…。』
『…軽蔑されるかもしれない…。』
『…でも…俺の心は弱くて、みんなに流されちまう…。』
『…みゆきさんなら…ヒントをくれるかもしれない…。』
こなたの姿が見えなくなり、俺は家に入ると、ケータイを取り出した。
そして、教えてもらってまだ一度も使ったことのないアドレスを呼び出した。
【to】
高翌良みゆき
【タイトル】
突然メールしてごめんね
【本文】
数学でどうしてもわからないところがあるから、明日教えてくれない?
翌日。
雨はまだ止まない。
昨日の決意を胸に、俺は家を出た。
昨日、あの後すぐにみゆきさんからメールがあった。
『いいですよ。それでは明日の放課後、一緒に勉強しましょう。』
との事。
柊邸の前で、つかさとかがみを待つ。
…
10分程して二人は現れた。
つかさ「はうぅぅ…雨の中待たせちゃってごめんなさい><」
かがみ「お待たせー。」
俺達は三人で歩き出した。
男「そういえば二人とは、今日も勉強するの?」
かがみ「私はするけど…つかさは?」
つかさ「じゃあ私もするよー。あ!男君も一緒にする?」
男「いや実はさ、数学でどうしても分らないとこがあるから、みゆきさんに聞こうかと思うんだ。」
つかさ「…ゆきちゃん?」
男「うん。」
かがみ「おやー?つかさ…嫉妬?」
つかさ「ち…違うよー!!!」
かがみ「つかさが嫉妬してるみたいだから、私が分かることなら教えるけど?」
かがみが『本当に?』と目でテレパシーを送ってきた。
男「積分方程式の問題なんだけどね…」
『マジです。』とテレパシーを送った。
かがみ「…やっぱみゆきに聞いて。私じゃムリ。」
学校に着いた。
みゆき「あ、おはようございます。…あの実は今日委員会があるので遅くなってしまいそうなのですが…」
男「みゆきさんが迷惑じゃなければ、待ってるけど?」
みゆき「そうですか?すみません。」
男「いやいや、こっちこそごめんね。」
こなたが少し訝しげにこっちを見た。
男「実は数学で分かんないとこあって、今日みゆきさんに教えてもらう約束したんだ。」
こなた「ふーん。」
こなただけに聞こえる小さな声で『ほんとだよ』と言った。
こなたは俺にだけ聞こえる小さな声で『信じてる』と言った。
放課後。
教室でみゆきさんを待つ。
こなたたちは先に帰ったみたいだった。
『…遅いなー…』
これから、ある意味愛の告白より重い、『告白』をしなければならない。
俺は決意が揺るがないように、できるだけその事は考えず、窓の外を見ていた。
『………?』
俺は職員室棟に入っていくこなたの父親に視点を合わせた。
さすがにおかしい…こんな短期間に二度も保護者が学校に来るだろうか?
増してや、こなたの父親。PTAでもクレーマーでもない。どちらかと言えばそう言う事には興味無さそうな人だ。
…やっぱり黒井先生に会いに来たんだろうか…?行くべきか?…いや…
その時後ろから声がした。
みゆき「すみません、遅くなりました。」
みゆきさんと並んで歩く。
男「ごめんね、急に。」
みゆき「いいえ、大丈夫ですよ。どこでやりますか?」
男「うーん…教えてもらうとなると声出すから図書館じゃダメだよね。…みゆきさんが良ければ家でもいいかな?」
みゆき「私の家ですか?」
男「うん。」
みゆき「…私としては構わないのですが、つかささんに要らぬ誤解を与えたくないですね…。」
男「あっ今日みゆきさんと勉強する事は言ってあるし、家に行く場合はメールとかするつもりだよ。」
みゆき「それなら平気ですね。では、行きましょうー!」
男『やっぱりみゆきさん、しっかりしてるな…俺…軽蔑されるだろうな…。』
しばらく歩いてみゆき邸に着いた。
男「おじゃまします。」
みゆき母「いらっしゃい。ゆっくりして行ってね。」
男「あ…ありがとうございます。」
みゆきさんの部屋に入った。
みゆき「では、やっていきましょうか。数学でしたよね?」
男「あ…みゆきさん。」
みゆき「どうしました?お腹すきました?」
男「い…いや、そうじゃなくて…。」
みゆき「?」
男「あのさ…実は勉強教えてほしいってのは嘘なんだ…。」
みゆき「……えっ?…私、意味がよくわからないのですが…。」
男「実は…すごく悩んでることがあって、どうしても相談したくて、今日勉強教えてほしいって嘘ついたんだ。」
みゆき「…えっと…大体わかりました。」
みゆき「…その…私より、つかささんに相談した方がいいと思いますよ…?」
男「それは…できない。…たぶん今相談できるのはみゆきさんしかいない…。」
みゆき「…分かりました。私で力になれるなら出来るだけ尽力します…。」
男「…」
みゆき「…」
しばし沈黙が続いた。
みゆきさんは眼鏡の奥で、真剣な表情をしている。
…
男「…誰にも…言わないでほしいんだ………実は…」
とても長い時間に感じた。
一分が一時間に感じた。
みゆきさんは、終始真面目な表情で俺を見ていた。
…俺は、つかさとの事、こなたとの関係、かがみとの過ち、全てを喋った。
男「…俺は最低だ…。つかさが居ながら、こなたとの思い出を忘れる事が出来なかった…!!かがみの気持ちを遮ることが出来なかった…!!!」
男「…俺はどうすればいいんだろう…出来る事なら…誰の事も傷つけたくない…。」
少しの沈黙の後、みゆきさんが口を開いた。
みゆき「…誰も…傷つかないのは…もう無理です。少なくとも、かがみさん、こなたさんは辛い思いをしています。事実を知れば、つかささんもそうでしょう。」
男「…」
みゆき「でも…言わなければいけないと思います…。今の状態が長く続けばそれだけ傷は大きくなります。」
男「…うん。」
みゆき「…大切なのは、男さんが誰を好きか、です。男さんは優しいです。でも優しすぎて選ぶことが出来ない。誰かを捨てる事が出来ない。他の誰かを…犠牲にすることが出来ない…。」
…俺は涙があふれてきた。
みゆき「…男さんにとって、一番大切なものは何か、一番守るべきことは何か、それを考える事が重要なんだと思います。」
…気がつくと、みゆきさんも涙を流していた。
男「あっ!ごっ…ごめん!!」
みゆきさんは眼鏡を外し、ハンカチで涙を拭いた。
みゆき「…ごめんなさい。」
みゆき「…私だってそうです…。…私も自分にとって一番大切なものは何か、と聞かれたら戸惑ってしまいます。…でも、最近思うようになったんです。」
男「…何を?」
みゆき「…自分の気持ちに正直になって、自分にとって一番大切なものを守らなければいけないんだって。………それは、とても勇気のいる事ですが。」
男「…ありがとう。…みゆきさんに相談して良かった…。」
男「…正直、軽蔑されると思ってた。でもみゆきさんは、ちゃんと聞いてくれて…勇気をくれた。」
みゆき「いいえ!そんな事はないです…。私だって人に言えない様な事はあります。それを打ち明ける勇気を持っている男さんは素晴らしいと思います。」
男「…とにかく…ありがとう。」
みゆき「こちらこそ…ごめんなさい。」
みゆきさんの家を後にした。
雨足は少し弱まってきた。
『…俺にとって…一番大切な人…』
『…いなくなって、一番さみしい人…』
帰りの電車の中で、俺はいろいろ考えた。
自分なとって最も大切な人…
つかさは…その素直さと少々天然な所がかわいい。つかさが居なくなったら俺は悲しむだろう。
かがみは…素直じゃないが、たまに見せる甘えた表情がかわいい。かがみが居なくなったら俺は心にぽっかりと穴があくだろう…。
こなたは…弱い俺のこと全部知ってて、俺の心を支えてくれた恩人で…こなたが居なくなった時、俺はずっと泣いていた…。
…ダメだ…誰かを捨てるなんて…誰かの気持ちを見ない振りするなんて…出来ないよ…。
…でもそれじゃダメだ…。みゆきさんに話した意味無くなる…。
…ハッキリ言わなきゃ…。もう…こんな関係続けてちゃダメだ。
こなたとかがみと…もう[禁則事項です]するのは止めよう…。
そして…つかさにすべてを打ち明けて…
全員との関係を…可能なら『友達』まで戻して、それから考えよう…。
『俺は誰を愛するのか』
車窓からの景色を見ながら少し昔を思い出した。
『前、この糖武鉄道乗ったときは…みんなでわんこ行ったなぁ…』
『…楽しかったなぁ…』
『もう…戻れないんだろうか…』
『…てかよく考えたら、あの時糟日部で待ち合わせしたけど、みゆきさんは糟日部まで来たら無駄足してるよな…』
『…みゆきさんに悪いことしたな。今更だけど…』
最寄り駅に着いた。傘を差しながら右手でケータイを打つ。
【to】
泉こなた
【タイトル】
【本文】
明日の放課後、話したいことが有るんだ。時間とれる?
…程なくして返信が来た。
【from】
泉こなた
【タイトル】
Re:
【本文】
いーよ。じゃあ五時半頃家行くよ。
…まずはこなたから…ちゃんと言わなきゃ…。
翌日。
今日は雨降ってないな…
傘を持たず家を出た。
柊邸に向かうと、つかさとかがみはもう家の外で待っていた。
男「おはよ。待った?」
つかさ「私たちも今出てきたとこだよ!」
かがみ「おはよー。」
男「よかった。じゃあ二人とも、行こうか?」
つかさが俺の左手に自分の手を絡めてきた。
つかさ「えへへっ///」
…後ろを歩いているかがみの視線が怖い…
予定では明後日、つかさにも本当の事を言う。
だから今手をつないでいるのは少し違和感を覚える。
でも、今だけはつかさの手の感触を感じていたくて、少し強く握り返した。
授業が終わった。
今日の授業は全然頭に入らなかった…。
つかさとかがみが図書館へ向かうのを確認し、俺は電車に乗った。
最寄り駅のホームに降りると改札のところにこなたが居た。
こなた「やあ、男。」
男「お…おう。まだ早いけど、もう来る?」
こなた「んー何ていうかさ…今日男の家じゃなく、うちに来ないかー?」
男「えっ…うーん…」
こなた「…大丈夫、今日おとーさん居ないから。」
こなたは俺の心を読めるみたいだ…。
男「…仕事?」
こなた「うん。取材旅行と称した慰安旅行に出掛けた。」
男「ふーん…(珍しいな…)。」
こなた「そう言うわけで、もう一度電車乗ろうか?」
俺達は一駅戻って、電車を降りた。
男「…。」
何も喋れない…。これからこなたに話すことを考えると、どうでもいい話題で盛り上がる気にはなれない。
こなた「あのさー」
男「…うん。」
こなた「男の話すこと…何となく分かってるから、あんまし緊張しなくていいぞー。」
男「うん…。こなたは…俺の心読めるんだな。」
こなた「男がサトラレなだけだよ。」
【第十九話(裏√);ヤリナオシ】
こなた「ただいまー」
男「おじゃまします。」
家には誰もいない。俺達は以前XXをやったリビングに向かい合わせで座った。
こなた「あっ」
男「何?」
こなた「…男、スタンドアップ。」
男「?」
訳が分からず、とりあえず俺は立ち上がった。
こなたも椅子から立ち上がり、こちらにつかつかと歩いてきた。
ぎゅっ…
男「わっ!!!」
こなたは下を向いたまま今までに無いくらい強く抱きついた。
『…ダメだ…!これじゃいつもと同じに…!』
男「こなた!俺は…」
俺の言葉を遮ってこなたが言った。
こなた「分かってるよ…だから…最後に…。」
しばらくして、こなたは俺から離れて椅子に戻った。
表情はいつもと同じだが、目の周りが少し赤かった。
こなた「…いーよ、話して。」
…
しばしの沈黙の後、俺は話し始めた。
つかさの事、かがみの事。…そしてみんなにそれぞれ本当の事を打ち明けて、一旦みんなと離れる事。
話し終わった時、こなたの表情は意外にも少し明るくなった。
こなた「…つまり一旦みんなとの関係を清算して、誰と付き合うかはその後でまた考えるという事でFA?」
男「うん…。」
こなた「なんだ…もう私達三人とは絶好するー!って言うのかと思ったよ。」
男「…みんなに嫌われるだろうし、結果的にそうなるかもしれないな…。」
こなた「私は…嫌いにはならないよ?」
男「こなたは…優しいな…」
こなた「うむ、じゃあ私を選んでくれ!」
男「…次は…本当によく考える…。…本当に…ゴメン…。」
こなた「…うん。そーだね…。…待ってるから…男が答え出すの。」
男「…それじゃ、また明日な。」
こなた「うん。」
男「誰もいないんだから戸締まりしっかりな。」
こなた「うん。おやすみ。」
…バタン
ドアが閉まった。
こなた『十年近く好きなんだよ…?これくらいで嫌いになんてならないよ…』
最終更新:2008年09月11日 23:45