京太郎インタビューその5


全国大会の開会式を終えた、各県代表の女子麻雀部、その精鋭達。
彼女等の青春を賭けた戦いが、始まろうとしていた。
これは、その裏で陰ながら彼女達を支える一人へのインタビューである。



京太郎「なんですかその漫画の紹介文みたいなの」

テコ入れは必要かと思いまして。

京太郎「はぁ……」

今回もよろしくお願いします。SK君。

京太郎「よろしくお願いしまーす」

本日は全国大会の開会式でしたが、どうでしたか?

京太郎「モニター越しですけど、錚々たる陣営って感じでしたね。雑誌や動画にも出てる人達が一堂に会してるって、なんか現実感が無いですよ」

SK君も雑誌や動画に出られてますが?

京太郎「あはは。俺なんか話の内容ばっかで写真は隅っこで小さくですし、動画だってほんの少しの一部の人にウケてるだけでしょう?」

……ちなみに動画をご覧になった事は?

京太郎「まぁ、アップが始まってすぐにちょっとだけ。やっぱ自分の動画の全部を繰り返し見るとか精神的にキツイですしね」

……成程。

開会式では、S君はどうしていました?

京太郎「例に漏れず、咲の奴が迷子になってたので迎えに行きました」

やはりですか。

京太郎「探してる時に穏乃から「京太郎君とこの宮永さん見た! すごいプレッシャーだったね!」ってLINE来て、大体どの辺で見たか教えてもらって、見つけたのはボイラー室ですよ」

何故そんな所に迷い込むんでしょうね……。

京太郎「あいつほんとは迷子になってるんじゃなくて、魔王オーラ撒き散らしに行ってるんじゃないですかね……」

魔王オーラ。

京太郎「って本人に言ったら「そんなわけないでしょ!」ですって。「じゃあただポンコツなだけか」つったらムキーしだしたんで、あいつ自身ポンコツなのは認めてきてるんでしょう」

それはただ怒ってるだけでは……?

京太郎「そういえば、開会式中でなんですけど」

はい。

京太郎「咲を送り届けた後、会場で調理出来る場所に行ったんですよ」

そんな所があるんですか?

京太郎「はい。もちろん無断では使えないんですけど、俺が会場内で調理出来るよう部長が許可をもらってきてくれて」

部長さんにも心境の変化が訪れたんですか。

京太郎「? さぁ。でもこの前「S君に雑用任せちゃうのは避けられないけど、せめてちゃんとした場を用意してあげないと」ってブツブツしてたのは聞こえちゃいましたね。部長もちゃんと俺の事気に掛けてくれてんだなーって思いましたよ」

成程……。それで、そこで何かあったんですか?

京太郎「えーと、そこでちゃんと調理出来るか確かめる為に、一度使ってみようとお菓子を作ってたんですよね」

作れるんですか?

京太郎「ええ。やっぱ女子の差し入れは甘い物が評判良いとの事で、一通りは。で、作ってたら突如部屋の扉がバーンと開かれて「なんか美味しそうな匂いがした!」と言って誰かが現れまして」

誰か、というと、誰だったんですか?

京太郎「それがなんと、開会式中の筈の淡……白糸台の大将の大星淡だったんですよ」

淡?

京太郎「あー。まぁまた話してる内に、ですね」

S君は他人と距離を詰めるのが上手いですね。

京太郎「どうでしょう。今回は向こうがぐいぐい詰めてきた感じだし」

それで、何故選手の一人が?

京太郎「あいつが言うところによると「他のとこのくじ引きなんてつまんなーい。うちはシードだし、どこと当たろうとうちらに勝てるのなんていやしないしー♪」つって、抜け出してきたそうで」

王者だけあって、自信に満ち溢れてますね。

京太郎「というか、あいつは普通に自信家なんだと思いますね。悪意は無いと思いますよ。多分ね」

それで、その大星さんが調理室にやってきたと。

京太郎「はい。んで、俺を見つけるなりあんにゃろう「あ! 長野のパシリのS!」とか抜かしやがりまして」

本当に悪意は無いんですよね……?

京太郎「誰がパシリだって返したら「えー。でもパソコン山に運ばせるとかありえなくない? パシリじゃないなら……先輩が鬼?」とか言うので、じゃあパシリでいいよと」

ああ、天然で人を傷付けるタイプですね。

京太郎「初対面がそんな感じだったんで、他校の選手といえどあんま礼儀正しくするのもアホらしくなってきたから、放っといてお菓子作りに集中しようとしたら、近付いてきて「ねーねー、何作ってるのー?」と」

お母さんの料理中に尋ねてくる子供ですか。

京太郎「印象はその通りでしたね。で、作ってるお菓子を答えたら「マジ!? 作れんの!?」って目ぇキラッキラさせてるんですよね」

尊敬の眼差しを向けられたんですね。

京太郎「いえ、あの目は「作れるんならこの可愛い淡ちゃんにも寄越せ!」っていうタカリの目でしたね」

キラキラした瞳で何を訴えてるんですか。

京太郎「あんまり嫌味を感じないのが不思議でしたねー……。とはいえ、部費で買った食材だったのもあり、そのままくれてやるのも癪だったので、欲しけりゃ食材買ってこいやって言ったんですよ」

乱暴な言い方ですけど、まぁ当たり前ですね。

京太郎「ところが予想に反して「わかった! 何買ってくればいい!?」と」

何故そこだけ素直なんですか。

京太郎「いや、多分あいついつも素直ですよ。自分の感情に」

京太郎「それで必要な食材と量を言ったら、スマホにキッチリメモってダッシュで買いに行きまして、近くに買える所があったので割とすぐ戻ってきました」

パシリ根性全開じゃないですか。

京太郎「どっちかと言うとお菓子買ってきていいとお小遣い渡されて駄菓子屋に向かう小学生のノリでしたね。まぁそこまでさせといて断る訳にもいかんので、追加でお菓子を作ってやったんですよ」

好評でしたか?

京太郎「そうですね。持ち帰る分とはまた別にその場で食べる分も作って食べたら、若干オーバー気味に美味い美味いってリアクションしてましたから」

それが切っ掛けで仲良くなったと。

京太郎「あー、いえ。それもですけどそれじゃなくて、ですね」


京太郎「食べてる時に向こうが「ねーアンタさ、ドラゴ○ボール語れるってホント?」と」

大星さんもですか。

京太郎「まぁ世界的な漫画ですしね。ファン度が俺や穏乃と同じくらいだった淡なんで、同士と分かればそこから仲良くなるのに時間はいりませんでしたよ」

意外といえば意外な所で共通点が出来るものですね。高鴨さんと大星さんも相性が良いのかもしれません。

京太郎「うーん……。どうでしょうね」

? 何か引っ掛かるものでも?

京太郎「いえ、同じ作品が大好きなのはそうなんですけど、その中でも違いってのはやっぱりありますから」

というと?

京太郎「ドラゴン○ールはですね、主人公とライバルが合体する時があるんですけど、その合体にもバージョンが2つあるんですよ」

合体元が同じならどちらも同じでは?

京太郎「それもそうなんですけど、やっぱり違うっていう意見もあります。俺もそうですし。で、この合体でどっちが好きかと言えば、穏乃は断然ベジ○トで、淡は絶対ゴ○ータって言ってるんですよ」

はぁ…………。

京太郎「というのもあくまで一例で、作品内でどういうカテゴリなら何が好きかってので、この二人ほぼほぼ噛み合ってないんですよ」

同じ作品が好きでも、そこで喧嘩は起こる可能性は有り得ると。

京太郎「まぁどっちとも俺と解釈違いなとこはありましたけど、それで楽しく語り合えたので、大丈夫だと思いますけどね」

S君から見て、大星さんはどういう方でしたか?

京太郎「まーアホで口悪いからあんまり理解されないかもしれませんが、話してみれば天然で純粋な奴なのは分かりますよ」

すっかり悪友みたいな口振りですね。

京太郎「それと、注目して見るとあいつ意外と女子力高いんですよ」

というと?

京太郎「家庭的とはまた違うんですけど、爪先が綺麗だったり髪の手入れが行き届いてたり。あと振る舞いですね。他の女子だったら意識してやってる事を無意識にやってる感じで」

S君が見てきた他の女子よりも、女子力が高いと?

京太郎「いや、女子力単体でなら和……はちゃっとズレてる所ありますけど、福路さんとかの方が高いと見てるんですがね。淡はギャップってのも相まって結構目につくんですよ」

ギャップですか。

京太郎「あとLINEのコメントやスタンプの使い方がいちいち可愛くて、逆に腹立つんですよね」

どういう感情なんですかそれ。

白糸台といえば……踏み込んだ質問になるんですけど。

京太郎「はい?」

女子高校生麻雀の王者、宮永照さんと、そちらの清澄におられる宮永咲さん。同じ苗字ですが、もしかして親戚なのでしょうか?

京太郎「ああー……。一応姉妹みたいですよ」

姉妹。

京太郎「と言っても、諸々込み入った事情があるみたいで、踏み込んだ事は出てこないですけどね」

宮永照さんの方とは面識があるのでしょうか?

京太郎「いえ。俺と咲が会ったのって中学だってのは言ったと思いますけど、その頃にはもう別居しちゃってたみたいで」

出会った頃の宮永咲さんが他人と関わりたくなさそうにしていたのも、そこに関係していると?

京太郎「さぁ? ただあいつ、昔から家族の事については父親の事しか話そうとしないんですよね。それでもあいつポンコツだから、話の節々から母親も姉もいるらしい事は伺えたんですけど」

その姉が宮永照さんだと知ったのは、いつ頃ですか?

京太郎「高校からですね。しかもあいつ、俺より先に和に話してたんですよ? 今では部活のみんなに知れ渡ってますし、中学からの腐れ縁相手に薄情だと思いません?」

S君だからこそ知られたくなかったのかもしれませんが……。

京太郎「まぁ今ここでこうして話してる俺が言えた義理じゃないけど、咲にしろお姉さんにしろ、家族の事情ですし話したくない理由もあるんだと思うので、あまり聞かない方がいいかと」

ですが、友人の家族関係が不仲に思えるのは気になりませんか?

京太郎「ならないといえば嘘になりますが、地雷踏むのもなと思いますし、咲自身もこの大会を通してお姉さんと向き合おうとしてるんで、余計な茶々は入れない方がいいかなって」

見守ろうと決めていると。

京太郎「ま、あいつが何か助けてほしい事があるなら、出来る限りはしてやろうとは思います」

では、最後になにか一言。

京太郎「俺の持ちキャラはバーダ○クです」


+ タグ編集
  • タグ:
  • 京太郎インタビュー
最終更新:2021年07月07日 08:59