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暗い暗い夜を二つの影が走りぬける。 夜空を飾るまん丸な満月をシルエットにして屋根から屋根へと駆けて行く。 「大分時間くっちっまった」 「お菓子が焼けないのが悪い」 2人の影はのほほんと話す。 どうやら2人の男女のようだ。 「なんとか時間までにいけそうだな」 「怪盗が遅刻とか笑えない……」 男性のほうが誰のせいだよ…と呟くも女性のほうは聞く耳を持たない。 男性はため息をついて前を見る。 前のほうでは月明かりを消すかのような、いっぱいのライトが1つの建物をデコレーションしている。 りつべ博物館……2人の目的地にして-勝負-の場所だ。 2人は近くの一番高いビルの上に立つと下にある博物館を見下ろす。 「準備はいい?照ちゃん」 「問題ないよ、京ちゃん」 京太郎がごほんと声を整える。 そして…… 『レディースアンドジェントルメン』 大きな声が辺りを包む。 下に集まっていた観衆と警察が一斉に騒ぎ出す。 警察の対応は早くすぐに京太郎と照が居る所にライトを当てられた。 京太郎は黒いズボンにマント裏地は赤、高めのシルクハットに上着は白いシャツだ。 顔には黒い細長い布のようなもので目を覆っている。 手にはステッキだ。 照の格好は照のスレンダーなスタイルを綺麗に見せる服装だ。 ワンピース水着のような一体型でフリルはついていない、色合いは黒と緑を強調している。 顔には蝶型のマスクを着け、頭にはTの文字の髪飾りをつけている。 『今宵も皆様に見せるのは怪盗が起す奇跡!!』 『予告通りにお宝を頂きます!どうか!!最後までお付き合いを!!!』 京太郎が言い切りお辞儀と同時に2人は白い煙の中へ消えた。 「怜……現れたで」 「まぁ……そうやろな」 博物館内、一番奥の展示場で怜は竜華の問いに答えた。 まぁ…予告までしておいて来ないのはないはなーと怜はのほほんと考える。 「今度こそ捕まえんとね、゛怜名探偵 ″」 「それやめてくれへん?いやや、なんやけど」 竜華にからかわれ少しばかり怜は頬を膨らませる。 そんな怜に竜華はカラカラと笑った。 「あ~……京君と一緒にダラダラしたい」 「さっさと終わらせれば出来るんやない?」 竜華の言葉にせやねと答える。 怜の脳裏には自分の住むアパートの管理人の京太郎の姿が思う浮かぶ。 「今何してるんやろなー」 「へっくし!!」 「Kちゃん風邪?」 「違うと思う……と警備員が2人に監視カメラとお決まりだな」 2人の先にはテンプレ的な場面がある。 京太郎は少し考えるとステッキをコンコンと鳴らす。 するとドーンと大きな音が遠くから聞こえた。 「な、なんだ!?」 「何が……!」 音に怯え2人の警備員が騒ぎ出す。 そんな2人に仲間の警官が近寄ってきた。 「怪盗だ!あっちのBの経路に出たぞ!すぐに応援を!!」 「お、おう!」 警備していた2人は声に急かされすぐに応援へと向かう。 そんな2人を仲間の警官は薄ら笑いしながら見送った。 「よく思うけど…よく引っかかるよね」 「確かに俺なら惑わされないぜ!って思うだろうけど実際は結構引っかかるものだよ」 そう言って二人は歩き出す、勿論この2人は変装した京太郎と照だ。 元々怪盗が来ると緊張でピリピリしている所に大きな音を鳴らし緊張を一層高める。 その後、仲間の警官が走ってくれば……ほとんどまともな思考はできないだろう。 「一種のパニック状態だな」「なるほど」 2人は慌て始める警官達を他所にのんびりと歩く。 「んー…B通路の警官をA経路に後は豊音警部補をD通路に」 「相変わらずやね、怜」 怜は爆発の報告をされても普段通りだ。 むしろ判っていたとばかりに対応を的確にしていく。 「まぁ…未来見通せるしな」 そう言って怜は座っている椅子に深深と座り込む。 「チェックや」 「くっ…対応が早い」 「これってもしかして?」 2人は今現在、物陰に隠れている。 想像以上に警官の対応が早かった。 「間違いなく怜が居るな」「やっぱり」 2人がどうしようかと悩んでいると後ろから声が聞こえた。 「ミ~~ツ~~ケ~~タ~~~ヨーーー!」 「………豊音警部補まで居るとか本気かよ」「Kちゃん、この人怖いから苦手なんだけど」 2人が後ろを見ると190cm近くの高い身長に黒い服で身を包んだ女性が居た。 目が赤くヘビを思わせる。 2人は顔を引きつらせ豊音から逃げるのだった。 「だーー!はえー!!」「……怖い」 駆ける二人の後ろには豊音が追って来ている。 追われる二人はなりふり構わず逃げる。 「どうする?追いつかれるよ」「奥の手1個使う!」 そういうと京太郎はステッキの頭を1回転させる。 するとジジ…ジと機械音が聞こえた後に人の声が聞こえてきた。 『はいはい~待ってたよ』「塞!この先の十字路4箇所!」 京太郎は短く答える。 通信先の相手もそれで理解した。 『四百万ね』「了解!うわ!?」 豊音が投げた物に当たりそうになりながら二人は目の前の大きな扉を開け飛び込んだ。 京太郎達が飛び込んだ後にドアを破るような勢いで豊音も追いかける。 ふと見ると十字路で2人はそのまま前に進んでいる。 「鬼ごっこ得意なんだよねー」 「だろうな!」 京太郎は最後の扉に飛び込むように開け入るとすぐに閉めた。 「無駄なんだけどねー」 豊音もすぐにその扉をぶち壊して入ろうと拳を振り上げた。 豊音の振り下ろした拳は扉にぶつかった。 「………」「と、豊音警部補?」 そのまま豊音は固まり動かない。 心配になった部下が声をかける、すると豊音はぶるぶる震えると泣き出す。 「ちょー痛いよー!うえーん」 そんな豊音に部下はおろおろとしだす。 『無駄無駄、私の能力でそこの4箇所の扉、塞いだから暫く逃げれないよ』 無線機からそんな声が聞こえてきた。 「怜…!」 「う~ん……しょうがないアレ持って中庭に潜伏で残りはお宝取られてもいいから追い回してくれへん」 そういうと怜は立ち上がりふらふらと中庭へと向かった。 「……」「どうしたの?」 お宝を取ってから無言になった相方に照は声をかける。 何やら渋い顔をしていた。 「誘われてるな」「あ~…こっちって中庭だったね」 照の問いに京太郎はコクンと頷いた。 先ほどから警官に誘導されている。 2人が噴水がある中庭に向かうと案の定警官の群れに囲まれた。 『あ~あ~……キミタチハカンゼンニホウイサレテイル』 「なんで棒読みなんだよ」「お家帰ってお菓子食いたい」 怜の棒読みな声がスピーカーを通して聞こえてくる。 なんとも締まりないなと京太郎は苦笑する。 『さっさと捕まってくれへん?何時も何時も君ら出ると私が呼ばれるんよ』 「そんなの知らんよ、断れよ」「……(もぐもぐ)」 怜の何ともやる気ない声と隣で暢気にお菓子を食いだす相棒に項垂れる。 かっこつかねーと京太郎は嘆いた。 『京君とイチャイチャしたいし……面倒やし~』 「聞き捨てならない、Kちゃんは私の物…むぐっ」「はいはい、Tちゃんは黙っていようね」 怜の言葉に敏感に反応し正体をバラそうとする照の口を後ろから押さえる。 とは言ったもののどうするかと京太郎は思考する。 そうしているうちにも警官の包囲網は少しずつ狭まっている。 「奥の手!」「んっ」 京太郎はしょうがなくステッキを折る、それと同時に照は下に煙幕を投げつけた。 ボフンと白い煙が現れ視界を……… 『ってー』「はいはい♪」 遮らなかった……何やら何処からか風が流れ込みあっという間に煙幕を消し去った。 煙の中からは折れたステッキから出ているバルーンと京太郎のしがみ付く照の姿があった。 「……それってアリかと」「ありや!」 冷や汗をかく京太郎の視線の先には怜が椅子に座っておりその隣に大型の扇風機があった。 「ほい確保」「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」 「まって!?」「あーっ」 2人に向かって警官が殺到する。2人は呆気なく捕まった。 「と思ったんやけど……逃げられたな~」 怜の視線の先には京太郎と照の風船型人形と小さいスピーカーがあった。 こちらは囮だったのだろう。 暗いという事でライトの明かりが強くしたのだがそれが災いした。 少しばかり明かりが強過ぎて風船と人間見分けがつかなくなってしまった。 「残念やったなー」「そうやねー」 竜華は本当に残念そうに呟くが怜は人形から視線を外すと噴水の中を覗き込む。 暫くジーと眺めて何やら手を突っ込む。 「なんや、暑かったか?」「そんな感じや」 竜華の問いに適当に答えると怜は腰を上げ歩き出す。 勿論家に帰るためだ。 「……」 暫くすると噴水から2人が出てくる。 京太郎と照だ。 あの時、咄嗟に噴水に入り前もって開けておいた排水溝の中に潜り込んだ。 怜にじーと見られたときは心臓が止まりそうだった。 「豊音警部補より俺は怜のが怖いわ」 そうポツリと呟いた。 「ただいま~京君、私頑張ったで~」 「帰れ」 怜が京太郎の部屋へと入ってくる。 そんな怜を照は威嚇し追い出そうとする。 「いや、二人共自分の部屋あるだろ…そっち帰れ」 京太郎が自分のベッドでのんびり寝ているとドカドカと入ってくる。 勿論京太郎の寝ているベッドにだ。 「待って、そこは私の場所」「早いもん勝ちやろ」 京太郎は威嚇しあう2人を見てため息をついた。 カンッ!

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